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私たちの仕事
Works

大きなガラス窓の家

建物解説


 

 海外生活経験を持つ住まい手から、のびのび・広々とした住まいが欲しい・・・とご希望を頂いた。なんでも、東アジアの方では100坪の家にメイドさんがいて・・・みたいな生活が海外赴任者には普通らしい。日本では実感のない話だが、幸いにも敷地の近くには山も畑も池もある。自然豊かな地の利を活かし、それらを借景にして、大きなガラス窓を通じて屋内と屋外に一体感を持たせ、床面積以上の広さを感じながらのびのびと暮らせる住まいを計画した。構造材は紀州材。3・4・6メートルの山の玉切り寸法を基準としたものを使う。町と山の連携がうまくいかないと山の環境にも貢献できないし建物も経済的にはならない。木材は厚く・太く・大きいものを使い、吸・放湿性等の特質が存分に生きるよう室内にあらわし仕上げとした。この方が耐久性にも有利だ。1.5メートルを超える長い軒の出で太陽光を充分に制御し、大きな開口部でしっかりと風の通り道を確保する。使用した材料は木、土、石、紙などの自然素材。床、壁、天井はいずれも外断熱の通気工法になっている。(中村伸吾)

 

住まい手インタビュー


想いを描いたイランでの3年

 新築前の3年間を、仕事で渡ったイランで過ごしました。ハウスメーカーや工務店…行ける展示場は、渡航前にほぼ見て回ったんですがピンとくるものがなく、検討材料はできたから「ちょっと3年間考えてこようか」と宿題をもって中東へ。間には2回帰国しました。すると、日本の夏って不快度指数が高い…それまでこれが普通だったんですが、イランでは気温45度でもものすごくサラッと健やかに過ごせるんです。それに、全館冷房・全館暖房の文化なので家中くまなく快適です。帰国する頃には、夏も冬もサラッと気持ち良く過ごせるのがいいね。家のどこにいても快適なのがいい。と、話すようになりました。ポイント限定の暖房や照明で、そこだけ暖かく明るいんだけど、一歩離れると、寒い。暗い。というのが、僕らが経験してきた地元の家のイメージにありました。四六時中の照明より、日の光で満ちる明るい家。湿気が自然に調整されて、いつどこにいてもリラックスして過ごせる暮らし…そんなイメージを思い描くようになりました。

 

希望を形に

 中村さんに辿りついたのは、イランから帰ってきてからでした。実は僕(ご主人)の父も中村さんに設計していただいていて。でも、中村設計さんだとは知らずに、木の家工房モークへ入ったんです。そこで「あっ。もしかして、ここは実家を建ててもらった所かな?」と思ったのが出会いでした。空気が爽やかで「こんな家がいいね」と、すぐ夫婦で心が決まって、お世話になる運びに。 ファーストプランがこの大きなガラス窓の家で、「こうしたい。」という抽象的な僕たちの願いを具体的な形によく汲んでくださっていました。夫婦の趣味が読書なので4000冊は収まる本棚がほしかった。足触りの良い石を貼ったお風呂。あとは、冬の全館暖房を支える熱源の薪ストーブ。そして、広々としたリビング。この辺りが僕らから特にお願いした所で、そのほかはお任せしました。

 

リビングと寝室のまとまり

 1階はワンフロアのLDKです。リビングでいろんなことが事足りるのはすごく良いですね!キッチンがあり食事をしてテレビも見て、洗面やトイレ・お風呂も近く、生活の全てがリビングに集約されてる。便利です。これだけ開放的だとインターネットの無線通信も飛びやすいですし(笑)。2階の生活の中心は寝室です。我が家は全空間がゆるやかに繋がり合っていて、薪ストーブの暖気がうまいこと対流し、池を渡る涼しい風もよく通ります。だけど寝室だけは、夫婦の眠りにつく時間が違うこともあって、完全な個室になっています。本棚が近いのは良かった。いつも何冊か平行して本を読むので、枕元にも数冊置いてあります。布団は寝室つきのデッキへ直に干せます。4畳ほどのクローゼットがひっついてあり、着替えの服 もすぐ取り出せます。着替える時は寝室の窓だけカーテンを下ろせばいい。オープンな住まいのプライベートがコンパクトにまとまっています。

 

大きなガラス窓との暮らし

 東南が180度のパノラマで開けているのは気持ちがのびのびします。景色は普段からそこにあって、住めば住むほど慣れてしまうものだけど、だからこそ良い風景を眺めて過ごしたい…。すぐそこの自家菜園の実りを見守るのも楽しみです。ガラス窓だからと、何か気兼ねすることはありませんね。のどかな土地柄で、僕らも基本的には気にならないので、ほぼ開けっ放しの生活です。夜はザーっと1階のカーテンだけ下ろします。2階のカーテンは、寝室以外は、日中仕事する時に書斎で手元が眩しい場合だけ部分的に下ろすくらいかな。雨戸はないです。もともと必要なのって限られた機会な気もします。不自由はありません。陽ざしの具合はすごい!軒の出が深く、夏のキツイ日が全然入らないんです。でも冬には燦々と陽だまりができます!秋の朝の今でさえこれだけの陽がさします。小雨なら多少窓を開けていても平気です。降り込んだのは台風の時くらいでした。

 

 

内・外の多様なアクセスが便利

 うちは風呂場へ外から入れるんですよね。畑仕事帰りや泳ぎに行った後は、部屋内を通らず直に出入りして、土の物や水物なんかを自分の体ごと、ぽーんと洗ってしまいます。裏の池に面したデッキから、釣りをすることもあります。僕は理科の教師なので、子供達の解剖用に毎年80匹ほどのブラックバスを用立てます。薪ストーブから近いので下は薪置き場です。キッチン横には勝手口があり、出るとすぐ畑です。収穫の行き来にはここが活躍します。南面のデッキでは、暖かい時期にバーベキューもしました。

 

室内はいつも、爽やか

 僕は家では夏も冬もこの格好です。Tシャツ1枚。年間通して、イヤな暑さや寒さが全くありません。夏は涼しくて、ムシムシしない。薪ストーブを焚く冬はゆったり暖かい。家の中はいつもさっぱりしてます。木や天然素材のおかげか、調湿作用というんでしょうか。それをすごく実感しています。

(インタビュアー:中村祐子)

 

建物データ
所在
和歌山県海南市
竣工
平成25年1月
構造・規模
木造2階建 / 民家型構法
主要用途
専用住宅
敷地面積
411㎡(124坪)
建築面積
134㎡(40坪)
延床面積
179㎡(54坪)
床面積
1階 / 118㎡(35坪) 2階 / 61㎡(18坪)