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私たちの仕事
Works

古民家再生~田辺~

住まい手インタビュー


この家にしかない味わい

ここまで良くなるとは思わなかった。前の雰囲気を残しつつ、開放的で過ごしやすい家になりました。
吹き抜けはのびのびしているし、玄関・縁側・土間・勝手口……大きく開け放てる出入り口がたくさんあります。畑仕事や趣味のアウトドアにも便利です。
この家は大正時代に建ったらしく、築百年以上のもの。一度改修をしていて、今回は二度目の大きな手入れでした。達筆な書き付けの残る柱や梁、作物を吊して干した跡、塗り重ねた土が剥げた部分には竹小舞が見えていた本格的な土壁、家の長年の暮らしの足跡が残せました。骨組みが昔のスケール感覚で、175cm以上の人は梁で頭を打ってしまいます。僕(ご主人)は172cmなのでギリギリセーフ (笑)。土間を板間にし増築した前回改修、減築し一部を土間に変えた今回改修、間取りを変えた経緯の重なりを反映して、梁の高さもいろいろです。古さと新しさが混ざり合う変化に富んだ感じが、楽しいです。

住みたかったのは、こういう家

この家はゆくゆく取り壊す予定でした。
僕らの新居は、隣にある(ご主人の)実家の納屋の跡地で新築しようと思っていたんです。
ところが左官業の父が仕事で古民家の改修に関わる機会があり「古い家も結構キレイになるで」と盛り上がりはじめて。たまたまその頃住んでいたおばあちゃんが施設へ入り、ここが空き家になってしまうことに……。
元々こういう家が好きで、新築をするにしても古民家的な造りで建てたかった。予算的にも新築と改修で大差がないと聞き、それならご先祖さんがせっかく建てた家を大事に残したいと改修を決めました。

家族で塗り上げた壁の珪藻土

私(奥さん)は埼玉出身で、越してきた和歌山の湿気の多さが新鮮でした。仮住まいのアパート特有の問題だったかもしれませんが……埼玉ではたった数日程度で食パンがカビたりしなかったけど、和歌山では旺盛にカビるので驚きました。
この家では、冬場や梅雨時、部屋干しの方が洗濯物がよく乾くくらいです。土壁が湿気を吸い込んでくれるんですね。まったくの湿気知らずです。
壁は元々あった土壁をベースに、職人の父と一緒に珪藻土を塗りました。家族でマスキングテープを貼ったりパテ入れをしたり父を手伝って、先祖代々の建物に自分たちも手を入れたんだと、思い入れが深まりました。
母は最初まったく興味がなさそうだったけど、この家が実家の隣だから、工事を一番身近に見ていて。別に住んでいる僕たち夫婦に毎日「今日はこんなに変わってたでぇ」と教えてくれるうち、最終的には一番楽しみにしてくれてたんちゃうかなぁ。着工当初は「あの家、いつ崩れてもおかしくないで。崩れたら周りに迷惑がかかる」みたいなことを言ってたのに(笑)。終盤はだんだん出来あがる改修に、家族みんながすっかりワクワクしていました。

念願の明るさと開放感

元は光が差し込まず、色合いも濃いし、とにかく暗かったんです。だから絶対、明るくしたかった。
間取りを一新して吹き抜けができ、高い位置にも窓がついて、自然光だけでめちゃくちゃ明るい家になりました。南東は元押し入れのスペースまで縁側を拡張し、掃き出し窓がついて、光も風も入るようになった。壁の色は白を選びました。古い柱・梁がシンプルに映えつつ、晴れやかな印象になりました。元々の木材と新しく足した木材や、全体の新・旧が、見た目にちゃんと馴染むのかな……と思ってたんですが、実際にはすごくキレイな仕上がりでした。

お気に入りのスペース

特に「ほしい」と希望したのは、仏間と縁側、土間、趣味のパソコンに一人で没頭できるスペース。アウトドア用品が充分に収まる収納……とかかなぁ。
 縁側は元々あったけど、庭と室内が自然に繋がる感じが良くて、今回も形を変えて作ってもらいました。仏間にくっついています。法事の時、おじさんたちは外で立ち話、子供たちは中で遊んでて……みたいな状況では、縁側はなんとなくお互いがお互いのことをわかっていられる仲立ちみたいな感じでした。居心地もよく、お参りに来てくれた人達はここで寛いでいってくれます。
 土間では木工とかちょっとした作業がしたかった。土間収納には趣味のアウトドア用品が入っています。車は土間に横付けできるので、夜に準備をし、翌朝それを直にトランクへ積めて出かけられる。物干し台を並べれば、洗濯物もたくさん干せます。
 パソコンスペースはリビングから目線が遮られるキッチン脇。天井も低めで囲まれ感がありつつ、窓も開けられる。お気に入りスポットになりました。

壁付けキッチンはあえての古風

アイランドキッチンも検討しましたが、オープンな対面式には最近のものというイメージが強くモダン過ぎる感触でした。じゃぁ壁に付けたらリビングをひとまとまりで広くとれるし、改修前の昔ながらの雰囲気も残せるかなぁ……と、木製造り付けの壁付けキッチンに。料理の時に正面が窓で、爽やかです。魚を焼いたりちょっと匂いが出た時にも、すぐ窓をあけて換気できるし、私達には合っていました。

木製家具・建具の美しさに感動

木製家具・建具の、木の色の鮮やかさには感動しました。赤みと白っぽいところ……色合いがすごくキレイで。僕は仕事柄、龍神とか中辺路とか山の方へ行く事が多く、古民家もたくさん拝見しましたが、こんな建具を使っているお家は見たことがなかった。好きだった本物の木や土の風合いが、隅々まで想像以上に生きた自宅になりました。

▽撮影とインタビューは2020年の2月にお世話になりました。窓や扉は開けたり閉めたりしながらの撮影でしたが、お昼頃にふと温度計をみると気温は十九度。「もう4時間ほど、なんの暖房器具もつけてないですよ」と奥さん。蓄熱性能の優れた土塗り壁と陽だまりのタッグはすごいです。(中村祐子)

建物データ
所在
和歌山県田辺市
竣工
2019年夏
構造・規模
木造2階建 / 民家型構法
主要用途
専用住宅
建築面積
おおよそ90㎡(27坪)
延床面積
123㎡(37坪)
床面積
1F:88㎡(27坪) 2F:35㎡(11坪)