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土間のある家
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建物解説
今回の住まい手とは紀州木の家協同組合を経由しての出会いとなった。大阪に住む住まい手は「家を建てよう・・」と、たくさんのモデルハウスをご覧になったらしい。「どこも同じようなものだな・・」と思う一方で「やはり木の家が良い・・」という思いが募ったという。
- ▲東側外観。上部仕上げは焼き杉板南京下見板張り。下部はサイディングの上リシン吹き付け。外部との区切りは目隠し板程度で穏やかに。
- ▲バイク置き場。玄関脇にバイク置き場。大きく取って日常のメンテナンスぐらいは出来るように。
目標のないものづくりでは充分な満足は得られない。たくさんの夢の中から、的確な現実をつかみ取るための取捨選択がきちんと出来るコンセプトが必要だ。今回の住まい手は「季節を感じながら、家族それぞれのニーズにあった時間を過ごせる木の家」というしっかりとしたコンセプトをお持ちだった。音楽家のご主人と役者の奥さん、バイク好きの息子さんと寝たきりのおばあちゃん。なるほどそれぞれに状況や楽しみ方が違っていた。
- ▲玄関土間。奥より玄関方向を見る。土間床は蓄熱体、暖炉の火が消えた後も室内を穏やかに暖め続ける。
- ▲玄関より土間を見る。床はタイル貼り、壁は珪藻土塗り、天井は杉厚板あらわしリボス仕上げ。
- ▲居間より土間を見る。薪ストーブ左側はテラスに続く。左奥は玄関、手前は居間。土間はこの家の導線の中心。
- ▲音楽室。奥より玄関方向を見る。土間床は蓄熱体、暖炉の火が消えた後も室内を穏やかに暖め続ける。
- ▲土間より食堂を見る。居間・食堂は一つにして吹き抜け付きの大空間。冷暖房は部屋単位ではなく住まい全体で考える。
とても個性的なご家族に玄関から続く大きな通り土間のある家を提案した。住まいの中心を貫くこの土間がご家族の趣味のゾーンをある時は区切り、ある時はつなぎ止める。土間は本来、土足で過ごす生活の場、内と外をつなぐ装置といってよい。今回はこの装置に、室内空間をおだやかに区切り、家族間に適度な距離感を保ちながら、なごやかに交流できる住まいの交差点としての役目を期待した。
- ▲テラスより音楽室を見る。開口部は引込み戸。開けると1間の大きな開口。雨戸は木製。雨戸を閉めても換気できるようスリットを設けている。
- ▲台所。家具は全て木製のオリジナル制作。キッチン天板は人工大理石。
- ▲居間。居間と土間の間には引込み戸が仕込んであり、必要に応じて区切ることが出来る。上部は吹き抜けていて2階の居室に繋がる。
土間には大きめの薪ストーブを据えた。吹き抜けを持つ60坪近いこの住まいをたった一台で暖める。土間の床は蓄熱体、陽差しやストーブの熱を蓄えて冬場でもおだやかな暖かみで室内を満たしてくれる。自然の心地よい環境は家族をやさしく包み、暮らしにゆとりと会話をもたらすことだろう。寝室や板間のある2階は、吹き抜けで1階のリビングとつなぎ、常に声や気配を感じることで家族に一体感が生まれるように心がけた。
- ▲土間より居間を見る。突き当たり壁には掃き出しの開口部。2階手摺りの後ろにも風抜き窓。風を通すには必ず入口と出口を設ける。
- ▲階段。階段はスリットにすることが多い。キチンと機能を果たしながら存在を手中しすぎることがないように。
- ▲2階廊下。右手は居間の吹き抜け、左手は階段。この廊下を中心に空気の自然対流が行われる計画。手摺は本棚。風通しと空気のひろがりを得るための工夫。
- ▲1階洗面と便所。水周りの壁は湿気対策もかねて桧板。便所は介護も楽なように十分な大きさを取る。
- ▲脱衣室。脱衣は洗面を別に用意して専用室。
- ▲2階ホール洗面コーナー。2階のホールには洗面コーナーをしつらえた。天板はご主人が用意された杉の一枚板。
理屈やファッションで住まい造りに取り組むと失敗をする。目先の利便性やあてがわれた価値観に頼ることなく、自分たちにとって本当に大切なものは何なのかを見つめ直すところから住まい造りを始めることをおすすめする。
「思い通りの住まいが出来ました。薪ストーブも、時々音が聞こえすぎる吹き抜けもこの住まいにはなくてはならないものです。とても快適に過ごしています。」奥さんの声は役者修行で鍛えたよく通る声だ。大きく届いたその声を頑張ったご褒美にありがたくいただこうと思う。(中村伸吾)
住まい手からのお便り
約50年ほど前に建築された建て売り住宅でした。老朽化が目立ち、綿壁がぼろぼろ落ちて、階段はいつも綿ぼこり、妻はそれがいやだと、常々こぼしていました。風呂のタイルが割れ、抜け落ちそうになり、いよいよ建て替えの決心をせざるを得なくなりました。そこで、ハウスメーカーのモデルハウスを隈無く見学に行きました。どこも設備も良く、美しく、正直どのハウスメーカーでもいいような気がしました。
家を建てることに関心がいくと、普段気にも止めなかった新聞の広告に目が行きました。『「いい家」が欲しい。』(松井修三・著)や、「いい家は無垢の木と漆喰で建てる」(神崎隆洋・著)などの本を買い求め、そこで、漆喰や珪藻土の良さ、外断熱の事などを知り、東京にある神崎さんのモデルハウスなどに見学に行ったりしました。そして、家を建てるなら無垢の木で、という方向へ気持ちが傾くと、不思議なことにハウスメーカーのモデルハウスは色あせて見えました。
そういうさなか、紀州木の家協同組合の広告が目に留まり、海南にモデルハウスがあるとのこと。早速見学に行きました。一歩中へ入るなり妻は、たいそう興奮し、こういう家が欲しいとただ一言。その後、何度か海南へ見学に行きましたが、その思いはますます強くなり、建築の運びとなりました。
毎日建築現場に足を運び、かんなくずの多さや木の香りに、本物の木の家をつくっていただいているのだなあと実感したものです。
一年を過ごしてみて、感じたことは、一言で言えば「とても快適だ」ということです。冬、お天気のいい日には、暖房をしてないのに、「暖かいですね」と来られた方は皆さんおっしゃっていました。夜に焚くストーブの熱は、吹き抜けを通って2階の寝室をも暖め、朝起きて来た時の温度は、17℃前後で、身震いすることもありませんでした。梅雨には、足の裏もべとつかず、さらさらで、無垢の床板の快適さを初めて知りました。夏、各部屋にエアコンを設置していますが、使用したのは数日で、晴れた日の夜は、前の畑を通ってくる自然の風が快適でした。エアコンを使った後の、気だるさから開放され、さわやかな目覚めを味わいました。
希望以上の出来栄えで、私たちの自慢の終のすみかが出来ました。たった一つの難点は、心地よいと見えて、お客さんがなかなか帰ろうとはしないことです。(笑)
望みをすべてかなえていただきました。中村先生初め、携わっていただいた多くの方々に感謝の思いでいっぱいです。有り難うございました。これからもスローライフを楽しみながら、大切に住まわせていただこうと思っています。
建物データ
- 所在
- 大阪府松原市
- 竣工
- 平成18年12月
- 構造・規模
- 木造2階建 / 民家型構法
- 主要用途
- 専用住宅
- 敷地面積
- 324㎡(98坪)
- 建築面積
- 136㎡(41坪)
- 延床面積
- 175㎡(53坪)
- 床面積
- 1階 / 129㎡(39坪) 2階 / 46㎡(14坪)