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思いをつなぐ Ⅱ。

建築中の建て主から、慌てた様子のお電話をいただきました。いわく、撤去予定建物の中にある古い建具類は出来るだけ使ってください・・・とは言いましたが、現実に新しい建物に入ってみると何だか色も黒くて・・・なんか違和感ないですか・・・とのこと。私としてはそれなりに勝算があって、吟味を重ねて採用した建具類ですから、そんなはずは・・・と思いながらも、分かりました、現場で確認します・・・とお返事しました。
ドキドキしながら現場を訪ねたところ、写真のような仕上がり・・・これ、良いじゃないですか。新しい建具ではこんな味は出ません。100年を超える年月を経たからこそ醸し出される存在感・・・これは良い!ガラスなどは割れる度に都度調達できるものを入れたのでしょう、一つ一つ模様が微妙に違います・・・でも、だから歴史の刻みが分かるのです。写真のヶ所以外にも、ほとんどの木製建具は古い建物からの流用品です。ノビノビとした平屋、おおらかにつながる拡がり間取りのお家に懐かしの建具類・・・私はこの風情が好きだなあ~・・・と感想を言っている間にすっかり納得していただいた様子。
誰かがこの住まいを訪れたときに、何故木製建具だけ古いの・・・と質問することもあるでしょう。実はこの建具類、撤去した母屋から持ってきたの・・・昔の建物を懐かしむ何気ない会話からもご家族の物語は紡がれていくことでしょう。