本文までスキップする

府中の家ができるまで
Process

府中の家 外観を整える。

カテゴリ
タグ

    ・外観を考える Part 1。
    計画案4で、最初に素直にイメージできたのがこの外観。
    南西側の道路から見たところ、一番見られるであろう角度のパース(完成予想図)です。屋根形状は切妻、外観の形状に合わせて屋根形状も素直に変化させています。この時点では、玄関ポーチに至るアプローチの木組みの上には屋根を乗せています。4メートルほどのアプローチをゆっくりした段差で玄関に至る計画です。  

    各個室にロフトを付けて収納の能力を上げようと思っていますので、それを見込んで、通常の平屋屋根よりは棟の部分を少し東(右側)に寄せて高くしました。こうしておくと、南・東の開口の上にランマ窓も取れるので、夏の暑いときにも掃き出し窓を閉めて防犯しても空気の通り道はランマ窓で確保できます。ただし、東と西の軒高は変わってきます。ロフトとランマ窓を取るために上げた東の屋根が高く、西の屋根は下屋のように東屋根の下に入っていくわけです。西側の道に向かってあまり大仰に構えない・・・という観点から考えるとこんな屋根も良いかもしれません。大屋根(東屋根)と下屋(西屋根)の間に出来る小壁にはロフトの窓も取れて通風も採光も良さそうな上に、単調になりがちな平屋建物の屋根や西側の外観にも変化が出て、楽しげになりそうです。
    しかし、問題が三つ。一つは、大屋根の形が南側であまりにも凸凹になりすぎないか?二つめは、越し屋根風の段違い屋根が(このパースでは見え難いのですが)複雑すぎてコスト高を招かないか?三つめは、雁木部分の屋根がこのままでは強風時に風を受けすぎないか?というもの。
    さて、これらの問題を解決しつつ、外観を整えていきます。

    ・外観を考える Part 2。
    Part 1の反省を踏まえ、製作してみたのがこの外観です。
    風を受けすぎる東の雁木部分の軒先は、南側で折り曲げることで解決できそうです。南で凸凹すぎる屋根形状は、ロフト部分をポーチ上まで張り出し屋根を大きくすることで少しはスッキリします。玄関廻りはこれでだいたい解決出来てきたみたいですが、ロフトやランマ窓を取るために東西の桁高さを違えて、全体に複雑にしてしまった屋根形状は直っていません。

    そして、屋根形状をスッキリさせるためにロフト部の平面を膨らました訳ですから床面積が増えてしまっています。さらに、意識して確保した長いアプローチの上にロフトが重なってくるわけですから、玄関先が重たく、又玄関までの奥行感もスポイルしてしまいそうです。検討のために出来てきたパースを眺めているとスタッフから、屋根形状が妙に複雑になりすぎて、切妻屋根の本来の良さである端正な清々しさが感じられにくい・・・というような意見もありました。空間の使い勝手と同じ様に、外観にも人によって様々な感じ方がありますから難しいところです。
    しっかりと外観を検討するには、丁寧に条件を打ち込んで、都度都度に色々な方向から眺めてみることが出来る状況が創れればありがたい。しかし、こんなに何回も360度からの見栄えを検討していこうと思ったら作業する方はそりゃあもう大変。大変そうな担当者を尻目に、もっとこうすれば、もっとこっちの角度から、いっそこの部分をこうして・・・と私が食い下がるものだから、このところ担当スタッフの顔色が冴えません。

    ・外観を考える Part 3。
    あれから幾つもの外観を検討しているうちに出て来たのがこのプラン。
    大屋根の内、これまで南と北の2ヶ所の個室にロフトを取るために屋根が高くなり、越し屋根部分がフタコブラクダのようになって、大屋根形状を複雑にしていたのですが、屋根の単純化(減額にもなります)のため、北側のコブ(建物奥のコブ)は室内のロフトはそのままに梁組の工夫で屋根への影響を無くしました。少しのことですが、いくばくかスッキリしたように感じます。

    南側の玄関部分の越し屋根はそのまま残して、玄関先に駐車場を兼ねたポーチ屋根を張り出すのはどう・・・と言う意見もあって、玄関庇(屋根)を駐車場も取り込んで大きく張り出したプランを作ってもらいました。平面的(使い勝手的)には玄関先にクルマを止めて、雨の日もそのまま玄関に入れるのが利点・・・しかし、工事費もさらに大きくなりそう。外観としては、これはこれでバランスが取れているようにも思います。
    やってみたいことはたくさんあります。さりとて現実には予算の縛りがあって・・・このへんのところは毎回経験する、悩めるクライアントさんの心情を追体験しています・・・さて、どうしよう。

    ・外観を考える Part 4。
    建物に駐車場を取り込んだ大きな玄関庇(屋根)は残したままに。梁組の工夫で個室のロフト(2ヶ所)は屋根の下に取り込み、ラクダのコブのような越し屋根を無くして、大屋根を最大限に単純化したプランです。

    これまでの計画の中では最も大屋根形状が単純です。右下のパースを見ていただければ、平面形状に凸凹があっても、棟が南北に1本通った一枚屋根になっているのが確認いただけるでしょう。見方によっては、平屋らしくノビノビ感が表現出来ている・・・とも言えるかもしれません。
    一部には、南東の角で屋根を折り曲げてしまったので、なんだか和風に感じる・・・と言う意見もあります。しかし、やっぱり気になるのが雨仕舞いと工事費です。こうすれば、少なくとも梁組や屋根葺きにかかる費用は、これまでのプランの中では一番リーズナブルに仕上げることが出来ます。
    ここまで来て、気になってきたのが西側の外観です。屋根をあまり単純にしすぎたために、西側から見ると全体に倉庫のように見えないか・・・というところです。さて、解決策は。

    ・外観を考える Part 5。
    元々、東や南側には大きな開口部(窓)が付くことも多く、見た目に変化があって楽しげな外観になることが多いのですが、西や北側は西日を遮ったり北風を防いだりするのに開口部が小さくなり、見栄えも単調になりがちです。

    府中の家も例に漏れず、やはりこの傾向があって、東・南に掃き出しの大開口、西・北は最低限の開口面積です。ただし、LDKの大きな空間には風の通り道をしっかりと計画したいので、西側の壁にも大きな掃き出し窓を設けました。この部分が、道からの目線に直接さらされすぎて少し気になっていました。そこで、目線を隠すのと単調な外観に変化を付けるために、境界付近に2メートルほどの高さの目隠し壁を設けることにしました。小さな事ですが、これで少し気になっていたことが楽になった気がします。
    もうひとつ、玄関先の駐車場を兼ねていた大きな庇(屋根)・・・これほんとうに必要なんだろうか・・・と思い始めて。大きな庇を無くして、木製フレームにアルミの庇を差し込んだとても簡素なアプローチ庇を計画してみました。屋根形状が全体にスッキリとして、もちろん工事費は節約できます。必要とあらば、このアルミ庇の前に後々アルミのカーポートでも付けるか・・・こちらの方が合理的かも。
    そして、このパースには描かれていませんが、最終的に居間に設置することに決めた薪ストーブの煙突が、長い切妻屋根の奥行きの中程・道側に付きます。どこのお家も屋根の上に煙突が出ると随分と印象が違って見えますから、この煙突が単調な外観に変化を与えてくれることを期待しています。

    カテゴリ
    タグ