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通り土間の家

住まい手インタビュー
初志貫徹!これに尽きる
この家は、特殊に僕らに合ってます。巡ったどこの展示場にも、こんな土間はなかった。 正面にこんなに大きな間口がある家もなかった。 けど風通しが抜群で、僕らはとても住みやすい。
- ▲建物を庭から見る。1階中央の土間スペースは南に面しており、土間には木製の掃き出し窓が並ぶ。
- ▲玄関ポーチ。玄関ポーチは内部の土間と同じくマサ土モルタル仕上。正面のコンクリート壁もマサ土モルタルで塗り上げた。
本当に大事なところは妥協せずこられたのが、良かったです。
同じ〈木の家〉でも、建物は人によってかなり作風が違いますよね。 中村さんの作品はドーンとおおらかな雰囲気で、それが肌に合いました。 暮らしてみると、ゆったりした空間づかいは実用的です。 家事動線なんかは、近くても狭かったらストレスだと思うんです。 どこに居てものびのびできて、わずらいを感じず快適に過ごしています。
自分で家を、建てる意味
住まいを考えた当初は賃貸も選択肢にありました。常に新しいところで住める。 メンテナンスしなくていい。ご近所トラブルがあっても引っ越せば済むし。
でもまずは判断材料を集めようと、戸建ての実物を見に展示場・見学会を巡りました。 友達が建てた業者さん、評判のいい大手。通りすがりに飛び込んでみたり。 一通り行ってみて……大手メーカーさんは、ちがうかなぁという感触でした。 どっちの実家も昔ながらの農家だったので、最近主流の家は『自分たちの家』というイメージと重なりませんでした。
建てるなら、育ったような家がいい……というビジョンが明確になりました。 木の家工房モークは、完全に通りすがりでした。 「あの家は何やろう」「なんか〈木の家〉って書いてあるで」……「行ってみる?」と。 その日は何かイベントがあったそうで、たまたま作品写真のスライドがあって。 趣味の部屋を造りたかったあるお家のエピソードを、中村さんが話してくれました。 『趣味室がある楽しい家』をテーマにスタートしたけど予算や諸事情と対峙するうち「遊ぶための部屋なんか作ってる場合じゃないんじゃないか」って、建て主さんが悩みはじめたと。でも中村さんは「最初にご家族で建てたかったのが『趣味室がある家』だったなら、絶対にあきらめたらダメですよ。どんなに小さくても造りましょう」って、お話しされたと聞きました。 わかる────っ!妥協するくらいやったら、家なんか建てやんでもええわ!!って、その時めちゃくちゃ共感したんです。普通に住むんだったら、賃貸の方がいいですよ。気楽だし身軽だし。やっぱり建つからには、思い切ったものやで!!
「ああしたい」「こうしたい」って想いをちゃんとカタチにできる人と、家を建てたいと思いました。
- ▲内土間とひとつながりのリビング。キッチン、リビング、内土間はひとつながりの空間としてデザインした。 内土間の開口部は木製掃き出し窓とし、内部と外部をシームレスにつなぐ。
完全に余談ですが。モークの本棚のマンガのラインナップも決め手でした(笑)。 これ、他の建て主さんも言ってるよね!マンガのタイトル見たら、間違いないです(笑)。 「この本、実家に置いてるわぁ。家建てたら、ええ本棚へしっかり並べんとなぁ」なんてイメージが広がっていきました。 いや、なんか……家づくりが、楽しくなってきたんですよね。
アドバイスと紆余曲折
薪ストーブ! 充分な本棚! ハンモックをつるしたい! 風通しは爽快に。あと、二人の実家みたいに土間を作ってほしい……というコンセプトでプランに入りました。
なんと、第8案まで難航……。結局は、第2案に戻りました。打ち合わせは中村さんと夫婦とで詰めるんですが、身内や周囲からいろんな意見が飛び込んでくるんです……「ここもっとこうした方がいいんじゃないか」「ウチはこうだったよ」と。「そうかなぁ」「こうなんかなぁ」と修正を加えて……でもどれだけ変更を重ねても、しっくりこない。それで、自分たちが良いと思うものを改めて振り返ってみたら「2案とか3案かなぁ」と。紆余曲折を見守ってくれていた身内も「あんたらが好きなのでいいやん。あんたらの住む家なんやから」って言い始めて。
初期の案は、やりたかったことがそのままカタチになってたんです。ベースの案を決めてからは、大きな変更はなく今のこの家になっています。
- ▲住まい手こだわりの本棚。住まい手が強く希望した本棚は書斎スペースを中心に設けた。棚は本の大きさにあわせて高さを調節できる仕様。
- ▲2階フリースペース。寝室には同じ平面内の収納とロフトをセットでそれぞれに設けた。ゆくゆくは子ども部屋となる予定のフリースペース。屋根は登り梁形式とし、勾配屋根が内部から見える仕上とした。
老後には、老後の状況がある
トイレの位置は悩みました。老後は長い時間を過ごすことになるだろう和室から、若干遠かったんです。でも今の生活を考えるなら、プランの場所がベスト。「どうすべきかなぁ…」に、「その時にまたリフォームをしたら」と中村さん。移動がおっくうになる歳の頃には、トイレも相当古くなる。その時最適な場所へ、その時の最新のトイレを入れたらいいと提案されました。「あ。それでいいですよね」って。
実際に住んでみると、生活習慣が定まってからの方が決めやすい事もあると実感しています。スイッチの配置とか。老後の僕ら、身体も今と随分ちがうでしょうしね。その時また考えます。
なにを優先するかは大事
……お金の話に辿り着くまでは、夢がいっぱいだったな………。プランはかなりしっかりやれて、アイデアも詰め込んだ!でも建てるには……工事費が要る。見積もりが始まったら、現実が迫ってきました。
プラン中も、見積もりに入ってからも、大体の費用の目安やコストカットの方法は、教えてくれました。ローンも現実的に考えていかないといけないし……でも私達「ちょっと削ろうか~」と五十万くらい削減して、気がついたら別のところで百万くらい上乗せしてたりしたこともありましたね(笑)!具体的な段階に入ると、やりたい事もだんだん具体的になってくるんですよ……。すごく真剣に「削れるところ」を探すんですが、どう考えてもそんなに大きく「削れるところ」なんてない……。そして経済性をなにより優先するんなら「賃貸でいいやん」ってなってくる……。最後は思い切りました。初志貫徹! 思えば、あの時なにを優先するかで、今どんな家に住んでいるのかは、ぜんぜん違ったでしょうね。
- ▲畳間入り口から玄関方向を見る。土間はマサ土モルタル仕上。 夏には雨戸と網戸を閉めて、外部からの視線や太陽光を遮りながらの通風が可能。
- ▲洗面スペース。玄関土間から直通の洗面所。 リビングを経由せず、玄関から洗面所、脱衣室へ直行できる動線を確保した。
当初のコンセプトを実現して、僕らの家族らしい家が実現しました。 土間はいいです。 外から持ち込んだものを、そのままその場で気軽に広げられるのは、土間ならではの機能性。 モノ作りが好きなんですが、絵の具や樹脂、作業中の屑などが落ちても気になりません。 作業場的な感覚で集中できます。ハンモックも薪ストーブも土間にあります。掃除がラクだから、薪を運ぶ時の木屑も平気。
- ▲内土間。木製の掃き出し窓をフルオープンとした状態。 内土間から外土間、庭へとシームレスにつながる。
- ▲外土間。内土間との間には目立たない程度の水返しの段差を設けた。 深い軒を伸ばすことで、雨の日の通風を可能にし、太陽光の室内への差し込みを調節する。
夏には正面の庭に子供用のプールを置いて、友人たち家族を呼んだりしました。リビングから直に土間で庭へ繋がっていますから、子供の靴を脱ぎ履きさせるとか、ちょっとした出入りも身軽です。みんな自由にくつろいでくれていました。
春からの風通りは格別です。格子戸と網戸を閉じてガラス戸を開け放ってると、気持ちいいんですよ。
(インタビュアー:中村祐子)
建物データ
- 所在
- 和歌山県岩出市
- 竣工
- 平成27年12月
- 構造・規模
- 木造2階建 / 在来軸組構法
- 主要用途
- 専用住宅
- 敷地面積
- 338㎡(102坪)
- 建築面積
- 107㎡(32坪)
- 延床面積
- 135㎡(41坪)
- 床面積
- 1F:91㎡(27坪) 2F:44㎡(14坪)