作品集works

丸太梁の家

  • 改修
  • 延床面積:114㎡(35坪)
  • 階層:平屋
  • 外部木製建具

建物解説

 新しく家を建つか既存の家を改装するか迷っている・・・そうお声掛けいただいて現場を尋ねたのは平成25年の秋でした。築後40年ほど、外観は屋根も含めて問題はない様子・・・世代を越えて住み継いでこそしっかりと造られたものの価値は発揮される。そうすることで住まい手の記憶はつながり、社会資産としての住まいも蓄積が出来る・・・日頃のそんな思いから、迷うことなく既存住まいの改装をお勧めしました。

 天井裏に入ってみても、土が抜けている様子はありません。印象深かったのは見事に掛けられた丸太梁です。これを利用しない手はない。新築で得られる良いこともたくさんありますが、改装でないと出せない味もあるのです。今は隠れている立派な丸太梁の木組みを今度は見せるようにデザインして、建物タイトルを「丸太梁の家」とすることにしました

 既存の屋根瓦は丸瓦を使った日本瓦の本葺き。それをそのまま利用して、増築される下屋部分を金属板葺きとしてこれに差し込むことで、全体の高さを抑え建物に落ち着きを与えました。外壁は全面火山灰を利用した土塗り壁、これは室内床の杉厚板と共に住まい手のご希望です。ドッシリと地に足付けた外観の中に、丸太梁で構成された変化に富んだ室内を内包しています。断熱・気密の性能不足は古い家の弱点です。そこで、屋根・壁・床は外断熱の通気工法で現在の住まい手に必要なだけの断熱・気密性能を確保しました。室内仕上げは珪藻土と無垢の木材ですから調湿の性能も優れています。

 住まいの改修や再生は、一見価値が無くなった・・・と思われているものの中に、大いなる価値を見いだす仕事です。この家の場合は見事に掛けられた丸太梁がその象徴。裏方から表に引っ張り出された丸太梁は、住まいを特徴付ける役目をしっかりと果たし、新築では出せない味を醸し出しています。若い住まい手の住み継ぐ意志によって新しく命を吹き込まれたこの住まいが、世代を超えて住まい手の期待にこたえてくれることを願っています。(中村伸吾)

住まい手インタビュー

体験が、希望をより豊かに。

 窓も間仕切りもフルオープン。外気とつうつうで過ごす時期が長いです。大きな屋根の下…木陰で暮らしているような感覚。年中ずっと快適なので、気に入りの季節ってなくなりました。
 夏は何もしなくても、ちょっと涼しい。冬もちょっと温かい。「ちょっと」の自然さが気に入ってます。梅雨でも、集中豪雨とかでなければ、窓は開けっ放しです。軒がしっかり出てて、天気に関係なく空気を入れ換えられる。雨の日にも、雨の日の風情があります。全部の部屋から外の景色が見えるので、季節ごとの良さを実感しやすいのかもしれません。
 家づくり当初は、まず住宅展示場や、メーカーさんを見て回りました。
 転機は「二十四時間換気!一年中、窓を開けやんでも過ごせます!」っていう業者さんとの出会いでした。「フィルターを通して入ってくる空気の方がキレイ!エアコンで一定温度を保てるから、窓は開けない方がイイ」っていう所がいくつかあって。夫婦で違和感を感じた。「都会じゃないし……山の空気がそんなに汚い……?むしろ、自然の風とかが入ったほうがイイよね」っていう話に。
 その頃、たまたま僕(ご主人)の通勤路にMo-kuさんがあって  笑。検索してみて、「お!」。設計事務所 どうしたらいいのかわからなかった。僕らこんなラフな感じで行っていいの…?……一生に一回の大事な家のことやから、どうせなら入ってみよう…って、思い切ったのが良かったですね。
 やっぱりいろんな所へ実際に足を運んでみるのが、一番大事です。
 写真はどこの会社も素敵だった……。しかも「木の家」とか、ジャンルまで同じになっちゃうと、もう…違いって………。行ってみると、中村さんの設計したお家は、建具とか一つ一つが端正で、木がキレイ。香りや空気感がまったくちがいました。家のイメージは、動き始めたあとで家づくりの途中にいろいろ感じて、できあがってきたように思います。

3軒の家を住み比べて

 今は社宅の建材住宅(築十五年程)と、我が家とを行き来する生活です。引っ越し前に住んでいたハイツ(築二~三年)も入れたら、短期間に3軒を住み比べてることになるんですが……いやもう、全然ちがいます!めちゃめちゃ嬉しい 笑。
 新建材住宅とハイツは、合板やフローリングとビニールクロスの家。結露とカビがすごい。エアコン・ストーブ必須で、冬は爪先が痛いくらい冷える。冗談みたいだけど、朝はつま先立ちでないと歩けない。
 私(奥さん)は床からの冷え込みが、つらくてつらくて……自分の家は絶対にあったかくしたかった。週末に帰ってくると、無垢の杉の床がサラサラと気持ち良くてホッとします。家族は靴下も脱いじゃう。ソファや椅子もあるけど、床で過ごす時間は長いです。ウチは本当に、部屋の空気まであったかい。
 結露なんて見たことないし、ジメジメしないのもすごいかな。

イイ時間に、イイ場所へ

 造り付けの大きな窓とデッキがある東のリビング側は、朝日だけ直接あたります。暑い時間のキツイ日差しは向こうへ廻って、ちょうどいい陰になるんです。子供が遊ぶのにとってもいい。
 昼からは奥の板間に太陽があたるので、洗濯ものを干して、ポカポカおやつを食べたりしています。南向きで陽がずっと差しこんでるから、冬は天然の温室みたい。寒さに弱い植物を鉢植えで育ててるんだけど……越冬させられると思います。今パイナップルがあるんです。美味しく食べたののヘタを置いておいたら、なんか生えてきて…ふふふ。

改修という選択

 この家は四十年ほど前、祖父母が住むために建てて、しばらく空き屋でした。最初は改装を視野に入れつつ、取り壊しての新築も考えてた。中村さんが「この柱・梁をなくしてしまうのはもったいない」と言ってくれたのが、改修の決め手となりました。梁は改修前は天井裏に隠れてたんだけど、今はお客さんも、オープンな天井の梁や柱を褒めてくれることが多くて、この家のシンボルみたいな存在です。家の感じがナチュラルで、何も置かなくてもすでに雰囲気があるんで、インテリアとかを買い足す時にも、それを大事にしたいなって。
 屋根も「このまま残しては?」と提案をうけて、そのままの風情です。



ちょっとづつ出来上がる

 隣が実家で、建築現場にはよく通いました。大工さんが木を切ったりしてて、それぞれの『材料』が『家』っていう形になっていくリアリティをものすごく感じた。ああ「私の家が建っていってるんだなぁ」って、実感があって楽しく見守りました。
 引っ越してみて「ここに棚があったらベンリかな」って場所も出てきたので、書斎の本棚と玄関の網戸とか…今度いろいろと取り付けてもらう予定です。この頃、生活実感みたいなものが随分でてきました。一気に全部やってしまうんじゃなくて、暮らしながら作っていくのも馴染みがいいかも。
 子供も土を触るのが大好きで、空豆・キュウリ・トマト・アスパラ・タマネギ・ネギ……いっぱい収穫しました。庭仕事の道具も増えたから、収納とかも考えたい。まだまだ、ちょっとづつの楽しみがいっぱいあります。(インタビュアー:中村祐子)

建物データ

所在 和歌山県日高郡日高川町
竣工 平成27年11月
構造・規模 木造平屋建
主要用途 専用住宅
延床面積 114㎡(35坪)