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ヒノキの匂いで睡眠の質はよくなるか?

OBの皆さんからお話しを伺っていると、OBの皆さんの家を訪れた方々からは『木の匂いが良い!』と言われることが多い、、、とのことです。
言われた方はずっと住んでいるので、

『ほんとにそんなに木の匂いする?』

と、そこら中をくんくんと嗅ぎまわることもあるとか。
Mo-kuが出来てから約15年ほど建ちますが、未だにを訪問された方々には口々に『木の匂いが良い!』と行って頂く事が多いです。
そんな木材の匂いの効能について興味深い論文を見つけたのでご紹介します。

木質化率の異なる3種類の部屋を準備

今回の論文では以下のような木質化率の異なる3種類(0%、45%、100%)の部屋を準備して実験を実施しています。木質化率の設定は既往研究で木質化率約50%が最適である可能性が示されていたことを踏まえて、0%、45%、100%を設定したようです。

それぞれの部屋におけるヒノキの香り成分であるαピネン濃度を計測したところ、木質化率0%のケースと比較して、45%及び100%の部屋ではαピネン濃度が約2倍以上高くなりました。

木質化率45%の部屋と100%の部屋の違いは壁を木質化の有無なので、おそらく木質化の割合が一定以上になると、空気中のαピネン濃度は飽和(一定)状態になると思われます。

深睡眠の量と質を評価

男子大学生7名に統一した食事及び入浴をしてもらい、用意した木質化率の異なる部屋(0%、45%、100%)において23時から翌7時までの睡眠状態を測定します。
この実験では睡眠の量を評価する指標として、深睡眠(ノンレム睡眠の中でも最も深い段階)の時間(分)を計測しています。
また、睡眠の質を評価する指標として、心拍の低周波成分(Low Frequency)と高周波成分(High Frequency)の比(LF/HF)を採用しています。低周波成分は交感神経が優位である場合(ストレス状態)に高くなり、高周波成分は副交感神経が優位である場合(リラックス状態)に高くなる性質があることから、LF/HFが高い場合はストレス状態、LF/HFが低い場合はリラックス状態と考えられます。

結果

実験の結果はこうなりました。

深睡眠の時間は木質化率0%のケースと比較して、木質化率45%、100%のケースでは約14分(13%)増加しました。

LF/HFについては木質化率45%、100%の部屋の方が睡眠中により低い値を示しており、深睡眠中によりリラックスしている状態であることがわかります。

内装を木質化することで睡眠の量だけでなく質も改善される

これらの結果から、内装を木質化することによって深睡眠の量だけでなく、質についても改善される可能性が示唆されています。内装を木質化することによって、匂いだけでなく、室内の色彩なども変化するため、匂いの影響だと限定することはできないのですが、睡眠時には匂い以外の要素は知覚しづらいため、匂いの影響が大きそうです。少なくとも、内装の45%以上を木質化(床と天井をヒノキ仕上)すると今回の実験と条件がそろうため、睡眠の質と量は改善されるでしょう。
寝室の内装を検討する際には、睡眠のことを考えて、一部に桧の内装を検討してみてもよいかもしれません。

参考文献

西村三香子, et al. “睡眠の質と日中の知的生産性を高める住宅内装木質化率に関する被験者実験.” 空気調和・衛生工学会大会 学術講演論文集 平成 28 年度大会 (鹿児島) 学術講演論文集 第 6 巻 温熱環境評価 編. 公益社団法人 空気調和・衛生工学会, 2016.