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のぞみ園生活介護施設 上棟
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早くに土台を建て込んでから随分と日が経ってしまいました。途中に雨もあり、雨養生に大変な思いをしながらの建て方でしたが、やっと上棟の日を迎えることが出来ました。

ちなみに、屋根を支える梁材で一番高いところにあるのが棟木、外壁の上の基準になる高さの梁を地回り梁と呼びます。地回り梁までが梁下の構造物、そこから上には地回梁りの高さにある梁に「束」と呼ぶ短い柱のようなものを建てて、さらに上部の屋根構造を形成する梁組を建て込んでいきます。
梁は一般に6メートルまでの長さのものを使います。それ以上の長さも対応可能ですが、通常山から木を伐り出す時には3メートル、4メートル、6メートルの長さが普通なので、6メートル以上は特殊な寸法となり、乾燥も運搬も難しくなる上に、価格も一気に跳ね上がります。
そんな事情で、長い梁は継ぎながら必要寸法を確保します。プレカットの標準継ぎ手は「腰掛け鎌継ぎ」という比較的簡素な継ぎ手ですが、この継ぎ手では1本物の梁と比較した時に耐力が不足しますので、頑丈な「追っ掛け大栓継ぎ」を多くのところで採用しています。柱間隔が2メートル以上離れた時の梁継ぎ手の下部には「荷払い梁」という梁を二重で架けておきます。継ぎ手の補強になるのはもちろんですが、万が一の継ぎ手の外れの予防にもなります。

この建物は住宅とは違い、比較的大きな空間を内包していますので、柱・梁掛けには工夫が必要です。集成材などの大きな梁を用意すれば難なく解決できますが、それでは経済的にも技量的にも特殊なことになり、地域に拡がりがなく、折角の機会なのに地域に貢献できるのはこの建物1軒だけになってしまいます。
集成材という特殊な材料や金物や工法を使った建物では、この建物を造った地元の大工が、よその現場で似たような工夫で大空間を造ろうと思っても、再現性がないのです。ですから私は、できるだけ地元の山から無理せず取れる寸法の木で、特殊な加工をせず、地場の大工技能で少し頑張れば建てられる建物を設計するよう心がけています。そうすればこそ、木の建物に地元での広がりが生まれ、経済的にも職人技量の継承の上でも街に貢献できると思うからです。

今回の工夫は、大空間に山で生きているような丸柱を立てて、枝のように伸びる方杖梁で屋根を支える・・・という工夫です。仕事は少々難しくとも、この柱・梁組は特殊な加工をしない地元の木で、地元の職人技能で組み上げられます。
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