コラムcolumn

世代を超えて。

  • 夢をカタチにする力- その66
  • 古民家再生 日高郡印南町(令和2年冬竣工)
世代を超えて。
おじいちゃんの時代に建てられたものをお父さんが住み継ぎ、今後は子供さんの世代に受け継がれていく予定。ですから、今回の再生・改装の中心になったのはお父さんのご家族とお子さんのご家族の混成部隊。互いにすりあわせの必要なご希望もありましたが、多くのところのイメージは具体的で明快、いくつかの建材や住設機器などは自前で調達されました。聞くと、お子さんご夫婦はそろって大学の建築科をご卒業されたのだとのこと。ちなみに、ご主人は現役の建築家。きれいに整理されたイメージ写真やスケッチを大いに参考にさせていただきながらの設計作業になりました。
既存建物は石場建て。よく調整された自然石の上に柱がただ乗っている構造。現在の耐震構造のような鉄筋コンクリート造の基礎はありません。しかしだからといってすぐに、危険な建物・・・と断を下すのは早計。この建物の生涯に幾度もあったであろう地震や台風を生き残って今日に至っている以上、伝統的なこの構法(建物)は歴史が安全性を検証してきた建物であるとも言えるでしょう。
石場建の建物のよいところは、風の通しのよいところ。ただし、構造体に有利なこの構法は住まい手には厳しい。それ故に塞がれていた床下(基礎部分)の通風を可能な限り再現して、代わりに床板の直下で徹底的に断熱しました。壁の土は室内の調湿・蓄熱の環境を適正に保つには重要な要素。これもできる限り残して、断熱層は壁土の外側に施工。これらの工夫で現在に要求される断熱・気密の性能を確保しています。
 
室内、床仕上げはお子さんご夫婦が探してこられた桜の無垢板。この下に床暖房のパネルを仕込んで暖房の補助とします。壁仕上げは珪藻土。天井は和紙と杉板張りの仕上げ。いずれの仕上げも調湿・蓄熱の性能に優れている上に透湿抵抗が低く、清々しい室内を造るには適した材料だといえるでしょう。台所にはお子さんご夫婦が自ら打ち合わせを重ねて造ったお気に入りのキッチンセットが座ります。
すでに、この家を馴染みとする4世代目が大きく育っています。現在住宅にない古民家の大きな特徴は世代を超えて住み継ぐことのできる優れた構造体を有すること。この建物は、時代時代に思い思いの手を加えられながら、さらに家族のアイデンティティを継いでいってくれることでしょう。一つの節目に関われたことを大変うれしく思っています。

再生は無から有を生む仕事。

  • 夢をカタチにする力- その65
  • 古民家再生 田辺市新庄町(令和元年春竣工)
再生は無から有を生む仕事。
初めて現場を見せていただいたのは一昨年の冬。築100年を超える住まいを、再生したい・・・とお声がけいただいたのは30代半ばのご夫婦です。名残惜しい既存家屋を解体撤去して新しく家を建つ・・・という選択肢がなかった訳ではないだろうに、長く住み継いだ古民家をご家族のアイデンティティーとして維持していきたい・・・と言う。その心意気に大いに感動しながらの取り組みとなりました。
現場はこれまでにも何回かの増・改装がくり返されて、本来の古民家より相当に大きくなっています。新しく住まうご家族の住まい方を現実的にイメージしながら、核となる古民家部分は残して再生・改装・・・後に付け加えられた部分は必要最低限のところを残して減築するという方向で進みました。
結果、残った増築部分は水廻りのみ。元々古民家には水廻りと呼ばれる部分は別棟で付随しているのが普通ですから、その部分のみが新しく古民家に加わった・・・というのはある意味必然のようにも思います。古民家部分にはコンクリート基礎はありません。束石の上に建っている柱の高さ調整をしながら全体のバランスを整えていきます。弱っていた土台長押や大引きを入れ替えながら足元を固めます。地面からの湿気を嫌って土間コンクリートを施工しましたので、束は調整の効く鋼製に替えて土間の上に置きました。上部の梁は、一部シロアリの食害を受けたヶ所のみ補修し、ほとんどの構造材は再使用。新しく付け加わった木材には意識的に色を付けませんでしたので、コントラストが鮮明で古材の存在感が際立ちます。
再生は無から有を生む仕事。古くなって価値が無くなったと思われている物に大いなる価値を見いだす仕事。見事によみがえった古民家は、再生という仕事の意義と価値を再確認させてくれます。

住まい手からの便り・・・令和元年夏。

  • 夢をカタチにする力- その64
  • 市ノ瀬の平屋(平成30年春竣工)
住まい手からの便り・・・令和元年夏。
前略・・・完成した我が家で過ごす毎日は、それはそれは素敵な日々です。家づくりのテーマとしてかかげた「日々の生活の中で四季の移り変わりを感じられる家」まさにこのテーマを実感する毎日です。市ノ瀬の我が家で初めて過ごした春・夏・秋・冬の一年間。以外と陽が差すのはこの時間帯?とか、何故かこの時期とこの時期はアリが増えるなとか、こういう天候の時ってこことここの窓開けて風通したら気持ち良いのよねとか、この時間の日なたぼっこ読書は至福の時間とか、夜の窓ガラスにカエルがへばりついてくる光景や、お風呂やダイニングの窓から見える田んぼの景色など「発見」「喜び」の連続だった一年目・・・中略・・・大きな窓があって良かった!天井高いってこんなに気持ち良いの?キッチンが家の真ん中にある影響ってこんなに大きいんだ!とか、梅雨時期は家の中の方が快適だなんて信じられない!とか、家のどこを見ても木目が目に入ってきたり、数日留守にしていた我が家に帰ってきた時に玄関を入って感じる木の香り!毎晩お風呂上がりにほっと一息ついて我が家を見渡すと、本当になんて素敵な家なんだろう・・・これが自分たちの家だなんてウソみたい・・・と、感動はまだまだ続いている現状です。・・・中略・・・私たち夫婦の「あこがれ」「夢」レベルの求めていることを一つ一つ丁寧に寄り添って聞き取り、形にして造り上げていってくださったことに感謝しかありません。・・・中略・・・それぞれの分野の職人さんがかかわって自分たちの家を形にしていってくださる過程を間近で見れて「プロフェッショナルの仕事」ってなんて格好いいんだ!こんな風に仕事に取り組む大人の姿をこの年になって見せてもらえる機会があるなんて!と、ずっと胸の高鳴りが納まらなかったほどです。
中略・・・大きな決断をして和歌山に移住して、そのタイミングとご縁に結ばれて夢のマイホームで過ごしている今、初めて「暮らす」ということを実感することができました。・・・手をかけて、愛情たっぷり注いで家族3人でこの家で楽しく過ごしていこうと思います。・・・これからもどうぞよろしくお願いします。

気持ちに真っ直ぐ。

  • 夢をカタチにする力- その63
  • 通り土間の家(平成27年冬竣工)
気持ちに真っ直ぐ。
住まいづくりに何が大切ですか・・・とよく聞かれます。そんな時には、いちばんはコンセプトです・・・と答えます。設計者は懸命に住まい手の夢をカタチにしようと頑張りますが、住まい手自身に、こんな家に住みたい、こんな暮らしがしたい・・・という気持ち(コンセプト)がないと、頑張る方向さえ定まりません。たとえ見慣れた家とは違っていても、住まい手のコンセプトにまっすぐな家は、住んでいて満足度の高い家となることでしょう。
この家の住まい手には、土間がある、風通しが良い、窓が引き残しなく全部開く、土間と庭がつながる家が欲しい・・・という強い思いがありました。そんな家で裸足生活がしたい。キッチンはアイランドがよい。居間には寝転がって、床で生活するスタイルが好み。玄関は引き戸、そのまま土間を通って各部屋に行く。土間には格子窓を付けたい・・・子供時代の原体験の中にある住まいのイメージが、ご夫婦の安らげる住まいの基本だったのでしょう。
 
 
この家は、そんな住まい手の気持ち(コンセプト)にまっすぐに造られています。玄関から続く通り土間には大きな収納があり、水廻りに直接アクセス出来て、土間そのものが居間の一部になり、アイランドキッチンや食堂、さらに奥の畳間につながります。杉の一枚天板の大きな座卓を囲んで家族が団らんし、フルオープンできる木製格子の外は屋根付きのデッキ、その先は芝生の庭です。
間取りや使い勝手と共に、龍神産の構造材をはじめとする、石・土・紙などの自然素材で造られたこの家は、住まい手にとっての夢の実現というばかりでなく、ここで育ちこの家を巣立つ子供たちの原体験となり、世代を超えて家族のアイデンティティーとして受け継がれていくことでしょう。

平屋でのんびり。

  • 夢をカタチにする力- その62
  • みどりの斜面に建つ平屋 (平成29年秋竣工)
平屋でのんびり。
 家づくりは住まい手と二人三脚の土地探しから始まりました。探し疲れた頃に見つかったのがこの敷地。南向きのゆるい斜面はしっかりとした岩盤の上にあり、表層は一面の芝生に覆われていました。この地に建つ住まいの住人はお二人、子育ても終って少しゆっくりと過ごせる状況にあります。ご希望は、みどりなどを眺めながらのびのびと暮らせる平屋の家。
 そこで、敷地の様子に合わせて斜面と芝生を残したままで平屋の住まいをのせる、自然と共にあるプランを提案しました。コンクリート擁壁などで人為的な平地づくりはしていません。南側道路からの視線は高低差を利用してベランダ手すりでおだやかに遮り、木製の引き込み戸で大開口を造って、お日様も風も充分に取り込めるように思いきり解放しました。全てのお部屋はベランダを通じて外部とつながり、空間の広がりが心まで豊かにしてくれそうな住まいです。
  柱・梁をはじめ、ほとんどの木材は龍神材。目込みで色味が良く高い強度を誇る紀州材は、構造材として住まいをしっかりと形づくるだけでなく、心安らぐ意匠づくりにも存在感を発揮しています。また、室内仕上げに使った珪藻土や和紙などと共に調湿・蓄熱などの特性が、機械依存の少ない住空間づくりにも貢献します。
 

 竣工してから1年。夏場は深い庇で太陽光を遮り、大きな開口部から気持ちの良い風が入る。冬場には充分な陽差しが確保出来て、折角用意した床暖房も出番がないくらい・・・と住まい手にはご感想をいただいています。みどりの中に浮かんでいるような外観もご近所で好評です。やっと得られた自由でのんびりとした時間を末永くお楽しみいただけることを願っています。

思いを紡ぐ。

  • 夢をカタチにする力 -その61
  • 白浜の平屋(平成30年春竣工)
思いを紡ぐ。
敷地には4棟の建て屋が有りました。暑さ寒さ対策も充分ではなく、そろそろ使い勝手も含めてニーズに合わなくなってきた母屋と共に離れと倉庫の計3棟を撤去して新しい住まいを造る・・・これが今回の計画です。
敷地の東西両隣には隣家が接近していますが、北側には山を背負い、南には田んぼが拡がっています。田んぼとの境には目隠しと防風を兼ねる植え込みが有り、住むには良い環境だと思います。住まい手の話によると、西風が予想以上に強い・・・と言うことでしたが、工事中にはその言葉が実感できる風にも遭遇しました。
敷地も広く、住まい心地を考慮して平屋で・・・というご要望は計画当初からのもの。民家型の日本屋・焼き杉の板壁に瓦屋根・・・を強くご希望なさったのは、取り壊すことになった旧の母屋の面影が懐かしく心に残っていたからでしょう。建物形状は撤去前の建物群を意識したものになっています。
 

室内では構造材(柱や梁)を見えるように使ってそのまま意匠としています。これは、木材の持つ吸・放湿性を住まい手が充分に享受するため。ですから、平らな天井があるのは畳間と水廻りぐらい。玄関やホールも含めて屋根勾配の広がりをそのまま室内空間の広さとしても活かしています。LDKの大空間に見える梁には杉の丸太を使ったのでより素朴な味わいとなりました。床板以外は全て龍神産の杉・桧材を天然乾燥で用意しました。無理に樹液を抜いたりしていませんから、色合いも自然で香りもすっかり残っています。天然乾燥材らしく、柱と梁の継ぎ目は長ほぞ・込み栓・・・プレカットでは難しい手加工・天然乾燥ならではの細工です。
しっかりとした気密・断熱の性能に加えて、現代住宅が忘れがちな蓄熱・調湿の性能を地元の木をはじめとする土や紙などの天然の素材を使うことで充実させ、屋根・壁・床に湿気を排出する工夫を組み込んだため、機械設備への依存を低めながら快適な室内を実現することが出来ました。
代々に暮らしてきた住まいの記憶を繋いでいくことは、自らのアイデンティティーを継承していくことであります。丁寧に思いを紡いでいく作業・・・この方法は新しい住まいにやすらぎを得るための知恵でもあると言えるでしょう。
 

数寄屋の家。

  • 夢をカタチにする力 -その60
  • 数寄屋の家 (平成29年冬竣工)
数寄屋の家。
ご夫婦で住まいに対する思いが異なる事は良くあります。十人十色・・・と言われるように、むしろその方が普通なのかもしれません。しかし、家づくりの第一歩がコンセプトづくり・・・と心得る私には、何よりも先に決着を付けなければならない問題です。そこのところが固まらないと前に進めません。例え進んだとしても、出来たものに対する満足は期待できないでしょう。
ご主人は数寄屋のシンプルでオシャレな建物が欲しい。奥様はもう少しモダンなものが良い。いくつもの建物を見て回り、よくよく話し合った結果・・・本格的な平屋の数寄屋の建物を目指すことになりました。
雁行した平面計画に下屋を差し込んで全体に低く感じる工夫をしました。タルキにかいふ丸太を並べた下屋の下には濡れ縁と土間を設けます。壁には竹小舞を編み込んで土塗り壁、大屋根は一文字瓦葺き、下屋は銅板葺きです。瓦屋根には軒樋を付けましたが、銅板葺きの下屋には軒先が重たくなるのを嫌って軒樋は付けませんでした。その代わり、地面に雨受けの側溝を造ります。蓋はグレーチングでも地盤面より少し低くして、その上に栗石を並べ金属は見えないようにしています。外壁は火山灰を塗り込み掻き落として仕上げています。南の掃き出しの窓は全て木製で造り付け、引き込み戸にすることでフルオープンの開口となるようにしました。雨戸も木製です。室内の主な部屋は松の銘木板張りの天井にゼオライト塗りの壁で仕上げています。中も外も木・土・石・紙などの私たちの原体験に残っている自然素材で造り、住まい手には馴染みの良いゆっくりとした時間が流れるような空間を体験していただきたいと思っています。
日本屋の弱みは耐震性能と底冷えや隙間風に代表される劣悪な温熱環境でした。しかしこれからの住宅は、本格的な数寄屋の装いをしているからといって住宅性能までこれまでのままで良い・・・という訳にはいきません。そこで、この住まいには長期優良住宅並みの耐震・台風等級と温熱環境の確保、それに劣化対応の対策をしました。
先日たまたま街でお目にかかったご主人に、寒くありませんか・・・とお声掛けしたところ・・・暖かい、これまでは寒さがこたえて足腰に痛みが出たこともあったが今年は快適だ・・・とのご返事。これから庭造りですね・・・と言うと・・・そう、楽しみながら少しずつ・・・ご主人の笑顔に、家づくりに関われたことのありがたみをつくづく感じた瞬間でした。

こだわってこその我が家。

  • 夢をカタチにする力 -その59
  • 上秋津の家 (平成29年春竣工)
こだわってこその我が家。
 住まい手には、実現したい具体的な要求がありました。木の特性を良く生かした日本家であること、わけても土塗り壁と風通しは譲れない要素であること。簡単に思えるそれらの要求は、たくさんの施工例を尋ねてもなかなかに実現が難しく思えたようです。ここなら・・・と思って取り組まれた施工店との家づくりも上手くいかず、私のところにお見えになった時には少なからず困り顔をされていました。
 竹の小舞を編み込んだ土塗り壁は蓄熱・調湿の性能に優れ、夏に涼しく冬暖かい・・・湿気の多い当地方でその真価を発揮する古来の工法です。最近の家づくりの現場から急速に無くなってしまったのは、家づくりの主導権が住まい手から、営利優先の業者(企業)に奪われてしまった弊害でもあるでしょう。いまや施工できる職人も激減し、専用の道具や材料も経験のある者で無いと簡単にはそろいません。
 土塗り壁を採用する時には注意しなければならないことがあります。それは断熱・気密の性能の不足です。万能では無い土塗り壁の弱点はしっかりとした外断熱の追加で補っています。

 たとえ世間から無くなりかけている工法でも、自分たちの暮らしに必要だと感じた時には断固として諦めない・・・そんな住まい手の姿勢が完成させた住まいです。 
 必要なものを見つめ直し選択し、 自分たちらしい住まいを造る・・・そんな当たり前のことの大切さをつくづくと感じます。誰に評価を求めることもありません・・・家族にとって本当に必要だと思うものを追求すること。こだわってこその我が家です。

住まい手からの便り・・・平成28年冬。

  • 夢をカタチにする力 -その58
  • 桜陰緑風の家 (平成28年冬竣工)
住まい手からの便り・・・平成28年冬。
 前略・・・昨晩布団だけ持ち込んで、初めて家で寝たのですが、嬉しすぎてあちこち部屋中を眺めながら色々話をしていたら夜中の1時でした。 朝は7時前から朝日が入って、気持ちよく目が覚めました。 暖房器具は無い状態でしたが、夜中も朝も全く寒くなかったです。 南側から日が入るので、すぐに部屋が暖かくなってぽかぽかして快適でした。 朝ご飯を済ませてから、前に住んでいた家に荷物の片づけに戻りましたが、10時前でもまだ日が当たらず、暗くて寒くてすぐに照明とストーブをつけ、こんなにちがうんだなと驚きました。・・・中略・・・昨年の10月に初めて田辺の事務所にお邪魔してから、1年あまりでこんな立派な家にすむことができていることが夢見たいです。 本当にお世話になりました。ありがとうございました。 設計士さんと話をするなんて初めてだったのでドキドキして、とても緊張して田辺の事務所にお邪魔しました。 でも中村さんがとても気さくで話しやすくて、ほっとしたのを覚えています。・・・中略・・・おかげで、すばらしい土地に巡り合え、こんな素敵な家を設計してもらって本当に感謝しています。 ずっとあこがれていた本物の木の家に住むことができて本当に嬉しいです。
  住み始めて1ヶ月・・・朝起きても寒くなく、障子を開けるとちょうど朝焼けの時間で、日の出が見えます。その美しさに見とれてしばらく眺めています。着替えて階段を下りていくともう朝日が1階の部屋いっぱいに差し込み、柱や和紙張りの壁がピンク色に染まって本当にきれいです。食卓について、みんな庭の方を眺めて窓から入る静かな朝の光を楽しみながら朝ご飯を食べ、気持ちよく出かけることができます。仕事が終わって家に帰るのが嬉しくて、早く帰りたくてたまりません。主人は、仕事せずに一日中家に居れたらいいのにな、なんて言ってます。

 最近とても寒く、雪がちらつく日もありますが夕方帰宅してもそれほど寒くないです。薪ストーブは毎日炊いています。下の子がすぐにつけ方を覚えて毎日火をつけています。とても暖かくて寝るときも湯たんぽをしなくなりました。ピザを焼いたり、おでんを炊いたり、楽しんでいます。・・・後略

たのしい四季がめぐる家。

  • 夢をカタチにする力 -その57
  • 東窓の眺望を楽しむ家 (平成27年春竣工)
たのしい四季がめぐる家。
 敷地は貴志川に沿う高台。前面道路は西側にあり、南北は隣地に接しています。しかし東側は畑地に接し、その向こうには雄大な山並みが拡がっています。この借景をいかして、移りゆく山の四季を楽しみながら自然と共にのびのびと暮らせるような住まいを目指しました。
 1階は大きなワンルームのような使い勝手。中心となる居間・食堂には薪ストーブが据わり、キッチンはぐるぐると回れるアイランド使いの対面タイプ、階段もこのスペースにあり、東側の窓は当然掃き出しの大開口でデッキを介して庭につながっています。さらに、薪ストーブの暖気を住まい全体に循環させるための工夫を通じて2階ともつながります。隣のタタミ間は客間も兼ねますが、それよりも普段使いを重視した設え。子ども部屋は丸太梁が丸見えの大部屋、最初から子供の数に合わせて・・・なんて区切りません。まずは大空間で充分に遊んで、個室は必要に応じて造っていく計画です。
 深い軒の出と大きな開口部が風の通り道を確保し、季節によって高度の違う太陽光を制御します。床・外壁はいずれも外断熱・通気工法。結露の心配が少なく断熱・気密の性能も優れています。住まいの骨格をなす構造材は龍神材。木組みの美しさを楽しみながら、湿気を調整する木の特性が良くいきるようにあらわしで使っています。壁は珪藻土と杉板で仕上げました。蓄熱・調湿の性能が高い材料で出来上がった室内は機械依存が少なくエコロジーでエコノミーな上に快適です。

 竣工から1年半の時が過ぎ、庭の芝生もすっかりそろいました。室内とデッキと庭を一つにして、住まい全体が家族の良い遊び場です。大きく開いた東の窓からいつも新鮮な朝日が差し込み、爽快な景色の中を四季が巡ります。陽だまりと風と木の暖かみを感じる暮らしを実現する住まいです。

自然と共に生きる。

  • 夢をカタチにする力 -その56
  • 里山の家 (平成27年春竣工)
自然と共に生きる。
 木の家工房Mo-kuのイベントに何回かお見えになった住まい手がいよいよ家づくりの時期を迎えました。まずは土探し・・・ところがなかなか納得いただける土地が見つかりません。よくよく伺ってみると、奥様は東北出身、お隣までクルマで数分という自然豊かな環境で育ってこられたのだとのこと。なるほどそれなら分譲地に住宅が建ち並ぶ街中の状況には馴染みが良くないかもしれません。そこで・・・とご紹介したのが、和歌山市内にあっても里山がすぐそこまで迫る地区の一角。この土地と巡り会った時の奥様の目の輝きが忘れられません。
 計画はこの里山に向かって充分解放できる大開口を中心に考えました。ここで中と外を区切っているのは3枚の巾1.8メートル・高さ2.2メートルのすっかり引き込める木製建具です。食堂・居間や畳間と共に、台所に立つ奥様の目線までがこの大開口を通って里山に向かいます。2階の寝室や個室群からこの景色が楽しめるのはもちろん、お風呂場からも同じ景色が見えるようになっています。
 構造材は龍神産の杉・桧、他の羽柄・造作材・内装材も同じように国産の無垢材です。床・壁・屋根の全てが外断熱・通気工法でスッポリと囲われた建物の室内は木・土・紙などの自然素材で造られ、高断熱・高気密の陰でともすれば忘れられがちな調湿・蓄熱の性能をしっかりと発揮し、機械依存の少ない清々しい空間を提供してくれます。

 自然素材で造る家は特殊なものではありません。むしろここ30年あまりで造られてきた新建材や石油製品だらけの家が特殊だと思うのです。軒高は高すぎず、軒の出をしっかり出して太陽光を制御し、効果的な開口部を設けて風の通り道を設計する。室内には木や土や紙などの自然素材を使い調湿・蓄熱に心を配る・・・地域と共に育ってきた建築文化を大切にすることで私たちの生活はもっと快適になるでしょう。
 自然豊かなこの地で、子ども達は奥様が経験された様な自然と共にある暮らしをこれから経験することでしょう。ご家族の健やかな暮らしにお役に立てたことに感謝します。

住み継ぐ意志。

  • 夢をカタチにする力 -その55
  • 丸太梁の家 (平成27年秋竣工)
住み継ぐ意志。
 新しく家を建つか既存の家を改装するか迷っている・・・そうお声掛けいただいて現場を尋ねたのは一昨年の秋でした。築後40年ほど、外観は屋根も含めて問題はない様子・・・世代を越えて住み継いでこそしっかりと造られたものの価値は発揮される。そうすることで住まい手の記憶はつながり、社会資産としての住まいも蓄積が出来る・・・日頃のそんな思いから、迷うことなく既存住まいの改装をお勧めしました。
 天井裏に入ってみても、土が抜けている様子はありません。印象深かったのは見事に掛けられた丸太梁です。これを利用しない手はない。新築で得られる良いこともたくさんありますが、改装でないと出せない味もあるのです。今は隠れている立派な丸太梁の木組みを今度は見せるようにデザインして、建物タイトルを「丸太梁の家」とすることにしました
 既存の屋根瓦は丸瓦を使った日本瓦の本葺き。それをそのまま利用して、増築される下屋部分を金属板葺きとしてこれに差し込むことで、全体の高さを抑え建物に落ち着きを与えました。外壁は全面火山灰を利用した土塗り壁、これは室内床の杉厚板と共に住まい手のご希望です。ドッシリと地に足付けた外観の中に、丸太梁で構成された変化に富んだ室内を内包しています。断熱・気密の性能不足は古い家の弱点です。そこで、屋根・壁・床は外断熱の通気工法で現在の住まい手に必要なだけの断熱・気密性能を確保しました。室内仕上げは珪藻土と無垢の木材ですから調湿の性能も優れています。

 住まいの改修や再生は、一見価値が無くなった・・・と思われているものの中に、大いなる価値を見いだす仕事です。この家の場合は見事に掛けられた丸太梁がその象徴。裏方から表に引っ張り出された丸太梁は、住まいを特徴付ける役目をしっかりと果たし、新築では出せない味を醸し出しています。若い住まい手の住み継ぐ意志によって新しく命を吹き込まれたこの住まいが、世代を超えて住まい手の期待にこたえてくれることを願っています。

場の持つ力。

  • 夢をカタチにする力 -その54
  • 水平線を望む家 (平成27年春竣工)
場の持つ力。
 家はそこに暮らす家族の人数や状況、環境条件・経済的な制約などに左右されながら、それら諸々の条件を統合する形で成立します。この住まいの場合に特に大きかった要素は敷地のありようです。太平洋が一望出来る土地の真ん中にはご主人が子どもの頃にご家族で植えた思い出深いフェニックス・・・この木と水平線の見える絶景の眺望をいかして、非日常が味わえる別荘として機能する住宅が欲しい・・・これが住まい手の家づくりのコンセプトです。
 別荘としても使いたいということから、多人数が集まる居間・食堂などのパブリックな空間と寝室をはじめとするプライベートな空間を玄関と廊下で明確に分離し、しかもそれぞれから水平線が望めるようにと配慮しました。主な開口部は木製の引き込み戸で造り、フルオープンで気持ち良く周りの環境に開かれるようにしています。特に居間・食堂では4間の開口が海側に大きく解放され爽快感を際立たせます。大空間を支える梁組には大断面の集成材は使用せず、地元産の杉・桧の無垢材を立体的に組み合わせることで、単調を逃れリズミカルで木組みの面白味を体験出来る空間を目指しました。断熱性能の高い木製建具の採用と、屋根・壁・床を外断熱の通気工法でスッポリと包み込んだおかげで温熱環境的にも優秀です。

 敷地と建物は別々に存在することが出来ません。ですから、敷地状況に関係なくどこに建っていても成立するような建物は、自らの持つ可能性を充分に発揮出来ているとは言えないでしょう。敷地の存在する場の持つ意味を十分に解析・理解し、その場との融合・共存を図り、お互いのポテンシャルを最大限に発揮させようとすることで、建物だけでは創造出来ない存在価値や理由を表現することが出来るのです。
 大海原に抱かれるようにあるこの住宅が、住まい手や訪れる方一人一人の大いなる癒しの場となることを願っています。

改装工事(リフォーム)は目的を持って。

  • 夢をカタチにする力 -その53
  • 金谷の家の改装 (平成27年初夏竣工)
改装工事(リフォーム)は目的を持って。
 住まいづくりにはコンセプトが大切。新築の時には良く分かっていることを、改装だからといっておろそかにしてはいけません。むしろ、改装だからこそしっかりと目的意識を持っていないと、対象のヶ所は際限なく拡がり、思ってもいなかった工事費が必要になったりすることもあるのです。
 子育ても一息つき、これからゆっくりと二人の時間を楽しみたい・・・と思い立ったご夫婦は改装を決意されました。大事にしたかったのは厨房機器の新調にともなう台所の使い勝手の変更、それに温熱環境の強化です。
 これまで機能重視で台所と食堂・居間は一部屋でしたが、新しいキッチンセットには少し独立性を持たせて、よりくつろげる食堂・居間を目指しました。隔壁には造り付けの食器棚とカウンターを用意して収納能力も増やしています。床・壁・天井には充分な量の断熱材を入れて暑さ・寒さ対策も万全です。壁・天井は和紙貼り仕上げ、床板は無垢の赤松のエンコウ板を張り込んで、フローリングでは止めにくい足元の底冷えを止めました。
 新婚当時、子育て時代、悠々自適で人生を楽しむ時期・・・それぞれに住まいのニーズは違ってきます。改装に対応出来るしっかりとした骨組みを用意して、少しの手間を掛けながらそれぞれの世代に適した暮らしを楽しみたいものです。

イメージする力。

  • 夢をカタチにする力 -その52
  • 真ん中に階段のある家 (平成26年秋竣工)
イメージする力。
 家を建てよう・・・と思い立っても、具体的なことを統合して一つにまとめ、現実のものにしていくのは大変な作業です。敷地の形や状況、家族の思い、将来のこと、予算のこと・・・考えなければならないことは山ほどあります。本やパンフレットを片手に方眼紙に向かって、間取りを書いてみよう・・・なんてことになると、どんどんと迷宮に入り込むばかり。そんな時には、新しい住まいで始まる楽しい生活をイメージすることからはじめましょう。
 この家の住まい手が欲しかったのは「家中が光であふれ、どこにいても家族の気配が感じられる家」・・・ですから、空間は間仕切り無く大きく、庭と室内は全面的に解放できる引き込み戸でつなげるのが良いでしょう。炊事する奥様から見渡せるのは、陽だまりの中で趣味の釣り道具の世話をするご主人と、中と外・上と下の空間を一つにして走り回りながら遊ぶ子ども達の姿。楽しい家族が一体になって時間が過ぎていく・・・そんなイメージです。
 そこで問題になったのが階段の位置。空間に一体感を持たせるのであれば、吹き抜けと共に家の真ん中あたりにあるのが良い。でも、そうなると空間が分断されて家族に一体感は生まれにくい・・・そんなジレンマを解決してくれたのが真ん中にあっても存在を主張しないシースルーの階段です。これで、ご主人は釣り竿を思う存分伸ばせ、奥様からは子ども達の姿もよく見えます。階段を上り下りする姿さえ丸見えのこのプランなら、家族が今どこに居るのか想像するのも容易です。
 設計の段階では目に見え体感できる空間はどこにもありません。しかし、ひとつひとつ決断していかなければ家づくりを進めることは出来ません。そんなときに住まい手に決定する力を与えてくれるのは、これから始まるであろう生活を想像してみる能力です。さあ、イメージする力を存分に発揮してお気に入りの空間を手に入れましょう。

住まいを造る。

  • 夢をカタチにする力 -その51
  • ありのままの家 (平成26年春竣工)
住まいを造る。
 ご主人は水産関係の海の仕事、奥様は医療関係の仕事、子どもさんは三人・・・みんなとっても忙しい、そして、とっても仲が良い。打ち合わせはいつもご家族一緒、ご両親と住まいの話をしている傍らで、子ども達はお姉ちゃんをリーダーにしてお絵かき。仕事柄事務所には色鉛筆や大判の紙はたくさんあります、打ち合わせが終わる頃には絵の中にとうとう私までもが登場していました。自然に包まれた、家族が一つになれる住まいが欲しい・・・ご希望は私がご家族を見て感じるものと一致していました。
 ところが、敷地がなかなか見つかりません。住宅団地の中では家族の思いは達成出来ません。かといって街を大きく離れてしまうと日常生活が大変になります。根気の末に見つけたのが今回の土地です。東西に長いこの土地は北側に宅地としては使えない斜面も含みますが、そこの高低差と緑が緩衝帯となって暮らしに余裕を与えてくれそうです。
 プランニングの特徴は家全体が大きなワンルームのような使い勝手に出来ていること。中心となる居間・食堂には薪ストーブが据わり、キッチンはぐるぐると回れるアイランド使いの対面タイプ。階段はもとより、洗面コーナーまでがこのスペースにあります。隣のタタミ間は客間も兼ねますが、それよりも普段使いを重視した設え、薪ストーブの暖気を住まい全体に循環させるためにもうけた吹き抜けを通じて2階ともつながっています。子ども部屋はロフトを持つ大部屋、最初から三つに・・・なんて区切りません。まずは大空間で充分に遊んで、個室は必要に応じて造っていく計画です。

 春、私が伺った折にはまだ段ボール箱が室内に山のように積まれていました。これからみんなで徐々に方付けていくのでしょう。建物が竣工しただけでは「住まい」は出来ません。これからご家族の生活が入り、人の息づかいが糧となってこの建物は「住まい」となっていくのです。とっても忙しい、そしてとっても仲が良いこのご家族の住まいが、今後どのように成長していくのか楽しみです。

思いやる心を形にしたい。

  • 夢をカタチにする力 -その50
  • 趣味室のある家 (平成26年春竣工)
思いやる心を形にしたい。
 折角の家づくりなのですから思い切り個性的に・・・他の誰かは喜んでくれなくて良い、ちょっと他所と違っていても、住まい手の思いが素直に現れている家が満足度の高い家なのです。さて、そうするには・・・少なくても、どういう住まい方をするのか、何が必要で何が必要でないのか・・・自分たちの気持ちが良く分かっていなければなりません。しかし、いざとなってみると、諸々の制約の中で自分の希望や思いをしっかりと描くことは結構難しいことだと気付くでしょう。ましてや家族の総意を組み上げるとなると至難の業。例え、ご夫婦二人だけとなっても簡単にはいきません。互いがご自分の意見を主張してなかなかまとまらない・・・なんてことは日常茶飯で起こりがちですが、この家の住まい手は違っていました。
 ご主人の第一の希望は、キッチンと水廻りがきれいにまとまり、奥様が気持ち良く動ける合理的な動線計画の住まいを実現すること。奥様の第一の希望は、ご主人の趣味であるアウトドアーの道具がひとまとまりに置けて、その中でゆっくりと時間を過ごせる趣味の部屋があること・・・互いの第一希望はそれぞれに自分のことではなく、パートナーを最も喜ばせるためのものだったのです。
 この住まいには玄関や勝手口とは別に、外部から直接アプローチ出来る部屋が有ります。キャンプ道具や自転車などが所狭しと並ぶ趣味の部屋です。充分に・・・とはいきませんでしたが、使い勝手の良い、ご主人お気に入りの部屋です。台所は行き止まりのない空間に対面式のキッチンが据わっています。背面に洗面・浴室などの水廻りがつながり、すぐ横には食品庫を兼ねた家事室があります。
互いを思いやる気持ちを形にした・・・趣味室のある家はそんな住まいです。

住まい心地は五感で確かめる。

  • 夢をカタチにする力 -その49
  • 上三毛の家 (平成26年春竣工)
住まい心地は五感で確かめる。
 家づくりの難しいところは、住まい心地が目に見える形で示されていないことです。例えば、成績表のようなものがあって、点数が高い方が快適・・・ということならば判断は簡単ですが、国の性能表示制度(住まい性能の点数化)などを持ってしても本当に快適かどうかを見極めるのは至難の業です。あるクライアントは、どう見ても木の家に見えたので見学会に行ってきたのですが、湿気でムッとした室内に幻滅し、その工務店で建てるのをやめました・・・と言って私のところを訪ねてくれました。見た目に同じような家でも、しっかりとした考え方の元に木の家としての対策がなされていなければ、木の家独特の清々しい住まい心地は望むべくもありません。
 この家の住まい手も他社のモデルハウスをご覧になった後に木の家工房Mo-kuを訪ねてこられました。いくつか家を見たけれど気に入ったものがない・・・とおっしゃる奥さん・・・小一時間の談笑の後でご主人が、あんなこと言ってましたけど、こんなに長く居たのは初めてです、結構気に入っているんだと思います・・・と言い残してお帰りになりました。そして後日、正式な家づくりがスタートしたのです。
 洋服などを買う時には着心地というものを大事にします。住まいも住まい心地で語られるべきですが、洋服のようには試せないのがつらいところ・・・そんなときには自分の感性を信じていくつかの住まいを回ってみましょう。その気になれば、あなたの五感がパンフレットにはない住まいの善し悪しをきっとあなたに教えてくれることでしょう。
 上三毛の家は住まい手がご自身の五感を信じて見つけ出してくださった住まいです。断熱・気密と共に調湿・蓄熱に注意を払い、地場産の杉・桧をはじめとする、土・石・紙などの自然素材で造り上げています。設計者として精一杯の思いを込めたこの住まいが、いつまでも住まい手ご家族とともに健やかでいてくれることを願っています。

住まいの形は、家族の形。

  • 夢をカタチにする力 -その48
  • 屋根下空間を楽しむ家 (平成26年春竣工)
住まいの形は、家族の形。
 最初の出会いは事務所主催の完成見学会でした。ご主人の質問はどれも具体的で、とても熱心に見学されていたのを覚えています。打ち合わせはいつもご家族一緒。各部の詳細にはきっちりとしたご希望をお持ちでしたが、全体計画はおおらかに私の提案を受け入れてくださいました。
 理論派で合理的なご主人、人に優しく細やかなお心遣いの奥様、年の割にはしっかりとしたボク・・・そんなご家族に私が提案したのは、住まいのどこにいてもご家族三人の存在が確認できるお家。建物全体の高さを抑え、2階もまるで屋根裏のように階下の部屋とひとつながり、住まい全体が一つになって楽しめる家です。
 深い軒の出と大きな開口部が風の通り道を確保し、季節によって高度の違う太陽光を制御します。床・外壁・屋根はいずれも外断熱・通気工法。結露の心配が少なく断熱・気密の性能も優れています。大空間の暖房は深夜電力型の蓄熱暖房機、室内の空気を汚すことなく穏やかな暖かみを提供します。住まいの骨格をなす構造材は龍神材、床板にはご主人こだわりの杉の厚板を張り込みました。壁は珪藻土と杉板で仕上げています。蓄熱・調湿の性能が高い材料で出来上がった室内は機械依存が少なくエコロジーでエコノミーな上に快適です。
 ひとまとまりの空間の中で笑い声が和やかに響く・・・この住まいが、そんなご家族と共にゆっくりと重ねる時間を大事に見守りたいものです。

子どものびのび、木の園舎。

  • 夢をカタチにする力 -その47
  • かぜのこ保育園 (平成25年冬竣工)
子どものびのび、木の園舎。
 保育所や幼稚園の建物というと、「子どもの国」の様なものをイメージするのか、おとぎ話に出てくるようなものが多く見られます。子ども達の情緒の育成には大いに気を配るべきですが、園舎までテーマパーク風である必要はありません。
 まず、安全で安心な自然素材で造ること、のびのびと過ごせるフレキシブルに使える大空間があること、園児達の情緒を育てる変化に富んだ空間体験が出来る建物であること、そして省エネや環境貢献を意識しながら経済的に造ること・・・そのために木造園舎は大きな力になります。
 幸いにも敷地の近くにはまだ緑が残っていました。子ども達に自然の大切さを教え、人間も自然の一部なのだということを、体験を通じて伝えるチャンスがそこにあるのです。紀州材を中心とする自然素材で造り上げた木の園舎はこの環境と共存し、地域に親しまれながら森の緑と一体になってより深い学びを生むでしょう。
 竣工式では子ども達が元気いっぱいにリズム運動を披露してくれました。足触りの良い唐松の床板の上を所狭しと飛び跳ねる子ども達の様子は、体全体で新しい園舎で過ごすことの喜びと気持ちよさを表現しているようです。代々の子ども達の歴史を床や壁に残しながら、いつまでもしっかりと、そしてやさしくこの子達を包んでいてくれるよう願っています。