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マウスの生存実験
「ペットをむかえよう!」となったら、まず何からはじめるでしょう ? 情報をあつめて、エサを購入したり、水槽や小屋・ケージなど、住み処となる場所を用意したり…。
生き物が生きていくためには、それぞれの生態や習性にあわせた食料や環境が必要だと、私達は知っています。
ところが、それが自分のこととなると…どうでしょう? 身近すぎて、無頓着になってはいませんか…? 「家」は、私達が毎日を過ごす住み処です。
何に住むかで、かわる健康状態
(Mo-Ku通信vol’23)
素材がちがうケージごとの、赤ちゃんマウスの生存率
大きな差が開きます
木のケージ | ほとんどが生き続けます。 | |
金属のケージ | 生きているのは半分以下です。 | |
コンクリートのケージ | ほとんどが生き残りません。 |
静岡大学農学部による、材質の居住性に関する研究
生まれも育ちもその箱の中となる2世代目のマウスの生存率に有意な差。
円グラフは、住み処を形づくる素材が「住みやすさ」にどのような影響を与えるかを研究する中で、おこなわれた実験の結果です。
木・金属・コンクリート。3種類の箱( ケージ )を10個づつ用意し、中でマウスを飼育します。まったく同じ条件下で長期にわたり、それぞれの箱を観察してみると、生まれも育ちもその箱の中のとなる2世代目の赤ちゃんマウスの様子に、大きな違いが現れました。
生後23日間のデータを見てみましょう。右の折れ線グラフは5日ごとの生存率の推移です。23日目では、木で生まれ育った子マウスの生存率は85.1%、金属は41%、コンクリートではなんと6.9%。コンクリートの箱では、130匹生まれてきた子マウスが9匹しか生き残りませんでした。
成長 と 健康・繁殖への影響
赤ちゃんマウスの5日ごとの平均体重の変化が、右の折れ線グラフです。木製の箱のマウスは発育が良いという結果が出ています。
はじめて目を開けるまでの日数にも差があり、木では平均15日ほど。金属とコンクリートでは、どちらも木より約2日ほどの遅れがでました。
臓器も、木>金属>コンクリートの順番で、平均体重の重さに比例して各器官が大きく育っていました。金属の箱では腎臓に水腫のあるマウスが多くみられました。研究者が注目したのは、2世代目のマウスにおきた生殖器の未発達です。
金属とコンクリートでは、木の箱にくらべて、体重あたりの卵巣重量が約40%、子宮重量が約50%、精巣重量が約25%も小さくなっていました。
また、木のケージではほぼ正常な繁殖がみられましたが、金属とコンクリートでは子育てに異常が発生しました。
このような結果から、
木は恒温動物の住み処として優れ、
健康な生活を支えるとともに、
子供の育成環境としても優しい素材だと考えられています。
どうしてこんなに違いがでたの?
木材のもつ湿度調整機能や熱伝導率の低さが、他の材質と比べて優れていたため、このような結果になったと考えられています。
材質による差のうち、マウスに大きく影響を与えたのは<温度>と<湿度>でした。
恒温動物は、生きていくために体温をいつも一定に保たなければなりません。そのために、いろいろな身体の器官や働きが備えられています。
実験では、マウスの体の表面からの熱損失が、接触する材質によって大きく異なっていました。
よく熱を奪う素材の箱で飼われるほど、マウスの生存状態は悪化していたそうです。