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木の家の耐力壁。
まずは言葉の意味から解説しましょう。耐力壁とは、地震や台風などの外から加わる力(外力)から建物を支えるために設けられた、外力に抵抗する能力を持つ壁のことです。木造建築物では一般に筋交いを入れたものと、構造用面材を柱と梁の間に釘で打ち付けたものの2種類があります。それぞれの特徴を「木の家で清々しく暮らす」という視点を加えて少し詳しくご説明します。
・筋交いによる耐力壁(写真上)
構成部材が筋交いと呼ばれる木材と取り付きの金物だけの単純な構造なので、単価も安く、湿気の通り道も妨げません。ただし、力を伝えるヶ所が上下の金物の2ヶ所だけなので、施工精度が高く求められ、一度力が加わった後の変形や破損に注意が必要です。
・構造用面材による耐力壁(写真下)
たくさんの釘を打ち、面全体で力を負担するため、施工に特別な知識や技術が必要であることは少なく、繰り返しの外力にも強い傾向にあります。また、断熱材が均一に施工できる良さもあります。しかし、専用の面材が必要で材料費が高く、面材によっては湿気の通り道を遮ってしまうので結露に対する注意が必要です。
中村設計では、筋交いと構造用面材の特徴を踏まえ、それぞれの良さを生かして適材適所で使い分け、耐力壁として筋交いと構造用面材を併存させながら、強すぎない壁をバランス良く配置することを心がけています。
筋交いだけでなく構造用面材を外壁面に施工することは、断熱層や壁の防水面を安定させるという良いところがありますが、建物全体を覆ってしまうことから面材選びには透湿抵抗の低いものを選ぶことが必要です。透湿抵抗の重要性を見誤ると、結露やカビに悩まされることになり、清々しい住まいを造ることはできません。
外壁面全体には面材を張りますが、どの面材も耐力壁という訳ではありません。軸組計算と結露計算を駆使しながら、面材の必要性能を選び取ります。黒い板は断熱と壁耐力の両方の役目を果たす面材。茶色いものは断熱の専用面材で透湿抵抗が一段と低いものです。