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金沢、ぶらり散策メモ

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GoToキャンペーンが始まりましたが、まだまだ思うような遠出のハードルは高そうな時流です。
ご自宅で過ごすお時間のささやかな彩りに、過去のメモから今回は金沢の建築探訪をお送りいたします。
『木の建築賞』二次審査に『紀州梅の里なかた』さんがノミネートされ、プレゼンテーションのため、数年前の十月に訪れました。
和歌山を朝出発して高速道路を車で一路、到着した頃にはすでに夕方……金沢駅周辺、1泊の夜の散策日誌です。

 

文化芸術の街の夜


二十一世紀美術館

夜の二十一世紀美術館は、光に縁取られた巨大な円盤のような建築です。
敷地へ入ると暗い遊歩道の先に、皓々と館内の様子が浮かび上がってきます。むきだしの屋内がストンと屋外に現れたようでした。
ん?入り口はどこでしょう。思い思いに過ごす人々の姿が間近で、どこからでも気軽に入れてしまいそう。
外壁は百二十二枚にものぼる曲面ガラス。一部に扉となった部分を見つけ開けてみると、こちらはスタッフ専用との立て札。ぐるりと回って、今度はもう少し大きな扉を発見。チケット販売口みたいな所もあるし、ここはきっと誰でも入って良いはず。うん、すんなりと入れました。

「双方向的で対話型。境界を設けず広がりを持つアートの場」という理念を、「裏表のない丸い形態で、展示室が分散し、すべてが正面になる」という形で体現したのがこの二十一世紀美術館。

ものの数分で、コンセプトを体感してしまいました。
え、こんなにフリーパスなの?と、中もずんずん見て回れてしまいます。

白い壁とガラス張りで区切られた展示室がいくつも散在し、奥へ進んだかと思えば、同じように区切られたガラスの向こうに、今度は天井のない中庭のオープンエアが現れたりします。
光が溢れてじんわりと夜に滲む外観の印象は、直径約百十三メートルもの建物を中心近くまで踏み込んでも変わらず、中と外が不思議に混じり合うかのようです。

計画当初は建物全体を貫く廊下がなく、「迷路的すぎる」という声があがったために、少し動線が整理されて今のプランになったそうですが……。
『順路』という価値観は今もやはり薄くて、あてもなく回遊するようにゆったりと館内を歩けます。
9メートルピッチ内でランダムに配置されている白い柱は、太さがまちまちで、窓際では細く、エントランスホールなど大空間では太くなっているのだとか。
視線を適宜さえぎられることで、空間に立体感が増し、なんだか、木立の中を散策しているような感覚を呼び起こします。

「大空間」とは、一塊で、中に何も入っていない箱のような広々とした空間だとイメージしてしまいがちです。
でも、こんな「大空間」もいいな…と改めて感じます。
透明のガラスと、白い壁と、白い柱。シンプルな要素がフラットに連なりあい、複雑に入り組んだ体験を生みます。
ゆるやかな境界の中をゆるゆるとたゆたうウチに、体験と体験の間に連続性が生まれ、どこにいても外へ出ても、まるでどこまでも続くような空間の拡がりを感じる……そんな不思議な美術館でした。

 

・おもてなしドーム

金沢駅の東広場にあるガラスのドーム。訪れる人に差し出す雨傘のイメージで、おもてなしの心を表わしているそうです。
自然光やライトアップによって見られる表情は多彩。
日本最大級のアルミトラス構造を骨組みに、3019枚の強化ガラスの大屋根が広がっています。
1.5メートルX1.5メートルのガラス1枚の値段は16万円4千円だとか。総事業費41億円8000万円……さすが加賀百万石……!

 

・鼓門

能楽・加賀宝生や素囃子で使用される鼓がモチーフ。
一本一本は直線的な木質系材料が、組み合わせることで全体として柔らかなフォルムを獲得しています。
螺旋状の柱と面格子の屋根のうねりに、風格と躍動を感じました。
柱の内側には、ドームに降った雨水再利用の送水管や地下の排気口が通っているそうです。
街のランドマークとしていろんなイベント事のマスコットにも起用されているようで、私達が訪れたときには、ランニングシューズを履いた鼓門の絵が金沢マラソンを盛り上げていました。

偶然にも街をあげての大イベント・金沢マラソンの前夜かつ、ハロウィンという日取りだったこともあり、夜中まで街中に活気が溢れていました。 通りがかった町屋街の風情もすばらしかったので、次の機会には、ぜひゆったりと時間を過ごしてみたいです。

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