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私たちの仕事
Works

里山の家

建物解説


 

 木の家工房Mo-kuのイベントに何回かお見えになった住まい手がいよいよ家づくりの時期を迎えました。まずは土探し・・・ところがなかなか納得いただける土地が見つかりません。よくよく伺ってみると、奥様は東北出身、お隣までクルマで数分という自然豊かな環境で育ってこられたのだとのこと。なるほどそれなら分譲地に住宅が建ち並ぶ街中の状況には馴染みが良くないかもしれません。そこで・・・とご紹介したのが、和歌山市内にあっても里山がすぐそこまで迫る地区の一角。この土地と巡り会った時の奥様の目の輝きが忘れられません。
計画はこの里山に向かって充分解放できる大開口を中心に考えました。ここで中と外を区切っているのは3枚の巾1.8メートル・高さ2.2メートルのすっかり引き込める木製建具です。食堂・居間や畳間と共に、台所に立つ奥様の目線までがこの大開口を通って里山に向かいます。2階の寝室や個室群からこの景色が楽しめるのはもちろん、お風呂場からも同じ景色が見えるようになっています。
自然豊かなこの地で、子ども達は奥様が経験された様な自然と共にある暮らしをこれから経験することでしょう。ご家族の健やかな暮らしにお役に立てたことに感謝します。
(中村伸吾)

 

住まい手インタビュー


苦節四年、出会いは一目

庭の梅が見頃を迎えました。大雨が降ったので、撮影の今日まで残ってて良かったです(笑)。
家に居て感じる四季がリアルです。たまたまこの二年は雪がたくさん積もって、冬には雪だるまを作りました。春は花がいっぱい咲くし、鳥の声・虫の音がすごく耳に入ってきます。

ここは即決した土地です。一目見た瞬間、二人で「めっちゃいいやん!」って。その日のうちに両方の両親へ「ええトコが見つかった!」と連絡し、「買います!」って不動産屋さんへ打診したけど、「あれっ。誰かがもう交渉に入ってる!」という状況でした。でも運良く事が運び、怒濤のように話が進みました。
土地探しが一番、時間をくいました。結婚から四年程ずっと探していました。二人とも田舎育ち。のどかな場所でのびのびしたい。賃貸ではできない暮らしがしたい……その想いはかなり大事にしました。

 

家族専用の空間の醍醐味

この家での暮らしは上に下に横に、気兼ねがないです。ドタバタ走り回る子供を「いいぞ!走れ走れ!」って思いっきり好きにさせてあげられます。自分達のための空間って、すごく嬉しいですね。
庭とかさわるのも、ワクワクと楽しいです。考えだしたら、もうずーっとそのことが頭から離れません(笑)。『子供らが遊べる庭づくり』をテーマに、元々の敷地の段差に緑のマットを敷いて滑り台をつくったり、芝生をはったり、試行錯誤しながらやってみてます。最初は玄関アプローチから手をつけました。はじめてのモルタル。レンガを積んでみたけど、まぁくっつきません(笑)!失敗はいっぱいあります。

この土地の売主さんに手ほどきをいただき、今は素人ながら自力の倉庫づくりにチャレンジ中です。庭の黒い建物なんですが、完成間近です。
庭で泥んこになっても「ちょっと休憩~」といってそのままデッキでオヤツができます。キッチンの勝手口を出た所の外部流し台とか、玄関から直結の食品以外も収納できる大容量フードストックがあるので、外で使った物や土の着いた野菜の処理が気楽です。一階に居て二階の様子が声でわかるし、庭も見えてて行き来が気軽。家の中はもちろん、外の敷地の隅々まで〈ウチ〉って感じで、一体感がすごいです。

 

悩んだ分、思い出もいっぱい

プラン中は夫婦して悩みに悩みました。どうしようか・・・と、ウンウンうなってたんですが、中村さん(所長)が「大体の事は、後でもできるよ」って言ってくれて。パァっと楽になりました。「最初に全部しなくてイイんやぁ」って、あの時は救われました。

結局、ガッチリ固めなくて良かったと思っています。二階には大きなフリースペースを残してあるんですけど、広く使えて最適。子供が個室を欲しがるまでは、区切らないつもりです。リビングのソファは何度も置きかえて、最近やっと外を眺めるこの配置で落ち着きました。テレビへ向けたりもしたけど、窓からの見晴らしの方が気持ちよくて。こんな時間を過ごせるのは、この土地とこの家ならではかな、と思っています。一ヶ月前に、二階のフリースペースをキッズルームにしました。子供も少し大きくなったのでオモチャなんかを上へ移動して、一階が随分スッキリ片付きました。休日の工作でいろいろ作ったり、部屋ごとの過ごし方も変えてみたり……思いつくまま自由に暮らしてます。
遊びに来た友達に「アレはどこの?」ってインテリアや照明を聞かれると「あの時あそこで…」と思い出が蘇ります。造りつけの家具の打ち合わせ、照明とか洗面所のタイル選び……今までのいろんな事が、家のあちこちにいっぱい詰まっています。

 

工事の進捗と天気にドキドキ

「家ってこんなふうに出来てくるんや…!」って、工事中は進捗が楽しみでした。待ち遠しいだけに、丁寧な工事の進みがゆっくりに感じられるんですよね(笑)。雨が降ったら気になって気になって夜も眠れず、棟上後の嵐の時には思わず「大丈夫でしょうか」って相談までしてしまいました(笑)。棟が上がってから一緒に屋根へ上がらせてもらったのは、一生に一度の事。強烈に印象に残ってます。

この辺りの地域のおじいちゃん達が私達より更に足繁く現場を見守ってくれていて、口々に「立派な基礎やなぁ」「木ぃも、しっかりしてる」と言ってくれたのも嬉しかったです。

 

閉めきっていても爽やか

窓を全部閉めても、ぬくもりは逃げないのに息苦しくないんです。花粉と梅雨の時期には、閉めきった家の中で洗濯物が爽やかに乾きます。

出産の冬に東北の実家から手伝いに来てくれた私(奥さん)の母は、体の節々がずっと痛かったんです。それが「この家へ来て痛いって思ったことない!」って喜んでいました。木だからかなぁ。底冷えしないからかな。でも実家へ帰ったらやっぱり痛かったらしく、まぁ孫の可愛さもあるかもですが(笑)。「家があったかいって、いいんだねぇ」って電話でしみじみと話しました。
(インタビュアー:中村祐子)

 

建物データ
所在
和歌山県和歌山市
竣工
平成27年6月
構造・規模
木造2階建 / 民家型構法
主要用途
専用住宅
敷地面積
458㎡(138坪)
建築面積
86㎡(26坪)
延床面積
114㎡(35坪)
床面積
1階 / 68㎡(21坪) 2階 / 46㎡(14坪)