木の家の建築家中村伸吾の建築設計事務所では和歌山の紀州材や自然素材を活かし無垢の材料で木造住宅を造っています。外断熱通気工法・土塗り壁・杉厚板の家などおまかせください
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天晴れ紀州材WoodDesignコンテスト2009優秀賞
2006年3月13日、紀南流域林業活性化センター(西地区)主催の「木の国Wood Designコンテスト2006」において『わんぱく保育所』が優秀賞を受賞しました。
[ 講 評 ] 優秀賞 わんぱく保育所

こどもたちを迎え入れるような大きな屋根は、軒先が低く水平ラインが伸びてあたかも大地に根ざしたような姿である。わんぱくなこどもたちを包むおおらかさや優しさが感じられる。内部は紀州材をふんだんに使った木の空間。南北に風が通り、こどもたちも南のデッキから北のデッキへ走りぬけるように動き廻ることが目に見えるようだ。大きな屋根は内部でも大きな空間をつくっていて、その面白さもこどもたちにはきっと魅力的に映るに違いない。こどもの空間こそ木の素材、特に地域材がふさわしいということを十分に示した施設になっているのではないだろうか。

■主催/紀南流域林業活性化センター(西地区)
■木材納品/(株)丸二木材
■施工者/東宝建設株式会社
   
ほふく室
この部屋はまだ歩けない乳児の部屋。暖かい日差しの中を子供たちがはい廻る。床などの仕上げは桧板張りの上蜜蝋ワックス仕上げ。もし舐めてしまっても問題はない。
旧園舎の時の子供たちの様子
真冬でも半袖に半ズボン。気持ちの良い空間の中でのびのびと育てる・・の理念通り裸足の子供たちが走り回る。
建設前の敷地の写真
元は梅畑。地域の方の行為でここに保育所を建つ。旧の園舎は畑の中に続く道を進んだところにある。

わんぱく保育所の話を最初に聞いたのは2002年の秋頃だったと思う。「保育所の設計を頼みたい。」と役員の方から直接連絡が入った。伺ってみると関係者の方々が熱気あふれる議論をされていた。「自然をいつも肌で感じることが出来るように」「木のやさしさを感じながらみんなが家族のように育ちあえるように」「楽しく衛生的で安全に過ごせる保育所であるために」・・・木造建築、しかも民家型でいくという方針は必然のように決まっていった。

構造材や杉厚板のあらわし使用が快適な室内空間を手に入れる上で効果的なことは体験済みだが、2×4(ツーバイフォー)や集成材そして大壁構造への対応を主にしたような現行建築基準法の中では、住宅以外の用途や住宅を上回る規模の建築物を木造の在来工法で木の良さを活かしながら建てることは簡単ではない。

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玄関側から見る
左手石積みの奧には玄関に至るスロープ。正面玄関は階段の奧。
正面外観
切り妻大屋根の外観。屋根葺き材はガルバリウム鋼板、瓦棒葺き。外壁は焼き杉板張り。斜めの柱は開口で壁量が不足するのを補うための工夫。
スロープより玄関方向を見る
玄関戸は木製片引き戸、スリットの間にはポリカーボネート板が入る。

東側デッキ
竣工時には寂しかったこのデッキ。今では芝生も揃い子供たちの良い遊び場所。

この日は水浴びの最中。

   

今回の設計に当たっては3つの要素が厚板を大量使用した木造民家型の保育所を可能にした。

竹小舞(エツリ)組土塗り壁の採用

木造建築物の外壁は防火地域外でも延焼線のかかるところでは準防火性能を持った構造でなければならない(基準法23条)。つまり、特別の手だてなしで外壁に通常の板壁は施工できない。さらに、今回建物の用途では内装制限に触れ(基準法35条の2)、室内仕上げを準不燃材料以上にて仕上げなければならない。内装仕上げにも通常の板壁や和紙貼りは許されないのである。そこで土塗り壁の採用となる。そうすることで外壁の板壁が可能になり(告示1362)、内装についても土塗り壁部分を珪藻土塗り仕上げとして不燃化することで板壁部分以外の内装制限がクリアーできた。同時に室内に有効な調湿・蓄熱体の確保ができた。

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玄関ホール
2階は大人専用の空間。この階段を上がっていくと、子供たちには気づかれずに2階通路から各部屋が眺められる。床、壁仕上げは桧板張り。上部は珪藻土塗り。天井は杉厚板の化粧野地あらわし仕上げ。
可動間仕切り
建物内の建具は全て木製、地元の桧材・杉材にて制作。これは大広間を一時保育室として区切るための可動間仕切り。下部にはポリカーボネート板、上部はオープン。大人はここから顔が出る高さ。
保育室
気持ちいい天然の木質空間。床・壁は桧板張り、蜜蝋ワックス仕上げ。壁上部は土塗りの上珪藻土塗り仕上げ。天井は杉厚板化粧野地あらわし。この部屋を子供たちが素足で走り回る。右手開口部には木製引き戸が入るが普段はオープンで使っている。

厚板、化粧板の準不燃加工

板壁以外の内装制限(不燃化)を土塗り壁でクリアーした旨は前項で述べたが木造軸組民家型構法を採用するこの建物では床・壁・天井にふんだんに木を使いたい。特に厚板については人工林との共生という大きな目標からなんとしても実現したいところであった。しかし、無垢の厚板を準不燃加工するノウハウと設備を持つところは全国的にも珍しい。今回は龍神村の川口建設に全面的な協力を頂いた。地元にこのような企業が存在する幸運に感謝する。無垢板の準不燃加工については施工性や結露の問題から未だ開発途上にあるとの印象を持った。しかし、林業の未来に大きな可能性を与える重要な技術である。

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2階廊下よりほふく室を見る
2階からはこのような景色になる。

ほふく室見上げ
上部には2階通路につながる窓をあけた。ここを開け放つと建物内が一つの空間になる。

玄関収納
玄関の下駄箱収納も桧材にて制作。

構造軸組の燃えしろ設計

防火区画を構成する壁は準耐火構造以上の防火性能を有しなければならない(基準法30条)。今回建物では各保育室の界壁とローカと保育室の界壁がこの部分に当たる。壁は準耐火構造の認定を受けた建材を下地に使用することでクリアーできるがそのままでは大壁となる。木の持つ特性を充分発揮させ、全体デザインに統一感を持たせる上で柱や梁はあらわし(真壁)としたい。2004年3月、それまで集成材に限定されていた燃えしろ設計が無垢材にも摘要になったのを機会に早速に採用した。これで真壁は実現できたが、現行法の在来軸組工法の木造に対する対応がいかにも後手であると感じる。

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天秤梁
保育室の梁間は3間。通常の梁では構成しにくい。さりとて集成材や特殊な工法は控えたい。そこで、3間の梁の両側から天秤梁で半間の迎えを出し、有効2間の梁として解析。
保育室
床・壁は桧板張り。壁上部は土塗り壁の上珪藻土塗り仕上げ。天井は杉厚板化粧野地あらわし。右手の大開口は下が廊下、上が2階通路へとつながる。
西側デッキ
運動場につながる大きな開口部。建具は廊下側と同じ木製の引き戸。1間のものが3枚。季候の良い時には開け放されて室内、デッキ、運動場が一つの空間となる。

この保育所は準不燃加工板という特殊な材料は使用したが、現場においては紀南に残る職方の技術水準を持つならば誰でも施工できる・・ということを大切にして造り上げた。イメージリーダーたる建築物を建てる事と同時に、広く地域環境に貢献するということで考えるならば外してはならない視点であると思う。

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保育室から広間を見る
子供の後ろは7寸角の桧柱。3間梁を支える天秤梁部分。柱を挟んで1間ずつの木製引き戸が付くがいつも開け放されている。
西側デッキ
デッキは杉厚板製、仕上げはリボス塗り。斜めの柱は大きな開口に対応する壁補強。開口部上部にはランマ窓。大きく屋根のかぶったこの窓は天気の良くない日でもいい風を入れる工夫。
 
2階通路
1階各室とつながる2階通路天井には天窓を切っている。これは敷地形状・方位から日差しを得られない保育室に陽光を導く工夫。同時に夏場の熱気を排出する工夫でもある。
医務室
ここは緊急時以外はスタッフの休憩室にもなる。床・縁なし畳敷き、壁・珪藻土塗り、天井・杉厚板化粧野地板あらわし。
   

「わんぱく保育所」は2005年7月に新しい建物での運営を開始した。年度の途中からの園舎移転ということもあり、順番待ちの現在の状況が信じられないくらい当初は子供たちも少なかった。

「わんぱく保育所」の「求める子ども像」は
一,何事にも積極的に取り組める子。
一,その時々に応じて自分で判断し自主的に活動できる子。
一,新しいこと困難なことににも挑戦する気持ちや意欲を持っている子。
この三つであると聞く。

今はそんな子供たちがたくさん走り回っている。多くの大人たちの思いのたけを詰め込んだこの木造園舎の中で子供たちがすくすくと育ってくれることを心から願っている。

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西側デッキ
運動場につながる大きな開口部。建具は廊下側と同じ木製の引き戸。1間のものが3枚。季候の良い時には開け放されて室内、デッキ、運動場が一つの空間となる。
1階廊下
秋のある日の午後。子供たちがそれぞれに道具を持ち掃除を始めた。自分たちの居場所は自分たちできれいにする・・そういう園長先生のご指導。もちろんフォローは大人たちの仕事。
がんばれ・・子供たち・・すくすく元気に・・大きく育て・・。
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建物名 / わんぱく保育所
所在 / 田辺市新庄町
構造規模 / 木造2階建
主要用途 / 保育所(児童福祉施設)
竣工 / 平成17年6月
敷地面積   /  1192.95u (360.86坪)
建築面積   /    480.41u (145.32坪)
延床面積   / 525.16u (158.85坪)
1階           / 425.03u (128.57坪)
2階           / 100.13u (  30.28坪)
特記事項 / 竹小舞土塗り壁採用、内装化粧材(桧板、杉厚板)準不燃加工
  民家型構法の家(木の国の家仕様)
木の国 Wood Designコンテスト2006 優秀賞受賞
 
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