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地産地消のおしえ

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竹富島は、隆起珊瑚礁の島です。
荒い気象条件や、山も川もない痩せた土地、雨の他は限られた井戸しか頼ることのできない真水事情などが、相互扶助の精神や自治を育んだといわれます。
島には、屋敷の庭と沿岸に防風林がありますが、用材に足りるほどの木はとても自生できません。
材木は、約40キロもの海上を渡った隣島の西表島で調達していました。
島民はユイの活動の一環として、「山番」という材木採集チームを組み、必要な樹木の切り出しを行いました。

重宝されたのはチャーギです。本州では、イヌマキと呼ばれています。
「真木(マキ)」(本当の木、正統な木)に似ているが、劣る木という意味の名前です。
しかし高温多湿の沖縄地方では、バクテリアや虫の繁殖が盛んで、本州で好まれる樹種は傷みが激しく、イヌマキこそが群をぬいて保存性と防蟻性に優れた材でした。
比重が重く硬い木材で、殺蟻成分ククトンを含んでいたのです。
イヌマキは成長は遅いですが、深根性で萌芽力の強い植物です。刈っても刈っても次々と新芽が出て隙間なく常緑の葉を茂らせるので、風防にも適するという、成育中にも強風にさらされる島の人々へ恩恵をもたらす特徴を備えていました。

ご存じでしたか?
実は、イヌマキが本州で一番繁殖しているのは、紀伊半島です。
その緻密かつ滑らかな木肌と硬い特性が、ソロバンのタマなどに活かされています。

和歌山の民家では、色・ツヤや断熱性・吸放湿性に富むスギや、防腐・抗菌効果が比較的高く、香りの良いヒノキなどがよく使われます。
柱・梁といった構造材、床・壁・天井から、外装、桶など小物にまで使え、汎用性の高さも魅力です。
比較的、気候風土も穏やかな本州では、イヌマキより育成が早く、太くまっすぐな材が大量にえられやすい樹種が身近にあったため、イヌマキは沖縄ほど重用されなかったようです。

植物や生物には、淘汰という競争原理が働きます。
より環境に適応することができた種が、その土地で栄えます。
シンプルに考えると、地域で育つ身近な種は、その地域の気象条件や、病気・バクテリア・虫に、一番強いということになります。
建築基準法や住宅金融公庫の基準でも、国産のスギ・ヒノキ・ヒバなど特定の樹種は、国内で活用する限り、無垢でも薬剤を用いたのと同等の耐腐朽菌、および防蟻性をもちうると認めています。

合理的な結論を求めようとする時、私たちは情緒的なものから距離を取りがちです。
しかし、私たちが美しいと感じるもの。懐かしいと感じる景色の成り立ちには、それを現実に成立させてきた、素直な智恵が隠されているようです。
地域の自然と共生する建築は、情感豊かでさりげない風景を形づくり、私たちを優しく迎えてくれます。
まず、肩の力をぬいて…その気持ちよさから、背景を紐といてみる眼差しも必要なのかもしれません。

(Mo-Ku通信vol’18)

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