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浄化槽の仕組みや使い方。

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    賃貸時代や、都会暮らしでは縁のない『浄化槽~ジョウカソウ~』。
    一軒家で暮らし始めるにあたり、下水道が未整備ののどなか場所などで導入することが多々あります。
    『浄化槽』とはどんなもので、どんな風にお付き合いをしていったら良いのでしょう。ポイントをさぐってみました。

     

    浄化槽との付き合い方


    (Mo-ku通信vol’32)

    浄化槽とは?

    生活の中で使って汚れた水を、キレイにして敷地外へ排水する設備です。

    炊事・洗濯・入浴・トイレ……私達は日常生活を営む中でたくさんの水を使い、流します。
    こうして排水される水を“生活排水”と言います。
    環境省の発表によるとその量は、およそ1人1日あたり約250リットルほど……コンビニで並んでいる500mlのペットボトルに換算すると、500本分!おどろきのボリュームです!!(人数の多い家族では、お風呂の湯船を共有するなどすると少し減ります)
    30%はトイレから排水されるもの。残り70%ほどは、その他の炊事・洗濯・入浴などの日常生活から出る諸々の生活雑排水だそうです。生活排水に含まれる汚れの量(BOD量)は、1人1日当たり約43g程度とされいます。

    これらをそのまま川や海に流すことはできません。
    以前は水洗トイレからの汚水だけを優先的に住まいの敷地内で浄化し、70%をしめる生活雑排水は特に処理されない時代もありましたが、現在では家庭から排出される生活排水は、すべてなんらかの方法で浄化するように定められています。

    代表的な方法は、< (1)下水道 (2)コミュニティ・プラント (3)浄化槽 >この3つです。

    下水道が整備されておらず、そのほか地域で共有している浄化施設などもない場合には、個別に浄化槽を導入し、敷地内で出る生活排水をキレイにしてから敷地外へ流します。
    浄化槽とは、微生物などの働きを活用し、家庭から出る生活排水の汚れを浄化するための汚水処理設備のことです。
    『浄化槽法』という法律があり、取り決めにしたがって維持・管理をしながら使っていきます。

     

    浄化槽のマメ知識

    種類

    浄化槽には、大きく分けて2種類があります。
    現在の主流は、トイレからのし尿も含めた全ての生活排水を同時に処理することができる『合併処理浄化槽』です。一般に『浄化槽』という時には、大体『合併処理浄化槽』のことを指します。
    し尿だけを処理する『単独処理浄化槽』というものもありますが、現在は『みなし浄化槽』と呼ばれており、平成13年(2001年)4月1日以降新しく設置することは禁じられています。
    生活排水に含まれる汚れは、合併処理浄化槽を設置した場合には90%以上除去されますが、単独処理浄化槽の場合は20%程度しか除去されません。
    環境保護への意識が醸成される過程で、新しく設置される浄化槽は合併処理浄化槽であることが必須となりました。すでに単独処理浄化槽を利用している場合にも、合併処理浄化槽への入れ替えが推奨されています。

     

    見分け方

    土地探しをする時、古屋付きの敷地を購入して改修などをしたい方々にとっては、すでに入ってある浄化槽が『合併処理浄化槽』なのか『単独処理浄化槽』なのかは、気になる点かもしれません。
    そんな時は地面に大きなマンホールのある場所を探して、それが一列に何枚並んでいるかを数えてみましょう。
    3枚なら、『合併処理浄化槽』の場合が多いです。
    2枚なら……『単独処理浄化槽』の可能性があります。最近の最新型のコンパクトな『合併処理浄化槽』には、マンホールが2枚のものもあります。が、様子を見てみて、最近工事をしなおしたような形跡がなく貫禄ある佇まいなら『単独処理浄化槽』だと思っても良いでしょう。

     

    大きさ

    一般の住宅に設置される浄化槽の容量は、5人槽・7人槽・10人槽の3パターンです。
    ご自身で選ぶ必要はなく、設置する有資格者が法律の処理対象人員算定基準に基づいて、家の延べ床面積から必要な容量を算定してくれます。 
    2人暮らしなのに「5人槽を入れる」と言われたり、実際に暮らす家族の人数と浄化槽の人槽数が合わない場合もありますが、床延べ面積が130㎡以上あれば、家族は2人でも7人槽が必要です。※
    目安はあくまでも、建物の延床面積なんですね。

    5人槽130㎡未満 ※
    7人槽130㎡以上 ※
    10人槽2世帯住宅など複数の台所・風呂がある場合

    ※基準となる面積は地域によって違う場合があります。

    浄化槽のしくみ

    微生物が、有機物を分解する活動を利用しています。

    浄化槽は、水中の微生物が有機物を分解する働きで汚水を浄化する仕組みとなっています。
    活躍する微生物は、大きく分けて2種類。
    空気を好まない嫌気性微生物と、空気が好きな好気性微生物です。

    浄化槽の中には、性格の違う槽が区切られていくつか並んでいます。
    それぞれの槽の中の環境や棲んでいる微生物・期待されている働きが異なり、おおよそ次のような流れ作業で、順番に仕事の終わった排水を受け流していきます。

    【1】
    汚水がまず入るのは、嫌気ろ床槽です。酸素は極力ない状態が保たれています。
    汚水中のゴミや固形物・浮遊物を濾しとる“ろ材”があり、目立つゴミを除去します。
    ろ材の表面に付いた嫌気性微生物(酸素がないところで元気に働く微生物)が、汚水に溶けているアンモニアやメタン・炭酸ガス・硫化水素などをゆっくり食べて(分解して)しまいます。

    【2】
    接触ばっ気槽。酸素が盛んに送られる槽です。
    好気性微生物(酸素があるところで元気に働く微生物)は食べるスピードが旺盛。 嫌気ろ床槽から送られてきた汚水中の汚れをさらに分解・浄化します。

    【3】
    沈殿槽です。
    汚れ=有機物は微生物たちのゴハンなので、たくさん食べさせると微生物達は繁殖し、活動を終えるものも出てきます。
    活動を終えた微生物のかたまりや、微生物達がどうしても分解できなかった汚れを汚泥として沈殿させて取り除きます。
    キレイな上澄みの水を塩素消毒し、外部へ放流ます。

    あのマンホールの下で、住人一人あたり500mlペットボトル500本分もの生活排水が日々浄化されているのだと思うと、すごい勢いですね……!人間の食欲ではとても追いつきそうにありません。

     

    普段の使い方(家族ができる気遣い)

    微生物たちに優しい排水の流し方を心がけましょう。

    多様な微生物たちがしっかり働ける環境を整えることで、浄化槽は旺盛に排水の汚れを浄化してくれます。
    私たちの敷地内には実は隠れた地下室があり、無数の小さな生き物たちが棲んでいたのです……!このことを意識して、できるだけ微生物たちに負担の小さい暮らし方を心がけましょう。

    おむつ、衛生用品、タバコのすいがら、台所から出る野菜クズ、天ぷら油などをそのまま流すのはよくありません。微生物の分解できる限界を超えたモノは、処理できずに浄化槽を傷める原因となります。
    現場の検査員さんたちからよく聞く意外な問題のある固形物は、そのまま流せるというトイレのお掃除グッズです……。点検のタイミングにもよるのか、浄化槽のマンホールを開けてみるとティッシュのようなものが溶けずに浮いていることがよくあるのだと伺いました。

    掃除や洗濯の際の、漂白剤やカビキラー……キツイ洗剤は、連日大量に流さないようにします。
    たまたま大掃除や溜まった洗濯物の整理が重なってしまった時は、排水の濃度に気を配ります。使用量は商品に記載のある規定量を守り、濃い洗剤・溶剤を流す場合には、少し水道水を足して流しましょう。

    温泉を模したものなどイオウ系の入浴剤は、連日長期間にわたって使うと、浄化槽の臭いの元になる場合があります。

     

    家族ができる点検

    日頃、家族で気を付けたいこと

    〇浄化槽の周りから、イヤな臭いがしないか。
    ○浄化槽の周りに、蚊や虫が大量に発生したりしていないか。
    ○マンホールの周囲に、泡や水が溢れているなどの異変はないか。
    ○浄化槽付近にあるブロアー(浄化槽内の微生物へ空気を送る、ペット用水槽のブクブクのような装置)の振動や音に変わりがないか。
     etc……

     

    大変な点検はありません。
    どんなコトが異変に気づくためのポイントかさえ知っておいていただければ、気がつきやすい変化です。

     

    定期的に必要な点検(プロにまかせるべきもの)

    年に数度の定期的な保守点検(浄化槽法 第8条、第10条)

    浄化槽に流れこむ生活排水の量や質は、家庭や施設の状況によって多様です。
    浄化槽の維持管理には、各家庭の浄化槽の状況を見つつ、必要な対応を柔軟にとることができる経験が求められます。本格的なお手入れは、県知事の登録を受けた浄化槽保守点検業者に依頼しましょう。(市町村のホームページでリストが公開されています)
    装置の調整・修理や、消毒薬の補充などの作業を「保守点検」といいます。浄化槽法施行規則に定められている「保守点検の技術上の基準」にしたがって行わなければなりません。
    保守点検の回数は、浄化槽の処理方式、大きさごとに、「環境省関係浄化槽法施行規則」により定められています。

    保守点検のおもな内容

    ○消毒剤の点検補給
    ○汚泥の調整移送
    ○ブロワの点検
    ○機能の診断
    ○水質・水量の測定 
    etc……

     

    年に一度の法定点検(浄化槽法 第11条)

    初年度は、浄化槽の使用を始めてから3カ月を経過した日~5カ月以内に1度。
    それ以降は毎年1回、都道府県の指定検査機関による水質に関する検査を受けなければなりません。
    季節になると検査機関から電話や連絡が来る場合が多いです。

     

    状況に合わせての清掃・汚泥の汲み取り(浄化槽法 第9条、第10条)

    浄化槽の汚れや溜まった汚泥を洗浄しながら抜き取り、適正水位まで水張りをしてもらいます。
    地域ごとに、市町村長の許可を受けた浄化槽清掃業者さんがおられます。工事を担当してくれた業者さんや、ご近所さん、お役所、保守点検に来てくれている業者さんなどに聞いてみましょう。
    頻度は、年に1度程度を目安に、汚泥の溜まり具合などによって様子を見ながらになります。
    状況や経緯をわかっている業者さんに任せると、次に清掃が必要となりそうな時期など、感触を細やかに教えてもらえやすいので、継続して同じ業者さんにお世話になるのがオススメです。

     

    よくあるアレコレ

    ブロアーの故障

    ブロアーは消耗品です。故障や不具合があった場合は、保守・点検業者さんに相談するなどして修理・取り替えを行いましょう。
    ブロアーは取り付けも簡単で、同等のものをご自身でお求めになり設置しなおすことも可能です。
     

    留守にする場合

    連休など少しの旅行でしたら、そのままにしておいて大丈夫です。 浄化槽の電源やブレーカーは、絶対に切ってはいけません。浄化槽内の好気性微生物が空気を得られずにしんでしまったり、不具合の元となります。再起動の際に内部のばっ気で撹拌されて、悪臭が周辺に拡散される原因ともなります。
    1年以上留守にするような場合は、電源を切り、プロによる汲み取りや清掃を行ってもらいましょう。「長期の留守である」と、あらかじめ伝えておくとスムーズです。何もしないまま放置してしまうと、浄化槽が健全に保たれず、悪臭や故障が起こります。

     

    設置してから最初の半年ほど。

    運転をはじめて間もない浄化槽内では、まだ微生物たちの活動が安定していないことがあります。しばしば、悪臭や虫が出たりすることがありますが、心配なことはプロの業者さんに相談したりしながら、しばらく様子を見ましょう。
    利用開始から半年ほどすると、浄化槽内部の環境が落ち着き、状況が好転する場合もあります。

    浄化槽の導入にあたっては、多くの市町村が補助金などのサポートを用意してくれています。
    中村伸吾建築設計室・木の家工房Mo-ku(モーク)で設置される場合には、ご紹介をさせていただいております。

    浄化槽の保守点検や法定点検は、タイミングがあればぜひ一度、立ち会いをしてみてください。
    学校の科学や生物の実験のようで、とっても見応えがあります。
    一度Mo-kuの点検の際、ビンの容器に浄化槽の水を汲み、顕微鏡で中に泳いでいる微生物を見せてもらったことがあるのですが……「ウチにこんな小さな同居人達が居たなんて……っ」と、なんだか感動してしまいました。
    身近に自然の力を実感できる、良い機会かもしれません。

    要点さえ把握すれば、浄化槽との付き合いは、とてもシンプルです。
    ベースはこの微生物たちが元気にたくさんゴハンを食べられるよう、環境を整えてあげること。
    それにプラスして、法律で決められた回数のプロの点検をしっかり受けること……この2点のみです。
    点検さえしっかり受けていれば、快適で環境に優しい暮らしを浄化槽と共に営めます。

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