木の家の建築家中村伸吾の建築設計事務所では和歌山の紀州材や自然素材を活かし無垢の材料で木造住宅を造っています。外断熱通気工法・土塗り壁・杉厚板の家などおまかせください。

ありのままの家●平成26年3月 ●和歌山県白浜町

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ありのままの家

■建物解説

 ご主人は水産関係の海の仕事、奥様は医療関係の仕事、子どもさんは三人・・・みんなとっても忙しい、そして、とっても仲が良い。打ち合わせはいつもご家族一緒。ご両親と住まいの話をしている傍らで、子ども達はお姉ちゃんをリーダーにしてお絵かき。仕事柄事務所には色鉛筆や大判の紙はたくさんあります、何回かの打ち合わせが終わる頃には絵の中にとうとう私までもが登場していました。自然に包まれた、家族が一つになれる住まいが欲しい・・・ご希望は私がご家族を見て感じるものと一致していました。
ところが、敷地がなかなか見つかりません。住宅団地の中では家族の思いは達成出来ません。かといって街を大きく離れてしまうと日常生活が大変になります。根気の末に見つけたのが今回の土地です。東西に長いこの土地は北側に宅地としては使えない斜面も含みますが、そこの高低差と緑が緩衝帯となって暮らしに余裕を与えてくれそうです。
プランニングの特徴は家全体が大きなワンルームのような使い勝手に出来ていること。中心となる居間・食堂には薪ストーブが据わり、キッチンはぐるぐると回れるアイランド使いの対面タイプ。階段はもとより、洗面コーナーまでがこのスペースにあります。隣のタタミ間は客間も兼ねますが、それよりも普段使いを重視した設え、薪ストーブの暖気を住まい全体に循環させるためにもうけた吹き抜けを通じて2階ともつながっています。子ども部屋はロフトを持つ大部屋、最初から三つに・・・なんて区切りません。まずは大空間で充分に遊んで、個室は必要に応じて造っていく計画です。

ありのままの家

 深い軒の出と大きな開口部が風の通り道を確保し、季節によって高度の違う太陽光を制御します。床・外壁はいずれも外断熱・通気工法。結露の心配が少なく断熱・気密の性能も優れています。住まいの骨格をなす構造材は龍神材。木組みの美しさを楽しみながら、湿気を調整する木の特性が良くいきるようにあらわしで使っています。壁は珪藻土と杉板で仕上げています。蓄熱・調湿の性能が高い材料で出来上がった室内は機械依存が少なくエコロジーでエコノミーな上に快適です。
建物が竣工しただけでは「住まい」は出来ません。ご家族の生活が入り、人の息づかいが糧となってこの建物は「住まい」となっていくのです。とっても忙しい、そしてとっても仲が良いこのご家族の住まいが、今後どのように成長していくのか楽しみです。

(中村伸吾)

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■住まい手インタビュー

家中まるごとの風通し

 風通しが抜群で本当に気持ちいいです。東西南北にぐるりと窓があって、すべての部屋に新鮮な風が巡ります。換気って部屋ごとなイメージですが、うちは吹き抜けの両側にある屋内窓のおかげで、家中まるごと換気できる。二階の二室は吹き抜けに面していて、木製の窓があります。クーラーをかける時は閉めて、薪ストーブを焚く時には開けて…と、個室のオープン具合を調整できるので、すごく良かった。
のんびりくつろぐのがたまらない縁側。落ち着く書斎、たくさんしまえる本棚や、世話がしやすい水槽スペースなど、仕事や趣味の空間も充実していて、楽しく過ごしています。

ありのままの家 洗面台
ありのままの家 書斎
ありのままの家 水槽

コンセプトは『普通にいい家』

 当初は「木の家」で、基本性能がしっかりしていて…『普通にいい家』がいいなぁという希望でした。めちゃめちゃ高性能!とか、価値が高いっていうのとは違って、質がいいという良さ。しっかりまじめに作られて、生活の根本が大事にされてる家です。
何回も引っ越して、よく古い借家にも入居しました。そしたら住んでる間に、日々いろんな所が傷んでくるんです。実家はハウスメーカーですし、メーカーの「木」の借家に入ったこともありますが、木が集成材だったり塗装されていたり、全体的に湿気がつらく暑苦しかった。
そうして自然と「湿気と無縁で風通しが良く、耐震などの備えもちゃんとした家を、無垢の木で、ハウスメーカー以外に建ててもらう」という方向性に。古びてダメになるんじゃなく、「古い」ことでしか出せない良さが、ますますの味わいになる家を、愛着をもって手入れしていきたいと思いました。

知識と五感で、パートナー探し

 「中村設計さんにお願いしよう!」となった二つの大きな決め手がありました。一つは、木ってどんなものなのか。実際どれくらいの含水率まで乾かし、どんなふうにして家に使うのか…等、木の家工房モークを訪ねた時、クリアに教えてもらえたことです。木の家木の家って「どんな木の家がいいの?」という興味が沸くじゃないですか。本を読んだり調べていて行き着いた…という感じです。「ウチのは未乾燥材。でも平気」と言う業者さんがいたり、「木の家」と言っても幅広く、現実にはいろんな家があるなぁと思います。もう一つは、じつはモークの前にも中村さん設計の家を見ることがあって、そこでの体験です。一歩入った瞬間「めっちゃ良い香り!爽やか」ってなって。同じ日に別の会社の木の家の展示場へも入ったんですが、二階へあがった時の暑さがまったく違ったんです。「こんなにっ?」ってほど、劇的に違いましたね。ある展示場は蒸し暑くて。でも中村設計さんの家は二階も風が清々しく涼しかった。
余談ですが、モークのマンガの蔵書を見て「おっ。趣味がまったく一緒やな!考え方も似てるかも!」と直感したのも、きっかけではあります(笑)。

ありのままの家 植物 ありのままの家 まつぼっくり ありのままの家 スイッチ

一つ一つ、みんなで話して決めていく

 (ご主人の)母がこういうのが好きで。私達の家づくりの話を聞いて「夜中の1時まで考えた!」という間取りが、ある日メールされてきました(笑)。眺めてみると希望に近い所もあって、中村さんに「こんなのがあるんですけど…」と見てもらったんです。そしたら「ここやここを、こうしたらどうです?」ってその場でサクサク鉛筆を動かして、クローゼットを作ってくれたり、いろんな手直しをしてくれました。完成したら、とってもしっくりくるプランになっていました。無数の要素を、全体にまとまりをもたせて一つの家の形にするって、なかなかできません。「なんかこういう雰囲気…」という糸口から、希望を整理して、きちっと家の形にしてもらえた感じでした。みんなで一緒に考え、話しながら、その場でリアルタイムにたちあがってきたものが、「これしかない!」という我が家のプランとなりました。

生活空間と気持ちの、ゆとり

 リビングの続きに和室。二階の寝室と子供部屋の上にはロフトがついています。和室は、縁側の洗濯物を取り入れてたたむとか、メインの生活空間の隣にあって、そこからあふれる作業や物を吸収してくれています。リビングの散らかりをふせげて、突然の来客時にはフスマを閉められる安心感があります。
人が泊まる時は客室にも使い回せる。寝室のロフトは手すりの下が本棚になっていて、蔵書などの収納に役立ちます。子供部屋のは、子供達がブロックやおもちゃを存分に広げて遊べる場所です。よく使うスペースの隣に、人目を気にせず使える機能的なスペースがあり、日常のゆとりを生んでいます。

ありのままの家 和室

便利なオリジナルキッチン・洗面

 造りつけの家具は、手持ち品を測ったり、したい使い方をお伝えしながら、打ち合わせを重ねました。キッチンはステンレスの天板で、中華が美味しく作れる強い火力のガスがよかったんです。シンク横の調理スペースは、大きな魚がさばけるマナ板の広さ。全部引き出しとかにすると何年も触らない場所がある気がして…調理台下はオープンです。サッと調理器具が取り出せ、ゴミ箱に物を捨てるのもラク。5人全員で炊事することもありますが「ちょっとそこどいて~」とかいう、扉の開閉の煩いがありません。
洗面台は階段のすぐ下で、キッチンの隣。朝は起きて下りてきてそのまま鏡前で支度をし、ゴハンの準備に取りかかれます。子供たちが一度に並べる間口の広さも重宝します。洗面の用途だけじゃなく「キッチンのシンクがふさがっているけど、ちょっと何か洗いたいな」という時にも便利です。

ありのままの家 キッチン・洗面 ありのままの家 キッチン

 林に囲まれた、「草ボーボーの土地」と出会い「ここだ!」と思ったというご家族。雑木はできるだけ残しました。家の正面のハゼと二本の桜の木には、鳥が遊びにやって来ます。整った庭より、草が生えて虫もいる自然の中で暮らしたい…いろんな命の気配がする、心弾むお住まいでした。

(インタビュアー:中村祐子)

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■建物データ

●所在     :和歌山県白浜町

●竣工     :平成26年3月

●構造・規模  :木造2階建/ 民家型構法

●主要用途   :専用住宅

●敷地面積   :850㎡(257坪)

●建築面積   :94㎡(28坪)

●延床面積   :125㎡(37坪)

●床面積    :1階/ 73㎡(22坪) 2階/ 51㎡(15坪)