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木の家と紀州材。

木の家は木で造られるわけですから、どんな木で造るかは構造的にも意匠的にも重要なことです。中村設計が使っているのは龍神産の紀州材です。

和歌山の設計事務所だから紀州材を使っているわけではありません。もちろん地産地消であることや、CO2の排出量に直結するウッドマイルズという考え方などは選択の要素ではありますが、それ以上に、紀州材の採用が住まい手の利益に資する賢い選択であると思うからです。

元々、樽材としての需要に応じて育てられたり、船づくりの材料として育てられたりした他産地の木材とは異なり、数百年も前から建築用材として育まれてきた紀州材は、建築用材として大切ないくつかの特性を持っています。

・淡いピンクの色味で、艶が良い。
ひとくちに桧材・杉材といっても色艶は産地によって異なります。紀州材には他産地に多い黒味や極端な赤味が少なく、優しく淡いピンクの赤味を持ち、経年変化とともに艶が出てくるので、あらわしで木を使う建物にはとても適した木材だといえます。

・目込み(年輪の間隔が細かい)で、真っ直ぐな木が多い。
樽材は水を漏らさないために極端な目込み材が好まれます。船の材料は継ぎ目のないことが肝要ですから、目込みでなくとも大径に育った木が重宝されます。現在は建築用材として出荷されていても、木材需要に応じた造林習慣は今も各地の木材の特徴として残っています。
前者の代表格であるのが吉野材、後者の代表格であるのが四国・九州の材です。紀州材は当初から建築用材として育てられたため、建築用材に最適化された目込みで、まっすぐに伸びた素直で狂いの少ない木が多いのが特徴です。

・強度に優れている。
木の粘り強さを表すヤング係数を指標として紀州桧・杉と一般的な桧・杉を比べてみます。
紀州桧の91.5%が該当するE110以上の曲げヤング係数を有する桧材の各性能を全国基準値の一般的な桧と比較すると、圧縮で約1.5倍、引張で約1.4倍、曲げでも約1.4倍の強度を示します。

同じように、紀州杉の71.6%が該当するE90以上の曲げヤング係数を有する杉材の各性能を全国基準の一般的な杉と比較すると、圧縮で約1.6倍、引張で約1.5倍、曲げで約1.6倍の強度を示します。古来より、粘り強いと定評のあった紀州の桧・杉材の各性能(特性)は実験結果によっても裏付けられます。

・天然乾燥で使う。
紀州材としての特性は上記に示した通りですが、中村設計の採用する木にはもう一つ、天然乾燥で使う・・・という特徴があります。天然乾燥材は今や特殊で、全国でも1%ほどしか採用されていません。

天然乾燥には人工乾燥とは比べることができないほどの時間がかかります。しかし、紀州材本来の色味や香りを残し、伝統工法をはじめとする木の家独特の仕口・継ぎ手に適した粘り強さを有する天然乾燥材は、木の家の魅力をさらに引き出してくれます。