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すさみの家 左官工事Ⅲ
同じ材料や色合いでも、塗り方ひとつで印象が異なることはままあります。ですから、この部屋は(壁は)このように仕上げたい・・・という思いがある時には、塗り模様・コテの加減までしっかりと確認するようにしましょう。

写真は、このお家でただ一つのタタミ間の壁の試し塗りです。もっとコテ使いを大きく、波を大きく、互いの段差は小さくして・・・などと注文を付けながらいくつもの雰囲気を確かめていきます。結局、ひと塗りの横幅は大きめで、段差は大きく、ウロコのように重ならないように・・・といった加減の模様になりました。
同じ珪藻土壁でも、この壁塗り材料はすこし特殊で、入っている石もワラも少し大きめ、塗り厚は平均より厚め、色は土色を基本に赤味のかかった濃い目の色にしました。つまりは、平均的な和室の壁より荒々しく素朴な感じの壁に仕上げたかったのです。

大きな樽に材料を入れて混ぜ始めます。骨材が大きめ・塗りは厚め・・・ということから、たった8帖の間なのに、思ったより多くの材料が必要みたいです。壁についてしまえば分かりにくいのですが、材料を練っているこの段階ではネタの量が多い目なのはよく分かります。
塗りはじめは私たちも、私たちに後ろから見られている職人も緊張します。少し塗ったところで、こんな感じで良いですか・・・と聞かれました。塗り壁は一般に、塗っている途中の湿っているときには質感が分かりにくいものです。正直に、分かりません・・・と答えると、職人はますます不安になります。そこで元気に、それが良いと思います・・・と答えました。

タタミ間のこの壁は、石が大きめ、珪藻土も多め・・・なので、湿気の調整性能は大きいと思います。さらには、素材の特徴から、蓄熱の性能にも期待が出来ます。
現在の住宅は断熱・気密の性能には大変気を使う反面、調湿・蓄熱の性能についてはほとんど何も気を使っていません。でも実は住い手に、快適と・・・感じる環境を造るには、調湿や蓄熱によくよく思い至すことが大切です。内装材を選ぶ時には注意しておきましょう。