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府中の家ができるまで
Process

府中の家 木造架構を建ち上げる。

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    ・木の工事は木材調達から。
    木材は、30年ほど前に縁あって知り合った龍神の林業家から直接調達しています。彼は代々受け継がれてきた林業家ではありますが製材業も営み、木材の乾燥方法にも独特の工夫を用いるこの道一筋40年のベテランです。龍神材の特徴は目込みで粘り強く、薄いピンクのきれいな色味の、真っ直ぐな良材であることです。これらの特徴は、元来建築用材として育てられ製材される優良な紀州材の中にあっても特出する特徴です。これを1年ほどかけて天然乾燥で仕上げ現場に搬入します。林業家から直に仕入れますので、建て主にとっては流通品と比べとてもリーズナブルに手に入る、という利点もあります。

    ・木材検査。
    加工に先立って、搬入された木材(構造材)の検査・検品を行います。項目は、樹種・寸法・色味・目込み・傷・腐れ・含水率などです。この時点ではまだ最終の仕上げが出来ていませんので、木材の寸法は必要寸法に対して5%ほど大きいです。
    人工乾燥材は色合いも含水率も強度も良く揃っていますが、粘りがなく内部割れを起こしているものもあるので、天然乾燥材で用意します。天然乾燥材は含水率・強度などのばらつきは大きい傾向ですが、良く品定めして仕入れれば色味や香りが良く、粘りがあって、樹液などが残っているので腐朽菌や虫などに対しての抵抗力も持ち合わせています。
    府中の家に用意した構造材の含水率は、桧の正角(柱・土台など)で15~25%程度、杉の正角(大引き・束など)で15~25%程度、杉の平角(梁材)で10~35%程度と、天然乾燥材としてはとても優秀です。天然乾燥材でこの数字を出すには、長い乾燥時間とノウハウが必要です。

    写真は柱材ですが、材の中心あたりに芯があるのを確認できます。真ん中に芯のある材は、後の曲がりが少ない素直な材だと言われています。色味も目込みも良好で、見るからに良材である事が分かっていただけると思います。。材の真ん中ぐらいまで切り込みが入っているのは、背割りといって、計画的に入れたスリットです。こうしておくと、後の変形の力がこの部分に集中し、表面の割れが少なくてすみます。ちなみに、背割りが柱の外側に行くに従って開いているのは乾燥が進んでいることを示しています。
    天然乾燥材は、乾燥が進むと材の表面に割れが出ます。これは、表面を固めた後に内部から水分を抜く人工乾燥材とは違って、表面から乾いていく天然乾燥材の特徴です。家として仕上がった時に柱や梁に割れを見つけた時には、この住まいは天然乾燥の材料で造ったのだな、と思っていただくと良いと思います。。

    ・土台を据える。
    土台は、工場加工(府中の家はプレカット加工)される柱や梁材とは違って、現場のアンカーやホールダウンなどの金物の位置に合わせた穴開け作業が必要なので、上棟に先立って現場にて加工・据付されます。
    地面やコンクリートに近いところに配される木なので、樹種は湿気に強い桧。国産の芯持ちの桧材は、防腐・防虫処理をした外国産材と同等の防腐・防虫性があることが認定されているため、薬剤処理をしないで使用します。薬剤を使用しないですむことは、健康な生活を営む上でも有利な条件だと言えるでしょう。

    土台の下には樹脂製の基礎パッキンを敷き込みます。標準の基礎パッキンは通気パッキンと言って風の行き来を妨げないように工夫された品物です。基礎の立ち上がりコンクリートと木製の土台の間に挟まって、床下の通気を確保します。基礎パッキンにはコンクリートの湿気を木部に伝えないという役目もあります。府中の家では、この基礎パッキンの他にも大きな給気口を要所に確保しましたので、床下通気には万全の対処が出来ました。
    逆に、土間部分やシステムバスの入るところはその部分からの風の侵入を防ぐために、気密タイプのパッキンを使用します。床下の通気(給気)と気密は必要に応じて使い分けます。

    ・柱を建てる。
    上棟に向けて柱を建て込みます。写真の中心あたりにある背の高い柱は大黒柱、通常の柱の4本分の太さがあります。構造上はこれほど太い柱は必要としませんが、室内建具の敷居・鴨居の納まり上採用しました。木の家をそれらしく感じていただくのに大いに役立つだろうという思いもあります。

    化粧の柱(出来上がった後に室内に見える柱)には、特に気を付けて紙巻き養生をしています。内装工事に入ると、さらにスポンジのような養生材を角に取り付けて、傷が付かないように保護します。ただし、養生の撤去時期を見誤ると、その部分だけ白く日焼けせずに残りますので注意が必要です。

    ・要の柱は基礎まで落とす。
    通しの柱や要となる位置にある柱などの、特に荷重のかかる柱は、土台の上にのせず基礎のコンクリート(基礎パッキンの上)に直接落とし込みます。これは、木材(土台)が、縦方向には強くても、横から押される力には弱いからです。荷重の集中する柱を土台の上にのせてしまっては、土台がへこんでしまって、後に建物のゆがみを誘発することもあります。

    基礎に落とす柱は荷重の集中する柱、という前提ですので、たとえ柱の引き抜き計算で必要性が薄くても、計算外の配慮としてしっかりとホールダウンなどの金物で基礎コンクリートに止め付けます。また、この柱の上部の、梁との取り合い部分も同様の金物で止め付けます。地震や台風は人の想定通りに来るとは限りませんので、万一への備えです。
    写真のような出隅の柱を基礎に落とした場合には、土台のない方向への抜け(ズレ)の措置も同時にします。右側の土台に空いている座堀(四角い穴)はそのためのもので、外側からボルトを差し込んで座堀内でナット止めするのです。

    ・梁を掛ける。
    柱が入ると梁組です。
    基本的には軒桁(軒先の外壁の上の梁)から小屋梁、束・母屋(母屋桁)・骨梁・棟木・・・の順に建てていきますが、現場の状況によって臨機応変に対応します。府中の家では、南北に長い敷地の南側にクレーンを据えましたので、北側(奥側)からの梁組になりました。また、古民家に見られるような梁組を内装としてあらわしで見せる意匠ですので、材料も組み方も通常とは少々異なります。ほとんど全てが化粧材ですので傷など付けることは御法度で、建て込み作業は真剣そのものです。

    当日は軽く雨が降りました。構造材が少し雨に濡れてしまいましたが大丈夫。無垢材は、濡れて・乾いて・・・をくり返しながら含水率を減らしていくので、元々水濡れには強いのです。濡れても大丈夫・・・が無垢材の良いところです。反対に、合板などの新建材類は雨が大敵です。薄い材料や細かい材料を糊で貼り合わせている構造の合板類は、特に水に強い糊を使用しているものを除いては、その時には大丈夫そうに見えても、後々糊がはがれて形状崩壊を起こすものが少なくないからです。

    ・上棟する。
    いよいよの上棟です。お天気の心配ばかりの木組み作業でしたが、上棟日を順延などしながら、なんとかこの日を迎えることが出来ました。大工はいずれも手練れの職人。しかし、手練れをもってしても本格的な木の家の上棟では気を抜くことが出来ません。天然乾燥の木材が、きれいな色合いで上棟に華やかさを添えてくれます。

    棟木(一番高いところにある梁)が上がると上棟。上棟式は無事の上棟と、完成を願って行う儀式です。通常は神主さんなどを呼ばず、当日参加している職人と関係者で行います。お供え物は御神酒・塩・米・赤い魚。ちなみに、お供え物は建て主が準備するもの、御幣(中央の飾り物)は施工者が用意します。
    北の方向に、南向きに掲げられた御幣に向かって二礼二拍手一礼の後、建物の4隅に清めの御神酒・塩・米を撒きます。御神酒を撒くのは施工者、塩と米は建て主が撒くことが多いです。これが終わると建て主、施工者双方からのご挨拶。そしてみんなで乾杯、これでおひらき。日本には八百万の神々がおられます。ちょっとしたことにあたっても、感謝の気持ちを持ち・表現する習慣があるのは良いことだと思います。

    ・荷払い梁を架ける。
    荷重が集中する柱、支点間が長い梁には荷払いなどの補強を考えます。写真の梁には4間(約8メートル)の間に1本しか受けの束がありません。その梁(棟木)の補強のために、継手部分の下部に荷払い梁を設けました。こうして集中する荷重の分担と、万が一の継手のはずれに備えます。また、荷払い梁を設置することで、山出しの規格(3メートル・4メートル・6メートル)を越えるような大きな梁を用意する必要がなくなり、山側(林業家・製材)との連携が良くなると共に、材料費も抑えられます。

    大きな荷重がかかる柱を支える梁の下部に、その荷重を受け止める柱がない場合などにも荷払い梁を架けることがあります。梁全体を大きくすれば柱がなくても荷重は受け止められますが、必要でない部分までが大きい梁を用意するのは経済的ではなないからです。そこで、必要な部分のみを梁下の荷払い梁で補強して受け止めるのです。
    最近では、木の家といえども天井や壁に隠れて柱・梁組が見えない家がほとんどです。そのために木造架構は貧弱になり、上手く梁架けが出来る設計者も施工者も少なくなりました。しかし、木組み・梁組こそが木造建築を設計・施工する時の醍醐味と言っても過言ではありません。木造の木組み・梁組は面白い。その部分が意匠として見てもらえるなら尚更です。

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