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手刻み加工。

最近の木造建築の現場では、木(構造材)の加工はプレカット(機械加工)が主流です。主流です・・・と言うより、ほとんどがプレカットで手刻みの現場を見かけることはほぼなくなりました。構造材の加工が機械加工になってしまうのは時代の流れで仕方のないことです。しかし、それぞれの特徴がどこにあって、どんな使い分けが良いのかの検討はあってしかるべきでしょう。
この度、和深で上棟される物件は全てが職人の手刻みです。柱と梁の接合部に機械と人間の加工に大きな違いはありません。違ってくるのは梁の継手が主です。今回採用されているのは尻ばさみ継手という継手。金輪継ぎや追っ掛け大栓継ぎ・・・というのは時々耳にしますが、尻ばさみ継手というのはあまり聞きませんね。いずれも重なり部分に複雑な加工をして、梁を一体化します。ちなみに、継ぎ目のない一本の梁の強さを1としたときに、金輪継ぎや追っ掛け大栓継ぎ・尻ばさみ継などは0.7ぐらいの力を発揮します。機械加工の台持ち蟻継は0.3ぐらいしか持ちませんから、継手としては手間のかかる分優秀な継手だと言えるでしょう。
ノコギリが電動の円ノコに変わってから随分と経ちますが、今の時代に円ノコ使用に反対する人はいません。そんな風に機械加工も世に馴染んでいくでしょう。機械の得意なところはそれで良い。人間は機械が不得意だけれども人間にとって有用な部分をやれば良いのです。機械一辺倒でなく、人と機械の棲み分けがもう少し上手く出来ないか・・・と頭をひねる今日この頃です。