府中の家ができるまでProcess
府中の家 床と壁と天井を仕上げる。
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・床、壁、天井の断熱工事。
府中の家は、床・壁・天井(屋根面)のすべての断熱をパーフェクトバリアというポリエステル断熱材で行いました。この断熱材は半分以上がペットボトルやフリースなどのリサイクルのペット樹脂で出来ていて、以下のような快適な木の家を造るために必要な優れた特徴を持っています。
●断熱等性能等級4仕様基準対応の高い断熱性 ●リサイクルペット樹脂から製造した環境対応品 ●ゼロホルマリンでシックハウスの要因物質を含まない ●粉塵が飛散しにくい、極めて安全な施工性 ●耐候性が高く長期使用を実現 ●湿気を吸わない高い透湿性能で断熱性能を維持 ●自己消火性がある、高い防火性能(引火点410℃)
屋根面に使用したのは120ミリ厚の13k密度の品物。綿のように柔らかい品物で、搬入はロール状に巻かれた状態で行われます。
屋根の断熱工事には、屋根面ですぐに断熱する屋根断熱と、天井の上で断熱する天井断熱があります。屋根断熱では天井裏は室内に近い温熱環境となりますが、天井断熱では天井裏は屋外に近い温熱環境となります。府中の家では多くの部屋で天井裏を持たない屋根勾配に沿った天井を採用しましたし、天井裏を持つ部屋でもその部分が外気温の影響を強く受け、暑く(寒く)ならないように屋根断熱を採用しました。
壁の断熱に使用したのは屋根と同じロール状に巻かれたパーフェクトバリア。厚みは100ミリ、これに外壁下地の断熱ボードの12ミリを足して、合計で112ミリの断熱層です。パーフェクトバリアも外壁下地の断熱ボードも通気性・透湿性が高いので、湿気は有効に屋外に排出され、屋内が湿気ることは少ないです。
床断熱は、下張りの杉厚板の上に2重に行います。写真奥は下部の30ミリの断熱材の施工が終わったところ。中ほどはその上に2重の根太を施工したところ。手前は2重根太の間に40ミリの断熱材を施工したところ。床用の断熱材は屋根用と同じパーフェクトバリアですが、性能と施工性を考慮して板状に加工されているボードタイプと呼ばれる品物を使用しました。30ミリと40ミリの2種類を重ねて70ミリの厚みです。断熱下地には36ミリの杉の厚板パネル(Jパネル)が施工されています。杉板も結構な断熱性能を持つので、床の断熱層は合計で106ミリとなります。
パーフェクトバリアは、衣料などにも使われている材料のリサイクル品なので人体に悪影響がありません。なので、グラスウールなどとは違いビニールの袋には入っていません。ビニールの袋に入っていないので透湿抵抗が低く、だから、室内の湿気を通気層に排出する性能に優れています。結果、湿気の多い梅雨時でも清々しい室内を創り出すのに役に立つ断熱材である・・・という訳です。
府中の家は、木材の耐久性向上や健康生活のために、高床式の住居ほどに床下の通気を確保しました。そのぶん床の底冷えなどがないように住空間の守り(床断熱・気密)を固めています。床下地には全面的に杉厚板パネル(Jパネル)を敷き込み、床下の気密施工はこのパネル面でしっかりと行い、すきま風などの吹き込みを防ぎます。
給排水設備も電気設備も床下配管・配線が室内に入るときにはこの気密層を貫通することになるので、貫通部の気密処理をしっかりと行います。各貫通部の気密処理は工事を担当した職方がそれぞれに分担を決めて責任を持ちます。ちなみに、給排水業者担当分の気密処理は白いコーキング材にて行われました。業種ごとに色分けして気密処理を行っていますので、責任範囲がハッキリします。多くの職方が常時混在している現場ならではの良い工夫だと思っています。
・各部を仕上げる 杉板張り。
多くの天井は、屋根勾配のままに斜めに杉板を張って仕上げました。天然乾燥材なので、色味が鮮やか。赤味と白太(赤い所と白い所)が入り交じって、変化の豊かな色合いの天井になりました。(ただし、この色は年々飴色に変化し均一になっていきます)杉板は柔らかく傷つきやすい材料ですが、断熱性能とともに調湿の性能にも優れ、室内の湿度を一定に保つのに大きな役割を果たします。湿気の多い日にはカラッと、乾燥の激しい日にはしっとりとした潤いを室内に与えてくれます。
一般に、押入・クローゼットや納戸・物置の内壁や天井などには合板や新建材の専用ボードを張ることが多いようです。しかし、空気の流れが悪いこれらのヶ所でそのような断熱・調湿の性能の低い材料を使うと、湿気やカビのリスクから逃れられません。杉や桐などの木は、内部に多くの空気層を有していますので断熱性が高い上に調湿の性能も高く、湿気の気になるヶ所などの使用に向いています。府中の家は、杉板を押し入れや納戸の内壁仕上げに使用しました。
杉板を内装に使用することで湿気やカビの心配はずいぶんと少なくなりますが、窓などの通風装置を持たない押入やクローゼットなどの、空気が滞りがちな空間では、空気を動かす工夫も施します。奥の壁に付いている桟は、たくさんの荷物が入っても壁際の空気の動きが確保できる工夫です。また、枕棚や中段の床板はスノコ状に張って上下の空気の動きを妨げません。素材と工法の工夫で湿気やカビに対する対策を施し、安心の収納空間を造っています。
・各部を仕上げる 桧板張り。
桧も杉と同じ針葉樹で、内部に多くの空気層を有し断熱・調湿の性能は高いのですが、桧は杉に比べると少し硬く傷つきにくい性格を持つ板です。天井は人が触れることはなく傷の心配はありませんし、押し入れや納戸は傷ついてもさして気になることはありませんが、人が日常を過ごす居室ではちょっとした傷も気になるものです。ですから板間の腰壁には桧板を張りました。
桧板は板目ではありますが節なしの品物です。品物の等級に合わせて、仕上げは超仕上げと言って、天井などに使われる杉板よりも丁寧な仕上げになっています。龍神産の桧は他産地のものに比べると色が白く、中央部の赤味も心なしかピンクがかって見えます。まっすぐ素直に生長している木が多く、曲がりなどの変形は少なめです。経年変化によって杉は少し黒っぽく、松は少し赤っぽく変色しますが、桧は黄色がかった飴色に変化します。木の色が変わっていく様子が楽しめるのも木の家の特徴の一つです。
・各部を仕上げる 赤松板張り。
紀州の山の7割ほどは杉と桧の植林山(人工林)で、紀南に限ればほぼ9割が植林山です。つまり、山の緑と共存しようと考えると今は、自然をいかに残すか・・・ということよりも、人工林といかに付き合うか・・・が現実的に考えなければならない課題だと言えます。建築の視点から具体的に考えると、地元の木をたくさん使って家を建て、そうすることで街と山を経済的に結びつけ、山の緑の健全な保全の道を付けるとともに街の経済を活性化させる、ということが大切です。ですから、私は出来る限り地元の木を使って家づくりをします。柱は桧、梁は杉、壁や天井には杉・桧の板といった具合です。
あまり目立たないヶ所の床に使った唐松のエンコウ板は板目の節ありの品物ですが、よく目に付くヶ所に使った赤松の床板は節がほとんどない柾目・小節の品物、もちろん新建材のフローリングではなく、中身まで本物の無垢の板です。信州産の赤松は色が白く、上品な仕上がりです。
・各部を仕上げる 珪藻土塗り。
土壁は調湿性・断熱性・防火性・吸音性などに優れる仕上げ材として認知されています。中でも調湿性は優秀で、たとえば6畳ほどの広さの部屋の内装に珪藻土の仕上げを施すと、3ℓ~3.5ℓほども湿気を吸・放湿します。ほとんど吸・放湿性能を持たないビニールクロスと比べると差は歴然で、結果として結露発生防止・ダニやカビの抑制にも大きな役割を果たします。
水・土・藁(わら)などの自然素材で出来た土壁は環境と人間にやさしい仕上げ材で、すでにお伝えした特質とともに、漆喰壁は殺菌機能が豊かであったり、ゼオライト壁は脱臭効果に優れていたり、それぞれの原料によってさらなる特徴があります。府中の家では吸・放湿性能と多彩な仕上げ・表現に着目して居間・食堂・タタミ間などの壁には珪藻土の塗り壁仕上げを採用しました。
珪藻土壁の各機能を高めるためには表面積を大きくすることが効果的です。そのため、いずれのヶ所もベースの素材に寒水(大理石の小粒)・ワラ・スサなどを混ぜ込んだ品物を使用しました。石の粒を混ぜ込んだことで、蓄熱の性能も高まっています。
居間は明るいめの色調、タタミ間は幾分落ち着いた色調。それぞれにコテのタッチも異なって、やわらかく表情豊かな壁に仕上がっています。
・各部を仕上げる 和紙貼り。
和紙の原料である多年性低木の楮(こうぞ)や三椏(みつまた)は、かつて中山間で多く栽培され、地上数十センチのところで間伐され(伸びた枝だけを刈る)、繰り返し原料として使われました。翌年はまた同じ長さまで枝が伸びるので、木を枯らすことなく利用できます。和紙は環境にやさしく、その循環性はSDGs(持続可能な開発目標)とも合致したエコな建築材料だと言えるでしょう。
和紙は空気中の湿気を吸収しお部屋の中の湿度を一定に保ってくれます。また、ビニールクロスなどの樹脂系の壁紙の一部で懸念されているような、シックハウス症候群の原因となるホルムアルデヒドが発生しないのも魅力のひとつです。
室内の仕上げ材に和紙を選ぶのは、ビニールクロスでは期待できない調湿性能の高さとともに透湿抵抗の低さからです。透湿抵抗の高い仕上げ材では、行き場をなくした室内の湿気は結露やカビの原因となりますが、透湿抵抗の低い和紙は湿気を外壁内の通気層に導く手助けをします。室内の湿気をスムーズに排出することは清々しい室内環境を得るために必須の条件です。
和紙を選ぶ時には、なるべく仕上がりがのっぺりしないように、木の繊維などを多く含み、多少でも表面に凹凸のあるものを選択するようにしています。その方が和紙本来の素材感が素直に表現されていて好ましく感じています。
高度な技術で使られた土佐和紙の繊細な表情や、微妙な色合いは魅力的です。また、強くて柔らかい独特の風合いや保存性の高さも良いところと言えるでしょう。
・各部を仕上げる 石貼り。
各種の石も、使い勝手や使用ヶ所の必要性に応じて、あるいは得たい雰囲気・風合いなどによって適材適所に使い分けます。柱の下部の束などには丈夫な花崗岩(御影石)、室内の壁などの構造的な強さよりも意匠性が優先されるようなヶ所には大理石・・・と言った具合です。
写真は台所の食器棚の壁に黄色味を帯びた大理石を貼ったところ。台所では醤油やソースなどのシミの付きやすい調味料も使いますし、湯気や煙も出ます。汚れが気になりがちなヶ所ですから掃除が容易に行えるように、表面加工は本磨きとしてメンテナンス性を高めます。大判に加工したものを使い目地の面積(本数)も減らしています。穴が開いているところはコンセントの付くヶ所です。
キッチンはオールステンレスのもの、食器棚は木製にて制作し、多くの壁は珪藻土塗りです。鉄と木と石・土などの自然素材はマッチングがよく、隣同士のヶ所に使用してもよく馴染みます。
・各部を仕上げる タイルを貼る。
タイルは耐久性にとみ、自然環境や薬品に強く、耐熱・耐火・防水性に優れ、メンテナンスが容易、などのたくさんのメリットを持つ建材ですので、内装でも外装でもよく使われます。なかでも、内装壁専用の機能タイル・エコカラットはこのところ急速に種類を増やしてたくさんのヶ所で使われるようになりました。
水廻りの小部屋は一般の居室に比べ、いずれも湿気・臭いが特に気になるヶ所です。府中の家ではエコカラットの調湿性・脱臭性、有害物質を吸着低減するなどの特徴に期待して洗面・脱衣・トイレなどの水廻りの壁にこのタイルを採用しました。内部に多くの気泡を含むこのタイルは陶器質・磁器質タイルなどとは違い、室内に使用してもあまり冷たく感じないのも良いところです。
今回は断熱や仕上げ材について特集しました。次回は、木製の建具・家具、外部工事についての特集を予定していますのでお楽しみに・・・。
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