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スギ無垢材の内装は部屋の温度や湿度に影響を与えるか?

現代の住まいにおいて、自然素材を取り入れることは心地よい空間づくりに欠かせない要素です。その中でもスギの無垢材は、温もりと美しさだけでなく、実用的な機能性も持ち合わせています。特に調湿作用は、湿度の変化が大きい日本の気候条件において、大きな役割を果たします。今回は、スギの無垢材を内装に使用した際の調湿効果について興味深い論文を見つけたのでご紹介します。

内装の違う2棟の建物を準備

スギ無垢材を内装に用いた建物(A棟)とパーティクルボードや中密度繊維板に木目調のビニールクロスで覆った内装を用いた建物(B棟)を建設し,各棟において実験参加者1名に23時から翌日の7時までの8時間睡眠をとってもらい、1分ごとに室内及び屋外の温度と相対湿度を記録しました。
実験開始時の温度および湿度はそれぞれ18~20(℃)、60~70(%)に調節し、2014年から2015年にかけて計4回実施しました。

結果

実験の結果はこうなりました。

温度
各実験棟の室内温度は箱ひげ図を用いて示すと以下のようになりました。

各実験棟における温度に有意な差は見られませんでした。

湿度
各実験棟の室内相対湿度は箱ひげ図を用いて示すと以下のようになりました。

スギ無垢材内装のA棟の相対湿度は、ビニールクロス内装のB棟よりも優位に湿度が低く、室内における湿度のばらつきが少なくなっています。

まとめ

今回の記事ではスギ無垢材内装のA棟と、ビニールクロス内装のB棟を建設し、人滞在時における室内の温度と相対湿度を測定することで、内装環境による温度と相対湿度の違いに言及した論文を紹介しました。
スギ無垢材内装のA棟と、ビニールクロス内装のB棟では人滞在時の室内環境において

・室内温度には差はない
・相対湿度についてはスギ無垢材内装のA棟の方が有意に低く、ばらつきも小さくなる。(つまり、スギ材を内装に用いることで、部屋には一定の調湿性が付与される)

ということが明らかとなりました。
この実験ではA棟の内装にスギ無垢材を採用していますが、スギに限らずヒノキなど他樹種の無垢材においても、一定程度の調湿作用が期待できそうです。

参考文献

清水邦義,本傅晃義, et al. “スギの無垢材を内装に用いた建物内におけるヒト滞在時の調湿作用の検証“.August 2016.Conference:第23回日本木材学会九州支部大会At: Kagoshima, Japan