木の家の建築家中村伸吾の建築設計事務所では和歌山の紀州材や自然素材を活かし無垢の材料で木造住宅を造っています。外断熱通気工法・土塗り壁・杉厚板の家などおまかせください。

龍門山を望む家●平成24年11月 ●和歌山県紀の川市

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外観

■建物解説

 住まい手は、眺望の素晴らしいこの土地を以前から確保しており、敷地の特徴を活かした家づくりを希望されていました。仕事の依頼は、和歌山市の常設ギャラリー『木の家工房Mo-ku』が気に入ってお声がけくださったそうです。この家の特徴は、ポーチから玄関土間リビングダイニングを経て外部デッキへと続く、龍門山まで一直線につながる軸線を持つことです。軸線上の三ヶ所の間仕切りはいずれも完全に引き込まれ龍門山に連なる大空間となります。吹き抜けなどを持つ大きな空間の課題は、外部環境に左右されない快適な室内をいかにして造るか・・・ということです。まずは、大きく深い軒の出で太陽光を制御すること、そして風の道を適切に計画すること、そして、外断熱・通気工法でしっかりとした断熱・気密を確保することです。大空間に特に大切な暖房は8帖用エアコン4台分を超える能力を持つ薪ストーブで行います。新建材は極力使わず、無垢の木材や紙、土や石、鉄、ガラスを使い、素材同士が調和する設計を心がけています。昔の家に足りなかったのは断熱と気密の性能ですが、今の家に足りないのは調湿と蓄熱の性能です。自然素材に工夫を凝らし、清々しい空気感の住まいを造れば、機械に頼らず住まい心地の良い家が実現できるのです。

室内
吹抜
外観
畳間
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■住まい手インタビュー

夜明けと共にめざめる暮らし

 土地はすでに入手してありました。十数年そのままにしていたのを、いつかなんとかしなきゃな…と思っていたところ、そろそろ上物をつくろうかと思いきったのが、家づくりに取りかかった切っ掛けの一つです。老後を暮らす夫婦二人の所帯。そんなに大きいのはいらないけれど、土地は高台というのが気に入って求めたものだから、立地の利点を活かしたい。それが、一番の希望でした。ぴったりのプランを提案していただき、景色を眺めて暮らせる気持ちのいい家になりました。
(奥さん)なにかの具合によるのか、山が、ものすごく近く鮮やかに見える時があるんです。この頃は、5時頃にお日様が昇りはじめる。だから、今日も夜明けの五時に目覚めたの。冬至の時はあの辺から昇っていた…今はあの辺りから…毎日少しづつ、日の出の位置も、山々の表情も違います。この見晴らしの良さと過ごし心地は、命がのびる感じがしています。

大開口

ちょうどいい広さ

 図面を見て、詳細まで具体的にイメージするのはむずかしい。でも、ファーストプランをご提案いただいた時、いわゆる平屋風で落ち着いた雰囲気がいいな…という印象でした。今まで暮らしていた家は、寸胴の二階建てで、上下の延べ床面積が50坪ほどの広さ。今回は三十坪前後の家にしたいと思っていました。希望する広さのイメージが先にあったので、間取りを見せてもらった時には「うん。これでちょうど」というフィット感を感じました。引っ越してきても、狭くなったという感覚はあまりないです。日常的に居る場所というのは、だいたい決まっているでしょう?前は結局、日頃使わない部屋もあったから、今は生活に充分な感じですね。孫がきたら、この大開口を開放すると居間とデッキが繋がって広いスペースになるので、元気にのびのび遊んでいます。

我が家の良いところ

 今回うちは玄関を2つ作っていただいたし、当初玄関土間の広さは贅沢かなぁ…と思ったけど、仕上がってみるとゆとりがあって気に入っています。前の家では、玄関というのが家族の実用のもので、しかもこんなに広くなかった。こちらでは、サブの玄関を普段使いの専用に設けてもらい、日常の細々とした物をしまえるようになりました。薪ストーブが据わるメインの玄関土間は、常にスッキリと玄関らしくしておけるので、この使い分けは大変良かったです。平屋も…あれだなぁ。やっぱりだんだん、足腰弱ってくるじゃない?上り下りが大変になってくるから、所長(中村伸吾)には、バリアフリーでお願いしますと頼んだんです。ワンフロアで過ごせるのは楽ですね。

ふくろう1 ふくろう2 ふくろう3

暖かな冬を過ごして

 薪ストーブは冬、さっそく焚きました。慣れると、さして手間もかからず、温かく快適ですね。木を燃やすと出るタールなんかで、炉の部分のガラスがくすんだりして、硝子クリーナーも使ったけど、灰でこするとキレイになるのを夫婦で発見しました。「ああ!こんな方法があったか!」と。化学薬品を使うと匂いがこもるけど、灰を使うと水をしぼった雑巾で磨くだけでキレイに仕上がります。薪は今のところ業者さんからの仕入れがほとんどですが、この間、薪割り体験の講習会などにも行ってきました。仕事を引退したら自分(ご主人)でも割ってみたいです。チェーンソーと斧はもう買ってあるんですよ。ああ、そうそう。我が家の照明は、あたたかみのある色で統一していただいたから。冬に、遠目から見るとぬくそうだなぁ…いい感じだなぁ…と人に言っていただいたこともありました。

土間

井戸水の有効活用

 元々この土地に井戸があったので、井戸水を有効に活用したいと考えました。前の家の敷地にも井戸はあったのだけど、一切使わずに上水道だけで生活していた。庭は狭かったのに、夏場は水やりなどで、一万円を超えるような水道代が要ったから、これはなんとかしたいなぁ…と。今、この庭の立水栓は全て井戸水を引いています。

これからの楽しみ

 入居が去年の冬だったから、広めにとったデッキは、これからやっと使えるシーズンを迎えます(インタビュー時は5月上旬)。東向きなので夏場の高い日はまず差ささないだろうから、夕涼みのビールがうまいだろうなぁ…と楽しみです。デッキのテーブル・ベンチなどは、この家の屋根の端材で製作しました。納戸の中などにも、建築中に出た端材を、住み始めてから活用して細工を作りました。同じ材料なので、家とも馴染みがいい。まだ前の住まいからの荷物の運びこみも残っているので、じっくり生活環境を整えているところです。庭の面積が広くなり、最近、休日はもっぱら植栽の植木にかかりっきりだなぁ。まずは春に向けて咲くものを植えました今は、これから夏・秋にむけて植え込みの準備中です。四季それぞれの、季節に映えの良いものを植えていきたいなぁと考えています。部屋内からの眺望を大事にしたいし、コンパクトに収まりつつも、賑やかな雰囲気に仕上げたい…という思いがあります。予算をどんどんかけて、プロに任せれば立派に仕上げてくれるだろうけど、それでは楽しみがない。自分で一本づつ一本づつ植えるのが、私達の今の楽しみです。

(インタビュアー:中村祐子)

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■建物データ

●所在     :和歌山県紀の川市

●竣工     :平成24年11月

●構造・規模  :木造2階建 / 民家型構法

●主要用途   :専用住宅

●延床面積   :120u(36坪)

●床面積    :1階/103u(31坪) 2階/ 17u(5坪)