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旧唐津銀行本店。
建築の話題

旧唐津銀行本店。

夕食前、最後に駆け込んだのが旧唐津銀行本店です。
この建物も佐賀県指定の重要文化財となっています。設計は辰野金吾・・・でも実務のほとんどは弟子の田中さんだとガイドさんが教えてくれました。九州に残る明治初期のこの手の建物はほとんどが辰野金吾かその関係者の設計です。日本の宝・九州の宝である辰野金吾は唐津の出身・・・この事実は唐津の人には大いなる誇りで、九州や日本にはとられたくない(?)ようでした。辰野自身もふるさとにこのような建物を残せたことを嬉しく思っていたことでしょう。
驚くことに、ほんの二十年前までこの建物は現役の銀行として使われていたそうです。1階の窓口フロアーは、客室と執務室が良くデザインされた鉄格子で区切られ・・・ん、この鉄格子の様子どこかで見たことがあるぞ~・・・そうだ、ハリーポッターが何かを探しに行った銀行の意匠と同じなんだ。格子の向こうには慇懃無礼な顔をしたゴブリンが据わっていて・・・映画の一場面が浮かんでくるほどによく似た光景・・・当時の日本人は、西洋の文化を本気で真摯に学んで、今の日本の礎を造ってくれたのですね。そんな建物を大事に大事に使って保存するばかりでなく、これからに役立てようとする・・・この地の人々はやはり立派です。
埋門ノ館(うずめもんのやかた)。
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埋門ノ館(うずめもんのやかた)。

旧高取邸に向かう道すがらに位置するのが埋門ノ館です。
構えといい風情といい、てっきり歴史的な建造物かと思いきやさにあらず。唐津市が、地域の職人の間からしっかりとした木造建築を造る技術の継承が出来なくなるのはさみしい・・・として建築を決めた、公民館のような用途のれっきとした新築建物らしいです。エライ!その心意気や良し!公共というのはこのぐらいの知見と気迫がなければ市民を導けない。たとえ少しぐらい金が掛かっても、それを許す住民もたいしたものです。
すぐ近くの高取邸などと比べると、木の吟味が足りませんし技も切れていません。板戸絵などもどこか偽物感が漂います。能舞台下に仕込んだという6つの坪の音響効果も今ひとつ判然としません・・・しかし、何もしないで手をこまねいているばかりでは、いつまで経っても差は縮まりません。自分たちの手で次の世代に受け継げる建築物を造っていこうと挑戦している方々には、その栄光を手にする資格があります。
ここにもちゃんとしたガイドさんが居ました。市の職員待遇の学芸員さんらしいです。歴史建造物をしっかりと残して、市民の教養の醸成に資する。あるいは観光資産として活用する。そのための経費は必要経費である・・・このぐらいの活動をどこの市町村でもして欲しいものです。
旧高取邸。
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旧高取邸。

唐津に入って最初に尋ねたのが旧高取邸です。
ここは炭鉱王と言われた高取伊好が自宅兼迎賓のために建てた住宅です。純粋和風だけではなく洋間や暖炉なども併せ持つ興味深い建物です。よほど能が好きだったらしく、建物内には立派な能舞台が設えられています。本番には演者や奏者のスペースが、普段の間取りを変更してあらわれるように工夫されていて、見事な杉戸絵や欄間細工と共に住宅の内部に存在するとは思えないほどに本格的なものです。能舞台の下には地面をすり鉢状にして音響効果を増幅させる工夫もあるようで、かしわ手ひとつがビシーン・・・と、あたりに響き渡ります。客間や庭ばかりでなく、至る所に職人技が尽くされていてどこを見ても飽きることがありません。特に2階からの眺望は絶景で、大きく開かれたガラス窓が開放感を際立たせます。
ガイドの方も親切で、当時の暮らしぶりや建物の使われ方各所の工夫など丁寧に説明してくれます。ただ見て回るのとガイドの方に付いていただくのでは理解に雲泥の差が出ます。時間に余裕のある限りガイドの方にはご足労願いたいものです。
博多・糸島の酒蔵、杉能舎。
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博多・糸島の酒蔵、杉能舎。

福岡市内を見て回った後に向かったのは唐津。その途中で杉能舎に立ち寄りました。
ここは140年も続く酒蔵ですが、初代の濱地新九郎さんが芸事好きで、とうとう自分の酒蔵の一部に杉で能舞台を造ってしまったのだそうです。杉の能舞台のある建物(舎)・・・で杉能舎と呼ばれているわけです。もちろん素晴らしい日本酒と共に、こだわりの地ビール、酒粕や酵母を使った数々のパン・料理も有名です。
公開されているのは能舞台のある古い酒蔵部分。丸みを持ったままの梁が大胆に掛け渡されていて、その迫力を見ているだけでも楽しいものです。柱は当然石場建て。太い骨組みが地面には繋がれておらず、現在の建築基準法では建てるのが難しい構法です。それが140年も立派に建っている様を見ていると、これを容認しない建築基準法に一抹の疑問も感じます。どうして日本の伝統建築に真っ直ぐ取り組まないで、他所の国から持ってきた理屈にばかり寄り添うのでしょう。堂々と時を刻む日本の建物を見る度に、現在の制度に対する不満がふつふつと湧いてきます・・・なんとかしたいものです。
 
ボンドくんの映画で爆破されそうな水上レストラン。
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ボンドくんの映画で爆破されそうな水上レストラン。

赤煉瓦文化館からアクロス福岡までの道すがらで見つけたのがこの水上(に浮かんでいるように見える)レストラン。桟橋の先に突き出るようにガラスのレストラン(たぶん)が建っています。中には入りませんでしたが屋上には上りました。鉄骨の建物の最上階の床はコンクリートで出来ていて、その上が擬木でデッキ風に仕上っています。私たちが行った時には、すでに一人が寝転んでパソコンを開いていました。個人の所有物(これもたぶん)なのに、当たり前のように市民に開放しているのがすごいところです。
このレストラン・・・何だかボンドくんの映画に出てくる悪者に爆破されそうな気がしませんか。遙か向こうからモーターボートがエライスピードでやって来たと思ったら、通りざまに爆弾が放り込まれて・・・ドカン!うわー・・・なんてことだ!逃げ惑う人々・・・走り去るモーターボート・・・こんな光景が目に浮かびそうです。いえ・・・そんな光景が目に浮かびそうなほどに絵になる建物だと言うことです。川面に近い建物群が独特の雰囲気を持つ地区です。
アクロス福岡。
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アクロス福岡。

福岡でのメインイベントはこのアクロス福岡です。雑誌やテレビでは何回か見ましたが本物を見るのは初めてです。百聞は一見にしかず・・・とは良く言ったもので、まさしくこの建物のためにあるような言葉です。近代的な街の中に突如として森が現れ、森の中にガラスの筒が突っ込まれていました。木々の間には小川が流れ、たくさんの鳥が鳴いているではありませんか・・・この建物だけで立派な生態系が成り立っているようです。
室内から見ると段々の斜面はガラスで構成されていて、みどりを通った木漏れ日が妖しく揺れます。前面に木がたくさん植えられているからといって暗く感じることはありません。それどころか、なんと清々しいことでしょう。設計者の強い意志が感じられます。映画マトリックスの世界と同じ様に、この世界も強い思いがあれば形にすることが出来る・・・そう思える建物です。
基本設計が日本設計とエミリオ・アンバース。実施設計が日本設計と竹中工務店。施工は竹中・鹿島・清水・九州・髙松・戸田建設共同企業体。名だたる皆さんが寄り合えばこんなにすごいものが出来るのですね。
福岡市赤煉瓦文化館。
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福岡市赤煉瓦文化館。

歩き出して最初に行き着いたのが町家保存地区と櫛田神社、その次がこの福岡市赤煉瓦文化館。設計は東京駅などを設計した辰野金吾。元々は日本生命の九州支店として明治の後期に建てられたのだそうな。現在は有料の会議室などを備えた赤煉瓦文化館として広く市民に開放されています。
全体はレンガ積みと白い花崗岩を貼った意匠。壁も柱も厚く、空間の利用効率をそれなりに圧迫はしますが、存在感はたいしたもの。各部屋の入り口が厚い壁(柱)の向こうにあるために、今時の建物に比べると独立性が高くとても重厚。屋内の廊下を歩いていても街路を歩いているような感覚に包まれます。各部の造りが逐一緻密で、設計も施工もこの建物につぎ込んだ情熱がうかがい知れようというものです。
イギリスの様式をまねてとても丁寧に建てられています。当時の日本人の西洋に対する憧れがそのまま形になったような建物だと感じました。唯々大事に保存するのではなく、それなりに使いながらこれまでこの状態を保ってきた街の方々に敬意を表します。
宿・鹿島本館。
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宿・鹿島本館。

1日目の宿は福岡市内中心部にある鹿島本館という純和風の旅館。実はここ、福岡で初めての有形文化財に登録された旅館だそうです。大正から昭和初期に建築されたという建物は、入り口付近からすでにただ者でない雰囲気が漂います。玄関ホールのすぐ前には小さな待合、そのすぐ前が帳場です。当日は猫が一人でお留守番。人なつこそうにこちらを見ていました。
間口が狭く奥行きが長い町家の特徴がそのまま活かされていて、板張りの廊下を通って奥へ奥へ・・・有名な数寄屋建築の旅館として名をはせているだけあって至る所に細工や工夫が施された立派な建物。しかし、私たちの部屋は浴室近くの12畳ほどの、後日に増築か改装が施されたヶ所らしく至極簡素。最近ではこのような建物は日本人よりも外国の方に好まれるらしく、あちこちで顔が合う。日本語しか話せない私はその度に固まってしまうことになります。たとえちょくちょく固まることになっても、床が少し傾いていても、私は味気ないホテルよりはこっちの方がよほど良い。
夕食には長野という水炊き屋さんで、たらふくいろんな鳥料理をいただいて、そのままバタンキュウ~・・・お風呂は朝に入って、館内の探検もそこそこに旅立ちました。
2018事務所研修in九州。
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2018事務所研修in九州。

実務に追われてあくせくしているばかりでは、新しい発想も取り組みも難しくなる・・・ということで、なにがしかの刺激に触れるべく毎年それなりに事務所の研修をしています。今年はタカラスタンダード九州工場見学を中心に、福岡・佐賀あたりを回って建物を見てきました。
朝の6時頃に田辺を出発して、タカラの九州工場に着いたのは午後1時頃。ここから約3時間半の座学と工場見学を交えた研修です。そもそもホーローってどんなもの・・・から始まって、どんな良いところがあるの・・・何が難しいの・・・最近の傾向と新技術は・・・など一通りのレクチャーを受けていざ工場へ。たくさんの工員さんが一堂に並んで・・・などとイメージしていたら、人なんて要所要所にほんの数人。後は優秀な機械が圧倒的に並んでいます。所々で出会う皆さんは見学慣れしているのか、よほど社員教育が行き届いているのか、はたまた元々人間が出来ていらっしゃるのか・・・とても気持ち良く接してくれて有難い限りです。工場内にはチリひとつなく、作業工程に従って諸々が段取りよく用意され、整然と組み付けられていきます。完成品のロスはほとんどなく99%以上が無事に出荷されていくようです・・・お見事!
小さな事務所一行に丁寧に対応いただいたことにとっても感謝しながら工場を跡にしました。さて、いよいよ2018事務所研修in九州の始まりです。
照明器具を製作。
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照明器具を製作。

部屋の雰囲気や広さ・使い勝手に合う照明器具が見つからないときには図面を書いて作ってもらいます。以前には埋め込みの器具類が多かったのですが、このところは自然な素材と器具を組み合わせて露出形のものを作ることが多いです。
写真は最近竣工した住まいの、食堂テーブルの上の照明。厚さ30ミリほどの無垢の桧板をベースにLEDの埋め込み器具を組み込みました。板は両側に耳付き(丸みの残ったもの)で、真っ直ぐでなくても全然OK。むしろこのくらいの方が自然木らしくて良いぐらいです。
照明の高さはペンダントのものより少し高い目で、床から2,000ミリ~2,200ミリぐらい。現場確認して気持ちの良いところ・・・この、気持ちの良いところ・・・というのが大事。人は部屋の広さ・天井の高さ・仕上げの質感や色合い・テーブルとの兼ね合いなど・・・色々な状況に応じて感じ方が違います。なかなかマニュアル通りにはいきません。
どうです、なかなか素敵に出来上がったでしょう。