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研究・論文

木の家は心と体に気持ち良い! Ⅱ

木の家は心と体に気持ち良い! Ⅱ
・木の香りは心と体をリラックスさせる。
新しく出来たお家に伺うと、新築特有のニオイがします。その原因は新建材から放出される化学物質が主な原因です。現在では厳しく規制されていますので、住まい手に影響を与えることは少なくなっていますが、ひと昔前にはそれらが大きなマイナスの影響を与えました。
木のお家でも新築特有のニオイはします。しかし、木と自然素材で造られた住まいから出るニオイは大半が木の香りで、自然を感じるとか、気持ちが落ち着くとか、おおむね好意的に受け取られているようです。木の家に使われている杉や桧などの針葉樹のニオイについても研究が進んでいるようなのでご紹介します。
男性被験者(20歳代・14名)に対し、20秒間の安静の後、90秒間杉チップのニオイを呈示し血圧を計測しました。その結果、吸入開始後収縮期血圧が低下し、開始後40~60秒で吸入前に比較して有意な低下を示しました。血圧はストレスがかかると上昇することが知られています。したがって、血圧が低下したということは杉のニオイによって体がリラックスしたことを表していると解釈されています。
出典/恒次祐子ほか:木材工業(2005)
また別の実験では、杉材から揮発したニオイがストレスを抑制したという報告もあります。
大学生16名に対し、杉内装材を設置しない部屋と設置した部屋で30分の計算課題を実施し、唾液中のストレス指標となるアミラーゼの活性を計測したところ、杉材なしでは上昇し、杉材ありでは低下する傾向にあったそうです。アミラーゼは強いストレスを受けるほど活性が高くなると考えられていますので、アミラーゼの低下は計算課題によるストレスを杉材から揮発したニオイが抑制したものと解釈されています。
木の家は、私たちが想像するより大きなリラックス効果を日常的に生み出してくれているようですね。

・木の家の暖かさとは?
住まいの暖かさを左右する一番大きな要素は断熱性能ですが、それだけでは決まらないのが難しいところです。すきま風の多い少ないを判断するには気密性能、同じ室温でも暖かさに違いを感じるのは湿度(調湿性能)の関係。そして、人が直接触れるところの暖かさは熱伝導率が大きく作用します。
この項では触れて感じる暖かさ(冷たさ)に関係する熱伝導率に着目してみましょう。熱伝導率とは、熱の伝わる早さを示す数字(単位・W / mK)です。数値が大きいほど熱が伝わりやすい事を示します。人は触れあった時に自らの体温が奪われるスピードの早いものほどより「冷たい」と認識し、生理的にも大きく影響を受けます。
出典/最新データによる木材・木造住宅のQ&A(2011)
住宅建築によく使われる各材料の熱伝導率は天然木材(杉・桧)0.07、広葉樹合板(フローリング)0.13、樹脂0.2、アルミ180、コンクリート1.63、土壁0.9ほど。ちなみにグラスウールなどの断熱材は0.04ほどです。つまり、建材のフローリングはスギ・ヒノキなどに比べて約2倍、コンクリートだと23倍、アルミに至っては2570倍も速く人間の熱を奪うということです。
木は細胞壁の隙間にたくさんの空気を含んでおり、断熱性能が高く熱伝導率の低い素材です。そのため冬場には有効な断熱層としても機能し、外の冷気を遮ることができます。床や壁などに肌が触れあう機会が多い住宅においては、木の熱伝導率の低さが「暖かみ」につながる有利な特徴だといえるでしょう。
木の家の“ 暖かさ ”とは、「体温が奪われにくいこと」とも言い換えられそうです。それは、踏みしめた床板の自然なぬくもり、底冷えしない優しさなどとして体感できます。木は外気温を伝えにくく、体温を奪いにくいという特性から、快適生活の心強い味方となります。

・木の家は湿度調節が上手。
室内の仕上げに無垢の木材を用いると、木材の吸放湿作用が空間の湿度をある程度一定に保ち、過ごしやすい環境づくりが可能になります。また、湿度を低く保つことでハウスダストの原因となるダニや細菌の生存しにくい環境も作ります・・・という意見があります。では、実際に木質内装の湿度の調整効果はどのくらいあるのでしょう。
壁・天井などの内装に木の無垢材を使用した部屋(A棟)と、木目調のビニールクロスを用いた部屋(B棟)で睡眠時における室内の湿度を測定した実験によると、季節にかかわらず、A棟の方がB棟より湿度が低くなっています。通常、寝ている状態では人の呼吸や発汗などによって時間と共に湿度が上昇しますが、無垢材が吸放湿作用を発揮し、その上昇を抑制したと考えられます。ビニールクロスを貼った内装では、水分をあまり吸収しない素材が表面に露出しているため、容易に湿度が上昇している様子がうかがえます。
出典/日本木材学会九州支部大会講演集より
冬期、睡眠8時間後の木質内装の部屋(A棟)では約72~73%程度の湿度なのに対して、ビニールクロス内装の部屋(B棟)では87~88%程度の数字を示しています。夏期では、同じくA棟では74~75%程度の湿度なのに対して、B棟では89~90%程度の数字を示します。
つまり、冬期も夏期も木質内装の部屋では人の睡眠中の湿度の上昇がおだやかで、抑制出来た湿度は15%程度であったということです。就寝時にエアコンのかけっぱなしで電気代がかさんだり、体調を崩したりの経験がある方々には特に参考にしていただきたい実験結果です。

・木組みの床は怪我を少なくさせる。
木材は多孔質な組織構造で、衝撃が加わると組織がつぶれたり、たわんだ後に元に戻ったりします。これらの性質により、衝撃エネルギーは消費され、跳ね返ってくる力は加えられた衝撃力より弱くなります。木材は衝撃力を緩和させる効果がある材料です。
建物の木造床では、衝撃緩和効果は床板の樹種や厚さ、下地の材料・構造によって異なります。検証のために、特別養護老人ホームを対象としてアンケート調査が行われました。それによると、床板の下に根太・二重床・その他を施工した「直貼り」以外の床では、転倒や転倒による骨折事故が、床板をコンクリートの床に「直貼り」した場合の2/3であったことが確認されました。これは、根太組の床にすると衝撃力が加わったときに床がたわみ、衝撃力が緩和されるためだと考えられます。
出典/三浦研:日本建築学会計画系論文集(2014)
別の実験では、コンクリートに床板を直貼りした床では、小規模の木造建築物の木組みの床に対して、転倒時の頭部へ2倍もの衝撃が加わることが測定されています。この実験では同時に、クッションフロアやラバー付のフローリングなどのやわらかい素材を直貼りした場合の測定も行っていますが、木組みの床程の良好な結果は得られていません。以上のことから、木の床板を張った木組みの床は、衝撃緩和効果の高い安全な床であることが分かります。
下地は、直貼り床よりは木組み床。仕上げは、新建材のフローリングなどよりは無垢の床板。無垢の床板の中では、硬い広葉樹よりもやわらかい針葉樹・・・の順に安全・安心な床の造りとなると言えるでしょう。

・木の家はダニの活動を抑制する。
木材が活性炭と同等の悪臭成分の消臭効果を持つことや、ヒノキやスギから採れる精油が大気汚染物質を除去すると共に、黄色ブドウ球菌や大腸菌などに抗菌効果を持つことが知られはじめましたが、今回はもっと身近で目に見えるダニの防除にも役立つということをお知らせしましょう。
床材を木の床に改装した結果、ダニが減少したとの報告があります。集合住宅のリビングルームの床を畳あるいはカーペットから木の床に改装し、各部屋の床上及びカーペット・ソファー・ベッドのダニ数を測定した結果、8月と9月の家の中の1平方メートルあたりのダニの平均は104匹から23匹に減少したという研究結果が得られています。
出典/平松靖 SCIENCE&TECHNONEWS TSUKUBA 2006
又別の実験では、ダニが木材チップに直接触れることがないように通気穴のある容器に入れて、住宅や家具などによく用いられる木材、ヒノキ・ヒバ・スギ・ナラ・ケヤキのチップの上に設置し、温度25度・湿度85%の環境で、72時間後まで動いているダニの数を数え割合を算出しました。その結果、チップから発散されるニオイ成分にはヤケヒョウヒダニの行動を抑制する効果が確かめられました。ちなみにナラ、ケヤキなどの抑制効果は低く80%を超えるダニが動いていましたが、ヒノキやヒバなどではほぼ100%のダニの活動が止まり、スギでは60%程のダニが活動を止めました。
最近では、内装を木に改装するまでもなく、木の匂い成分を抽出した商品が手軽に手に入りますから、住まいの環境改善は思ったより簡単にはじめられるかもしれませんね。