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“ 断熱 ”とは、どんな性能か?

「木の家はあたたかい」とよく聞きますが、「家があたたかい」って、具体的にはどういうことなんでしょう。
冬は家のあたたかさが身に沁みて実感できる季節。
「あたたかい家」をつくるコツとは・・・・・・? かんがえてみましょう!

 

「あたたかい」住まいとは。


“ 断熱 ” と “ 発熱 ” は、ちがう。

充分な断熱と、充分な熱源はセットで揃えましょう。

“ 断熱 ”とは、断熱材を真ん中にして、あちらの温度をこちらへ伝えない。こちらの温度をあちらへ伝えない。
文字通り、熱の伝わりを断つことを意味しています。
ある空間を断熱材でくるりと包むと……クーラーボックスや魔法瓶のような状態となり、外がどんなに暑くても寒くても、中の温度は長いあいだ一定に保たれます。
屋根・壁・床……といった外回りをぐるりとしっかり断熱すれば、外の温度変化は部屋内へ伝わりづらくなり、中でかける冷暖房を室内にがっちり保温してくれます。

雪もちらつく2月3月……見学会を開催すると、「寒かったです。木の家はあたたかいと思っていました…」というご感想をいただくことがあります。
素材ごとの断熱性能を元に、数値上の検討も行いながら仕様を決定する住まいでは、地域環境に適応した充分な断熱性能が確保できています。
ところが見学会というのは、建て主さんのご自宅をお住まいになる前に公開していただく催しであるという性質上、暖房器具などの運転がない状況で行われます。
意外と盲点になりがちなのが「“ 断熱 ” は、“ 発熱 ”とは異なる」というポイントです。
空のクーラーボックスや魔法瓶は、常温よりあたたかくも寒くもありません。
ほかほかのスープや氷が入って、はじめて中の環境がきまります。望む温度をキープするためには、それに足りる充分な熱量のあたたかいもの、冷たいものを中に入れるコトが不可欠です。一度、理想的な温度環境さえ整えてしまえば、あとは断熱材がそれをキープしてくれます。

住まいの場合も同じです。
特に冬場にあたたかい家を建てるには、断熱性能が充分なことに加えて、空間の容量と状況に似合うだけの充分な熱源を用意することが大切です。
あたたかさへの備えは、「断熱性能」と「熱源」この2つの両輪で成り立ちます。

 

木の家の“ あたたかさ ” とは?

木、自体の断熱性能と熱伝導率。

木は、繊維や細胞壁の隙間にたくさんの空気を含んでおり、断熱性能が高く、熱伝導率の低い素材です。
そのため冬場には、素材の厚み分が有効な断熱層としても機能し、外の冷気を遮ることができます。

また家という建築物の特徴として、床や壁などに肌が触れあう機会が多い点においては、熱伝導率の低さも「あたたかみ」につながる有利な特徴です。
鉄や、コンクリートやガラス・・・・・触った時に「冷たい」と感じやすいものを思い浮かべてみてください。
すべて、熱伝導率の高い素材=熱の移動のしやすい素材です。
人は触れあった時に自らの体温が奪われるスピードの早いものほど、より「冷たい」と認識し、実際生理的にも大きく影響を受けます。

木の家の“ あたたかさ ”とは、「体温が奪われないこと」ともいいかえられます。
それは、踏みしめた床板の自然なぬくもり、底冷えしない優しさのことです。
外部の過度な影響を人体へ伝えず、体温を奪わないという特性から、室内環境と人の健康の維持の心強い味方となります。

 

外断熱は、健康にいい?

快適で健康的な暮らしのポイントは、温度差のない家づくり

ヒートショックという言葉を、近年よく耳にするようになりました。
温度差の激しい場所を行き来した時、血圧が上下に大きく変動するなどし、体に大きな負担がかかる現象をいいます。激しい場合では、脳梗塞や心筋梗塞などにも至ることもままあり、死者数は年間で1万人を優に超えると言われています。
警察庁から発表されている日本の2017年中交通事故による死者数は3,694人です。
3倍以上のリスク・・・・・・単純にこの2つの数字だけを比べるなら、外へ出かけるより家の中にいる方が危険だということになります。

寒冷地を除き、日本の家庭では長い間、火鉢やコタツが愛用され、居る場所だけをピンポイントであたためる局所暖房が一般的でした。
部屋ごとに断熱を施し、居る部屋だけをピンポイントで冷暖房する方が効率がいいという考え方も根強くあります。
しかし暮らす家族の健康には、断熱・冷暖房は部屋ごとではなく、家中を一つの空間として考え、均一な温熱環境で整えることが重要です。

近年は、日本でも全館暖房の考え方が広まりました。
中村伸吾建築設計室・木の家工房Mo-kuの木の家では、断熱は住まい全体をぐるりと包み込む外断熱です。
家中どこにいてもだいたい同じ温度で体への負担も少なく、のびのびと暮らせる環境を整えます。

家全体の大きな空間をなんとかしようと思うと、小さな部屋ごとで個別にあたためたり冷ましたりするよりも、冷暖房の初期に必要なエネルギーは大きくなります。
ですが、充分な外断熱の住まいで一度理想的な環境さえ整えてしまえば、その後のランニングコストはかなりおさえられます。
充分な“ 断熱 ”と“ 熱源 ”に加え、“ 蓄熱性能(一度うみだした熱を石焼きビビンバの器やアイスノンのように蓄える性能) ”も、計画的に備えることも大事なポイントです。
中村伸吾建築設計室で、木と共に活躍する調湿機能をもった素材たち。塗り壁の土など適切に水分を含むことのできる天然の素材たちは、この蓄熱の性能に優れていることが多く、実は蓄熱は、無垢の木の家の得意な分野です。
ほんわか自然なあたたかさの中で、肩の力をぬいてくつろぎの時間を過ごしましょう。

また、家づくり全体で見通すと、窓の配置や大きさ・種類、軒の出の長さ、建物の向き、間取り・・・など、総合的な要素が住まい心地に与える影響も多大です。
寒い時期の太陽はたっぷり住まいの奥深くまで招き入れ、暑い時期の刺激的な日差しは可能な限り遮る工夫。夏場の風通しと、冬場の暖気の巡りへの配慮。
建物の性能というハードの面、適切な暮らしの工夫というソフト面、両方からのアプローチで、住環境を総合的にデザインしていきましょう。