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府中の家ができるまで
Process

府中の家 床と壁の下地を造る。

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    ・給排水設備 配管工事。
    床と壁の施工に先立って、床下の給排水設備の配管をします。給排水設備工事の工程は、現場管理者の適切な段取次第で工期の短縮や工事の順調な進捗に好影響を生み出せる工種です。府中の家では、給排水工事は上棟準備の外部足場を施工する前に行いました。足場がありませんので屋外の埋設配管が容易に行えますし、屋内においてもまだ木組みが入っていない状態なのでスラブ上の配管が容易です。この時点でここまでの工事を済ませておければ、外部足場を撤去してから竣工までの間に行わなければならない工事が随分と楽になります。
    屋内から屋外、あるいは屋外から屋内に達する各種配管類は、基礎下に埋設することなく基礎立ち上がりを貫通させます。こうすることで、配管類の劣化対応(メンテナンス)も容易になります。これは長期優良住宅などでも採用される配管要領です。府中の家では、基礎の梁はスラブ下に地中梁として施工されていますので、基礎立ち上がりを配管類が貫通しても基礎強度低下の心配をする必要はありません。

    写真青い管は給水管、赤い管は給湯管、グレーの太い管は排水管、手前右下の2本束ねたグレーの管は追い炊き配管、白い管はガス配管です。給水と給湯の管はヘッダ-工法で施設します。ヘッダーと呼ばれる分配器を介して各水栓と配管が1対1でつながるので配管系統内の接続ヶ所が少なく、施工不良による漏水などは格段に少なくなります。また、各ヶ所の水栓を同時に空けても流量変化が少なく安定してお水が出るのが利点です。不具合にも対応が容易で、後のメンテが楽になるというメリットを有するので、長期優良住宅などにも採用される施工法です。

    ・電気設備 配線配管工事。
    電気工事は、工事着手前の仮設電源の引き込みに始まり、最終工程の本電源のつなぎ込みまで、家づくりに関わる全ての職種の中で最も長い間断続的に現場と関わりを持つ工事です。それだけに、どの時点でどんな関わりを他の工種と持ち、どんな仕事の段取りを組むのかはスムーズな現場進捗に欠かせない検討だと言えるでしょう。
    府中の家では床下地に杉厚板パネル(Jパネル)を敷き込むことから、床廻りの構造材の施工が終わった直後、大工が床下地を施工する前に行いました。

    家庭内で使用される電化製品の数は年々増え、電線の数もごらんのように大量です。府中の家では分電盤の回路数も32回路と、ひと昔前の3倍を超える数となっています。電線や信号線は床下に吊り下げて露出で配線しますが、規格がドンドンと新しくなるインターネット関係のLAN配線などは、工事にて配管を仕込み、中の配線が時代に応じて都度に入れ替えられるようにします。
    木の家では、あらわしになる柱や梁も多いことから、工事が進んでからの変更が難しいことも多く、コンセント・テレビ・電話・ネット配線や照明器具の数と位置・形式などは上棟前に詳細を打ち合わせることが必要です。照明器具のデザインは、内装などが出来上がり、部屋の雰囲気が確認出来るようになってからでも間に合います。

    ・床下地を造る。
    府中の家は、高床式の住居ほどに床下の風の通りが良いのが特徴ですので、そのぶん床の底冷えなどがないように住空間の守りを固めています。床下地には全面的に杉厚板パネル(Jパネル)を敷き込み、床下の気密施工はこのパネル面でしっかりと行い、すきま風などの吹き込みを防ぎます。また、パネルは厚みが36ミリもある杉板なので断熱性能にも期待出来ます。

    床下地のパネルが敷き終わると、屋内の諸々の工事は格段に施工性が良くなります。この上に、根太施工を行い、断熱材を充填して床の断熱層としますが、下地パネルが杉材ですので、断熱と共に調湿の性能が高いのも特徴です。使用する材料の一つ一つが調湿に優れた性能を持つことは、湿気の気になる梅雨時などに総合的に効果を発揮し、清々しい屋内環境を保つことに役立ちます。

    ・床下通気を確保する。
    木材はどんな時にも水分を含んでいます。木材が含んでいる水分のことを含水率と言います。山に生えている時には、自重に対して200%を越える含水率ですが、柱や梁として住宅に使用された後も、環境に応じた含水率を保ち続けます。これを平衡含水率と言い、平均的に住宅の屋根部分では13%~15%ほど、壁内では15%~18%ほど、床下では20%を越えることもあります。平衡含水率の変動が室内の水分量(湿度)の調整に役立つわけですが、20%を越える環境が長く続くと木を腐らせる腐朽菌などが活動をはじめ、木の寿命を著しく縮めてしまいます。ですから、高温多湿の日本においては、建物の耐用年数を延ばすためにも、室内の快適環境を守るためにも、床下通気の確保はとても大切なのです。

    府中の家では、基礎を持たない古民家に近いほどの床下通気環境を確保しています。写真の通気口の奥に見える光は、建物反対側にある通気口から入ったものです。効果的な通気口を東西南北に配置して四方からの風を取り込み、床下の乾燥状態を保ち、建物の耐久性を延ばす工夫をします。床下の通風を充分に確保すると心配になるのが床の底冷えです。底冷え対策として杉の厚板パネルを敷き込んで守りを固める訳です。基礎はスラブ下に地中梁を埋め込んで、立ち上がりに大きな通風開口を取ることを可能にしています。
    開口部分に張っているのはステンレスの網、錆びたり腐ったりすることはありません。悪目立ちや雨水の侵入を許しては困りますので、この開口部のほとんどは、軒先から2メートルほども奥まった外部デッキなどの下に設けて、外からは見えないように、そして雨風にさらされないように工夫しています。

    ・筋交いを取り付ける。
    壁は屋根・床と共に構造上も快適な室内を造るのにも重要なヶ所です。府中の家はしっかりとした結露計算を行い、壁体内で結露を起こさず、室内の湿気を外壁の通気層に排出する仕組みを持っています。そのために、壁下地は透湿抵抗が低く断熱性能が高いことを優先して木質系のインシュレーションボードを使用し、壁耐力は筋交いで確保しています。

    壁強度(壁耐力)を確保するための筋交いは、一部が強くなりすぎないように、全体にバランス良く配置します。筋交いの端部は金物で補強しますが、この時にもビスが短すぎたり長すぎたりしないように注意します。筋交いは床の土台と軒桁や梁などの横架材簡に配置することが必要ですが、写真のように途中に横架材などが入って途切れてしまう時には、その横架材を挟んで、上下で同じ仕様のものを取り付けます。こうして必要なヶ所の壁耐力を確保します。

    ・外壁下地を取り付ける。
    壁下地にお手軽な構造用合板を張ったのでは、壁体内に入った湿気の逃げ場がなく断熱材内で結露を起こします。なので壁体内に湿気が入らないように断熱材の室内側で湿気を止める必要があり、気密のシートなどを施工するわけです。こうすると壁体内結露はなくなりますが、室内の湿気は逃げ場をなくし室内で結露をはじめます。室内結露を防ぐために24時間の機械換気が必要になり、現在はこれが高気密・高断熱住宅の標準になっています。しかし、快適な室内を機械制御で造ろうという考え方はエネルギー消費が大きく、エコノミーでもエコロジーでもありません。

    府中の家の壁下地は木質系のインシュレーションボード。木材繊維を集めて固めた、段ボールを圧縮したような品物で、透湿抵抗が低く、断熱性能が高いのが特徴です。12ミリの板ですが、これで住まい全体をスッポリと包んでしまうので、断熱効果は構造用合板などよりも高く、簡易の外断熱のような役割を果たします。

    ・アルミサッシを取り付ける。
    開口部材には、外部も内部もアルミで出来ているアルミサッシ、外部がアルミで内部が樹脂のハイブリッドサッシ、最近注目されている外部も内部も樹脂で出来た樹脂サッシ、昔からあって時々使われる木製サッシ、と大きく分けて4種類のものがあります。水密・気密などの性能はだいたいどのサッシも似たようなものですが、断熱性能は枠の材料によってかなり違います。それぞれの枠素材の熱伝導率に影響されるからです。断熱性能が良い方から、木製サッシ、樹脂サッシ、ハイブリッドサッシ、アルミサッシの順。これは価格の高い順とも一致します。耐久性の良さはアルミサッシ、ハイブリッドサッシ、樹脂サッシ、木製サッシの順。枠の色にも注意が必要です。黒い色は蓄熱しやすく、白い色は熱の反射率が高いので夏でも熱くなりにくいのはご存じの通り。私の経験では、夏場の太陽にさらされた黒いサッシ枠は、室内側でも触れないくらいに熱くなることがあります。府中の家では、総合的な判断から、外部がアルミで室内側が樹脂のハイブリッドサッシを選択しました。色はステンレスに近いシルバー色です。

    アルミのサッシ枠にペアガラスを組み合わせるだけで断熱性能は40%ほど改善します。ガラスをペアのLow-E(省エネ仕様)にするとさらに改善します。ハイブリッドサッシにペアのLow-Eガラスを装着するとさらに良くなります。ガラス層を3枚や5枚にして断熱性能を高めたサッシもあります。どちらのメーカーにも壁の断熱性能に近いほどの素晴らしい性能を発揮する商品はあるのですが、いずれもとても高価な商品です。費用対効果を考えながらの選択をする時には、地域性を考慮する必要があります。
    Low-Eガラスには陽差しの制御に優れた遮熱タイプと、断熱性能に優れた断熱タイプがあります。府中の家はハイブリッドタイプのサッシ枠に、室内温度を逃がさない断熱タイプのLow-Eガラスを採用した仕様。陽差しの制御は軒先を延ばして行います。
    軒の出や庇をないがしろにして遮熱タイプのLow-Eガラスを入れてしまうと、本当に大事な冬場のお日様の暖かみまで遮断してしまうことになるのでお気を付けて。

    ・外壁通気工事。
    大屋根は屋根面の下に通気層を設けて、そこを通る空気の流れで屋根面を冷却し、室内に伝わる熱量を減らして断熱材の量の削減に貢献しています。壁も屋根と同じ理屈で通気層を設けます。空気層の空気を動かすのは温度差なので、温度差が大きくなるように屋根と壁の通気層を一体にして、地面に近い外壁の一番下から冷たい空気を給気し、最も熱くなる屋根の棟部分から熱気を排出します。通気層内の空気の流れが断熱材内の湿気を吸い出して排出するため、壁体内の結露を防ぐことが出来るのです。

    屋根通気層には空気の流れを妨げるものは多くありませんが、外壁面には多くの開口部材や設備関連部材が取り付きますので、それらが妨げになって通気層内を通る空気が滞らないようにすることが大切です。サッシの上下では、サッシに行き当たって行き場をなくした空気の逃げ道を丁寧に確保することが必要ですし、設備配管貫通部なども同じです。
    通気層の内側に施工される透湿防水シートは、室内からの湿気は通しますが、外部からの水は中に入れません。この部分は万が一、外壁面で漏水を起こしたときの二重の備えです。また、壁の通気層は屋根の通気層とも一体になっていますので、屋根面の漏水も最終的には壁の通気層を通って排出されるます。開口部廻りの防水処置はもちろん、手薄になりがちな設備関係の貫通ヶ所もしっかりと防水処置することが重要です。

    ・外壁を張る。
    府中の家の外壁仕上げは、桧板を下見板張り(下から重ねて張る)し透明な木材保護塗料を塗って仕上げたところと、サイディングに塗装を吹き付けて仕上げる部分との二種類です。
    木は雨や風・紫外線で表面の色が変わります。時と共にグレーに変色する木の特徴を、自然なこと・・・ととらえて楽しめれば良いのですが、そうでない時にはやはり使用ヶ所の配慮は必要です。
    府中の家では、軒先から2メートルほどの奥行きがとれて、雨や風・紫外線の影響が少ないヶ所や、軒裏などのほとんど影響を受けないヶ所のみ透明な木材保護塗料を塗って、しばし木肌を楽しむことにしました。時を経て木の変色が気になりだした時には、少し色付きの保護塗料で着色しようかとも思っています。

    もうひとつの外壁仕上げは、サイディング面に塗料を吹付け塗り壁風に仕上げたものです。
    湿式工法で外装用の珪藻土などを左官塗りして仕上げれば得たいイメージは出来上がりますが、その場合には壁面にクラック(ひび割れ)のリスクを抱えることになり、湿式故に工程も長引いて、施工費も高額です。ですから、大判で継ぎ目の少ないサイディングで表面が凸凹に仕上がっている品物を選び、その上にリシンという砂状の塗料を吹き付けて仕上げます。目が近くなれば目地も認識出来ますが、遠目には全くの塗り壁のように見える上、乾式の工法なので工程が短くクラックのリスクもありません。また、色も無限に近いものの中から選べます。使用しているサイディングの品番と吹き付けた塗料の組み合わせは、長年の試行錯誤の末に決めたものです。

    塗り壁のように全体を一つの面にしたいので、サイディングの継ぎ目の防水処理(コーキング)の果たす役割は重要です。通常は目地の真ん中が少し凹んだ形状が標準ですが、それでは仕上がった後に目地が目立つため、特にお願いしてサイディング面と面一になるようなコーキング処理をしています。コーキングを担当する業者によっては、そこのところが今ひとつ上手くいかない事があるのが難しいところです。
    さて、今回は設備や床・壁の下地部分を特集しました。次回は、断熱や屋内仕上げを中心に書きますのでお楽しみに・・・。

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