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府中の家ができるまで
Process

府中の家 基礎を造る。

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    まずは地鎮祭。
    地鎮祭は土地を守る氏神様に、この土地を利用させていただくことの許しを得て、工事の安全を祈願するための儀式です。職業柄、これまでに神式や仏式やキリスト教式など、いくつかの様式を経験してきましたが、府中の家では近くの府守神社の神主さんにお願いしました。時期は少し陽差しも強くなり始めた6月。雨の心配もしましたが、幸いにもお天気に恵まれて、厳かに行われました。
    地域や様式によってはお供え物や段取が少し違います。今回の神式では、お供え物として米・酒・塩・水と神酒、海の幸(尾頭付きの鯛、こんぶやするめなどの乾きもの)、新鮮な野菜と果物を用意しました。神主さんへのお礼(初穂料)は3万円から5万円ぐらいが相場のようです。前出のお供え物は、お供え料をお渡しして神主さんに用意していただきました。お礼やお供え料は建て主の負担です。儀式で用意する祭壇や榊などは神主さんが用意してくれます。竹や縄・砂、場合によってはテントやイスなどは施工者が用意することがほとんどです。

    ・杭工事。
    工事で一番最初に始まるのは地盤改良工事(杭工事)です。地盤調査の結果、表層はしっかりとしていたのですが、2.5メートルから3メートルあたりに弱いヶ所がありました。このあたりの深さのところは、埋め立て前に畑や田んぼのあった層なのでしょう。そこからさらに深くのところは又しっかりとしています。元の紀ノ川の河川敷であったのだろうと思います。
    木造の平屋なので、地盤への負担は最小限で済みますが、後の安心のために地盤改良工事を行いました。

    工法は現場打ちの杭。2メートル程のピッチで基礎部分全体に施工して、不同沈下などを防ぎます。基本は地中梁や基礎立ち上がりなどの、力を重点的に負担するヶ所の下部に施工しますが、大きな部屋の中央など、杭本数が極端に少なくなるところにも施工します。木造建築物の現場打ち杭は、RC造(鉄筋コンクリート造)や鉄骨造の建物に採用する先端支持杭とは少し性格が違って、建物下にたくさんの杭を本数多く間配って打ち込んで、打ち込んだ地盤全体で建物を支える・・・といった性格の杭です。

    ・土工事。
    地盤改良工事の後は土工事です。必要な深さに地面を掘り、砂利を敷いて締め固め、基礎の形を作っていきます。深く掘った所に、点々と見えるのは地盤改良のために打ち込んだ杭の頭部分。基礎が規則正しい溝で、いくつかのブロックに分かれているのが確認いただけると思います。この部分が地中梁。木造基礎といえども、計画的な地中梁を構成して、建物荷重がしっかりと受け止められる基礎構造にするのはとっても大切なことです。

    基礎形状が出来上がると、地面からの湿気を止める防湿シートを敷き込んで、捨てコンクリートを打設します。地面からの湿気は思いのほか大量で、シートの裏にはたくさんの水滴が目視出来るほどに出ます。
    捨てコンクリートは外周部と地中梁の下部に施工します。後の配筋や型枠工事の精度を確保するためです。杭の頭は、捨てコンクリートで埋め込まないで、基礎にかかる荷重が直接伝わるように配慮します。

    ・基礎配筋工事。
    基礎の鉄筋が組み上がると、公的な配筋検査を受けますが、それと並行して設計事務所としての検査も行います。この時には、鉄筋の規格・太さなどと共に、継手・定着・余長などの鉄筋工事の基礎的な部分と、地中梁の配筋・スラブの配筋などが重要な検査項目です。立ち上がりを貫通する設備配管用ボイドの補強筋や、各所金物類の規格・種類・位置・数などもこの時に検査・確認します。
    写真中、鉄筋が重なってグリッドに色濃くみえる部分が地中梁配筋のヶ所です。

    スラブ配筋は、構造計算で必要とされる鉄筋より一回り太いものを使用しています。これは、コンクリート打設時に多人数が上に乗って仕事をしても踏み荒れてしまわないように・・・という配慮です。しっかりと計算しても、机上の空論では話にならなりません。現場の状況に合わせた、現実的な配筋が必要であろうと常々感じています。
    1995年に発生した阪神淡路大震災の時には、たくさんの木造建築物が倒壊しました。以来、基礎に対しての議論が高まり、基礎立ち上がりは地中梁として構成すべし・・・という考え方が一般的になっています。しかし、立ち上がり部分を地中梁として閉鎖型に組んでしまうと、床下通気を充分に確保したい場合には不便を感じることがあります。そこで、この建物では地中梁はスラブの下で構成しました。スラブ配筋は、梁として上端主筋、下端主筋としっかりと配筋し、剛性の高い基礎を造ります。

    ・型枠工事とコンクリート打設。
    スラブコンクリートををまず打って、次に型枠を継ぎ足して立ち上がり部分のコンクリートを打設するのが一般的ですが、それではスラブと立ち上がり部分に打ち継ぎヶ所が出来て、そこが水の浸入に弱いヶ所となります。打ち継ぎからの水の侵入を防ぐためには、外周部の型枠は浮き型枠として、スラブと立ち上がりのコンクリートを一体にするのが良い方法です。
    コンクリート打設当日には、外周部立ち上がり、スラブ下の地中梁、一般スラブの順にコンクリート打設を行いました。アンカーボルトやホールダウンなどの金物は、コンクリート打設前に専用金物でしっかりと止め付けておきます。折角の金物も、コンクリート打設時に動いてしまったのでは効果が半減するからです。コンクリート打設後の金物設置 (打設終わりのコンクリートに突っ込んでいくので、田植えという) は、しっかりとした固定強度を得にくいことがあるので許してはなりません。

    内部立ち上がりのコンクリート打設は、外周部の立ち上がりを施工してから1週間ほどで行うことが多いです。取り合い部分の型枠を部分的に外して、内部立ち上がりの型枠を建て込み、コンクリートを打設します。ちなみに、この部分は建物が出来れば雨にさらされることもないので、スラブとの打ち継ぎについてはそんなに神経質になる必要はありません。また、万が一、雨水が基礎の内部に溜まることがあっても心配は要りません。コンクリートは水の中でもしっかりと硬化します。

    ・基礎の完成。
    基礎の型枠撤去が出来て、基礎の形状が良く分かるようになりました。外周部に大きな通風の開口が続いているのが見ていただけると思います。屋内の人通口も、通常の基礎と比べると、随分と自由に大きく取れています。これらは全て、地中梁をスラブ下に埋め込んだ事によるメリットです。しっかりとした基礎が出来て、その上、風の通りが良いのですから、木部の耐久性にもシロアリなどにも有利なことが多い基礎であると言えるでしょう。

    玄関土間や玄関収納などの、土間となる部分は床下で断熱が出来ないので、コンクリート面で地面との断熱工事を行います。スラブ面・基礎立ち上がり面共に、断熱材となるポリスチレンフォームの板をコンクリート面に直接貼り付け、その上にもう一度土間のコンクリートを施工します。ひび割れ防止のワイヤーメッシュは、コンクリート中心部近くに位置するように配置します。

    ・設備配管工事。
    上棟までの間に屋内の給排水工事を完了しておきます。木工事に先行するので、現場は大変動きやすく、仕事が容易な時期です。府中の家では、1階の床にJパネルを敷き込むので、その為の先行工事でもあります。水色の管は給水管、赤いのは給湯管、グレーで太いのは排水管、白っぽい管はガス管です。

    屋内配管と同時期に屋外の配管工事も済ませておきます。上棟に向けての外部足場を組む前ですので、施工が格段に容易なうえに工期短縮にもなります。スムーズな施工と工期の短縮は工事費にも影響します。
    写真には写っていませんが、スラブ上に転ばし配管した配管類は地中に埋め込むことなく、基礎立ち上がりを貫通して地面の上で建物の外に出るようにします。こうしておくと後のメンテが簡単で、長期優良住宅などの劣化対応策としても有効です。ただし、配管の太さに応じた鉄筋の補強や、貫通部の間隔などに対するきめ細かい対処が必要ですのでお忘れなく。

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