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府中の家・設計の軌跡~1~

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    府中の家を例に、住宅を新築する場合の設計の進め方をおおまかに追っていくシリーズです。

    1本目はプランについて。

    実際の家づくりもこの記事のような段階を経て、図面に記載すべき内容が決まっていきます。
    専門性が高い数値の検討などは、実施設計(図面の制作)と平行して、建築士が中心に進めます。
    図面の納品時には、我が家の建物の成り立ちや性能について、しっかりお伝えしています。

    さいしょの一歩

    【プランをつくる】

    まずは、どんな建物を建てるべきかを計画します。
    住む人の価値観やライフスタイルをベースに、新居での暮らしの在り方をデザインする課程です。
    府中の家では4パターンの計画案ができました。
    1案目で決定する人もいれば、10をこえる案を検討する方もいて、個人差があります。「設計期間はどのくらいですか?」と聞いていただくことも多いのですが、平均は半年ほど。短い方で3ヶ月、長い方は1年ちかくかかる場合もあります。

    (画像:第1案)

    府中の家は敷地が100坪ほどあり、全部を一括で使ってしまうのはもったいない。

    半分ほどに建物を納めて、もう半分はイベントや駐車場、植え込みなどに使えれば・・・・・・と、延べ面積30坪ほどの2階建てで、とても合理的な計画からスタートしました。

    <プランの内容に興味のある方はコチラ:『ファーストプランを考える』動画

    (画像:第4案)

    「効率がよいだけの建物なら、わざわざこの場所で私たちが建つ必然性は薄いのでは?」という転機を経て、「その土地らしく、その人らしく、気持ちよく。」という事務所の原点に立ち返り、プランは3つ目で平屋に方向転換しました。
    決定案のベースとなった4案も平屋です。家の真ん中にはLDKと茶の間をまとめた大きなスペースがあり、各部屋は南東にランマ付の掃き出し窓をつけました。その部分には雪国の雁木家屋のように柱を前に出して充分な軒の出を取って陽差しを調整し、中と外をどこからでも自由に行き来できるノビノビとした家にしました。食堂前のテラスは、天気の良いときにBBQなどして大いに遊べそうです。
    思いのたけを詰め込んだプランが完成しました。

    <プランの内容に興味のある方はコチラ:『フォースプランを考える』動画

    プランは、計画した結果をみなさんが見るとき、一般に「間取り」と呼ぶ平面図のカタチで目の前に出てきます。
    そのため、多くの方々は「プラン」=「間取りのこと」=平面に部屋を並べた配置の図であると思っておられるのではないでしょうか。
    実は、それだけではないのです。

    建物は立体物です。計画する建築士はプランの際にも全体を立体で整合性のとれるものとして発想しています。たとえば4案では切妻の大屋根をかけてスッキリとした外観をイメージし、それが法律に適うのか、空気はどのように通るのか、陽ざしとはどのように付き合うのか、地震や風にはどう耐えるのか・・・・・・など、ある程度想定しています。
    通常、設計者がプランを考えるときの頭の中では、平面と断面と構造と法規と外観が合体した非常に複雑なものがグルグルと回っています・・・・・・プランの計画段階で、すでにこの総合的な調和が美しくデザインされている建物と、先に平面での計画だけがあり後付けで各要素の帳尻を合わせていった建物では、完成度がまったく異なります。

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