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府中の家ができるまで
Process

府中の家 外構工事と植栽工事。

・住まいは建物だけでは成立がむつかしい。
緑豊かな、環境の良い大きな敷地の真ん中にポツンと建つ住まいならば、特に考えることもないかもしれない外構工事。しかし、現実にはそんな恵まれた立地はあまりないわけですから、雨風への対応や眺望(景観)・防犯・防音・利便性などを考えて、建物廻りに塀やフェンス、カーポートなどを用意することになります。こころ健やかに生活するためにはいくばくかの緑環境も必要になってくることでしょう。府中の家も住宅街の一角に位置しますので、建物本体以外にも良好な住環境を得るために外構工事は必要になってきます。建物完成後にこれらを整備しましたのでご紹介します。
まずはカーポート、敷地の南西の角に位置し、玄関先のアルミ庇につながり、雨の日にも濡れることなく玄関にたどり着けるように計画されています。様々な形状がある中で、選択したのはアルミのトラス組の上に透明感のある屋根が組み合わされた品物。構造体がそのまま意匠になっているので、リズム感があって、見る人に軽快な印象を与える面白い形状です。
南・西の道路際に設置したのはアルミの型材フェンス。木材が少し色づいた感じの色合いで、視線をそこそこに防ぎながら、風を通す形状です。左の道路際、アルミフェンスの奥にあるのは、建物内の風の通り道にある掃き出し窓のための目隠しの塀です。仕上げは建物本体の外壁に合わせていますので、一見建物の一部のように見えて、特段目隠しであることを意識させないように工夫しました。高さは約2メートル。人の目線を遮り、風の通りを妨げない頃合いの設定です。

・カーポート土間仕上げ。
カーポートの床には土間コンクリートを施工しました。1枚の大きな床になると途中どこかで割れてしまうことが予想されますので、コンクリート床は何枚かに区分けして施工しています。カーポートの間口は4.5メートル(車1台半)ありますので、前後に走る溝で3メートルと1.5メートルに分割して、右側を車の駐車位置、左側を玄関アプローチと意識できるようにしました。
コンクリートの表面仕上げは、コンクリート打設後に表面を水で洗い、骨材である砂利が見えるように仕上げる洗い出しという仕上げです。雨の日に濡れていても滑りにくくなりますし、無機質なコンクリートの表面に独特な表情を与えてくれます。

・敷地内は砂利敷仕上げ。
敷地内の余地にコンクリートを打って仕上げてしまうと、草が生えなくて良い・・・などのメリットはありますが、夏場の太陽光の蓄熱や反射熱はデメリットとして残り、雨水も地面に返すことができませんし、あまりに合理的過ぎて環境に潤いが感じられません。そこで、多くの余地は砂利敷仕上げとしました。雑草対策として、防草シートを砂利下に敷き込んだり、砂利の厚みを10センチほどに厚く敷いたりして対応しています。雑草が生えることはあっても手で抜き取ってしまうのは容易です。

・駐車場との境はジャカゴで。
建物の南側には大きな掃き出し窓があります。その窓は駐車場と隣り合っているために空間の区切り・目隠し・防犯・安全のために区切りが必要です。カーポートや西側フェンスはアルミ製のものを選択しましたが、ここではクルマの万が一の操作ミスにも備えてジャカゴを積むことにしました。メッキされたワイヤーメッシュの箱に基礎の下の地盤の締固めや土木工事などに使われる栗石を入れた品物です。大量の石が入りますので重く、車の直撃にも耐えられます。

メッシュのカゴに、ただただ石を入れているように見えますが、施工にはちょっとした慣れが必要です。側壁表面には、大きくて一部が平らなものを意識して選び積み上げます。中央部分は小さな石でもかまいません。石がたくさん入ると、その重みで中央が膨らんできますので、決まった間隔ごとに前後のふくらみ防止の控えが必要です。積みあがると上部のメッシュのフタをしますが、それで仕事を終えてしまうと石には泥が付いたままなので、仕上げに表面の水洗いが必要です。ジャカゴの塀は、仕上がりに手仕事感があり、石それぞれの表情も楽しめるので、なかなかに面白い建築素材です。

・基礎立ち上がり貫通部処理。
屋内の床下配管は、後のメンテを容易にするためベタ基礎の上に転ばし配管としています。そうすると問題になってくるのが、配管が屋外に出ていくときの処置(工夫)です。床下スラブに配管用のピットを用意して、地盤面下でまとめて基礎立ち上がりを貫通するのも一つの方法ですが、それではベタ基礎スラブが複雑になり工事費が割高になりますし、万が一の場合の水たまりの原因にもなります。さらには、配管の取り換え時には屋外の当該部分で地面を掘り返す必要も出てきます。

そこで、スラブ上(地盤面の上部)で基礎立ち上がりをそのまま貫通させて屋外に出す方式を採用しています。こうしておくと屋内配管の取り換えの自由度が増す上に、その際に屋外の地面を掘り返す必要もなくなります。貫通部分は破損に備えて側溝に使うU字溝でカバーし、中に砂利などを入れて保護しておきます。

・屋外水栓の設置。
植栽の水やり、浄化槽の点検時、クルマ洗いの時などに備えて、屋外に水栓を用意しておくと何かと重宝するものです。

写真は庭側に用意した外部水栓(まだビニールの養生シートをかぶっています)。この水栓の右隣には6帖大の外部テラスがありますので、この水栓にはステンレスの外部設置用の流しを組み合わせました。バーべキュ―の用意の時やお楽しみの後の後片付けなどの時には大いに役立ってくれるだろうと思っています。

こちらは玄関脇の植え込み際にある水栓。ここでは泥のついた道具類や手・足を洗ったりするように、足洗いとしての体裁を整えました。
以上のように、府中の家には外壁周りに2か所の水が出る設備を設えましたが、現況でも庭木の水やりに手洗いにと大いに役立っています。何もかもが落ち着いて、早くバーベキューの後片付けがしたいものです。

・植栽工事。
最後になったのが植栽工事です。府中の家の敷地は南北に細長い。敷地形状に合わせてなるべく空間に無駄ができないように建物と配置を計画したので、南と東に少しの余地を残せました。中低木は自分たちで用意して面倒を見る。高木類は本職にお願いする、これが基本。目指すは雑木の庭・・・というのが当初の計画です。

日当たりや風の具合、目隠しとしての機能、季節の色合い・・・などを様々に考慮して木の種類を選びました。本職にお願いした大きな木は常緑のヤマボウシ、キンモクセイ、ギンモクセイ、エゴノキ、ヤブツバキ、モミジ、アオダモ、ソヨゴ、ハナミズキなど。中低木で用意したのはアオキ、センリョウ、ナンテン、ヒイラギナンテン、ユキヤナギ、ヤマブキ、キンマサキ、アセビ、マホニアコンフューサ、ドウダンツツジなど。
植木屋さんの仕事はいかにも手仕事であるように感じていましたが、庭木を積んだトラック、庭土を積んだトラック、ユンボなどの重機を積んだトラックと、当日には4台の大型車が集合。その他にも追加の庭土を積んだトラックがやってきて、作業は重機で・・・と随分と近代化した植栽工事でした。木の位置は事前に決めていたので作業そのものはスムーズです。それでも二日がかり。
石類は、府中の家の建設途中に取り壊し工事のあった別の現場のものをいただくことができました。30個をいただく予定でしたが、到着したのは3倍ほどの数・・・ありがたくいただいて、庭木の配置を見ながら、一つ一つ位置決めをしていきます。
庭の工事が終われば府中の家の工事は一通り完成。これまで長い時間をかけて解説してきた府中の家ができるまで。さて、いろいろな思いと工夫が詰まったこの建物の出来栄えは・・・ぜひ皆様ご自身の五感で確かめてください。スタッフ一同皆様のご訪問を心待ちにしています。
そうそう、植栽工事(庭工事)にちょっとした方向転換もあったので、そこのところも現場でご確認を・・・。