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屋根形状と雨漏りの関係

前回の記事では軒の出と雨漏りの関係についてご紹介しましたが、今回は屋根形状と雨漏りの関係について掘り下げていきます。

屋根形状と雨漏り発生割合

屋根形状の違いと雨漏りについての日本住宅保証検査機構による調査報告では、屋根形状を片流れ屋根、切妻屋根、寄棟屋根、その他の屋根の4種類に分類し、

雨漏り発生割合を見てみたところ、以下の様な結果となりました。

雨漏り発生割合は片流れ屋根が76%、切妻屋根が15%、寄棟屋根が6%、その他の屋根が3%。片流れ屋根の雨漏り割合の高さが目を引きます。
片流れ屋根は高い方の壁から雨を受けることがあったり、屋根を伝って高い方の壁の中に水が入ることが想定されるため、他の屋根形式よりも雨漏りリスクが高いことは分かっていましたが、ここまで偏りのある数値となっていることは驚きです。
単純に片流れ屋根と切妻屋根が同じ数だけあった場合、雨漏りの発生確率は約5倍ということになります。

新築住宅の屋根形状内訳

フラット35の2017年の住宅仕様実態調査報告では屋根形状の比率は以下の様な割合となっています。

片流れ屋根における雨漏り発生確率は切妻屋根の約6.7

これらのデータから、新築住宅の31%を占める片流れ屋根に雨漏りの76%がそこに集中しているということがわかります。
数が多いわけではないのに、雨漏りが集中している、、、、というのはぱっと見ですでに良くないですね。
雨漏り発生確率を単純計算すると片流れ屋根における雨漏り発生確率は切妻屋根の6.7となります。
切妻屋根の家が1件雨漏りしている間に片流れでは6~7件の家が雨漏りしている事になります。
また、軒の出の有無も雨漏りの発生に影響を与えることが分かっています(前回記事参照)。
近年では片流れで軒の出のない住宅、いわゆる『軒ゼロ住宅』も増えてきていますので、それが片流れの雨漏れの多さに影響を与えている可能性も示唆されています。

都市部で顕著な傾向として、軒の出寸法が年々短くなり、全く軒の出がない、俗に軒ゼロと呼ばれるようなデザインの住宅も増えており、外壁面が容易に雨がかりするようになっている。
また、防水納まり上問題が多いルーフバルコニーの採用も一般化し、外皮の雨水 浸入リスクも高まる一方と言える。

「木造住宅の耐久性向上に 関わる建物外皮の構造・仕様とその評価に関する研究」(国土交通省 国土技術政策総合研究所)より

まとめ

今回の記事では

  • 雨漏り発生割合は片流れ屋根が76%を占める
  • 新築住宅の屋根形状の比率は切妻屋根が41%、片流れ屋根が31%
  • 片流れ屋根における雨漏り発生確率は切妻屋根の約6.7倍

という調査結果をご紹介しました。
前回記事の軒の出寸法に加えて、屋根形状の違いによっても雨漏りリスクに偏りがあることが分かりました。
個人的な印象としては片流れ屋根が雨漏りしやすいといってもせいぜい2~3倍程度では、、、と思っていたので、単純計算ではありますが約6.7倍という数字には少し驚きました。
また、『軒の出のない片流れ屋根』を採用する場合にはさらにリスクは増すので、設計、施工共に十分な注意を払う必要がありますね。 
※今回の調査結果はすべて通常の雨についてのもので、台風などの災害によるものではありません。あくまで普通の雨が降った場合の雨漏りについてですので、その点ご注意下さい。(台風などの災害による雨漏りは瑕疵担保責任外となっています。)