コラムcolumn

「ふるさと」を輝かせる家づくりを。

  • 家づくりを楽しむために -その32
「ふるさと」を輝かせる家づくりを。
「紀南らしさ」が少ないことに驚くとともに、残念に思う最近の住宅。和歌山は「木の国」とよばれ、木の産地として全国的にも有名でありながら、さみしいかぎりです。
これまで、「自然素材でこの地域に適した家を考えてみませんか。」という提案をしてまいりましたが、それに加え、「木材をはじめとした地元の材料、地元の職人さんやお店を活用した家づくり」が大切だと痛感しています。
わが国は、「木」を大量に海外から調達していますが、私たちにとっても相手国にとっても、現実は決して良いことばかりではないようです。それに「木」はそれぞれの産地独特のカビや虫に対する抵抗力を持ち、気候・風土に適応しているため、地元で使用することが一番良いのです。
住宅を建てるときの選択ひとつで、どんな快適な生活を手に入れられるのかということとともに、地域を衰退させること も、輝かせることもできるということも、しっかりと捉えていたいものです。

新年あけましておめでとうございます。 旧年中は格別のご厚誼を賜り、厚く御礼申し上げます。

  • 家づくりを楽しむために -2001年始号
新年あけましておめでとうございます。 旧年中は格別のご厚誼を賜り、厚く御礼申し上げます。
心暖まる、心躍る・・・すぐれた建築物には、人の心を打つものがあります。
豊かになった日本。気候・風土に恵まれた紀南。
この地で育まれた文化を建物に、そして『まちづくり』にいかし、心に響く空間創りにスタッフ一同邁進してまいります。

雪月花...四季を愛で、自然ととけあう住まいを。

  • 家づくりを楽しむために -その31
雪月花...四季を愛で、自然ととけあう住まいを。
最近、建築関係法規の改正にともない、ますます住宅の高気密・高断熱化が促進される傾向にあります。しかし、ポリフィルム等で密閉し、大量の断熱材を屋根や壁に充填したうえで、強制給排気設備に頼って生活する、新建材や石油製品だらけの住宅が、実は、自然や人間に大きなリスクをもたらすものだとわかってきました。
「日本で1、2に住みやすい。」といわれるこの地域で、住宅を高気密・高断熱化してまで冷暖房効率に気をつけなければならない日が、年間何日あるのでしょうか。ほんの少しの日のために、そんな家が必要なのでしょうか。 
自然素材でつくる家は特殊なものではありません。むしろここ30年間に建てられた新建材や石油製品だらけの住宅が特殊であると思うのです。軒高は高すぎず、軒の出をしっかり出して、効果的な開口部の計画をし、日当たりと通風に対処する。土塗り壁や板壁等で湿度の調整を心がける… 
私たちの忘れかけている、「先人達が工夫をこらしてきた、この地域の住文化」を見つめなおすことが、今一番必要なことではないでしょうか。

住宅建築にできること。

  • 家づくりを楽しむために -その30
住宅建築にできること。
地球温暖化防止の手立てとして、温暖化ガスのCO2(二酸化炭素)を吸収する森林が注目されています。CO2は、木の幹・枝に姿を変え、朽ち果てるまでそこに蓄積されます。吸収力が大きいのはスギの場合、樹齢50年までの木で、その後は徐々に低下していくそうです。
50年生の木を使用した場合、日本の住宅の平均寿命は二十六年と短くスクラップアンドビルドのサイクルが早いため、せっかく固定したCO2を2倍のスピードで排出しているのが現状です。
住宅は部分に分けて考えていくべきです。柱・梁・床板・屋根下地など基本構造部分には太く・厚く・大きい木を使い、100年サイクルの耐久性を持たせる。化粧材や設備については、20年~30年を目安にメンテナンスを考える。50年生きてきた木に、家として100年の命を与えて、はじめてCO2の削減は実現できるのです。
経済性とともに、地球との共生は、住宅建築にはなくてはならない視点なのです。

住宅のライフサイクルに関心を。

  • 家づくりを楽しむために -その29
住宅のライフサイクルに関心を。
ある雑誌に、「山などに不法投棄されるものの8割近くは建築廃棄物だ」と掲載されていて、心が痛みました。「捨てる人が悪いんだ。」と言えばそれまでですが、本当に私たちに責任がないと言えるのでしょうか。
建設省の調査によると、イギリスの住宅寿命は75年、アメリカ44年、日本は26年だと掲載されていました。欧米に比べ、日本ではスクラップアンドビルドのサイクルが早いこと、様々な石油製品の新建材を使うため分別がむずかしいこと、リサイクルや解体工事に対する認識がきちんとできていないことが不法投棄の一因だと思います。
私たちは、不法投棄による環境破壊の被害者となりうると同時に、加害者になる可能性もあるということを忘れたくありません。
ローンの支払いが終わると資産価値がなくなり、解体され、リサイクル処理が困難な廃棄物になるような住まいではなく、「地球とともに生きている」という視点からも住まいを考えたいものです。

コンセプトを確立し、指示書を作成する仕事。

  • 家づくりを楽しむために -その28
コンセプトを確立し、指示書を作成する仕事。
税務の代理や税務書類の作成などをする税理士さん、傷病の診察・治療をするお医者さんの仕事など、クライアントの状況を知ってはじめて、その職能や経験をいかせる仕事があります。
住宅の設計もそういう仕事だと思うのです。
住まい手の家族構成や生活スタイル、要望をきちんと把握した上で、アイディアノウハウを盛り込み、コンセプトを確立させる。そのコンセプトを現実にするための図面などを作成する……決して、住まい手と顔をあわせることなく、短期間のうちにできる仕事ではありません。
それは、目に見えない最も重要な仕事なのです。
しかし目に見えないものであるが故に、その大切さや価値をご理解いただくのが難しく、残念に思うことがしばしばあります。
目に見えるものだけにとらわれず、成り立ちの基本となる考え方も大切にしていただきたいと思います。
日本が大切にしてきた伝統、繊細さ、優美さ、人の手による美と自然との調和、季節の移ろいを楽しみ暮らす工夫……そんな良いところを 見つめ直し、家づくりにいかしていきたいものです。

日本から発信する世界の言葉。

  • 家づくりを楽しむために -その27
日本から発信する世界の言葉。
東京で開催された、ある講演会に参加する機会がありました。
その中で、「まちづくり」という言葉は「カラオケ」や「寿司」「武士道」「もったいない」といった言葉と同様、外国語に直しても「matidukuri」と書く、日本の民間から世界に発信した言葉だということを改めて伺い、嬉しく思いました。 同時に、日本のどこかで私達と変わらない立場の人たちが懸命に取り組んだ活動の「あり方」が、世界の言葉として取り上げられている事実を、とても誇らしくも思いました。
「『まちなみ』の美しさは、そこに住む住民の『志』の高さで決まる。」といいます。
自分たちのルール、良識を持って、コミュニティーを大切にしながら、「自分たちの『まち』を自分たちの手で育んでいく活動」に参加していく。行政には、民間ではできないことをお願いする。
そんな活動と時間の積み重ねが、住みやすく魅力あふれる「まち」を形成していくのだと感じています。

大切にしてきたものを見直そう。

  • 家づくりを楽しむために -その26
大切にしてきたものを見直そう。
あまりにも機能づけられてしまった住まい。西洋化された暮らし。そんな現在にあって、日本建築の良さをとりいれた住宅やまちなみを訪れるとき、自然と心が和み、なつかしさや新鮮さを覚えます。
戦後の民主化や住宅難の中で、封建制度を象徴する無用の長物として目の敵にされた床の間。玄関のこしらえ。内部空間と外部との接点で家事やコミュニケーションの場として活躍した縁側・土間。障子、格子、畳の間…。私たちの幼かったころ身近だったものが、住宅からずいぶん少なくなりました。
それとともに、風鈴、打ち水、簾など夏に涼感を呼ぶ工夫、気持ちの良い大空間なども見かけなくなりました。
暮らしやすさや機能を優先してきた結果であり、自然の流 れなのかもしれませんが、住宅は生活の場だけではなく、文化と密接にかかわり、心を育んでいることを忘れたくありません。
日本が大切にしてきた伝統、繊細さ、優美さ、人の手による美と自然との調和、季節の移ろいを楽しみ暮らす工夫。そんな良いところを見つめ直し、家づくりにいかしていきたいものです。

自分のものさしに、現実感をあたえることが大切です。

  • 家づくりを楽しむために -その25
自分のものさしに、現実感をあたえることが大切です。
システムキッチン、床材、壁紙……多くのメーカーから、膨大な量の住宅関連商品が販売されています。カタログやパンフレット、専門誌の数も半端ではありません。
データを集め、自分の好きなもの、価値観にあったもの、いろいろなものを学ぶことは大切です。
そして、その中から実際に気に入ったものを手にとってみたり、肌で感じ、『自分のものさし』に現実感をあたえていくことが、もっと大切なのです。
肌で感じることにより、こんなことを覚えた、こんな事に気づいたという、気づきのヒントがたくさん生まれてきます。また、違う角度、もっと別の視点から見ることができるようになります。
『どんな暮らしがしたいのか、何を求めているのか、わからない』と焦る必要はありません。少しずつデータを集め、研究し、体験し、納得して感覚を磨いていけばいいのです。
そうすることで、家づくりが楽しくなり、自分らしさの再発見にもつながるはずです。

家づくりには「取捨選択」が必要です。

  • 家づくりを楽しむために -その24
家づくりには「取捨選択」が必要です。
美しい外観、明るく広々としたリビング、すっきりした清潔感あふれるキッチン…たくさんの住宅・インテリア専門誌が出版され、読者を魅了しています。情報がたくさんあることは悪いことではありません。しかし、あり過ぎるがゆえに、戸惑ってしまいがちです。
『費用をかけずに、この本の写真のような、豪華な部屋にできませんか。』『窓を大きくとって、同時にその部分を他の部分より頑丈にしてください。』など、お施主さんから矛盾するような要求が出されることもしばしばです。
建築家の視点から必要なことは、アドバイスさせていただきますが、いくつもの難しい局面に直面します。
『せっかく新築するのだから…』ということで、あれもこれも同時に欲しがる気持ちもわかります。しかし、納得できる住まいをつくるために、『どう暮らしていきたいのか』『そのためには何が必要なのか』『何を優先させるのか』を見極めることが大切なのです。

自然に家族が集まる。そんな空間づくりを

  • 家づくりを楽しむために -その23
自然に家族が集まる。そんな空間づくりを
どのように使われるかで、建物は名付けられます。
たとえば、映画を見るための建物は映画館。食事をするための建物はレストラン。
では、家は主に何をするための建物なのでしょうか。
『寝る場所です。』と言う人もいます。でも、寝るだけならホテルへ泊まれば済むはずです。食事も入浴も教育も外の方がサービスの質が高くて、家で行われる行為の大部分は家以外で可能です。しかし、家族の『だんらん』は、家でしか日常的に行うことができません。
おしゃれな家をつくったのに、子供は子供部屋に、夫は書斎に引きこもってしまって、家族のふれあいや会話が少なくなってしまったという例がたくさんあります。
家は、家族が『だんらん』するためにつくられるべきだと思います。
日常の動きや心模様、そして、家族という人間関係にも大きな影響を与える住まい。
家族の絆を強め、幸福を育むために『家』はありたいものです。

志を持って、子供たちの未来にかかわる責任を果たしたい。

  • 家づくりを楽しむために -その22
志を持って、子供たちの未来にかかわる責任を果たしたい。
新しく建て替えられていく家々。年々変化する『まちなみ』『まち』、所々に『すばらしい。』と思える家や空間があるのですが、全体はなかなか美しく変わっていきません。『住宅』の難しさは、私的なものではあるけれども、『まちなみ』を形成する一つの建築物であり、社会資産でもあることです。お施主さん側は、心にゆとりを持って、『まちづくりに参画するのだ。』という意識をもつことが大切です。一方、『まちづくり』と『住宅』の専門家である私たち建築家は依頼された『住宅』一軒一軒の完成に、相当な時間とエネルギーを費やしていますが、毎年数え切れないほどの『住宅』が建てられる中で、直接携わっている『住宅』はほんの一握りです。もっと職能をいかすために、より多くの方と『まちづくり』について意見を交換しあえるような、出逢いの場をもてないものかと感じています。

イメージが先行しすぎると、暮らしやすい、個性あふれる家はうまれません。

  • 家づくりを楽しむために -その21
イメージが先行しすぎると、暮らしやすい、個性あふれる家はうまれません。
「どんな家にしたいですか?」「そうですね…一階にはリビングとキッチンと和室、二階には子供部屋と洋室が欲しいです」新しいお施主さんとお会いするとき、いきなり部屋割りの話からはじまることがあります。
「なぜ欲しいのですか?」「その部屋で何をするのですか?」「誰が、いつ過ごすのですか?」など詳しくたずねると、だんだん答えがしどろもどろになってきます。
私たちの家づくりは『家とはこうあるべきだ。』という観念にとらわれ過ぎていて、『家でどう過ごしたいのか』『どうすれば快適に暮らせるのか』『五年後、十年後…将来、各部屋をどう使っていくのか』など、何よりも大切に考えなければいけないことを見失いがちです。
人の生き方が百人百様であるように、人々の暮らしにもたくさんのバリエーションがあります。
憧れている家、気に入った家を模倣するよりも、家族とふれあい、 長い人生を楽しみ、遊び、暮らす家、個性あふれる空間をつくりだして欲しいと思います。

コミュニティーとのつながりを大切に、住人の手による『まち』づくりを。

  • 家づくりを楽しむために -その20
コミュニティーとのつながりを大切に、住人の手による『まち』づくりを。
ふと訪れたとき「心地いいな。」と感じる住宅地では、道路の両側を公園のように美しくするために、塀をつくらず、家を一定の距離後退させて建て、その分緑化することが基本的な考え方になっていたりします。
日本の住宅地をみると、塀や垣で敷地を取り囲んでいる家がほとんどです。アメリカなどと比べ敷地が狭く、塀・垣・フェンスなどで家を取り囲まないとならない場合もありますが、気に止めていただきたいのは、塀・カーポート・門も、住宅地の『まちなみ』を形成する重要な要素だということです。
塀の高い家は、自らコミュニティーとの関わりを拒絶してるように思えて仕方がありません。
一軒一軒の家が隣近所のことも考えて住まいづくりに取り組んでいただきたいと思います。
例えば、町内全体で塀のかわりに生垣をつくり、家と道路の両方からその縁を楽しめるようにする。それだけの事でも環境は、うんと良くなります。
『美しい「まちなみ」づ くりは役所がするもの。』 と、思ってる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし実際は、住人が手をかけなければ『住みたい町』を生み出すことはできないのです。

施主さんの要望・潜在的なニーズと建築家の知識・経験の融合。 設計料には価値がある。

  • 家づくりを楽しむために -その19
施主さんの要望・潜在的なニーズと建築家の知識・経験の融合。 設計料には価値がある。
洋服やカバンなどの買い物をするとき、あれこれ迷うものです。まして、家を建てるときなら、なおさらです。どこで建築してもらおうか迷われている方から、『だって設計事務所に頼むと高いんでしょ?』という声を時々耳にします。高いと思っているのは、いい家をつくるために、どこにお金をかけるべきなのか理解されていないからではないでしょうか。『設計料』は建築家が製図板やパソコンに向かっている時間だけに払っているのではありません。建築家は、施主さんの要望や、施主さんも気づいていないニーズを整理しながら、その特徴を引き出し、家族のつながりや将来、まちとの調和も考え、暮らしやすいデザインを提案するのです。その中には、建築家の知識と経験とアイディアが盛り込まれています。
そこに『設計料』としての価値があるのです。施工業者の見積の適正や、設計通りに施工されているか、手抜き工 事はされていないかなどをチェックしたり、様々な仕事も含まれています。また、完成後も図面を大切に保管し、メンテナンスにも備えているのです。案外簡単に決めてしまいがちな家づくり。人生にかかわりあいが大きい事だけに、もっと時間とエネルギーを費やしていただきたいと思います。

知識とアイディアを駆使し、自然と調和した、美しい家づくりを。

  • 家づくりを楽しむために -その18
知識とアイディアを駆使し、自然と調和した、美しい家づくりを。
スイスの緩やかな斜面に建つ家々は、スイス特有のシャレーと呼ばれるつくりで、一階部分を石で、二階を木でつくった美しい建物です。その基礎部分は、日本の住宅もそうだったように、斜面に手を加えないで、土地になじませて建てられています、もし、現在の日本人がスイスに家を建てるとしたらどうなるでしょうか。 日本の郊外の丘陵地にある新しい住宅地のように、擁壁をつくり、斜面を削り取り、アルプスの美しい景観を台なしにしてしまうかもしれません。日本では、擁壁をつくり、斜面を削ることが定着してしまっています。平らな敷地を求める買い手や法の要請、宅造の基準などがあり、致し方ないところもあります。樹木などをそのまま残し、それが繋がって全体の風景となるような住宅地…決して不可能ではないはずです。また、斜面を利用して建てることにより、おもしろい空間が生まれたり、思いもよらなかった副産物を手にすることができたりするものです。美しい 『まち』『まちなみ』をつくるためにも、建築士の知識やアイディアをおおいに活用していただきたいと思います。

のびのびと暮らすために、まとまった空間の確保を。

  • 家づくりを楽しむために -その17
のびのびと暮らすために、まとまった空間の確保を。
壁でいくつもの部屋に区切られている現在主流の住まい。各部屋に冷暖房設備が取り付けられていて、熱効率もよく快適に思えます。また、個人のプライバシーも確保され、暮らしやすそうにも見えます。しかし、本当にそうでしょうか。狭い空間ゆえに人間の影響をすぐに受け、人いきれで不愉快になったり、閉塞感を覚えたり。また、家族から離れてしまうため、なんとなく不安だったり…。そこに住まう人々がよほどしっかりしたものを持っていないと、せっかく手に入れた『家』に思いもよらない家族のあり方を押しつけられることになりかねません。家族の団らんを大事にし、精神的にも生理的にものびのびと暮らすためには、ある程度のまとまった空間が必要です。『人』が快適に生きていくには、そこそこの『空気』の量が必要なのです。小部屋に区切っていないと多額の光熱費がかかるとか、プライバシーが確保できないとか思われがちですが、何事も工夫次第です。創意と工夫 に 満ちた、バランスのよい空間を設計者と共に生み出す作業。それは、ハウスメーカーでは味わえない楽しさです。

子供の自立は家族のありかたから。

  • 家づくりを楽しむために -その16
子供の自立は家族のありかたから。
私たちの子供の頃の住まいは、部屋と部屋とが襖一枚で仕切られていて、親や兄弟と『自分の部屋が欲しい。』と思うほど常に顔を合わせ、賑やかでした。自分の部屋がなく、プライバシーがないのも事実でしたが、大切な様々な事を学びました。核家族化・少子化・夫婦共働きなど、子供を孤立させてしまうケースが多い現在、部屋を壁で区切った住まいが主流となっています。さらに『子供の自立心を養い、勉強が集中できるように。』と期待し、安易に子供部屋を与える親もいます。西洋のように『個人主義』がきちんと確立されていない日本において、親の勝手な思惑通りにいかない場合がほとんどで、子供は掃除もしなければ勉強もしない。部屋にこもりがちで何をしているのかわからない。わからないから過剰に干渉をして子供を怒らせる。あげくの果てには学校や世間のせいにしたり、住宅のせいにしたり…。子供に部屋を与えるということは、プライバシーを与えると同時に、家庭から隔離してしまう危険性もあるのです。
部屋を与える前に、『子供とのふれあい』は大丈夫か、子供は『部屋の価値』を理解しているかなど慎重になることが必要です。家族と常にふれあうことができた、懐かしい日本の住まい。たとえ自分の部屋はなくても、私たちは勉強し、自立をすることができたのです。

健康性、快適性への関心を高めた家づくりを。

  • 家づくりを楽しむために -その15
健康性、快適性への関心を高めた家づくりを。
すがすがしい桧や杉の香り、心地よい畳の匂い。最近では少なくなった、そんな香りがする新築住宅へおじゃまするとき、気持ちがウキウキします。また一方で、目がチカチカしたり、頭がズキズキしたり…『ここの家もシックハウス(病気の家)だ。』と残念に思うことがあります。内装に使われた塗料や接着剤、それらを使った合板や集成材などが有機化合物や甘酸っぱい匂いを放出するためです。最近の住宅は、省エネルギーのために高気密・高断熱化しています。空気が滞留することも悪循環を引き起こしています。家族の心身を守り、育むはずの『家』が、シックハウスの問題を引きおこすことは、プランを提案する建築家として真摯に取り組まなければならない問題です。自然素材や化学物質の放散の少ない建材をいろいろ提案したり。高気密・高断熱にとらわれず、温暖な紀南にあった密閉型でないプランを提案・工夫したり…。
『自然素材は高くつく。』ととらわれがちですが、手頃な価格のものを上手に組み合わせれば、なじみやすく、味わいのある空間が生まれます。間取りや設備だけでなく、健康性・快適性への関心も高めた、家づくりをしていただきたいと思います。

自然素材を使い、歳月を経る程に愛着が深まっていく住まいを。

  • 家づくりを楽しむために -その14
自然素材を使い、歳月を経る程に愛着が深まっていく住まいを。
廃材を使った家具やインテリアが、人気を呼んでいるようです。
長年使いこまれてこそ表れる、独特の質感。そして自分だけの独創性を演出できるところに魅力があるためです。また、古い民家や、現在では手に入りにくい立派な古い木材を再生して役立てようとする動きも広がっています。
今日、日本では、プリント合板、木目調のクッションフロア、レンガ調の壁紙など、そっくりに作られた建材が多く使われます。
しかし、人と家との関係は歳月を経る程に愛着が深まっていくもの。
自然素材は使い込まれ、汚れ、傷ついていくと、なんとも言えない味わいを醸し出します。
その味わいは、家族の歴史となっていきます。模造品ではマネのできないところです。
「自然素材は高価」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。確かに高いものもありますが、手頃な価格で良質なものも、たくさんあります。それらを上手に組み合わせて使っていただきたいと思います。
自然素材で家を建て、使い込み、愛着と価値を育んでいく。これも家づくりの楽しみのひとつです。