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ヒノキ無垢床板に素足で触れると人はリラックスするか?

無垢材の床板に素足で触れた瞬間、心地よさを感じた経験はありませんか?自然素材ならではの温かさや柔らかさが、人間本来の感覚とリンクし、リラックス感を生み出すことがあります。特にヒノキ材にはきめ細かい質感と特徴的な香りがあり、リラックス効果が期待されると言われています。

今回は、ヒノキ材と大理石の床に素足で触れたときの生理的反応について、興味深い論文を見つけましたので、その内容をご紹介します。

ヒノキ材と大理石のパネルに足裏を接触

女子大学生19名(平均年齢21.2歳)を被験者として人工気候室(温度25℃、相対湿度50%、照明230 lx)内で閉眼(目を閉じた)状態で60cm平方の無塗装・浮造りのヒノキ材と大理石に90秒間、足裏接触をしてもらい、被験者の生理的反応を計測しました。

ヘモグロビン濃度と心拍変動性を計測

この実験では脳活動の計測手法としては近赤外分光法による脳前頭前野の酸素化ヘモグロビン計測を用いており、生理的にリラックスした状態を『脳前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度の低下した状態』としています。これはリラックス時には脳の活動が沈静化し、脳前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度の低下するためです。

また、自律神経活動の計測手法として、心拍変動性計測を行っており、心拍間隔のデータを周波数解析することにより、高周波成分と低周波成分のピークが検出することができます。高周波成分はリラックス時に高まる副交感神経活動を反映し、低周波成分/高周波成分(低周波成分と高周波成分の比)はストレス・覚醒時に高まる交感神経活動を反映することが知られています。

結果

実験の結果はこうなりました。

脳前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度

ヒノキ材への足裏接触は大理石への足裏接触と比べて、前頭前野の酸素化ヘモグロビン濃度が有意に減少しており、生理的にリラックスしている、、、という結果となりました。

心拍変動性

リラックス時に高まる副交換神経活動はヒノキ材において、大理石に比べて有意に高くなることがわかりました。

 

ストレス時に高まる交感神経活動はヒノキ材において、大理石に比べて有意に低下することがわかりました。

まとめ

この実験では人工気候室内で目を閉じた状態で60cm平方の無塗装・浮造りのヒノキ材と大理石に90秒間、足裏接触をしてもらい、被験者の生理的反応を計測することで、素材の違いによる生理的反応の違いを明らかにしています。その結果、ヒノキ材に足裏接触することは大理石の床よりも

・脳活動は沈静化(リラックス)

・リラックス時に高まる副交感神経活動は活性化し、ストレス時に高まる交感神経活動は有意に低下

することがわかりました。
つまり、ヒノキ材の床に触れると、大理石の床よりも人はリラックスしている、ということがわかりました。今回の実験で用いられた桧が浮造りであったことから、新築時よりも数年ほど経年した状態のほうが、より人にとってリラックス効果がある状態なのかもしれません。また、表面がコーティングされているフローリングよりも、今回の実験で使用されたような表面の素材感が残る無垢材のほうがよりリラックス効果がありそうです。これらの効果はヒノキだけでなく他の無垢材の床にも同様の効果があることが期待できそうです。
家でゆっくりリラックスしたい場合は、表面コーティングを抑えた無垢材の床がぴったりかもしれません。

参考文献

Ikei H, Song C, Miyazaki Y: Physiological effects of touching the wood of hinoki cypress(Chamaecyparis obtusa)with the soles of the feet, Int. J. Environ. Res. Public Health 15(10),2135(2018).