木の家の建築家中村伸吾の建築設計事務所では和歌山の紀州材や自然素材を活かし無垢の材料で木造住宅を造っています。外断熱通気工法・土塗り壁・杉厚板の家などおまかせください。

紀州梅の里 なかた●平成24年3月 ●和歌山県田辺市

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紀州梅の里 なかた 外観

■建物解説

 住宅では一般的な木造も、少し大きな建物ではコンクリートや鉄骨になってしまい残念に思うことがある。中学校の木造校舎が100年現役で働き、35年しか経っていない小学校のコンクリート校舎が建て替えられるのを見ていると、公共物には耐用年数の長いコンクリートを・・・という大義名分が揺らぐ。もちろん、用途や使用状況によって基本構造は決められるのだが、木造にいわれのないアゲンストの風が吹いて久しい。
 工夫すれば木造で気持ちのよい空間が出来るのに・・・そんな思いをカタチにしたのが田辺市にある『紀州梅の里 なかた』だ。しかし、店舗としての大空間を構築するためには特殊な長さや太さの柱・梁が必要になる。積層の大断面で柱や梁を造って構造を成り立たせるのは簡単だが、今回建物用に特殊な技術を駆使したのでは地域に拡がりが得られない。それでは、誰もが少し頑張れば出来る紀州材を使った参考例にはなり得ない。わたしは地元職方に残る技術で組み上げることを優先したかった。そこで、一本で大きな材料を用意するのではなく、無理のない寸法の材料を組み合わせて組柱・組梁で建物の構造を考えた。

紀州梅の里 なかた 内観

 壁には珪藻土を塗り上げ、天井は和紙貼りとした。アプローチには梅の木をイメージして斜めに丸太を建て込み、床には金錆の石を貼った。出来上がった空間は、複雑に組まれた柱・梁が森の木々を連想させ、梅の花の形に仕込んだ照明器具とともに訪れる人々を心地よく包み込む。
 すべての建物は「まちなみ」を構成する最小の要素であり、地域の産業や環境と切り離してはあり得ない。たとえ個人所有の住宅であってもその役割から逃れられないが、企業や公共の所有する建物・・・不特定多数の訪れる店舗などは尚更だ。人に気持ち良い空間を構築し、地場産業と緑環境に貢献する「木」の可能性に注目し、紀州材を使った大型店舗のモデルケースを造ろう・・・と決断されたトップに敬意を表する。そして、人と街と森がますます強い絆で結ばれていくことを願う。

(中村伸吾)

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■インタビュー

「会社の顔」を、地元の材で

 『紀州梅の里 なかた』本社直売店は、単なるお土産屋さんではなく、中田食品株式会社の顔となる店舗であると考えています。 まず第一にあったのは、一世紀以上にわたり地元伝来の技と独自の製法で漬けた美味しい梅干しを提供してきた会社のイメージを体現する空間づくりです。そして地域に根付いた企業として、どうしても地場産の紀州材でそれを実現したいという、社長の強い想いがありました。
 木造の大きな店舗や施設って、街であまり見かけることがないので、私達にはこれだけのものが純木造でいけるのかどうなのかは分かりませんでしたが、中村さんに力強く「いける」と言っていただき、計画がスタートしました。

息づく木、ならではの店舗

 木の温もりを存分に感じられる建物になったなぁと思います。フロアに林立する柱が、全体の雰囲気を作りあげています。天井にある梅の花の柄のライトもいいアクセントですね。自動ドアをくぐって外へ出たところのちょっとした空間……低い軒がすんなりと長く伸びているんですが、ここの懐の風情が、お客様にはゆったりとくつろいでいただけるものとなっているようです。

紀州梅の里 なかた 照明 紀州梅の里 なかた 軒先

 お客様は今だに木の香りがするとおっしゃいます。「木のいい香り〜」と言っていただいても、毎日居ると慣れてわからなくなってしまうので、私達はなかなかピンとこないのですが(笑)。目に見えては分かりにくいものの、木は呼吸しているといいますね。月日を重ねて、ますますの深みや味わいが出てくるのかなぁと。最近は良い感じに日焼けもして きているので、息づいている木という素材ならではの熟成が、これからの楽しみです。
 壁や床などの色合いも、全体にしっとりおちついた雰囲気を意識しました。訪れる人をゆったりあたたかにお迎えでき、年月を経て、変わらずそこで根ざしていられる店舗となりました。満足しています。

建築中の思い出

 工事の進みの早さが、私(中田部長)は一番印象的でした。住宅なら木造も見かけますが、この規模の鉄筋が入っていない建築物を間近に見ることなんてなかったので、それがこんなスピードでできあがって行くんだ……!と驚きました。

紀州梅の里 なかた 上棟 紀州梅の里 なかた 軒先 構造
紀州梅の里 なかた 組み柱

 木の組み合わせも、新鮮でおもしろかった。いろいろな形で組み合わさって、みるみる大きな構造体となっていくのが、とても興味深かったというか。棟上げの時なんか、見ていて楽しかったなぁ。木でどんどん組み上がっていく姿に、「わぁ!」となったのを覚えてます。架構のおもしろさは、完成した今でも空間の楽しさにつながっているようにも思います。

効率をあげて満足度を高める

 バスで団体さんがこられますので、百二十人〜百五十人が一気にお店へ入ってこられるんですね。その方々を快適にお迎えするというのが命題でした。 団体バスの停車時間はおよそ三十分〜四十分ほど。その間に敷地内の別の建物で梅干しの工場を見学し、この店舗でお買い物を楽しまれたり、お手洗いを済まされたり……ということが詰め込まれています。限られた時間を有効に活用できなければなりません。 お客様もですが、従業員も効率よく動けなくては、限られたバス停車時間内にご満足いただくことが難しくなります。お客様・従業員のどちらともが効率よく動けるというのが、最重要事項でした。

スムーズな動線で快適な業務

 広さやお手洗いなどの設備については、バスの百数十人様がゆとりをもって過ごしていただけることが基本となり、必要な環境があらかじめ明確でした。
 従業員の作業スペースについては、前の売店の実感もありましたので、どんな事をする場所が必要で、これだけの量のこの作業をするにはこれくらいのスペースが必要です……という具体的な要望を割り出してありました。ほぼそのまま実現していただき、今は快適に業務ができています。

紀州梅の里 なかた 内観
紀州梅の里 なかた 内観
紀州梅の里 なかた 内観

 レジカウンター、商品発送のカウンター、試飲・試食のカウンター、すべてが広々しており、用途や作業ごとにブロックで区切られているので、その合間・合間に出入りの場所があります。商品の陳列台もテーマごとにわかれており、間のゆとりある通路をお客様が自在に行き交うことができます。ご案内の際、従業員は、どこからでも。どこへでも、最短距離で自由な移動が可能で動線がスムーズです。お客様をお待たせせずにすみます。
 この店舗の従業員は六〜七人。それだけのスタッフで、百数十人のお客様をお迎えし、試飲・試食、レジ係、発送作業、商品の補充まで行います。最小人数で、お互いに業務を掛け持ちしながら、やりやすく動線もスムーズに仕事する……それができているかなぁと感じます。この店舗の雰囲気もあり、「中田」の顔であるということを心がけて社員は接客に取り組んでくれています。店舗の空気と接客の気配りで、お客様にもご好評をいただき、本当に良かったと思っています。

紀州梅の里 なかた 外観

(インタビュアー:中村祐子)

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■建物データ

●所在     :和歌山県田辺市

●竣工     :平成24年3月

●構造・規模  :木造平屋建

●主要用途   :店舗

●延床面積   :556u(168坪)