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木の家工房Mo-ku WEB内覧会 中2階ギャラリー

木の家工房Mo-Kuは木・土・石・紙といった自然素材で造る木の家の設計、築100年を超える古民家の再生・リノベーションの仕事を得意とする中村伸吾建築設計室の、木の家を体感していただくためのギャラリーです。木の家工房Mo-kuは大きく分けて、車庫部分、1階土間ギャラリー部分、中2階ギャラリー部分、2階ダイニングキッチン・タタミ間部分と、1・2階合わせて4つの空間で構成されています。外観や車庫、1階土間ギャラリーはこれまでにご紹介してきましたので、今回は中2階のギャラリー部分をご紹介しましょう。

・中2階ギャラリー
一般の住宅であれば、1階の土間ギャラリーをお客様を迎えて談笑したり、広く趣味の部屋として利用したりする空間とした場合、一番広い中2階のギャラリー部分はLDKとして使われるような性質の空間です。天井部分には太い丸太梁が通っていて、屋根を構成する梁や野地板などの構造物がそのまま化粧として室内空間にあらわれている様子は木の家(住宅)そのものです。一番奥に設置した書棚を食器棚と見立てて、その前の机が並んでいるあたりにキッチンセットを据えて、その手前にテレビやソファを置いて居間として使用してもさしたる違和感はないでしょう。

しかし、木の家工房Mo-kuでは(そもそもmo-kuは住宅ではなくギャラリーなので)この空間を中2階ギャラリーとして、打合せや事務のスペースとして利用しています。床にはキッチンセットやソファーなどの代わりに事務机が置かれ、壁には一面の書類棚。ここには建築関係書物の他に、作品集やカタログ類、建材サンプルなども納まっています。手前の机ではミーティングや打ち合わせなどを行います。
中2階ギャラリーの大きな特徴に、2階なのに掃き出し窓が採用出来ていることがあげられます。通常2階では1階の屋根があるため写真右側の窓のように腰窓を採用することが多くなります。しかし、腰窓では開放感が低く室内が狭く感じがち。そこで、窓の外側にベランダなどを用意して、できる限り掃き出し窓を付ける工夫をします。効果のほどは写真左右の窓の開放感を比べていただければ一目瞭然です。

 

・床材は赤松の縁甲板
床材は岡山産の無垢の赤松の縁甲板。目込みの材料を柾目取りした源平(赤みと白太が混じっている)の品物です。松は杉・桧と同じ針葉樹なので、足裏に優しく(適度に柔らかく)熱伝導も低いので冬場でも温かく暮らせる床材です。

スーパーローカルを標榜する中村設計ですので、床板も紀州産としたいのですが、実は紀州の山では松はすでに産出されず、杉や桧の構造材をたくさん産出しているのに、杉や桧の材料で床材を一般流通品として大量に制作している所がありません。もちろん依頼すれば作ってくれますが、都度の製作では商品としての安定感に不安が残ります。そこで、他産地の物で一般流通している物を採用するわけです。松材は岡山などの山陽・山陰の品物、又は信州の品物が多いです。

 

・床には床暖房を仕込む
この床には電気式の床暖房が仕込まれています。一昔前まで、電気代が大変だった床暖房とは違い、最近の物は30センチ幅ほどの薄いシートになっていて、施工性が良い上に電気代も良く抑えられています。土間ギャラリーは、冬場スイッチが入りっぱなで建物全体の暖房に一役買う蓄熱式の床暖房ですが、中2階ギャラリーの床暖房は部屋を使うときだけ入り切りする電気式の床暖房と使い分けています。

 

・天井がなくて暑くないですか?
勾配天井の建物を造ると度々、天井がなくて暑くないですか?と聞かれます。屋根形状がそのまま天井としてあらわれているのを見ると、ひと昔前の断熱材が入っていない天井構造を連想して、経験上暑さのことが心配になるのでしょう。

しかし、この天井の守りは結構堅い。 天井のように見える杉板は杉三層パネル(Jパネル)36ミリ厚をそのまま化粧で使ったもの、その上には12ミリ厚の断熱ボード、さらに40ミリ厚の杉皮断熱材と続きます。つまり、断熱材も入っていない、ただの屋根野地あらわしに見える天井内には、杉三層パネル(Jパネル)と断熱ボードと断熱材で約90ミリの断熱層があるわけです。さらにその上には通気層があり、暖かくなった屋根の空気は適時排出されていく仕組みですから、真っ直ぐな天井がなくても暑くなる心配はありません。ただし、この程度の断熱層で快適な室内を造るためには、断熱層に併設するしっかりと機能する空気層が必要になりますのでご注意下さい。

 

・スキップフロアをつなぐ階段
土間ギャラリーと中2階ギャラリー、そして2階の各空間をつなぐのはスケルトンのストリップ階段です。
中2階のギャラリーから土間ギャラリー方向を見ると、スキップフロアになっている3つの空間をつなぐ階段の様子がよく見えます。構造をスケルトンにしているのは、折角の中2階方式の空間に連続性を持たせておきたかったからです。こうしておくと、お互いの空間から隣り合わせる空間が見えて一体感と連続性が高まり、建物全体でギャラリーとしての性格を主張しやすくなります。もちろん使い勝手に不具合はありません。

スケルトンの階段に合わせて、手すり壁なども設けず、手すりには茶室の垂木などに利用されるかいふ丸太を使っています。丸太ですから表面に凸凹がある上に、上と下の太さも変わってきますが、この方がきれいに成形された品物より木の家には似合っているように思います。上がりきったところの手すり壁も、壁のままで置くことなく本棚として利用します。どこのお宅にもある文庫本や漫画本などの収納にはうってつけの利用法としてオススメしています。

 

・木製家具・建具
木の家工房Mo-kuの木製建具・家具は、全て図面から起こして独自に製作した造り付けのものです。
最近の建物では効率を優先するあまり、合板などの芯材に木目のプリント柄のシートを貼り付けた枠一体型の既製品を採用することがほとんどです。しかし、それでは住まい心地や耐久性が劣るばかりでなく薬品臭などのリスクから逃れることが出来ません。木の家工房Mo-kuで採用している建具は、中まで100%無垢材の紀州桧・杉材で出来ています。

建具用の木材は、通常の大工が使う木材とは違って、節無しのきれいな木目の大判の材料であったり、年輪がきれいに縦に流れる柾目の材料であったりする特別なものが使われます。しかし、最近では既製品が使われることが多いので、建具屋といえどもそんな立派な材料を常備しているわけではありません。都度に仕入れると品物が安定しなかったり高額だったりします。そこで、木の家工房Mo-kuでは常時原木から材料を仕入れて、使い勝手による専用の製材をして天然乾燥で建具用材を用意している建具屋さんとの連携により、無垢の木材で建物ごとに必要に応じたデザインによる建具製作をしています。木の家工房Mo-kuは全体に古民家を意識した木使いになっていますので、枠を桧の柾目材で組み、中の落とし板に杉赤身の板目板を縦に使ったものを採用しています。
原木から材料を調達する強みを生かし、木製の家具類も使い勝手に応じて図面を製作し、取り置きの材料により世界に一つだけの家具を製作します。引き出しの中まで完全に無垢材で製作していますので、薬品臭のリスクにさらされることもありません。

 

・湯沸かし室
土間ギャラリーと中2階ギャラリーの真ん中には湯沸かし室があります。使い勝手に優れる本当の台所は2階にありますので、こちらは日常の事務作業をしているときや、土間ギャラリーにお見えになったお客様や、イベントなどの時にお茶出しをするための部屋です。ですから、それぞれのスペースの真ん中に配置して移動距離を少なくしました。

湯沸かし室のキッチンセットも木製の製作キッチンです。天板はステンレスで、引き出しや下部収納は使い勝手に応じた組立としました。流しの前と横の壁にはタイルを貼って、タフな使用にも音を上げない仕上げとなっています。 吊り戸棚は、使用感を優先して棚板のみを取り付けています。扉を付けると見た目はスッキリとしますが、時として使っていて扉が邪魔に感じることがあるので、この部屋は実用中心・・・という考え方からこのようなこしらえにしています。