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木材見学。
建築の話題

木材見学。

このところ急激に冷え込んで、途中道路が凍っているかもしれんで・・・と脅かされながら、先日は木材見学に龍神に行ってきました。住まい手さんと共に訪れたのは山本製材さん。天然乾燥の木材は欲しいからと言ってすぐに手に入るものではありません。そこで、山本製材さんに秋から冬にかけての切り旬に切り溜めたものを取り置きしてもらって天然乾燥で使っているのです。写っているのは山本社長、乾燥方法に工夫を凝らしながら木の家づくりの一翼を担ってくれています。
見せていただいたのはいずれも目込みの良材。天然乾燥独特のきれいなやさしい赤身、芯も材料の中心付近にあってあばれの少ない素直な木が多い。含水率も総じて優秀、桧・柱角で20%以下のもの、杉・梁材で30%前後のものがほとんどです。最近ではどんな品物もトレーサビリティが重視されますが、自分の住まいに使われる木が加工に廻る前に確認できるのは住まい手にとっても安心なことなのではないかと思います。
中には1年を超える乾燥期間を経てシルバーに色変わりしたような材料も混じっています。このぐらい置いていた方が乾燥も進み変形の心配も少なくてすみます。加工前にひと皮むくと見違えるような木肌が現れますから、ご心配なく。
そこかしこに端材が山積みになっています。聞いてみると、製材の過程でどうしても出てしまうものなのだとか。でもこれ、木工細工に色々と使えるのでは・・・燃してしまうだけだから、取りにさえ来ていただければ好きなだけ持って帰ってください・・・と山本社長も笑顔。足を伸ばすとお宝が転がっているものですね。
 
背割り部の処理は難しい。
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背割り部の処理は難しい。

建物は、雨の侵入の可能性のあるところや隙間風の来そうな所(美観上気になるところも)は、隙間を塞いだ上にコーキングなどで防水・防風の処理をします。サイディングや金属面などは比較的処置の安定するところですが、木部については注意を要します。理由のひとつは木部の接着力が弱いこと。もう一つは、木材が乾燥によって動く(開いたり閉じたりする)ことがあるからです。
新築時には充分に乾燥していたのに、後の湿気で思わぬところに影響が出たり、逆に新築時から乾燥が進んで木と木の間に隙間が出来たり・・・木は時々の状況で色々な表情を見せます。
私たちが日常的に直面するのは、芯持ち柱の背割り部分(写真の丸太柱の縦割れのひびみたいに見えるところが背割り)の処理。柱には背割りという切れ込みを計画的にいれます。そこに力が集中することで、思わぬ所に発生する割れを抑制するためです。しかし、結果として背割れ部分の開き具合は状況によって変化します。ですから、新築時からこの部分をきれいに塞ぐことは難しい・・・落ち着いてくるのは築後3年を過ぎたぐらいから。
木の家工房Mo-kuの場合、通し柱の背割りが問題でした。1階が駐車場、2階に事務所の構成ですから、1階から2階までつながっている背割り部分から風が進入したのです。すぐに詰めても問題解決につながらないことは経験的に分かっていますので、いったんは発泡ウレタン(市販スプレー)で塞いでおいて、今回の補修(築9年目)でやっとコーキング処理(完全に塞ぐ)しました。
 
木の家工房Mo-ku、補修作業が終わりました。
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木の家工房Mo-ku、補修作業が終わりました。

紀伊半島では、昨年秋の台風からすでに3か月ほども経つのに、いまだにブルーシートをかぶったままで復旧作業にかかれていないお宅がたくさんあります。和歌山市の当社ギャラリー、木の家工房Mo-kuもそのうちの一つでしたが、この度順番が回ってきてめでたく補修の段取となりました。
この際だからとコーキングと塗装も改修することにしましたので、足場は建物全体にかかりました。足場がかかってほぼ一月・・・忙しい職人が途切れ途切れの仕事となり、通常の2倍ほどの日数を経てやっとの出来上がりです。
まだ塗装のニオイは少し残っていますが、程なく室内は良い木の香りが戻ってくることだと思います。これまでどおり、火曜・水曜の定休日以外はだいたい開いています。第2と第4の日曜日にはMo-kuカフェと銘打って、無料の建築相談も受け付けています。そんな固いことでなくても、近くを通りかかったので見せてください・・・と寄っていただければ、美味しいコーヒーもお出しします・・・皆さんお気軽においで下さい。
ぐりんぐりん。
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ぐりんぐりん。

九州研修の最後の見学は福岡市のアイランドシティ中央公園中核施設ぐりんぐりん。
言わずとしれた建築界の巨人・伊東豊雄さんの傑作です。大きな人工池の畔、芝生の中にひっそりと・・・そんなたたずまいです。良く探さなければうっかり見過ごしてしまいそうな感じ・・・それもそのはず、この建物のコンセプトは、自然と建築との一体化。構造的には土木と建築の融合・・・なのだそうです。
大きなコンクリートの板を用意して、それをぐりんぐりん・・・と2回ねじって造ったような基本構造。どこまでが屋根で、どこが壁で、どこが柱で・・・なんて区別はありません。
3つのコンクリート構造物の隙間(通常の屋内に当たる部分)はそれぞれ、オープン広場・熱帯植物園・ワークショップルームとして使われています。屋内の遊歩道を歩いていると、自然と屋外に出てしまって・・・また屋内に戻って・・・みたいな、中と外の曖昧な空間が続く不思議な感覚の施設です。それこそが自然と一体・・・という施設のコンセプトに合っている現象なのでしょう。今ひとつインパクトが足りないように感じるのは、規模があまり大きくないことと、用途が地味なためでしょうか。
こんな建物どこかで見たことあるなあ~・・・と思って考えていたら・・・そう、これは丘をくりぬいて住まいを造るホビットと同じ考え方の建物です。自然と共存・けっして環境に負荷はかけず、慎ましやかに生きる・・・私たちが忘れてしまった生き方を具現化する建物です。パッと見て華やかでないのは、むしろ狙ったところなのかもしれません。
鯨組主中尾家屋敷。
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鯨組主中尾家屋敷。

3日目の最初の訪問は唐津市呼子の鯨組主中尾家屋敷です。
江戸時代の中期から8代・170年にわたって鯨捕りで巨万の富を築いた中尾家。多い時には年間50頭の捕鯨、最盛期には1,000人にも及んだという従業員たちを束ねていたのが中尾家。その中心になった建物がこちらです。
入ってみると案外に質素な造り。旧高取家が建築技術や芸術の粋を尽くした緻密な造りであるのとは裏腹に、木材を太く大きくそのままに使い、骨太で分かり易い表現で出来上がっています。私はこちらの方が好みかなあ~・・・。
大黒柱は30センチを超える太さ、松梁はあまり加工されず曲がったままに適材適所に使い分けされています。癖の強い曲がりの多い松材を見事に組み上げて、今に至るまで狂いひとつない仕事には、当時の大工職の技術力の高さと心意気を感じます。旧高取家は住宅・迎賓館という使用用途。こちらは荒くれ鯨漁師の総元締めの屋敷・・・同じ木造建築でも、要求される内容が違えば表現も出来映えも違ってきます。同じ唐津市内にあって好対照であろうと思います。
旧唐津銀行本店。
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旧唐津銀行本店。

夕食前、最後に駆け込んだのが旧唐津銀行本店です。
この建物も佐賀県指定の重要文化財となっています。設計は辰野金吾・・・でも実務のほとんどは弟子の田中さんだとガイドさんが教えてくれました。九州に残る明治初期のこの手の建物はほとんどが辰野金吾かその関係者の設計です。日本の宝・九州の宝である辰野金吾は唐津の出身・・・この事実は唐津の人には大いなる誇りで、九州や日本にはとられたくない(?)ようでした。辰野自身もふるさとにこのような建物を残せたことを嬉しく思っていたことでしょう。
驚くことに、ほんの二十年前までこの建物は現役の銀行として使われていたそうです。1階の窓口フロアーは、客室と執務室が良くデザインされた鉄格子で区切られ・・・ん、この鉄格子の様子どこかで見たことがあるぞ~・・・そうだ、ハリーポッターが何かを探しに行った銀行の意匠と同じなんだ。格子の向こうには慇懃無礼な顔をしたゴブリンが据わっていて・・・映画の一場面が浮かんでくるほどによく似た光景・・・当時の日本人は、西洋の文化を本気で真摯に学んで、今の日本の礎を造ってくれたのですね。そんな建物を大事に大事に使って保存するばかりでなく、これからに役立てようとする・・・この地の人々はやはり立派です。
埋門ノ館(うずめもんのやかた)。
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埋門ノ館(うずめもんのやかた)。

旧高取邸に向かう道すがらに位置するのが埋門ノ館です。
構えといい風情といい、てっきり歴史的な建造物かと思いきやさにあらず。唐津市が、地域の職人の間からしっかりとした木造建築を造る技術の継承が出来なくなるのはさみしい・・・として建築を決めた、公民館のような用途のれっきとした新築建物らしいです。エライ!その心意気や良し!公共というのはこのぐらいの知見と気迫がなければ市民を導けない。たとえ少しぐらい金が掛かっても、それを許す住民もたいしたものです。
すぐ近くの高取邸などと比べると、木の吟味が足りませんし技も切れていません。板戸絵などもどこか偽物感が漂います。能舞台下に仕込んだという6つの坪の音響効果も今ひとつ判然としません・・・しかし、何もしないで手をこまねいているばかりでは、いつまで経っても差は縮まりません。自分たちの手で次の世代に受け継げる建築物を造っていこうと挑戦している方々には、その栄光を手にする資格があります。
ここにもちゃんとしたガイドさんが居ました。市の職員待遇の学芸員さんらしいです。歴史建造物をしっかりと残して、市民の教養の醸成に資する。あるいは観光資産として活用する。そのための経費は必要経費である・・・このぐらいの活動をどこの市町村でもして欲しいものです。
旧高取邸。
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旧高取邸。

唐津に入って最初に尋ねたのが旧高取邸です。
ここは炭鉱王と言われた高取伊好が自宅兼迎賓のために建てた住宅です。純粋和風だけではなく洋間や暖炉なども併せ持つ興味深い建物です。よほど能が好きだったらしく、建物内には立派な能舞台が設えられています。本番には演者や奏者のスペースが、普段の間取りを変更してあらわれるように工夫されていて、見事な杉戸絵や欄間細工と共に住宅の内部に存在するとは思えないほどに本格的なものです。能舞台の下には地面をすり鉢状にして音響効果を増幅させる工夫もあるようで、かしわ手ひとつがビシーン・・・と、あたりに響き渡ります。客間や庭ばかりでなく、至る所に職人技が尽くされていてどこを見ても飽きることがありません。特に2階からの眺望は絶景で、大きく開かれたガラス窓が開放感を際立たせます。
ガイドの方も親切で、当時の暮らしぶりや建物の使われ方各所の工夫など丁寧に説明してくれます。ただ見て回るのとガイドの方に付いていただくのでは理解に雲泥の差が出ます。時間に余裕のある限りガイドの方にはご足労願いたいものです。
博多・糸島の酒蔵、杉能舎。
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博多・糸島の酒蔵、杉能舎。

福岡市内を見て回った後に向かったのは唐津。その途中で杉能舎に立ち寄りました。
ここは140年も続く酒蔵ですが、初代の濱地新九郎さんが芸事好きで、とうとう自分の酒蔵の一部に杉で能舞台を造ってしまったのだそうです。杉の能舞台のある建物(舎)・・・で杉能舎と呼ばれているわけです。もちろん素晴らしい日本酒と共に、こだわりの地ビール、酒粕や酵母を使った数々のパン・料理も有名です。
公開されているのは能舞台のある古い酒蔵部分。丸みを持ったままの梁が大胆に掛け渡されていて、その迫力を見ているだけでも楽しいものです。柱は当然石場建て。太い骨組みが地面には繋がれておらず、現在の建築基準法では建てるのが難しい構法です。それが140年も立派に建っている様を見ていると、これを容認しない建築基準法に一抹の疑問も感じます。どうして日本の伝統建築に真っ直ぐ取り組まないで、他所の国から持ってきた理屈にばかり寄り添うのでしょう。堂々と時を刻む日本の建物を見る度に、現在の制度に対する不満がふつふつと湧いてきます・・・なんとかしたいものです。
 
ボンドくんの映画で爆破されそうな水上レストラン。
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ボンドくんの映画で爆破されそうな水上レストラン。

赤煉瓦文化館からアクロス福岡までの道すがらで見つけたのがこの水上(に浮かんでいるように見える)レストラン。桟橋の先に突き出るようにガラスのレストラン(たぶん)が建っています。中には入りませんでしたが屋上には上りました。鉄骨の建物の最上階の床はコンクリートで出来ていて、その上が擬木でデッキ風に仕上っています。私たちが行った時には、すでに一人が寝転んでパソコンを開いていました。個人の所有物(これもたぶん)なのに、当たり前のように市民に開放しているのがすごいところです。
このレストラン・・・何だかボンドくんの映画に出てくる悪者に爆破されそうな気がしませんか。遙か向こうからモーターボートがエライスピードでやって来たと思ったら、通りざまに爆弾が放り込まれて・・・ドカン!うわー・・・なんてことだ!逃げ惑う人々・・・走り去るモーターボート・・・こんな光景が目に浮かびそうです。いえ・・・そんな光景が目に浮かびそうなほどに絵になる建物だと言うことです。川面に近い建物群が独特の雰囲気を持つ地区です。