作品集works

わんぱく保育所 その後

  • 施設
  • 階層:木造2階建
  • 延床面積:525㎡(159坪)
  • 保育園

園長先生にインタビュー

■木のぬくもりは母のぬくもり

保育所を建てるにあたっては「木造で」という願いが、当初から強くありました。
中村伸吾さんと出会い、子供達が自然の中でのびのびと、自らの五感を通して多様な体験のできる園舎を実現できました。
60人の定員を想定しスタートをきって、7年。 今や80人のお子さんを預かり、さらに待機の方までいらっしゃる賑わいです。木の家には、みんな惹かれるんですねぇ。活力にあふれた子供達が、毎日元気に駆けまわっています。 
 

  • ▲竣工7年後の玄関
  • ▲お子さん達の活気が保育所内に満ちていた

■創造と学びの器として

物はできるだけ置きたくない性分です。遊具やおもちゃは、なくてはならないものではありません。何もない場所でも、子供達は自分で創造して、いろいろと遊ぶことができます。考える力、楽しみを見いだすということを、広い自由な空間の中で学んでほしい。物が沢山あってそれを「使う」場所よりも、何もないところから「生み出せる」環境を与えることで子供は育ちます。
わんぱく保育所は0歳6ヶ月から入所できます。園舎内ではオムツなしで、まず自由に過ごします。ご家庭では「こちらへ行ってはダメ。そっちは危ない」という具合にどうしても規制ができてしまいがちかと思うのですが、保育所では「ダメダメ」は言わないことにしています。触りたいと思えば子供が自分で触ってみて、「あ。これは冷たい。気持ち悪い」という経験の中から、自ら良いものとそうでない事を知っていきます。
色々な歳の子が関わり合う機会の多い中で過ごし、関わりの中でそれぞれの結びつきを自分たちで作り上げていきます。時にはケンカもしますけれど、お互いに育ちあう関係ができあがってきています。 空間も何事も、小さく区切りすぎると、いやいやが多くなる…。安心感をもてて、自然と大の字になって寝転べる空気を感じさせてくれる空間。この安心感というのが、体験を受け止める上で、たくましく大きく育っていける方へ心を向かわせてくれる土台となります。
「自分で好きに、どんどん動きなさい」とポンと言われても、 入所したての子供には、当初戸惑いやしんどさを感じることもあるかと思います。だけど、「これをやってみたい!あれをやりたい!」という気持ちがでてきた時に、木の空間はうけとめてくれる。経験の器としての園舎が木であることの意味は大きいと思います。
 

 

■土塗りの壁・桧の床

わんぱく保育所では、夏も冬も、エアコンは一切使いません。子供達は年中裸足です。
私達(園長先生)が育った時代は、みんながそうでした。それが暑かったから、寒かったから……もう嫌だ!というのではなくて、大人になった今、あたたかく振り返る思い出です。現代に育つ子供達にも、私達が感じたもの、経験した事を感じてもらえるような生活空間を造りたい……という想いがあります。自然が豊かで人の暮らしがそこに向かって開かれてあるようなところで、 多様な刺激をモノともせず、受け止めて糧としていけるようなおおらかさは、木と土の家でこそ養われてきたように思います。
(園長先生の)自宅もそうだったので、園舎は土塗り壁で建てたかった。冷暖房を完備しなくても、夏の暑さ、冬の寒さは随分ちがいます。足下には、絶対に桧を!と思っていました。真冬の埼玉で極寒の中を過ごしたことがありました。その時にまったく底冷えがなく、自然に体に馴染んだのが、桧の床だったんです。実際に実現し毎日を過ごしてみて、最高ですね。なんの備えもなくただ我慢をするのではなく、自然が身近でありながら、穏やかに過ごせる環境です。暑い日にはプールに入ったり汗を拭きながら過ごし、寒ければ服を一枚多く着ればいい。そうして四季を鮮やかに感じながら、みんな好奇心旺盛に大きくなっていきます。
 

  • ▲デッキでランチ
  • ▲木の椅子は軽く柔らかい

■命の中で暮らす

ここで新生活をはじめた当時は、柱や梁、木々が乾いては割れ、ぴしぴしと音がしたものです。 木が、物ではなくて、命あるものだからですね。
うちの園舎はどこからでもフッと外に出ることができる開放的な造りで、自然を身近に感じられます。園庭ではウサギとヤギを飼っています。ヤギのお乳をしぼって、チーズ作りなどを体験します。今年の2月に3匹の仔ヤギが生まれ、 子供たちはそこにも立ち会いました。だから、飼っている動物たちをとても大事にします。ヤギは室内にも入ってきたりしますが、私はそういうのはまったくOKな性格なんです。カチンカチンと蹄が桧をたたく音は、まるでハイヒールで踊っているようです。動物も命ある生きているもの。人間だけが、命をもっているのではないと教えるのは大事なことです。
保育所では、無垢の木のイスや机を、たくさんの幼い子供達がもう7年も使っていますが、ほとんどラクガキも傷もありません。おどろくほどです。私たちは「汚してはダメ」というような指導はしないのですが、館内のどこにも、これといって汚れている場所はない。「自分の身体なら、ペンで書き殴ったりするか?汚して気持ちいいか?」と、自分の感覚と考えで判断できているのだと思います。

 
  • ▲園庭のヤギ
  • ▲7年目の無垢ヒノキの床
7年越しの奥行きある艶

保育所の床は、7年経ってもピカピカです。
日頃はお子さんたちが雑巾でカラ拭きし、先生方が年に一回の蜜蝋ワックスがけをされるそうです。
桧は、毎日ふれる手や素足のあぶらを吸収し、艶を放っていました。
傷を気遣うため、せっかくの無垢板がカバーを被っていたり、コーティングをされてしまう場面にはよく出会います。大切にする方法はそれぞれですが、わんぱく保育所の園舎や木材には、そのものの性格が現れる形で愛用し、日々ふれ合う中で育まれた、あたたかく力強いかがやきが満ちてました。

 
  • ▲中央の上部の開口部は、2階渡り廊下につながっている
  • ▲2階渡り廊下。両側から1階の様子が見守れる
  
子供達の空間と、大人の空間を高さで分ける

インタビューは、2階の個室でうけてくださいました。
わんぱく保育所は、大人の空間と子供達の空間が、階で分けられている設計です。
大きな掃き出し窓が連なり保育室から直接外へ駆け出していける開放的な1階は、子供達の空間。 2階は大人達の空間です。個室と、天窓から注ぎ込む陽気が爽やかな渡り廊下があり、1階のすべてのフロアは2階から見渡すことができます。 子供達が大人の視線を気にすることなく自由に振る舞うことができ、大人はさりげなくもしっかり、子供達の様子に気が配れます。




  
  • ▲思い思いに遊びの支度
  • ▲木製の飛び込み台
  • ▲組み立て式の木製プール。
 
組み立て式の木製プール

プールは、ご依頼をいただき、木製の組み立て式を新たに設計しました。
園舎の雰囲気に馴染む軽快なヴィジュアルで、利用のない冬場は解体し畳んで収納しておけます。年度毎に園庭の利用状況を鑑みつつ、設置場所を移動できるのも、組み立て式ならではの魅力的な点です。

建物データ

所在 和歌山県田辺市 敷地面積 1192㎡(361坪)
竣工 平成17年6月 建築面積   480㎡(145坪)
構造・規模 木造2階建 / 民家型構法 延床面積   525㎡(159坪)
主要用途 保育所(児童福祉施設) 床面積 1階/425㎡(129坪)
2階/100㎡(  30坪)
受賞歴 木の国Wood Designコンテスト2006
優秀賞受賞