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古民家再生大阪府堺市 竣工

木製の建具・家具を建て込むのは工事竣工前の最終段階である。出来るだけ再利用できるものは使いたいので、既存の取り置きしていた建具類を戻した。経済的・・・ということよりも、この住まいの人々の記憶の継承を得たいがためである。

古民家の特徴は、高さ寸法や畳の大きさが時代や地域によってだいたい決まっていること。つまりは、たとえ何のつながりがない住まいでも、気に入った建具があれば、少しの調整でそれが使えるようになる・・・ということ、同じ建物ならなおさら、場所が変わっても少しの調整で使えるようになる。

古民家の柱間寸法の追い出しは、タタミ寸法を長い手6尺3寸、短い手3尺1寸5分として、それに柱寸法を足して行う。だから1間幅の柱間寸法は6尺3寸(タタミ寸法)+4寸(柱寸法)=6尺7寸(約2030㍉)。1.5間幅の間の柱間寸法は6尺3寸+3尺1寸5分+4寸=9尺8寸5分(約2985㍉)。2間幅の間の柱間寸法は6尺3寸+6尺3寸+4寸=13尺(約3939㍉)である。

タタミや建具などの部材の寸法の均一化がそこそこに図られているために、現在でも古民家同士の建具の融通が利くので、古民家から取り外してきた建具は、現在では中古品として流通している。

現在の985モジュール(本間寸法)による寸法出し、一間間=1970㍉、1.5間の間2955㍉、2間の間の3940㍉の柱間寸法は、一つの建物の中での寸法の簡略化には大いに役立つが、そこで使っている建具もタタミもワンオフのオリジナルで、時代が変わっても他所で使える・・・ということにはなるまい。

骨太の骨格はすっかり様子が変わった部屋に、しっかりとした存在感を持って現れた。この存在感は現在手に入る材料で表現するのは難しい。古民家の再生は、値打ちが無くなった・・・と思われていたものの中に、大いなる価値を見つけ出す仕事である。設計も施工も易しくはないが、実に取り組みがいのある仕事である。

この度の古民家再生の仕事を終えるにあたり、機会を与えていただいて、辛抱にお付き合いいただいた住まい手に心から感謝を申し上げたい。この住まいが皆様の暮らしを包み込み、時を超えてご家族を守っていけることを願っています。本当にありがとうございました。