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『珪藻土は加湿器や除湿機の代わりになり得るか。』を検証
前回の記事で珪藻土は非常に孔が多い、超多孔質材料であることをお伝えしました。
今回は、その超多孔質性がもたらす、珪藻土の吸放湿性能について掘り下げていきたいと思います。
『珪藻土は加湿器や除湿機の代わりになるか。』問題
珪藻土を販売するメーカーの実験動画でも吸放湿性がピックアップされるほど、吸放湿性は珪藻土の代表的な特徴です。
動画をみて、なんとなくと珪藻土は吸放湿性に優れた材料であることはわかります。
しかし、どのくらい吸放湿性があるのか、、という点については一般の人にはいまいち分かりづらいのではないでしょうか。(そもそも単位がわかりづらい)
いち消費者として知りたいのは、『詰まるところ珪藻土は加湿器や除湿機の代わりとなるのか』といったことだったりします。
今回は『珪藻土は加湿器や除湿機の代わりとなるか』という点について、各種データを用いて検証していきたいと思います。
加湿器や除湿機の性能
木造8帖間に必要となる加湿能力
まず、加湿器の加湿性能を確認してみます。
性能基準は各社それぞれの設定がありますが、今回は第三者的立場である価格ドットコムのデータを参照します。
(価格.comより引用)
木造8帖の部屋にぴったりの容量のモノがありませんが、8.5帖間に必要な加湿器の能力を代用して、木造 8帖に必要な加湿能力は500(mL/h)と設定します。
大体、1時間に500mlのペットボトル1本の加湿能力が必要ということです。
比較するために単位を24時間あたりの単位に変更しておきます。
500×24=12000(mL/24h)
12000mL=12Lですので、木造 8帖に必要な加湿能力は12(L/24h)ということになります。
つまり、12(L/24h)の加湿能力は24時間あたり12Lの水分を加湿する能力といえます。
木造8帖間に必要となる除湿能力
次に、除湿機の除湿性能も確認していきます。
こちらも価格ドットコムのデータを参照します。
(価格.comより引用)
データから、木造住宅 8帖間に必要な除湿機の除湿能力は6.3(L/24h)と設定します。
こちらも単位はL/24hなので、6.3(L/24h)の除湿能力は24時間あたり6.3Lの水分を除湿する能力といえます。
珪藻土の吸放湿性能
つぎに、珪藻土の吸放湿性能をみていきます。
珪藻土の吸放湿性能を評価するにあたって、まずは、その評価方法から確認していきます。
吸放湿性能の定義
珪藻土の仕上げ材としての吸放湿性能は、JIS規格におけるJIS A6909という吸放湿試験によって評価することになっています。
(詳しくはこちらのJISのページをご覧下さい。)
この試験の概要をかなりかいつまむと、
温度(23±2℃),湿度 (90±5) %
温度(23±2℃),湿度 (45±5) %
という2つの湿度の違う環境を行き来させて、建材の質量の変化を測定し、建材の吸放湿性能を評価します。
JISではこの試験を行い、70(g/m2/24h)以上の吸放湿性を持つ建材が調湿建材と定義しています。
つまり、24時間、1㎡あたり70g以上の水分を出し入れする能力のある建材を吸放湿性に優れる建材としています。
シルタッチ(四国化成)の場合
まず、実験データが公表されている商品として、四国化成の『シルタッチ』を見ていきます。
(四国化成『シルタッチ』より引用)
実験結果から、シルタッチの吸放湿性能は125.7(g/m2/24h)。
つまり、24時間、1㎡の珪藻土で125gの空気中の水分を出し入れする能力を持っています。
JISが調湿建材として定義する70(g/m2/24h)に対して、125.7(g/m2/24h)と約1.8倍の吸放湿性能を有しています。
前回の記事から、開口部を設けた8帖間の壁の総面積は28.42㎡。
よって、24時間で吸湿することができる水分量は
28.42×125.7=3572(g/24h)
水は1Lで1kgですので、単位を変えると3.57(L/24h)ということになります。
つまり、8帖間に珪藻土を塗り、珪藻土が吸湿を行う条件下であれば 3.57(L)の水分を24時間で吸湿するということです。(500mlペットボトル7本分)
木造住宅 8帖間に必要な加湿及び除湿能力はそれぞれ加湿:12(L/24h)、除湿:6.3(L/24h)なので
加湿能力比:3.57/12=0.30
除湿能力比:3.57/6.3=0.57
条件が整えば、加湿器の30%、除湿機の57%の能力を発揮するということになります。
稚内珪藻土『大地の息吹』の場合
もうひとつ、稚内珪藻土を使用した商品である『大地の息吹』という商品を見てみます。
『大地の息吹』の実験データはこちら
実験結果から、『大地の息吹』の吸放湿性能は200(g/m2/24h)。
調湿性能はJIS基準の約2.9倍。
よって、24時間で吸湿することができる水分量は
28.42×200=5684(g/24h)
8帖間に珪藻土を塗り、珪藻土が吸湿を行う条件下であれば 5.68(l)の水分を24時間で吸湿するということです。(500mlペットボトル11本分)
木造住宅 8帖間に必要な加湿及び除湿能力はそれぞれ加湿:12(L/24h)、除湿:6.3(L/24h)なので
加湿能力比:5.68/12=0.47
除湿能力比:5.68/6.3=0.90
こちらは加湿器の47%、除湿機の90%の能力を発揮するという結果となりました。
珪藻土は品によっては除湿機と同等、加湿器の半分程度の威力を発揮する
今回の結果から、珪藻土は吸放湿性能に優れ、条件が整えば加湿器の30~47%、除湿機の57~90%の能力を発揮することが分かりました。
思っていたよりもかなり上を行く結果に少し驚いていますが、珪藻土のパワーちょっとすごすぎました。
除湿機が空気中の水分から水をかき集める(珪藻土も条件は同じ)、加湿器はあらかじめ水をタンクに準備してから強制的に空気中に散布する(珪藻土も内部に水分を保持するが、加湿器ほどまとまっていない。かつ、空気中への散布能力は劣る。)というところで、差がついたような気がしますが、上々の結果と言って良いでしょう。
しかし、少し注意しておく点もあります。
それは珪藻土の吸放湿性能が発揮される湿度について、、です。
珪藻土の調湿性能は湿度70%以上になると吸湿し、湿度40%以下になると放湿するといわれていますので、加湿器や除湿機と違い『どんな環境下でも能力を発揮する。(吸放湿を行う。)』という訳ではありません。
つまり、正確に言えば、『珪藻土を塗っておけば条件が整えば除湿機に匹敵する能力を発揮する。』ということになるでしょう。
人間が快適であると感じる湿度は40~70%と言われていますので、その範囲に自動的に調整してくれると考えれば、加湿器や除湿機といった機械的な手段に加えて、選択肢に入れてみてもよいかもしれません。