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海南 紀州漆器まつり Ⅲ。

紀州漆器まつりで面白いのは、漆器の数々を見て回ることに限られません。この日には、普段あまり入れない、または入らないような、路地のさらに奥の小道やお店にわりと気軽に入れることです。
写真の小道はクルマが通れません。ですから、特に目当てがあって歩いてくる人以外はまずは入らない場所。ところが、ここにはまたとない日本建築・日本人の暮らしぶりを感じさせる懐かしい街並みが残っているのです。
新しいものももちろん良いですが、私はこんな雰囲気の、古い街並みが大好きです。低く深い軒が出て、行き交う人は肩が擦れ合うほどの距離・・・何もかもがヒューマンなスケールで、造りの一つ一つに人の息づかいが感じられるのです。早いもの、安いもの、簡単に手に入るものばかりが重宝される時代に、こんな街並みが残っているのは、残している方々の見識の高さゆえでしょう。
街の善し悪しは、そこに住む人々の志の高さで決まる・・・これは随分と昔に、街づくりの基本として教わったこと。黒江の漆器町の、人とともにある、人を和ませる空間には、この街に生きてきた方々の思いが残っています。