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中三栖の家

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建物解説


 

 夏涼しくて冬暖かい、清々しい空間を内包した、団らんのある家・・これが住まい手の欲しい家(コンセプト)です。
初めて敷地を訪ねた時、住まい手から頂いたコンセプトをカタチにするには格好の場所だと感じました。北側道路の東西に長い敷地、一段下がった南側は梅畑、その緑に遮られて近くに人工物はあまり見えず、遠景には熊野古道につながる山々が見えました。西側にはすでに隣家があり、夏の西日や冬場の北西風をやわらげてくれます。大きいめの敷地は「家庭菜園がしたい・・」というご希望を叶えるだけの余地を残しています。

基本骨組は、後の増改築に対応する古民家の良さを生かした民家型構法。仕上げには杉・桧の無垢材、珪藻土、和紙、石などの自然素材を用いて、住まい手にも環境にも優しい空間づくりを心がけています。家族の団らんの中心は住まいの中央に設けた居間・食堂の大空間。南側には四間続きの大きな開口部を持ち、光と風を、ある時は思い切り受け入れ、ある時はシャットアウトしながら季節感のある快適な生活を助けます。
1階には床の間と寝室の二つの畳間があり、寝室にはウォークインクローゼット。玄関脇には家事室があり、ここには台所につながる導線と大きな収納庫、それに、ちょっとした書き物も出来る造り付けの机を用意しました。キッチンは対面型ですが、行き止まりがなくアイランド型のような使い勝手が出来るよう考慮しています。大きな切妻屋根の流れの先に駐車場を設け、そこに勝手口を付けて、雨に濡れることなく住まいとの移動ができるようになっています。屋外のデッキと気持ちよくつながるようリビングのサッシには全引き込みの工夫を凝らしました。

力強くて決断力に富み包容力の豊かなご主人と、良く気の付く優しい奥様、そしてかわいい子供たちとの家づくりは楽しい共同作業でした。
竣工から1年が過ぎた中三栖の家では玄関先の緑も少しずつ育ち始めています。住まいの廻りの緑が増え始めると建物の表情も豊かになり、暑さ寒さをはじめとする自然の環境もやわらぎます。緑の畑を渡るさわやかな風をいっぱいに受けて、いつまでも続くご家族の団らんを、優しく包み続けられる住まいであることを願っています。(中村伸吾)

 

住まい手インタビュー


予想外のスタート

「梅の花が咲く頃が楽しみですねぇ。」
敷地とその周囲の風景を見渡しながら中村さんと私達の家作りが始まりました。

子どもが小学校に入るまでに家を建てたいと、いろいろハウスメーカーや工務店さんの見学会を見に行っていた私達ですが、中村さんの構造見学会に参加して、中村さんの家造りに対する理念、建て方から使用されている材料に至るまでの話を伺った時、夫婦共々”この人だ!”と思ったというのが本音の所でした。しかし、そのあとで相談会を持って頂いた時、正直実際はセールスされるんだろうなと思っていたので、そんな色は見せないようにしようと思っていた私でしたが、「で?」と、逆に”どんな相談ですか?”と一言で返されてしまい、ハッとして舞い上がり即答で、

「中村さんに家を建ててもらいたいと思っているんです。」

と答えた私。帰ってから妻に大笑いされたことを思い出します。

 

周囲の景観になじむように

設計の段階では、周囲の景観を家が建つ前となるべく変わらないようにしたいと考えていたので、片流れの屋根のプランに決めました。その他にもいくつかの候補を無理言って作って頂いたのですが、敷地や景色をじっくりと眺めながら構想を練ってくれたものが1番土地や私達の思いと合っていると感じました。
そして、我が家との生活が始まって1年が過ぎました。檜や赤松の床は気持ちよく、2間続きの和室やほとんど間仕切りをしなかった1階は、家の中に行き止まりになる所が少なく開放的です。2階も現時点では、部屋をほとんど仕切らずにフリースペースにし、子ども達のプレイルームとして使えているので、子ども達が家中をのびのびと駆け回って遊ぶことが出来ています。

 

雨の時期も快適

梅雨時期でも木や珪藻土が湿度を調整してくれることで快適に過ごすことができました。また、窓を開放すると気持ちの良い風が通り、酷暑だった今年の夏でも妻と末っ子は、日中ほとんどクーラーを付けずに過ごせたそうです。

作り付けの家具も収納力充分で、無垢の暖かさが家全体を包んでくれ、檜風呂は保温性も高く、周囲の木の壁も結露を作らずカラッとしているので、家にいながら毎日大好きな温泉に浸かっている気分にさせてくれています。

 

入居後にリビングから見た梅の花

入居当時は何もなかった玄関の庭にも植栽が入り、駐車場脇に作った小さな菜園では、この夏ささやかながら夏野菜も収穫できました。少しずつ家(家族)と地域、自然との調和が図れてきているのではないかなと感じる今日この頃です。
完成後も何かと親身になって対応して頂いていることにも本当に感謝しています。これからもどうぞよろしくおねがいします。
リビングから見た梅花の景色は想像以上に美しく、妻や子どもだけでなく、この地で育って見慣れている私にも感動的でした。
これからも梅の季節が楽しみです。

 

建物データ
所在
和歌山県田辺市中三栖
竣工
平成21年8月
構造・規模
木造2階建 / 民家型構法
主要用途
専用住宅
敷地面積
273㎡(83坪)
建築面積
122㎡(37坪)
延床面積
162㎡(49坪)
床面積
1階 / 107㎡(32坪) 2階 / 55㎡(17坪)