府中の家 設備について考える。

構造計画が固まると、次には設備の計画を考えはじめます。
まずは出来上がりの様子をイメージしながらスケッチを作るところからです。設計者の頭の中で平面と立面と断面が同時に動いて一つの建物を形作っていくように、建物本体と設備が一体に思考されながら使い勝手などが決まっていきます。この時点で出来る最初のスケッチを元に住まい手との打合せを重ね、最終案が図面になるわけです。
・ 照明器具スケッチ。
これは照明計画のスケッチ。
使い勝手をイメージしながら、どこにどんな照明を幾つ付けて、スイッチはどこに回すかの具体的な指示をします。もちろん照明器具の品番も具体的に伝えます。たとえば、みんなが集まる居間は少し明るい目に、食堂はテーブルの位置を想定しながら照明器具は真上に低い目に、個室は必要なところでスタンドなども利用することを想定しながら少し暗い目に・・・といった要領です。
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▲府中の家 照明器具スケッチ
・ 弱電設備スケッチ。
照明の計画と共に、その他の電気設備の計画もしておきます。これはその弱電計画のスケッチです。
ドアホンがどこにあってどこで取る・・・とか、テレビはどこで観る・・・とか、ネットはどこでする・・・とか、エアコンの位置とか・・・コンセントはどこに付ける・・・などを伝えます。
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▲府中の家 弱電スケッチ
最近は電気を使う設備機器が圧倒的に増えて、暮らしは便利になりましたが、設計や施工を担当するものは最新の設備が常時頭の中で更新されていなければなりません。大変な時代になりました。
・ 給排水設備スケッチ。
これは給排水計画です。
屋内・屋外のどんな場所で湯や水を使いたいか、どこに排水を用意するか、雨水をどう処理するか・・・などを示すスケッチです。お風呂や洗面、キッチンセットを具体的にどんなものにするかもこの時点で決めていきます。
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▲府中の家 給排水スケッチ
キッチンは大いに悩みました。しかし、木の家によく似合う木製の製作キッチンはすでに木の家工房Mo-kuに付けていますので、今回はシステムキッチンにしようかと思います。
・ 暖房について考える(蓄熱暖房機)。
紀伊半島の南は全国的にも暖かいところなので、断熱や暖房についてはついつい行き届かないことがあります。寒い地方の方が、そのへんは比較にならないほどしっかりしているのではないでしょうか。
府中の家では、空間の広さや天井の高さなどを総合に勘案し、暖房は(エアコンの他に)基軸として写真の暖吉くん(蓄熱暖房機)の導入を考えていました。これ1台でおおかたの部屋を基本的に少し温めておく、足りない分はエアコンで・・・という作戦です。マイコン割引きで基本料金の設定が有利になり、深夜電力割引で使用料が安くなる。空気は汚さないし、朝一番からすでに室内は暖かく、特に難しい設定やメンテがない・・・と良いことずくめの暖房器具でした。
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▲蓄熱暖房機 暖吉くん
さて、となると・・・府中の家の暖房計画は振り出しに戻り、考え直すことになります・・・何が良いかな。
・ 暖房について考える(薪ストーブ)。
予定していた暖吉くん(蓄熱暖房機)を残念しなくてはならなくなったので、天井が高くつながり間取りの大空間を持つ府中の家では、冬場にエアコンだけで快適にするのは難しく感じて、暖吉に替わるベース暖房を探します。
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▲薪ストーブ 調理に使えるピキャンオーブン
そんな訳で、今は府中の家のベース暖房として薪ストーブが最有力です。少々手間でも、すぐに暖かくならなくても、時々は掃除しなければならくても、薪代が高くても・・・まあ良いか、みたいな気分になっています。
幸いにも、空気の通り道はしっかりと計画出来ていますので、薪ストーブ1台で全室暖房・・・というのは難しくありません。少し手間がかかる暖房器具ですが、この際に付き合ってみようと思います。
・ キッチンを選ぶ。
これまで、キッチンはオールステンレスかオールホーローか、もしくは図面から起こして木製で製作するか・・・とオススメしてきました。合板をプリント化粧したものでは耐久性に心配があったのと、どうしても新建材特有の化学薬品臭のようなものがつきまとうように感じたからです。
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▲システムキッチン カタログを比べる
現実に品選びを経験してみると、建築図面を起こしたときと同じ様に迷うことばかりです。ショールームでは、これでもか・・・と言わんばかりに良いものが並んでいます。決めたつもりでも、又次の機会には他のものに目移りします。決断力は家づくりに欠かせない大きな資質。エイヤ・・・と決めて、後は出来上がりを待つことにします。
・ お風呂を選ぶ。
キッチンの次に大きい住設はお風呂です。当事務所のクライアントでは、これまでシステムバスを選ぶ方が半分、造り付けのお風呂を選ぶ方が半分・・・ぐらいの割合でしたが、このところは圧倒的にシステムバスを選ぶ方が増えています。造ってもシスバスでも、同じ程度の質感のものならば同じぐらいの制作費ですが、メンテが楽、暖かい・・・などの理由で選ばれているようです。
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▲システムバス カタログを比べる
ほとんどのメーカーが床に足(束)を突っ張って据え付けています。しかし、耐震架台を採用しているメーカーがありました。万が一のことを考えればこれは心強い・・・という訳で、安心感を大切にしてこのメーカのものを採用することにします。
・ 洗面化粧台を選ぶ。
キッチンとお風呂は既製品を使うことにしましたが、洗面化粧台は造り付けることにしました。木の家工房Mo-kuではキッチンが造り付け、洗面化粧台が既製品となっていますので、その逆にしてお互いの補完が効くようにしたかったわけです。
さて、造り付けとなると説明が難しい。元々造り付ける場合には、その住まい独特の実現しなければならない条件というのがあって、それに合わせて詳細な打合せを経て造るわけですから、これと全く同じ・・・というのがないからです。参考までに・・・と思って、これまでの完成写真をいくつかめくってみても状況は同じで、とりあえずはこの写真を上げておきます。
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▲造り付け洗面台(参考写真)
洗面所そのものは1,800ミリ程度の幅がありますので、1,200ミリ幅ほどの化粧台(カウンター)にしておいて、残りの600ミリほどは水廻りの諸々の収納が出来る棚を付けようと思います。小さくても、あちこちにある収納が思いがけなく役だつ事も多々ありますので。