コラムcolumn

時は流れる・・・そしてつながる。

  • 夢をカタチにする力 -その46
  • おじいちゃんの植えた木で建つ家 (平成26年春竣工)
時は流れる・・・そしてつながる。
 木は、建築用材として使うには五〇年生以上の材料が必要です。つまり、私たちが木の家を建つには、ちょうどおじいちゃん世代の人が植えて、お父さん世代の人が育てた木を使うわけです。と言っても、通常そんなことを意識できることはありません。ところが、この家の住まい手は自分のおじいちゃんが植えて、お父さんが育てた木で家を建つ夢を実現できたのです。
 大きな玄関土間を持つ平屋・・・住まい手の原体験の中にある住まいの形を新しい家で具体化したい・・・というご希望でした。
 桧の大黒柱が大きな屋根の骨格をしっかりと支え、胴差し(大梁)は松の丸太、梁類は杉、柱類は桧、床は杉の厚板です。敷居・鴨居などの造作材から押入の中に張った杉板に至るまで、すべての木材がおじいちゃんの山から来ました。
 大きな土間を持ち、開放的な住まいでは冷房よりもむしろ暖房に気を使います。そこで役に立つのが大カロリーの薪ストーブ、これ一台で家中すべての暖房をまかないますが、そのために効率の良い外断熱で床・壁・屋根面をすっぽりと覆い、暖かい風が住まいの中を巡るようにしっかりと計画しています。 
 私たちがあまり意識しなくても、時間は当たり前に連続して過去から未来へとつながっています。そのことが目に見える形で自覚でき、自らのアイデンティティーに思い至る事が出来ることは幸せなことだと言えるでしょう。

そろそろ一年、住まい心地をインタビュー。

  • 夢をカタチにする力 -その45
  • 龍門山を望む家 (平成24年冬竣工)
そろそろ一年、住まい心地をインタビュー。
 ○夜明けと共にめざめる暮らし 
老後を暮らす夫婦二人の所帯。そんなに大きいのはいらないけれど、土地は高台というのが気に入って求めたものだから、立地の利点を活かしたい。それが、一番の希望でした。ぴったりのプランを提案していただき、景色を眺 めて暮らせる気持ちのいい家になりました。 (奥さん)なにかの具合によるのか、山がものすごく近く鮮やかに見える時があるんです。この頃は、5時頃にお日様が昇りはじめる。だから、今日も夜明けの五時に目覚めたの。冬至の時はあの辺から昇っていた…今はあの辺りから…毎日少しづつ、日の出の位置も、山々の表情も違います。この見晴らしの良さと過ごし心地は、命がのびる感じがしています。
 ○我が家の良いところ
今回うちは玄関を2つ造っていただいたし、当初玄関土間の広さは贅沢かなぁ…と思ったけど、仕上がってみるとゆとりがあって気に入っています。前の家では、玄関というのが家族の実用のもので、しかもこんなに広くなかった。こちらでは、サブの玄関を普段使いの専用に設けてもらい、日常の細々とした物をしまえるようになりました。薪ストーブが据わるメインの玄関土間は、常にスッキリと玄関らしくしておけるので、この使い分けは大変良かったです。平屋も…あれだなぁ。やっぱりだんだん、足腰弱ってくるじゃない?上り下りが大変になってくるから、所長(中村伸吾)には、バリアフリーでお願いしますと頼んだんです。ワンフロアで過ごせるのは楽ですね。
 ○これからの楽しみ
東向きなので夏場の高い陽はまず差ささないから、夕涼みのビールがうまい…楽しみです。デッキのテーブル・ベンチなどは、この家の屋根の端材で製作しました。納戸の中などにも、建築中に出た端材を、住み始めてから活用して細工を作りました。同じ材料なので、家とも馴染みがいい。庭の面積が広くなり、最近は休日はもっぱら植栽の植木にかかりっきりだなぁ。まずは春に向けて咲くものを植えました。今は、夏・秋にむけて植え込みの準備中です。四季それぞれの、季節に映えの良いものを植えていきたいなぁと考えています。部屋内からの眺望を大事にしたいし、コンパクトに収まって、賑やかに仕上げたいなという思いがあります。予算をどんどんかけて、プロに任せれば立派に仕上げてくれるだろうけれど、それでは楽しみがない。自分で一本づつ一本づつ植えるのが、私達の今の楽しみです。

改装は大胆に。

  • 夢をカタチにする力 -その44
  • 南紀の台の家の改修 (平成25年春竣工)
改装は大胆に。
 このところ、お部屋の改装の依頼が増えています。今あるものを大切に・・・基本が充分しっかりしたものであるなら、必要に応じて手を入れながら大事に使う・・・というのは日本人の美徳でもあるように思います。改装のポイントは、既成の概念にとらわれず、思いきった気持ちでやりたいことを実現する・・・というところでしょうか。人間一度適応してしまうとなかなかそこから離れにくいものですが、既存の使い勝手や仕上げに縛られていては思いが遂げにくいのも現実です。
 元々は納戸だった二部屋を改装して新しく一つの板間としました。納戸ですから窓は小さく通風も採光も足りません。そこで、思い切って外壁を打ち抜き45センチほど壁を外に出し、そこに桧の天板の机を造り付けました。大きなテーブルの左下にはプリンターや無線ルーターなどを仕舞い込んで扉を付けていますのですっきりと納まっています。ビニールクロスだった壁は珪藻土に塗り直し、天井は既存の丸太梁をあらわしで見せることにして杉板で張り直しました。床は新建材のフローリングだったのですが、冬場がつらい・・・という話を伺っていたので、床下断熱を新たに手厚くして無垢の唐松のエンコウ板で張り直してあります。
 もうここを納戸だったと思う人はいないでしょう。木の香りのあふれる空間で心行くまで生活を楽しんでください。

自分らしくある、それが家づくりの最初の一歩。

  • 夢をカタチにする力 -その43
  • 居間が2階にある住まい (平成24年春竣工)
自分らしくある、それが家づくりの最初の一歩。
 住まいの形はご家族によって大きく変わります。Aのご家族では当然だと思えることも、Bのご家族では不快であったり意外であったりすることは時としてあるものです。
 今回ご紹介する住まいでは居間が2階にあります。敷地の形状や大きな前面道路との関係で、家族が集う居間空間を誰に気兼ねなく過ごせるように・・・と2階に上げる事になったのです。南には大きな吊りベランダを用意して居間の窓は掃き出しにしてあります。2階にあることで道行く人々と視線を合わせることもなく、大きく放たれた窓からは陽光が降り注ぎます。屋根形状を工夫してたくさんのロフトも用意しました。収納の容量アップを図れるのはもちろん、子どもたちの遊び場や書斎としても役立ちます。変化のある空間は単調になりがちな生活に楽しみを与えてくれます。
 それぞれのご家族にはそれぞれの事情があり、思いもニーズもまちまちです。これが正解・・・と言える回答などないのです。自分らしい暮らし方をしっかりと見つめて、それをカタチにした住まいが大きな満足を与えてくれます。自分らしくある・・・それが家づくりの最初の一歩だといえるでしょう。

 時の経つのは早いものです。計画の時には小さかった子どもたちもどんどん大きくなるでしょう。この子たちと気持ちよく過ごしたい・・・とおっしゃっていた奥さんの夢を、ちょっと他所とは違うこの住まいがいつまでもしっかりと受け止めていてくれることを願っています。 

かずまくんちは、呼吸する長期優良住宅です。

  • 夢をカタチにする力 -その42
  • 良守(かずま)くんち (平成23年夏竣工)
かずまくんちは、呼吸する長期優良住宅です。
 長期優良住宅は高気密・高断熱でなければならないと思われているようですが、そうとも限りません。むしろ、木の家では高気密・高断熱の仕様は木の家特有の快適性を阻害したり、住まいの寿命を縮める要因ともなりかねません。
 一般に、断熱性能を高くすると結露の危険性が高まります。そこで、結露を避けるために高気密が必要になるわけです。高気密の住まいを造ってしまうと、湿気は室内からの逃げ場を失いますので、エアコンや強制換気が必要になります。機械効率を上げるためにますます高気密・高断熱の度合いを高め、部屋を小さく区切って・・・という悪循環では人に優しい環境は創れません。多少効率が良くなるからといって、長時間にわたって機械制御が必要な高気密・高断熱の家をエコとは呼べないと思うのです。
 木の家の大きな特徴は湿気を調整できるところ(調湿性)と、熱を蓄えられるところ(蓄熱性)です。たとえ長期優良住宅といえども、木の家である限りは、木の家の特徴を良く発揮できるこしらえが必要です。「良守(かずま)くんち」は家全体で湿気を屋外に排出する仕組みを備え、蓄熱・調湿の役目を果たす自然素材で出来た清々しい空間を持つ、とっても珍しい「呼吸する長期優良住宅」です。

木の家は、人と街と森をつなぐ絆。

  • 夢をカタチにする力 -その41
  • 紀州梅の里 なかた (平成24年春竣工)
木の家は、人と街と森をつなぐ絆。
 住宅では一般的な木造も、少し大きな建物ではコンクリートや鉄骨になってしまい残念に思うことがあります。
 工夫すれば木造で気持ちのよい空間が出来るのに・・・そんな思いをカタチにしたのが田辺市にある「紀州梅の里 なかた」です。
 店舗としての大空間を構築するため特殊になりがちな柱・梁は、一本で大きな材料を用意するのではなく、無理のない寸法の材料を組み合わせて組柱・組梁としました。壁には珪藻土を塗り上げ、天井は和紙貼りとしました。アプローチには梅の木をイメージして斜めに丸太を建て込み、床には金錆の石を貼っています。
 出来上がった空間は、複雑に組まれた柱・梁が森の木々を連想させ、梅の花の形に仕込んだ照明器具とともに訪れる人々を心地よく包み込みます。
 すべての建物は「まちなみ」を構成する最小の要素であり、地域の産業や環境と切り離してはあり得ません。たとえ個人所有の住宅であってもその役割から逃れられませんが、企業や公共の所有する建物・・・不特定多数の訪れる店舗などは尚更です。

 人に気持ち良い空間を構築し、地場産業と緑環境に貢献する「木」の可能性に注目し、紀州材を使った大型店舗のモデルケースを造ろう・・・と決断されたトップに敬意を表します。
そして、人と街と森がますます強い絆で結ばれていくことを願っています。

本当の快適さとは・・・。

  • 夢をカタチにする力 -その40
  • 薪ストーブの家 (平成22年春竣工)
本当の快適さとは・・・。
 冬場は、陽差しが気持ちよく入って、暖房機などなくても暖かく暮らせる家が理想です。しかし、現実はそういうわけにもいきません。エアコンなどは頭がボーッと熱くなるばかりで足元が寒い・・・と、おっしゃる方も多くいます。心地よい暖かみを得るコツは住まい全体をホッコリと暖めてしまうことです。
 私の設計する住まいでは、薪ストーブを選択される方が多くいます。圧倒的な火力で住まい全体を暖めます。もちろん建物の方にも工夫が必要です。しっかりとした外断熱ですっぽりと建物を包み込んでしまいましょう。横方向だけでなく、縦方向にも暖気の通り道を確保しましょう。せっかくの暖気を蓄えることの出来る室内仕上げを施しましょう。
 家の中、どこにいても暖かい空間は思いのほかの快適さを提供します。火は家族の交流を促し、自然と集う空間がそこに出来上がります。薪の調達や火の始末など、やっかいなことも多いのに、皆さんが暖房機として薪ストーブを選択される理由も分かるような気がします。
 また、最近では床暖房や深夜電力型の蓄熱暖房機なども採用されはじめました。いずれも、快適に冬場を過ごすためには効果的な器具です。

 効率を最優先したつもりでビニールクロス貼りの小さな部屋を連ねてみても快適な暮らしは望めません。ここは一つ立ち止まって、家族にとって本当の快適とは何かを考えてみましょう。選択肢は色々とあるものです。

住まい手はクリエーター。

  • 夢をカタチにする力 -その39
  • 福島の家 (平成21年秋竣工)
住まい手はクリエーター。
 一昔前・・・お客様をお迎えする玄関や客間などはとても大事にされてきました。おもてなしの心を表現し、そのお宅を代表する「顔」の役目を果たすために、条件のよい南や東に陣取り、そのくせあまり活用されないでいたのが現実です。
 しかし、この住まいでは、玄関土間を大きくとって、直接居間空間につながるように設計しています。玄関はおもてなしの場、家の「顔」ではありますが、同時に居間空間の土間コーナーとしても機能するわけです。ある時には鉢植えの緑を持ち込み家族の和みのコーナーとなり、ある時には自転車置き場となり、ある時には趣味のスペースとなるのです。こうすることで住まい手の暮らしの幅が大きく広がり、空間活用に様々な可能性がひらけます。
 住まいのカタチは、敷地条件や家族構成や予算などの多くの制約の中から、本当に大事な事柄を丁寧にひろいあげるところから生まれます。家ってこんなものでしょう・・・というあてがわれた価値観に縛られて、ヤドカリのようにそこに家族の暮らしを押し込むことより、例え少し世間とは変わっていても、徹底的に家族・住まい手を中心に発想した、住まい手が積極的に参加した家づくりをすることをオススメします。ご本人でなければ決断できないことが家づくりにはたくさんあるのです。

発見のある住まいは楽しい。

  • 夢をカタチにする力 -その38
  • 片流れ屋根の家 (平成18年秋竣工)
発見のある住まいは楽しい。
 ご夫婦にはカヌーという共通の趣味がありました。アクティブなご夫婦の希望は、カヌーとバイクの格納庫を併設した住まいであること。そして、合理的で使いやすくできていること。そこで、1階には格納庫と共にワンルーム形式の大空間と水廻りを用意し、2階に大きなベランダを持つ個室群・・・という住まいを提案しました。1階のLDKを一つにした大きな空間で特に気をつけたのが台所です。洗面・脱衣などの奥様の家事動線を短く計画し、台所廻りを行き止まりにしなかったのが特徴です。
 対面形式のキッチンは最近の流行らしく、奥様方の希望にはよく登場します。家事をしながら子供達の様子が見えたり、一人きりで家事の仕事をしているという疎外感が緩和されるのが人気の要因でしょうか。しかし、対面形式のキッチンでは家事動線はあまり短くはなりません。それは、行き止まりがあるからです。
 キッチンセットに限らず、住まいの中の動線は行き止まらないように・・・グルグル回れるように計画することをオススメします。このような住まいでは、思わぬ所に居心地の良い空間を発見したり、予想もしなかった使い勝手に出会うこともしばしば・・・いつまでも色あせない我が家で、楽しく生活することが出来るでしょう。

空間を、おおらかに楽しむ。

  • 夢をカタチにする力 -その37
  • かつらぎ町 大きな玄関土間の家 (平成23年春竣工)
空間を、おおらかに楽しむ。
 私たちには、住まいの中を小さく区切りそれぞれの空間に名前を付けて、用途を限って使おうとする習慣があります。しかし、実際の生活ではそんなに明確に使い勝手に区切りがあるわけではなく、時々の気分によってフレキシブルに、使いやすい様に使っている事が多いようです。あまり期待も意図もしていなかったけれど、この空間はこんな事をするのに気持ちの良いところだ・・・などといった発見も日常的に起こるものです。
 大きな玄関土間の家では、それぞれの部屋の区切りをおおらかにとらえ、空間に連続性を持たせることによって、住まい手に自由な使い勝手を提供し、住まい全体が無駄なく楽しく活用できるように設計しました。特徴的なのは玄関から居間に続く大きな土間です。ここは、玄関の延長としてお客様を迎えるのみならず、ある時には書斎になり、ある時には遊び場となります。土間の突き当たりには薪ストーブが据わり、人の集まる居間空間のシンボルとなっています。2階に続く階段もここに取り付けられ、吹き抜けと共に上下の空間をつなぐ役目を果たします。また、南東の大きな掃き出し窓には木製のデッキを付けて、室内と屋外の空間が柔らかくつながるようにしています。

 設計者として、内包する空間や装置、そしてそれらを取り巻く環境のすべてで、いつまでも住まい手の快適な暮らしを支えられる住まいであって欲しいと願っています。

紙障子は、日本の知恵。

  • 夢をカタチにする力 -その36
  • 橋本の家 (平成22年春竣工)
紙障子は、日本の知恵。
 住宅に必要ないろいろな性能の中でも、このところ注目されるのは、断熱性能を中心とした省エネの性能です。特に最近では機械効率を優先するあまり、高気密・高断熱がもてはやされる風潮にあるようですが、機械の効率を云々する前に、機械に頼らない生活のあり様を考えてみることの方が大切ではないかと思っています。
 お日様の恵みをいっぱいに受けるには深い軒の出と大きな開口(窓)が必要です。心地よい風を住まいに招き入れるためにも同様でしょう。しかし、大きな窓は、こと断熱性能という角度から見ると、ウイークポイントにもなりかねません。屋根・壁にしっかりとした断熱性能を持つ住宅では、ガラスで遮るだけの窓の断熱はいかにも脆弱でしょう。そこで必要になるのが、窓の断熱性能を補うカーテンなどの補助部材です。私のオススメは紙障子。和紙一枚でそんなに・・・と思われるかもしれませんが、機密性の高い紙障子の効果は想像を超えて優秀です。
 橋本の家の住まい手は、大きな窓にはすべて紙障子を付けることを選択されました。存在感のある杉厚板の床とも良くマッチし、二度目の夏を迎えるご家族を優しく包み込んでいます。

快適な空間を造るには、基本を大切にすると良い。

  • 夢をカタチにする力 -その35
  • 上野山の家 (平成21年冬竣工)
快適な空間を造るには、基本を大切にすると良い。
 人と環境にやさしい自然素材を用いる。軒を低くし、季節によって変化する陽差しをしっかりと制御する。風の通り道をデザインする。そして、蓄熱・調湿効果のある材料を用いる・・家づくりの基本は、いつの場合も大切にしたいものです。
 たとえば南向きの開口部・・夏の陽差しは省エネガラスでも遮る事が出来ます。しかし同時に、冬場の大事な陽差しも遮ってしまうことになるでしょう・・夏の陽差しを遮り、冬の陽差しを取り込むために深い軒の出は大切です。小さく区切った機械効率の良さそうな部屋で空調機を回せば、そこそこ快適な空間は造れます。ですが、心地よい季節の風と共にある暮らしを営むことは難しいでしょう。室内の温度・湿度も機械で制御することが出来ます。ところがこの場合にも、快適なのは機械が動いている間だけ、止まればすぐに不快な空間を体験することになるでしょう・・温度・湿度を状況に応じて調節する機能を有する木や土などの材料は捨てがたいものです。
 今回ご紹介する住まいは竹小舞の土塗り壁を採用し、大きな開口部には断熱性能も高く、外の景色も楽しめる雪見障子を建て込んでいます。基本に忠実な家づくりを実践された住まい手は「冬場も暖かくて快適だったよ。」と、笑顔で住まい心地を語ってくれました。

住まい手からの便り・・・太地より、22年冬。

  • 夢をカタチにする力 -その34
  • 太地町 丸窓のある家 (平成22年春竣工)
住まい手からの便り・・・太地より、22年冬。
前略・・季節もすっかり冬に近づいてきまして、家もずいぶんと陽が入ってくるようになりました。それはそれは明るく、暖かいです。今日などは室内は22度くらいありまして、半袖でも過ごせるくらいです。夏芝が未だに枯れずに緑を保っているところをみると、今年の気候や土地柄もあるのでしょうが、ありがたいです。床暖房は15度以下と決められて、なかなかつけてもらえませんが、朝方15度になったのは2回ほどです。14度はありません。・・中略・・近頃のお気に入りは、頼んでつけるようにしていただいたスピーカーからジャズを流しながら、家事をしたり、食事やお茶をすることです。なんだかリッチになった気分になります。友達などに家を見に来てもらうと、木の香りから心地よさ、細かな配慮まで、とても感心してくれて、いいねぇと喜んでくれて、私たちもご機嫌です。ジャズを流しながらお茶をして雑談などすると、すっかり心和んで、皆さんゆっくりしていきます。カフェみたいとの感想で、私たちもそんな気分で毎日を過ごしています。・・中略・・ヤマボウシは土地柄ほとんど紅葉せずに散ってしまいましたが、少し残っていた葉っぱが紅葉し、丸窓から見える景色がまた風流です。南天は数個実をつけています。ウバメガシは、たくさん実ったどんぐりが一昨日の嵐で、随分と落ちてしまいました。山茶花は、つぼみはたくさんつけているもののなかなか咲いてくれません。暖かいからでしょうか?

 何かとお忙しくお過ごしのことかと思いますが、また是非こちらに来られる機会がございましたら、来ていただけると嬉しいです。いくつか写真も添付しますので、ご覧ください。
 年末で忙しい時期です。どうか御身体には気をつけてお過ごしください。

家が呼吸をすれば、暮らしはエコで快適になる。

  • 夢をカタチにする力 -その33
  • 山口の家 (平成22年春竣工)
家が呼吸をすれば、暮らしはエコで快適になる。
 住まい手と初めてお会いしたのは完成見学会です。
「人工的で結露のひどい現在の住まいには困っている、今度は住まい心地の良い木の家が欲しい・・」とのことでした。その後、頂いた家づくりのコンセプトは「自然素材の木の家と、緑あふれる庭で、子供たちがのびのび育つ環境作りがしたい。」というものです。
 まずは、古民家の骨格の考え方をそのままに、耐久性・経済性・可変性の高い民家型の基本軸組をしっかりと組み上げます。その上で、地域の要求する断熱・気密性能の床・壁・屋根を造りました。外張り断熱の通気工法で結露には特に強い構造になっています。木材は龍神材、仕上げの珪藻土はもちろん、断熱材まで、全てを自然素材で造り上げました。
 木の家で快適に住まうには、木の持つ調湿・蓄熱の性能を充分に引き出すことと、住まい全体で呼吸する仕組み造りをすることが必要です。冷気や暖気を良く蓄え、適度な湿度の空間づくりを心がけることが、エコで快適な空間を造るコツと言えるでしょう。

 夏前に植えられた緑もすっかりと根付いて生活に彩りを添えています。秋には、深夜電力を使う蓄熱暖房機が付きました。空気を汚すことなく輻射熱でゆっくりと暖められた室内は、寒い冬にも穏やかな目覚めを助けてくれることでしょう。庭の芝生の一角に置かれたブランコに乗る子供たちの笑い声がいつまでも続く住まいであって欲しいと思います。

地域と共に、ゆたかに暮らす。

  • 夢をカタチにする力 -その32
  • 中三栖の家 (平成21年夏竣工)
地域と共に、ゆたかに暮らす。
 夏涼しくて冬暖かい、清々しい空間を内包した、団らんのある家・・これが住まい手の欲しい家(コンセプト)です。
 初めて敷地を訪ねた時、住まい手から頂いたコンセプトをカタチにするには格好の場所だと感じました。北側道路の東西に長い敷地、一段下がった南側は梅畑、その緑に遮られて近くに人工物はあまり見えず、遠景には熊野古道につながる山々が見えました。西側にはすでに隣家があり、夏の西日や冬場の北西風をやわらげてくれます。大きいめの敷地は「家庭菜園がしたい・・」というご希望を叶えるだけの余地を残しています。
 基本骨組は、後の増改築に対応する古民家の良さを生かした民家型。構造材をはじめとする全ての木材は厳選した紀州材です。屋根・壁は外張り断熱の通気工法、結露に縁がなく温度差の少ない室内環境を目指しています。仕上げには杉・桧の無垢材、珪藻土、和紙、石などの自然素材を用いて、住まい手にも環境にも優しい空間づくりを心がけました。家族の団らんの中心は住まいの中央に設けた居間・食堂の大空間。南側には四間続きの大きな開口部を持ち、光と風を、ある時は思い切り受け入れ、ある時はシャットアウトしながら季節感のある快適な生活を助けます。
 力強くて決断力に富み包容力の豊かなご主人と、良く気の付く優しい奥様、そしてかわいい子供たちとの家づくりは楽しい共同作業でした。

 竣工から1年が過ぎた中三栖の家では玄関先の緑も少しずつ育ち始めています。住まいの廻りの緑が増え始めると建物の表情も豊かになり、暑さ寒さをはじめとする自然の環境もやわらぎます。緑の畑を渡るさわやかな風をいっぱいに受けて、いつまでも続くご家族の団らんを、優しく包み続けられる住まいであることを願っています。

強い思いがカタチを創る。

  • 夢をカタチにする力 -その31
  • 土間ギャラリーの家 (平成21年春竣工)
強い思いがカタチを創る。
 満足度の高い住まいを造るにはコンセプトが大切・・というお話は度々してきました。今回ご紹介する建物はご希望をストレートにカタチにした、とても個性的なお住まいです。
 住まい手のご趣味は木工の美術作品を集めること。三桁に及ぶ収集品を展示するのにふさわしい住まいを造りたい・・というのがコンセプトです。
 素朴で力強い作品たちの邪魔をすることがないように、建物には過度の装飾を施す事は止めて、ただ素材の本物感を風合によって表現するように・・と心がけました。ほとんどの柱はあらわしとし、梁も可能なものは太鼓挽きの丸太梁としてあらわしています。大きな間取りに釣り合いがとれるように、そして展示スペースを稼げるようにと壁には1階半程の高さを持たせて漆喰塗りの仕上げにしました。床は表情のやさしい桧の縁甲板です。訪れる人たちを気負い無く受け入れやすいようにギャラリーは土間にしています。壁には力貫を取り付けて、重量級の展示物も心配なく壁面に展示できるよう工夫しましたが、とてもそれだけのスペースでは収めきることは出来ず、中2階や吹き抜け空間にまで作品があふれてしまうことになり、住まい全体がギャラリーの様相です。

 この住まいが、思いで深い展示作品たちを眺めながら、心ゆるせる仲間たちとのゆっくり流れる楽しい時間を、いつまでも心強く見守り続けられることを願っています。

木の家工房 Mo-ku(モーク)

  • 夢をカタチにする力 -その30
  • 木の家工房Mo-ku (平成22年春竣工)
木の家工房 Mo-ku(モーク)
 和歌山市楠本に建つ当事務所の常設ギャラリー「木の家工房Mo-ku(モーク)」をご紹介しようと思います。しっかりとした軸組フレーム(木の国スケルトン)を持ち、天然乾燥の木の良さを生かしたあらわしの民家型構法・・木、土、紙などの自然素材を使い、調湿性と蓄熱性にとむ建物自体が呼吸をする機械依存の少ない快適な木の家・・という基本は日頃提供している住まいと同じですが、今回はギャラリーという性格上特に趣向を凝らしたところもあります。
 一つは、「木の家」という言葉から多くの皆さんがイメージするであろう伝統和風の出で立ちから少し離れたものを狙ったことです。駐車場を取り込んで中2階を設定し、軽快な外観と、つながり感の強い室内空間を実現しています。
 二つめは、間伐で出てくる小径木を、斜めの丸太柱や厚板などとして積極採用し、近くの山との共存性能を高めたことです。小径木も、使い方と使い所を間違わなければ充分に役目を果たし、面白い表情を建物に与えてくれるものです。

 木の家は、モダンな外観も、落ち着いた外観も、たいていのデザインを許容し、ご家族の快適な生活に寄与する、先人が生み出した知恵の固まりです。Mo-kuは木の家の良さを充分に発揮し、これまであまり興味がなかった方にも受け入れていただけるように・・と造られています。お近くにおいでの際には是非立ち寄ってみてください。陽差しと、快い風に充ちた快適空間があなたをお待ちしています。

大切なものは、目には見えない。

  • 夢をカタチにする力 -その29
  • はぜはら整形外科クリニック(平成18年初夏竣工)
大切なものは、目には見えない。
 「木の家」の設計が多いのですが、最近は住宅だけでなく保育所や福祉施設などの設計をさせていただく機会も増えてきました。今回ご紹介する建物も、和歌山市松島に建てられた整形外科の診療所です。50代半ばの先生からのご希望は、スタッフには合理的でスムーズな動線を・・患者さんにはリラックス出来る癒しの空間を提供したい・・というものでした。
 基本構造は木造民家型、部屋の間仕切りに先行して、柱・梁組を2間グリッドでしっかりと組み上げます。平面計画に自由度が生まれ、診療部門の合理的な配置が可能になり、後の改造に対応出来る骨組みが出来上がりました。また、通常の木造平屋建ての建物では難しい、天井の高い待合い室や、大空間のリハビリ室も実現出来ました。壁の仕上げは珪藻土塗り、天井は和紙貼り仕上げです。診療部門の床は天然のリノリュウム、リハビリ室など水の心配のない部屋は無垢の唐松の床になっています。さらに、家具材料の合板から薬品の発散がないようにと、全ての家具を杉・桧の無垢材で制作しました。
 たくさんの人が集まる空間はメンテナンスなどを意識するあまり、無機質になりがちです。衛生面や合理性には十分に気を配った上で、利用者の気持ちの動きにも思い至りたいものです。白いものが混じりはじめた立派なおヒゲと、涼しげな目元の先生の診療所は、今日もやさしい空気に包まれていることでしょう。

住まいは、家族の思いをつむぐ場所

  • 夢をカタチにする力 -その28
  • たけくらべ柱の家(平成21年春竣工)
住まいは、家族の思いをつむぐ場所
 小さい頃の家族の思い出や地域の風景は、ひとどなりや情緒の形成に大きな影響を及ぼします。古民家の改装が脚光を浴びるのは、環境・経済などの要因以外にも、家族や地域のアイデンティティーの継承・・という側面も大きいでしょう。
 今回ご紹介する住まいは、古座川に建つ三世代の家族が住まう二世帯住宅です。新築建物ですが、これまで暮らしてきた住まいの気配を全く無くしてしまうのは淋しい・・という思いから、それぞれの住まいに馴染みある特徴的なものを残すことになりました。
 お父さん世帯に残したのは仏間まわりのしつらえです。欠かすことなくお世話してきた仏様は、この家に代々伝わってきたアイデンティティーそのもの・・年季の入った扉類を洗いにかけ、使い勝手もそのままに再現しました。
 息子さん世帯には「たけくらべ」の印が付いた古い柱を残すことになりました。新築のまだ白っぽい柱の中にあって、黒光りするひときわ存在感豊かなこの柱には、お父さんの懐かしい印から、お孫さんの真新しい印まで・・ご家族の歴史が刻まれています。
 建物には、後の改装に対応できる工夫と世代を超えて住み継げるだけのしっかりとした木組み(木の国スケルトン)を与えました。今はまだ小さな子供たちの、そのまた子供たちまでが、たけくらべをする様をあたたかく見守り続ける住まいであってほしいと願っています。

環境にやさしい家は、住まい手にもやさしい。

  • 夢をカタチにする力 -その27
  • 本宮の家 (平成20年夏竣工)
環境にやさしい家は、住まい手にもやさしい。
 住まい手のご希望は、自然とのかかわりを体験しながら、のびのびと二世帯で暮らせる「木の家」。家相に詳しい奥様と、以前は設計の仕事をされていたというお父様に助けられながら計画を進めました。大事にしたいのは景観を含めた周辺環境との共存、屋内と屋外の自然なつながり、自然素材による住まいづくりと機械依存を減らした快適な室内環境の創出・・など。
 南側の景観を生かし、陽差しを採り入れ、庭とのかかわりも多くとる・・自然を感じながら快適に住まうため、建物は敷地形状に沿って東西に長い雁行の形。開口は大型木製引き込み戸による大開口。すべて開け放てば5間の間がフルオープンになり庭と室内が直接につながります。風が気持ちよく吹き抜けるよう室内はあまり区切らないように心がけました。機械依存の少ない空間を造るには、住環境をパッシブな方向で組み立て直すことが必要だと考えています。現代住宅に最も欠けているのは室内の調湿と蓄熱の性能。それを補うのがあらわしで使う大量の木材と土塗り壁、そして石です。木、土、石の湿気と熱を蓄える性能は他の建築材料に比べると著しく優れています。

 環境に応じて湿気や熱を出し入れする呼吸する住まい。陽差しをうまく制御する低く深い軒の出、開放的な空間構成、風の通り道の確保など・・先人の知恵に学ぶ、地域の気候風土にあった家づくりが、過度の機械依存を防ぎ、環境にやさしく快適な住まいを実現します。