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古民家再生。

和歌山は戦災にも遭ったので、全国的にみてそんなに多くの古民家が残っている地方ではありませんが、それでもあちこちに残ってはいます。これまで、古民家再生は、一部のコアなファンだけのもの・・・という雰囲気でした。多くの代えがたい資産が随分と壊されてきたものです。しかし、ようやくここに来て再生の話も聞かれるようになりました。古民家再生の仕事は、古くなってもう価値がなくなった・・・と思われているものに、大いなる価値を見いだす仕事。我々のアイデンティティーを子供たちにつないでいく大切な仕事です。
覚悟しなければならないことも多々あります。中でも心得ていなければならないことは二つ。一つは、構造材をそのまま利用するにしても、再生時には同規模の新築建物を建てるのと同じくらいの費用がかかること。もう一つは、構造の成り立ちが現在の建築基準法には適合しないこと。
実務に携わってみると新築では得られない古材の存在感を思い知ることになります。人と共に長い年月を刻んできた古材には、新しく造ったのではどうにも出せない味わいがあるのです。今私たちが造っている新築建物も、100年後にこのような存在感を持ち得るのでしょうか?当時の職人達が当たり前のように100年を超える寿命の建物を造ったように、私たちにも後世に残せる建物が造れるのでしょうか?今更ながらに、携わっている仕事の責任の重さと誇らしさを感じます。