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設計の軌跡~3:構造性能・外皮性能~

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    府中の家を例に、住宅を新築する場合の設計の進め方をおおまかに追っていくシリーズです。

    3本目は、住まいの各種性能の検討について。

    実際の家づくりもこの記事のような段階を経て、図面に記載すべき内容が決まっていきます。
    専門性が高い数値の検討などは、実施設計(図面の制作)と平行して、建築士が中心に進めます。
    図面の納品時には、我が家の建物の成り立ちや性能について、しっかりお伝えしています。

     

    第三段階

    【構造性能を設定する】

    建物に与える構造上の強さの設定をします。
    必要な壁量に対して、どのくらいの耐震壁量が確保されているかという壁量安全率。強さの片寄を示す偏心率、壁量の片寄を示す壁心率などを検討していきます。
    建築基準法上で求められる以外に、長期優良住宅などで求められる性能表示上の強さ設定も同時に行います。建築基準法が壁の強さのみを判定するのに対して、性能表示の基準では床や屋根の強さと共に柱と梁、梁と梁の接合部の強さまで総合的に判定するなど、ちがいがあります。府中の家では、基準法上で建築可能となる数値の2.5倍を超えて丈夫な建物に設定しました。もちろん耐震等級3・耐風等級2の強さも確保できています。

    耐震等級3・耐風等級2(表は2020年設計当時のもの:現在は内容が異なります)

    【外皮性能を設定する】

    建物の室内の暖かさ・寒さに関する性能=断熱性能を設定します。
    外皮とは、住宅の内部と外部を隔てる部分のことです。 壁、床、屋根、天井、窓、その他開口部分といった外皮の断熱性などの性質や能力を外皮性能と呼んでいます。
    府中の家では、外皮平均熱貫流率と冷房時の平均日射熱取得率ともに、設計当時最高の等級であった4を優秀な数値で達成しました。屋内の熱が逃げづらく、屋内が屋外の影響を受けづらいということです。等級4の住まいでは、青森や秋田・岩手などの結構寒い東北の沿岸部でも充分暮らすことができます。

    (※下の表は2020年計画段階のものです。2024 現在は更に上の等級が存在し、図の内容もあらたに変わっています)熱損失が大きいからと窓を小さく少しだけにした住まいは、数字面は優秀で省エネに見えます。しかし、陽当たりも風の通りも悪く、かえってエアコン稼働率を高めてしまうような本末転倒が起こりがちです。雨や湿気の多い紀伊半島の気候風土に合わせて大きな開口部を取り、充分な風の通りや陽当たりを確保した上で優秀な数字を達成することは、日々の快適性において大切な点だといえます。

     

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