木の家の建築家中村伸吾の建築設計事務所では和歌山の紀州材や自然素材を活かし無垢の材料で木造住宅を造っています。外断熱通気工法・土塗り壁・杉厚板の家などおまかせください
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連載コラムINDEX

夢をカタチにする力

●その58

(2017/01/25)

●その57

(2016/12/12)

●その56

(2016/08/23)

●その55

(2016/04/25)

●その54

(2015/10/07)

●その53

(2015/08/07)

●その51

(2014/11/03)

家づくりを楽しむために
連載コラム 中村伸吾建築設計室

 

夢をカタチにする力−その58     
桜陰緑風の家 (平成28年冬竣工)
住まい手からの便り・・・平成28年冬。

 前略・・・昨晩布団だけ持ち込んで、初めて家で寝たのですが、嬉しすぎてあちこち部屋中を眺めながら色々話をしていたら夜中の1時でした。 朝は7時前から朝日が入って、気持ちよく目が覚めました。 暖房器具は無い状態でしたが、夜中も朝も全く寒くなかったです。 南側から日が入るので、すぐに部屋が暖かくなってぽかぽかして快適でした。 朝ご飯を済ませてから、前に住んでいた家に荷物の片づけに戻りましたが、10時前でもまだ日が当たらず、暗くて寒くてすぐに照明とストーブをつけ、こんなにちがうんだなと驚きました。・・・中略・・・昨年の10月に初めて田辺の事務所にお邪魔してから、1年あまりでこんな立派な家にすむことができていることが夢見たいです。 本当にお世話になりました。ありがとうございました。 設計士さんと話をするなんて初めてだったのでドキドキして、とても緊張して田辺の事務所にお邪魔しました。 でも中村さんがとても気さくで話しやすくて、ほっとしたのを覚えています。・・・中略・・・おかげで、すばらしい土地に巡り合え、こんな素敵な家を設計してもらって本当に感謝しています。 ずっとあこがれていた本物の木の家に住むことができて本当に嬉しいです。

  住み始めて1ヶ月・・・朝起きても寒くなく、障子を開けるとちょうど朝焼けの時間で、日の出が見えます。その美しさに見とれてしばらく眺めています。着替えて階段を下りていくともう朝日が1階の部屋いっぱいに差し込み、柱や和紙張りの壁がピンク色に染まって本当にきれいです。食卓について、みんな庭の方を眺めて窓から入る静かな朝の光を楽しみながら朝ご飯を食べ、気持ちよく出かけることができます。仕事が終わって家に帰るのが嬉しくて、早く帰りたくてたまりません。主人は、仕事せずに一日中家に居れたらいいのにな、なんて言ってます。

 最近とても寒く、雪がちらつく日もありますが夕方帰宅してもそれほど寒くないです。薪ストーブは毎日炊いています。下の子がすぐにつけ方を覚えて毎日火をつけています。とても暖かくて寝るときも湯たんぽをしなくなりました。ピザを焼いたり、おでんを炊いたり、楽しんでいます。・・・後略

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夢をカタチにする力−その57     
東窓の眺望を楽しむ家 (平成27年春竣工)
たのしい四季がめぐる家。

 敷地は貴志川に沿う高台。前面道路は西側にあり、南北は隣地に接しています。しかし東側は畑地に接し、その向こうには雄大な山並みが拡がっています。この借景をいかして、移りゆく山の四季を楽しみながら自然と共にのびのびと暮らせるような住まいを目指しました。

 1階は大きなワンルームのような使い勝手。中心となる居間・食堂には薪ストーブが据わり、キッチンはぐるぐると回れるアイランド使いの対面タイプ、階段もこのスペースにあり、東側の窓は当然掃き出しの大開口でデッキを介して庭につながっています。さらに、薪ストーブの暖気を住まい全体に循環させるための工夫を通じて2階ともつながります。隣のタタミ間は客間も兼ねますが、それよりも普段使いを重視した設え。子ども部屋は丸太梁が丸見えの大部屋、最初から子供の数に合わせて・・・なんて区切りません。まずは大空間で充分に遊んで、個室は必要に応じて造っていく計画です。

 深い軒の出と大きな開口部が風の通り道を確保し、季節によって高度の違う太陽光を制御します。床・外壁はいずれも外断熱・通気工法。結露の心配が少なく断熱・気密の性能も優れています。住まいの骨格をなす構造材は龍神材。木組みの美しさを楽しみながら、湿気を調整する木の特性が良くいきるようにあらわしで使っています。壁は珪藻土と杉板で仕上げました。蓄熱・調湿の性能が高い材料で出来上がった室内は機械依存が少なくエコロジーでエコノミーな上に快適です。

 竣工から1年半の時が過ぎ、庭の芝生もすっかりそろいました。室内とデッキと庭を一つにして、住まい全体が家族の良い遊び場です。大きく開いた東の窓からいつも新鮮な朝日が差し込み、爽快な景色の中を四季が巡ります。陽だまりと風と木の暖かみを感じる暮らしを実現する住まいです。

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夢をカタチにする力−その56     
里山の家 (平成27年春竣工)
自然と共に生きる。

 木の家工房Mo-kuのイベントに何回かお見えになった住まい手がいよいよ家づくりの時期を迎えました。まずは土探し・・・ところがなかなか納得いただける土地が見つかりません。よくよく伺ってみると、奥様は東北出身、お隣までクルマで数分という自然豊かな環境で育ってこられたのだとのこと。なるほどそれなら分譲地に住宅が建ち並ぶ街中の状況には馴染みが良くないかもしれません。そこで・・・とご紹介したのが、和歌山市内にあっても里山がすぐそこまで迫る地区の一角。この土地と巡り会った時の奥様の目の輝きが忘れられません。

 計画はこの里山に向かって充分解放できる大開口を中心に考えました。ここで中と外を区切っているのは3枚の巾1.8メートル・高さ2.2メートルのすっかり引き込める木製建具です。食堂・居間や畳間と共に、台所に立つ奥様の目線までがこの大開口を通って里山に向かいます。2階の寝室や個室群からこの景色が楽しめるのはもちろん、お風呂場からも同じ景色が見えるようになっています。

 構造材は龍神産の杉・桧、他の羽柄・造作材・内装材も同じように国産の無垢材です。床・壁・屋根の全てが外断熱・通気工法でスッポリと囲われた建物の室内は木・土・紙などの自然素材で造られ、高断熱・高気密の陰でともすれば忘れられがちな調湿・蓄熱の性能をしっかりと発揮し、機械依存の少ない清々しい空間を提供してくれます。

 自然素材で造る家は特殊なものではありません。むしろここ30年あまりで造られてきた新建材や石油製品だらけの家が特殊だと思うのです。軒高は高すぎず、軒の出をしっかり出して太陽光を制御し、効果的な開口部を設けて風の通り道を設計する。室内には木や土や紙などの自然素材を使い調湿・蓄熱に心を配る・・・地域と共に育ってきた建築文化を大切にすることで私たちの生活はもっと快適になるでしょう。

 自然豊かなこの地で、子ども達は奥様が経験された様な自然と共にある暮らしをこれから経験することでしょう。ご家族の健やかな暮らしにお役に立てたことに感謝します。

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夢をカタチにする力−その55     
丸太梁の家 (平成27年秋竣工)
住み継ぐ意志。

 新しく家を建つか既存の家を改装するか迷っている・・・そうお声掛けいただいて現場を尋ねたのは一昨年の秋でした。築後40年ほど、外観は屋根も含めて問題はない様子・・・世代を越えて住み継いでこそしっかりと造られたものの価値は発揮される。そうすることで住まい手の記憶はつながり、社会資産としての住まいも蓄積が出来る・・・日頃のそんな思いから、迷うことなく既存住まいの改装をお勧めしました。

 天井裏に入ってみても、土が抜けている様子はありません。印象深かったのは見事に掛けられた丸太梁です。これを利用しない手はない。新築で得られる良いこともたくさんありますが、改装でないと出せない味もあるのです。今は隠れている立派な丸太梁の木組みを今度は見せるようにデザインして、建物タイトルを「丸太梁の家」とすることにしました

 既存の屋根瓦は丸瓦を使った日本瓦の本葺き。それをそのまま利用して、増築される下屋部分を金属板葺きとしてこれに差し込むことで、全体の高さを抑え建物に落ち着きを与えました。外壁は全面火山灰を利用した土塗り壁、これは室内床の杉厚板と共に住まい手のご希望です。ドッシリと地に足付けた外観の中に、丸太梁で構成された変化に富んだ室内を内包しています。断熱・気密の性能不足は古い家の弱点です。そこで、屋根・壁・床は外断熱の通気工法で現在の住まい手に必要なだけの断熱・気密性能を確保しました。室内仕上げは珪藻土と無垢の木材ですから調湿の性能も優れています。

 住まいの改修や再生は、一見価値が無くなった・・・と思われているものの中に、大いなる価値を見いだす仕事です。この家の場合は見事に掛けられた丸太梁がその象徴。裏方から表に引っ張り出された丸太梁は、住まいを特徴付ける役目をしっかりと果たし、新築では出せない味を醸し出しています。若い住まい手の住み継ぐ意志によって新しく命を吹き込まれたこの住まいが、世代を超えて住まい手の期待にこたえてくれることを願っています。

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夢をカタチにする力−その54     
水平線を望む家 (平成27年春竣工)
場の持つ力。

 家はそこに暮らす家族の人数や状況、環境条件・経済的な制約などに左右されながら、それら諸々の条件を統合する形で成立します。この住まいの場合に特に大きかった要素は敷地のありようです。太平洋が一望出来る土地の真ん中にはご主人が子どもの頃にご家族で植えた思い出深いフェニックス・・・この木と水平線の見える絶景の眺望をいかして、非日常が味わえる別荘として機能する住宅が欲しい・・・これが住まい手の家づくりのコンセプトです。

 別荘としても使いたいということから、多人数が集まる居間・食堂などのパブリックな空間と寝室をはじめとするプライベートな空間を玄関と廊下で明確に分離し、しかもそれぞれから水平線が望めるようにと配慮しました。主な開口部は木製の引き込み戸で造り、フルオープンで気持ち良く周りの環境に開かれるようにしています。特に居間・食堂では4間の開口が海側に大きく解放され爽快感を際立たせます。大空間を支える梁組には大断面の集成材は使用せず、地元産の杉・桧の無垢材を立体的に組み合わせることで、単調を逃れリズミカルで木組みの面白味を体験出来る空間を目指しました。断熱性能の高い木製建具の採用と、屋根・壁・床を外断熱の通気工法でスッポリと包み込んだおかげで温熱環境的にも優秀です。

 敷地と建物は別々に存在することが出来ません。ですから、敷地状況に関係なくどこに建っていても成立するような建物は、自らの持つ可能性を充分に発揮出来ているとは言えないでしょう。敷地の存在する場の持つ意味を十分に解析・理解し、その場との融合・共存を図り、お互いのポテンシャルを最大限に発揮させようとすることで、建物だけでは創造出来ない存在価値や理由を表現することが出来るのです。

 大海原に抱かれるようにあるこの住宅が、住まい手や訪れる方一人一人の大いなる癒しの場となることを願っています。

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夢をカタチにする力−その53                
金谷の家の改装 (平成27年初夏竣工)
改装工事(リフォーム)は目的を持って。

 住まいづくりにはコンセプトが大切。新築の時には良く分かっていることを、改装だからといっておろそかにしてはいけません。むしろ、改装だからこそしっかりと目的意識を持っていないと、対象のヶ所は際限なく拡がり、思ってもいなかった工事費が必要になったりすることもあるのです。

 子育ても一息つき、これからゆっくりと二人の時間を楽しみたい・・・と思い立ったご夫婦は改装を決意されました。大事にしたかったのは厨房機器の新調にともなう台所の使い勝手の変更、それに温熱環境の強化です。

 これまで機能重視で台所と食堂・居間は一部屋でしたが、新しいキッチンセットには少し独立性を持たせて、よりくつろげる食堂・居間を目指しました。隔壁には造り付けの食器棚とカウンターを用意して収納能力も増やしています。床・壁・天井には充分な量の断熱材を入れて暑さ・寒さ対策も万全です。壁・天井は和紙貼り仕上げ、床板は無垢の赤松のエンコウ板を張り込んで、フローリングでは止めにくい足元の底冷えを止めました。

 新婚当時、子育て時代、悠々自適で人生を楽しむ時期・・・それぞれに住まいのニーズは違ってきます。改装に対応出来るしっかりとした骨組みを用意して、少しの手間を掛けながらそれぞれの世代に適した暮らしを楽しみたいものです。

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夢をカタチにする力−その52       
真ん中に階段のある家 (平成26年秋竣工)
イメージする力。

 家を建てよう・・・と思い立っても、具体的なことを統合して一つにまとめ、現実のものにしていくのは大変な作業です。敷地の形や状況、家族の思い、将来のこと、予算のこと・・・考えなければならないことは山ほどあります。本やパンフレットを片手に方眼紙に向かって、間取りを書いてみよう・・・なんてことになると、どんどんと迷宮に入り込むばかり。そんな時には、新しい住まいで始まる楽しい生活をイメージすることからはじめましょう。

 この家の住まい手が欲しかったのは「家中が光であふれ、どこにいても家族の気配が感じられる家」・・・ですから、空間は間仕切り無く大きく、庭と室内は全面的に解放できる引き込み戸でつなげるのが良いでしょう。炊事する奥様から見渡せるのは、陽だまりの中で趣味の釣り道具の世話をするご主人と、中と外・上と下の空間を一つにして走り回りながら遊ぶ子ども達の姿。楽しい家族が一体になって時間が過ぎていく・・・そんなイメージです。

 そこで問題になったのが階段の位置。空間に一体感を持たせるのであれば、吹き抜けと共に家の真ん中あたりにあるのが良い。でも、そうなると空間が分断されて家族に一体感は生まれにくい・・・そんなジレンマを解決してくれたのが真ん中にあっても存在を主張しないシースルーの階段です。これで、ご主人は釣り竿を思う存分伸ばせ、奥様からは子ども達の姿もよく見えます。階段を上り下りする姿さえ丸見えのこのプランなら、家族が今どこに居るのか想像するのも容易です。

 設計の段階では目に見え体感できる空間はどこにもありません。しかし、ひとつひとつ決断していかなければ家づくりを進めることは出来ません。そんなときに住まい手に決定する力を与えてくれるのは、これから始まるであろう生活を想像してみる能力です。さあ、イメージする力を存分に発揮してお気に入りの空間を手に入れましょう。

                                                                             このページのトップへ

 

夢をカタチにする力−その51       
ありのままの家 (平成26年春竣工)
住まいを造る。

 ご主人は水産関係の海の仕事、奥様は医療関係の仕事、子どもさんは三人・・・みんなとっても忙しい、そして、とっても仲が良い。打ち合わせはいつもご家族一緒、ご両親と住まいの話をしている傍らで、子ども達はお姉ちゃんをリーダーにしてお絵かき。仕事柄事務所には色鉛筆や大判の紙はたくさんあります、打ち合わせが終わる頃には絵の中にとうとう私までもが登場していました。自然に包まれた、家族が一つになれる住まいが欲しい・・・ご希望は私がご家族を見て感じるものと一致していました。

 ところが、敷地がなかなか見つかりません。住宅団地の中では家族の思いは達成出来ません。かといって街を大きく離れてしまうと日常生活が大変になります。根気の末に見つけたのが今回の土地です。東西に長いこの土地は北側に宅地としては使えない斜面も含みますが、そこの高低差と緑が緩衝帯となって暮らしに余裕を与えてくれそうです。

 プランニングの特徴は家全体が大きなワンルームのような使い勝手に出来ていること。中心となる居間・食堂には薪ストーブが据わり、キッチンはぐるぐると回れるアイランド使いの対面タイプ。階段はもとより、洗面コーナーまでがこのスペースにあります。隣のタタミ間は客間も兼ねますが、それよりも普段使いを重視した設え、薪ストーブの暖気を住まい全体に循環させるためにもうけた吹き抜けを通じて2階ともつながっています。子ども部屋はロフトを持つ大部屋、最初から三つに・・・なんて区切りません。まずは大空間で充分に遊んで、個室は必要に応じて造っていく計画です。

 春、私が伺った折にはまだ段ボール箱が室内に山のように積まれていました。これからみんなで徐々に方付けていくのでしょう。建物が竣工しただけでは「住まい」は出来ません。これからご家族の生活が入り、人の息づかいが糧となってこの建物は「住まい」となっていくのです。とっても忙しい、そしてとっても仲が良いこのご家族の住まいが、今後どのように成長していくのか楽しみです。

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夢をカタチにする力−その50       
趣味室のある家 (平成26年春竣工)
思いやる心を形にしたい。

 折角の家づくりなのですから思い切り個性的に・・・他の誰かは喜んでくれなくて良い、ちょっと他所と違っていても、住まい手の思いが素直に現れている家が満足度の高い家なのです。さて、そうするには・・・少なくても、どういう住まい方をするのか、何が必要で何が必要でないのか・・・自分たちの気持ちが良く分かっていなければなりません。しかし、いざとなってみると、諸々の制約の中で自分の希望や思いをしっかりと描くことは結構難しいことだと気付くでしょう。ましてや家族の総意を組み上げるとなると至難の業。例え、ご夫婦二人だけとなっても簡単にはいきません。互いがご自分の意見を主張してなかなかまとまらない・・・なんてことは日常茶飯で起こりがちですが、この家の住まい手は違っていました。

 ご主人の第一の希望は、キッチンと水廻りがきれいにまとまり、奥様が気持ち良く動ける合理的な動線計画の住まいを実現すること。奥様の第一の希望は、ご主人の趣味であるアウトドアーの道具がひとまとまりに置けて、その中でゆっくりと時間を過ごせる趣味の部屋があること・・・互いの第一希望はそれぞれに自分のことではなく、パートナーを最も喜ばせるためのものだったのです。

 この住まいには玄関や勝手口とは別に、外部から直接アプローチ出来る部屋が有ります。キャンプ道具や自転車などが所狭しと並ぶ趣味の部屋です。充分に・・・とはいきませんでしたが、使い勝手の良い、ご主人お気に入りの部屋です。台所は行き止まりのない空間に対面式のキッチンが据わっています。背面に洗面・浴室などの水廻りがつながり、すぐ横には食品庫を兼ねた家事室があります。

互いを思いやる気持ちを形にした・・・趣味室のある家はそんな住まいです。

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夢をカタチにする力−その49         
上三毛の家 (平成26年春竣工)
住まい心地は五感で確かめる。

 家づくりの難しいところは、住まい心地が目に見える形で示されていないことです。例えば、成績表のようなものがあって、点数が高い方が快適・・・ということならば判断は簡単ですが、国の性能表示制度(住まい性能の点数化)などを持ってしても本当に快適かどうかを見極めるのは至難の業です。あるクライアントは、どう見ても木の家に見えたので見学会に行ってきたのですが、湿気でムッとした室内に幻滅し、その工務店で建てるのをやめました・・・と言って私のところを訪ねてくれました。見た目に同じような家でも、しっかりとした考え方の元に木の家としての対策がなされていなければ、木の家独特の清々しい住まい心地は望むべくもありません。

 この家の住まい手も他社のモデルハウスをご覧になった後に木の家工房Mo-kuを訪ねてこられました。いくつか家を見たけれど気に入ったものがない・・・とおっしゃる奥さん・・・小一時間の談笑の後でご主人が、あんなこと言ってましたけど、こんなに長く居たのは初めてです、結構気に入っているんだと思います・・・と言い残してお帰りになりました。そして後日、正式な家づくりがスタートしたのです。

 洋服などを買う時には着心地というものを大事にします。住まいも住まい心地で語られるべきですが、洋服のようには試せないのがつらいところ・・・そんなときには自分の感性を信じていくつかの住まいを回ってみましょう。その気になれば、あなたの五感がパンフレットにはない住まいの善し悪しをきっとあなたに教えてくれることでしょう。

 上三毛の家は住まい手がご自身の五感を信じて見つけ出してくださった住まいです。断熱・気密と共に調湿・蓄熱に注意を払い、地場産の杉・桧をはじめとする、土・石・紙などの自然素材で造り上げています。設計者として精一杯の思いを込めたこの住まいが、いつまでも住まい手ご家族とともに健やかでいてくれることを願っています。

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夢をカタチにする力−その48     
屋根下空間を楽しむ家 (平成26年春竣工)
住まいの形は、家族の形。

 最初の出会いは事務所主催の完成見学会でした。ご主人の質問はどれも具体的で、とても熱心に見学されていたのを覚えています。打ち合わせはいつもご家族一緒。各部の詳細にはきっちりとしたご希望をお持ちでしたが、全体計画はおおらかに私の提案を受け入れてくださいました。

 理論派で合理的なご主人、人に優しく細やかなお心遣いの奥様、年の割にはしっかりとしたボク・・・そんなご家族に私が提案したのは、住まいのどこにいてもご家族三人の存在が確認できるお家。建物全体の高さを抑え、2階もまるで屋根裏のように階下の部屋とひとつながり、住まい全体が一つになって楽しめる家です。

 深い軒の出と大きな開口部が風の通り道を確保し、季節によって高度の違う太陽光を制御します。床・外壁・屋根はいずれも外断熱・通気工法。結露の心配が少なく断熱・気密の性能も優れています。大空間の暖房は深夜電力型の蓄熱暖房機、室内の空気を汚すことなく穏やかな暖かみを提供します。住まいの骨格をなす構造材は龍神材、床板にはご主人こだわりの杉の厚板を張り込みました。壁は珪藻土と杉板で仕上げています。蓄熱・調湿の性能が高い材料で出来上がった室内は機械依存が少なくエコロジーでエコノミーな上に快適です。

 ひとまとまりの空間の中で笑い声が和やかに響く・・・この住まいが、そんなご家族と共にゆっくりと重ねる時間を大事に見守りたいものです。

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夢をカタチにする力−その47     
かぜのこ保育園 (平成25年冬竣工)
子どものびのび、木の園舎。

 保育所や幼稚園の建物というと、「子どもの国」の様なものをイメージするのか、おとぎ話に出てくるようなものが多く見られます。子ども達の情緒の育成には大いに気を配るべきですが、園舎までテーマパーク風である必要はありません。

 まず、安全で安心な自然素材で造ること、のびのびと過ごせるフレキシブルに使える大空間があること、園児達の情緒を育てる変化に富んだ空間体験が出来る建物であること、そして省エネや環境貢献を意識しながら経済的に造ること・・・そのために木造園舎は大きな力になります。

 幸いにも敷地の近くにはまだ緑が残っていました。子ども達に自然の大切さを教え、人間も自然の一部なのだということを、体験を通じて伝えるチャンスがそこにあるのです。紀州材を中心とする自然素材で造り上げた木の園舎はこの環境と共存し、地域に親しまれながら森の緑と一体になってより深い学びを生むでしょう。

 竣工式では子ども達が元気いっぱいにリズム運動を披露してくれました。足触りの良い唐松の床板の上を所狭しと飛び跳ねる子ども達の様子は、体全体で新しい園舎で過ごすことの喜びと気持ちよさを表現しているようです。代々の子ども達の歴史を床や壁に残しながら、いつまでもしっかりと、そしてやさしくこの子達を包んでいてくれるよう願っています。

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夢をカタチにする力−その46     
おじいちゃんの植えた木で建つ家 (平成26年春竣工)
時は流れる・・・そしてつながる。

 木は、建築用材として使うには五〇年生以上の材料が必要です。つまり、私たちが木の家を建つには、ちょうどおじいちゃん世代の人が植えて、お父さん世代の人が育てた木を使うわけです。と言っても、通常そんなことを意識できることはありません。ところが、この家の住まい手は自分のおじいちゃんが植えて、お父さんが育てた木で家を建つ夢を実現できたのです。

 大きな玄関土間を持つ平屋・・・住まい手の原体験の中にある住まいの形を新しい家で具体化したい・・・というご希望でした。

 桧の大黒柱が大きな屋根の骨格をしっかりと支え、胴差し(大梁)は松の丸太、梁類は杉、柱類は桧、床は杉の厚板です。敷居・鴨居などの造作材から押入の中に張った杉板に至るまで、すべての木材がおじいちゃんの山から来ました。

 大きな土間を持ち、開放的な住まいでは冷房よりもむしろ暖房に気を使います。そこで役に立つのが大カロリーの薪ストーブ、これ一台で家中すべての暖房をまかないますが、そのために効率の良い外断熱で床・壁・屋根面をすっぽりと覆い、暖かい風が住まいの中を巡るようにしっかりと計画しています。 

 私たちがあまり意識しなくても、時間は当たり前に連続して過去から未来へとつながっています。そのことが目に見える形で自覚でき、自らのアイデンティティーに思い至る事が出来ることは幸せなことだと言えるでしょう。

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夢をカタチにする力−その45     
龍門山を望む家 (平成24年冬竣工)
そろそろ一年、住まい心地をインタビュー。

 ○夜明けと共にめざめる暮らし 

老後を暮らす夫婦二人の所帯。そんなに大きいのはいらないけれど、土地は高台というのが気に入って求めたものだから、立地の利点を活かしたい。それが、一番の希望でした。ぴったりのプランを提案していただき、景色を眺 めて暮らせる気持ちのいい家になりました。 (奥さん)なにかの具合によるのか、山がものすごく近く鮮やかに見える時があるんです。この頃は、5時頃にお日様が昇りはじめる。だから、今日も夜明けの五時に目覚めたの。冬至の時はあの辺から昇っていた…今はあの辺りから…毎日少しづつ、日の出の位置も、山々の表情も違います。この見晴らしの良さと過ごし心地は、命がのびる感じがしています。

 ○我が家の良いところ

今回うちは玄関を2つ造っていただいたし、当初玄関土間の広さは贅沢かなぁ…と思ったけど、仕上がってみるとゆとりがあって気に入っています。前の家では、玄関というのが家族の実用のもので、しかもこんなに広くなかった。こちらでは、サブの玄関を普段使いの専用に設けてもらい、日常の細々とした物をしまえるようになりました。薪ストーブが据わるメインの玄関土間は、常にスッキリと玄関らしくしておけるので、この使い分けは大変良かったです。平屋も…あれだなぁ。やっぱりだんだん、足腰弱ってくるじゃない?上り下りが大変になってくるから、所長(中村伸吾)には、バリアフリーでお願いしますと頼んだんです。ワンフロアで過ごせるのは楽ですね。

 ○これからの楽しみ

東向きなので夏場の高い陽はまず差ささないから、夕涼みのビールがうまい…楽しみです。デッキのテーブル・ベンチなどは、この家の屋根の端材で製作しました。納戸の中などにも、建築中に出た端材を、住み始めてから活用して細工を作りました。同じ材料なので、家とも馴染みがいい。庭の面積が広くなり、最近は休日はもっぱら植栽の植木にかかりっきりだなぁ。まずは春に向けて咲くものを植えました。今は、夏・秋にむけて植え込みの準備中です。四季それぞれの、季節に映えの良いものを植えていきたいなぁと考えています。部屋内からの眺望を大事にしたいし、コンパクトに収まって、賑やかに仕上げたいなという思いがあります。予算をどんどんかけて、プロに任せれば立派に仕上げてくれるだろうけれど、それでは楽しみがない。自分で一本づつ一本づつ植えるのが、私達の今の楽しみです。

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夢をカタチにする力−その44     
南紀の台の家の改修 (平成25年春竣工)
改装は大胆に。

  このところ、お部屋の改装の依頼が増えています。今あるものを大切に・・・基本が充分しっかりしたものであるなら、必要に応じて手を入れながら大事に使う・・・というのは日本人の美徳でもあるように思います。改装のポイントは、既成の概念にとらわれず、思いきった気持ちでやりたいことを実現する・・・というところでしょうか。人間一度適応してしまうとなかなかそこから離れにくいものですが、既存の使い勝手や仕上げに縛られていては思いが遂げにくいのも現実です。

 元々は納戸だった二部屋を改装して新しく一つの板間としました。納戸ですから窓は小さく通風も採光も足りません。そこで、思い切って外壁を打ち抜き45センチほど壁を外に出し、そこに桧の天板の机を造り付けました。大きなテーブルの左下にはプリンターや無線ルーターなどを仕舞い込んで扉を付けていますのですっきりと納まっています。ビニールクロスだった壁は珪藻土に塗り直し、天井は既存の丸太梁をあらわしで見せることにして杉板で張り直しました。床は新建材のフローリングだったのですが、冬場がつらい・・・という話を伺っていたので、床下断熱を新たに手厚くして無垢の唐松のエンコウ板で張り直してあります。

 もうここを納戸だったと思う人はいないでしょう。木の香りのあふれる空間で心行くまで生活を楽しんでください。

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夢をカタチにする力−その43     
居間が2階にある住まい (平成24年春竣工)
自分らしくある、それが家づくりの最初の一歩。

 住まいの形はご家族によって大きく変わります。Aのご家族では当然だと思えることも、Bのご家族では不快であったり意外であったりすることは時としてあるものです。
  今回ご紹介する住まいでは居間が2階にあります。敷地の形状や大きな前面道路との関係で、家族が集う居間空間を誰に気兼ねなく過ごせるように・・・と2階に上げる事になったのです。南には大きな吊りベランダを用意して居間の窓は掃き出しにしてあります。2階にあることで道行く人々と視線を合わせることもなく、大きく放たれた窓からは陽光が降り注ぎます。屋根形状を工夫してたくさんのロフトも用意しました。収納の容量アップを図れるのはもちろん、子どもたちの遊び場や書斎としても役立ちます。変化のある空間は単調になりがちな生活に楽しみを与えてくれます。
  それぞれのご家族にはそれぞれの事情があり、思いもニーズもまちまちです。これが正解・・・と言える回答などないのです。自分らしい暮らし方をしっかりと見つめて、それをカタチにした住まいが大きな満足を与えてくれます。自分らしくある・・・それが家づくりの最初の一歩だといえるでしょう。

  時の経つのは早いものです。計画の時には小さかった子どもたちもどんどん大きくなるでしょう。この子たちと気持ちよく過ごしたい・・・とおっしゃっていた奥さんの夢を、ちょっと他所とは違うこの住まいがいつまでもしっかりと受け止めていてくれることを願っています。 

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夢をカタチにする力−その42     
良守(かずま)くんち (平成23年夏竣工)
かずまくんちは、呼吸する長期優良住宅です。

 長期優良住宅は高気密・高断熱でなければならないと思われているようですが、そうとも限りません。むしろ、木の家では高気密・高断熱の仕様は木の家特有の快適性を阻害したり、住まいの寿命を縮める要因ともなりかねません。
 一般に、断熱性能を高くすると結露の危険性が高まります。そこで、結露を避けるために高気密が必要になるわけです。高気密の住まいを造ってしまうと、湿気は室内からの逃げ場を失いますので、エアコンや強制換気が必要になります。機械効率を上げるためにますます高気密・高断熱の度合いを高め、部屋を小さく区切って・・・という悪循環では人に優しい環境は創れません。多少効率が良くなるからといって、長時間にわたって機械制御が必要な高気密・高断熱の家をエコとは呼べないと思うのです。
 木の家の大きな特徴は湿気を調整できるところ(調湿性)と、熱を蓄えられるところ(蓄熱性)です。たとえ長期優良住宅といえども、木の家である限りは、木の家の特徴を良く発揮できるこしらえが必要です。「良守(かずま)くんち」は家全体で湿気を屋外に排出する仕組みを備え、蓄熱・調湿の役目を果たす自然素材で出来た清々しい空間を持つ、とっても珍しい「呼吸する長期優良住宅」です。

 

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夢をカタチにする力−その41     
紀州梅の里 なかた (平成24年春竣工)
木の家は、人と街と森をつなぐ絆。

  住宅では一般的な木造も、少し大きな建物ではコンクリートや鉄骨になってしまい残念に思うことがあります。

 工夫すれば木造で気持ちのよい空間が出来るのに・・・そんな思いをカタチにしたのが田辺市にある「紀州梅の里 なかた」です。
  店舗としての大空間を構築するため特殊になりがちな柱・梁は、一本で大きな材料を用意するのではなく、無理のない寸法の材料を組み合わせて組柱・組梁としました。壁には珪藻土を塗り上げ、天井は和紙貼りとしました。アプローチには梅の木をイメージして斜めに丸太を建て込み、床には金錆の石を貼っています。

 出来上がった空間は、複雑に組まれた柱・梁が森の木々を連想させ、梅の花の形に仕込んだ照明器具とともに訪れる人々を心地よく包み込みます。
  すべての建物は「まちなみ」を構成する最小の要素であり、地域の産業や環境と切り離してはあり得ません。たとえ個人所有の住宅であってもその役割から逃れられませんが、企業や公共の所有する建物・・・不特定多数の訪れる店舗などは尚更です。

 人に気持ち良い空間を構築し、地場産業と緑環境に貢献する「木」の可能性に注目し、紀州材を使った大型店舗のモデルケースを造ろう・・・と決断されたトップに敬意を表します。

そして、人と街と森がますます強い絆で結ばれていくことを願っています。

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夢をカタチにする力−その40     
薪ストーブの家 (平成22年春竣工)
本当の快適さとは・・・。

 冬場は、陽差しが気持ちよく入って、暖房機などなくても暖かく暮らせる家が理想です。しかし、現実はそういうわけにもいきません。エアコンなどは頭がボーッと熱くなるばかりで足元が寒い・・・と、おっしゃる方も多くいます。心地よい暖かみを得るコツは住まい全体をホッコリと暖めてしまうことです。
  私の設計する住まいでは、薪ストーブを選択される方が多くいます。圧倒的な火力で住まい全体を暖めます。もちろん建物の方にも工夫が必要です。しっかりとした外断熱ですっぽりと建物を包み込んでしまいましょう。横方向だけでなく、縦方向にも暖気の通り道を確保しましょう。せっかくの暖気を蓄えることの出来る室内仕上げを施しましょう。
  家の中、どこにいても暖かい空間は思いのほかの快適さを提供します。火は家族の交流を促し、自然と集う空間がそこに出来上がります。薪の調達や火の始末など、やっかいなことも多いのに、皆さんが暖房機として薪ストーブを選択される理由も分かるような気がします。

 また、最近では床暖房や深夜電力型の蓄熱暖房機なども採用されはじめました。いずれも、快適に冬場を過ごすためには効果的な器具です。

 効率を最優先したつもりでビニールクロス貼りの小さな部屋を連ねてみても快適な暮らしは望めません。ここは一つ立ち止まって、家族にとって本当の快適とは何かを考えてみましょう。選択肢は色々とあるものです。

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夢をカタチにする力−その39  
福島の家 (平成21年秋竣工)
住まい手はクリエーター。
      

  一昔前・・・お客様をお迎えする玄関や客間などはとても大事にされてきました。おもてなしの心を表現し、そのお宅を代表する「顔」の役目を果たすために、条件のよい南や東に陣取り、そのくせあまり活用されないでいたのが現実です。
  しかし、この住まいでは、玄関土間を大きくとって、直接居間空間につながるように設計しています。玄関はおもてなしの場、家の「顔」ではありますが、同時に居間空間の土間コーナーとしても機能するわけです。ある時には鉢植えの緑を持ち込み家族の和みのコーナーとなり、ある時には自転車置き場となり、ある時には趣味のスペースとなるのです。こうすることで住まい手の暮らしの幅が大きく広がり、空間活用に様々な可能性がひらけます。
  住まいのカタチは、敷地条件や家族構成や予算などの多くの制約の中から、本当に大事な事柄を丁寧にひろいあげるところから生まれます。家ってこんなものでしょう・・・というあてがわれた価値観に縛られて、ヤドカリのようにそこに家族の暮らしを押し込むことより、例え少し世間とは変わっていても、徹底的に家族・住まい手を中心に発想した、住まい手が積極的に参加した家づくりをすることをオススメします。ご本人でなければ決断できないことが家づくりにはたくさんあるのです。

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夢をカタチにする力−その38  
片流れ屋根の家 (平成18年秋竣工)
発見のある住まいは楽しい。
      

 ご夫婦にはカヌーという共通の趣味がありました。アクティブなご夫婦の希望は、カヌーとバイクの格納庫を併設した住まいであること。そして、合理的で使いやすくできていること。そこで、1階には格納庫と共にワンルーム形式の大空間と水廻りを用意し、2階に大きなベランダを持つ個室群・・・という住まいを提案しました。1階のLDKを一つにした大きな空間で特に気をつけたのが台所です。洗面・脱衣などの奥様の家事動線を短く計画し、台所廻りを行き止まりにしなかったのが特徴です。
  対面形式のキッチンは最近の流行らしく、奥様方の希望にはよく登場します。家事をしながら子供達の様子が見えたり、一人きりで家事の仕事をしているという疎外感が緩和されるのが人気の要因でしょうか。しかし、対面形式のキッチンでは家事動線はあまり短くはなりません。それは、行き止まりがあるからです。
  キッチンセットに限らず、住まいの中の動線は行き止まらないように・・・グルグル回れるように計画することをオススメします。このような住まいでは、思わぬ所に居心地の良い空間を発見したり、予想もしなかった使い勝手に出会うこともしばしば・・・いつまでも色あせない我が家で、楽しく生活することが出来るでしょう

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夢をカタチにする力−その37 
かつらぎ町 大きな玄関土間の家 (平成23年春竣工)
空間を、おおらかに楽しむ。

 私たちには、住まいの中を小さく区切りそれぞれの空間に名前を付けて、用途を限って使おうとする習慣があります。しかし、実際の生活ではそんなに明確に使い勝手に区切りがあるわけではなく、時々の気分によってフレキシブルに、使いやすい様に使っている事が多いようです。あまり期待も意図もしていなかったけれど、この空間はこんな事をするのに気持ちの良いところだ・・・などといった発見も日常的に起こるものです。
 大きな玄関土間の家では、それぞれの部屋の区切りをおおらかにとらえ、空間に連続性を持たせることによって、住まい手に自由な使い勝手を提供し、住まい全体が無駄なく楽しく活用できるように設計しました。特徴的なのは玄関から居間に続く大きな土間です。ここは、玄関の延長としてお客様を迎えるのみならず、ある時には書斎になり、ある時には遊び場となります。土間の突き当たりには薪ストーブが据わり、人の集まる居間空間のシンボルとなっています。2階に続く階段もここに取り付けられ、吹き抜けと共に上下の空間をつなぐ役目を果たします。また、南東の大きな掃き出し窓には木製のデッキを付けて、室内と屋外の空間が柔らかくつながるようにしています。

 設計者として、内包する空間や装置、そしてそれらを取り巻く環境のすべてで、いつまでも住まい手の快適な暮らしを支えられる住まいであって欲しいと願っています。

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夢をカタチにする力−その36 
橋本の家 (平成22年春竣工)
紙障子は、日本の知恵。
      

 住宅に必要ないろいろな性能の中でも、このところ注目されるのは、断熱性能を中心とした省エネの性能です。特に最近では機械効率を優先するあまり、高気密・高断熱がもてはやされる風潮にあるようですが、機械の効率を云々する前に、機械に頼らない生活のあり様を考えてみることの方が大切ではないかと思っています。
  お日様の恵みをいっぱいに受けるには深い軒の出と大きな開口(窓)が必要です。心地よい風を住まいに招き入れるためにも同様でしょう。しかし、大きな窓は、こと断熱性能という角度から見ると、ウイークポイントにもなりかねません。屋根・壁にしっかりとした断熱性能を持つ住宅では、ガラスで遮るだけの窓の断熱はいかにも脆弱でしょう。そこで必要になるのが、窓の断熱性能を補うカーテンなどの補助部材です。私のオススメは紙障子。和紙一枚でそんなに・・・と思われるかもしれませんが、機密性の高い紙障子の効果は想像を超えて優秀です。
  橋本の家の住まい手は、大きな窓にはすべて紙障子を付けることを選択されました。存在感のある杉厚板の床とも良くマッチし、二度目の夏を迎えるご家族を優しく包み込んでいます。

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夢をカタチにする力−その35 
上野山の家 (平成21年冬竣工)
快適な空間を造るには、基本を大切にすると良い。
      

 人と環境にやさしい自然素材を用いる。軒を低くし、季節によって変化する陽差しをしっかりと制御する。風の通り道をデザインする。そして、蓄熱・調湿効果のある材料を用いる・・家づくりの基本は、いつの場合も大切にしたいものです。
  たとえば南向きの開口部・・夏の陽差しは省エネガラスでも遮る事が出来ます。しかし同時に、冬場の大事な陽差しも遮ってしまうことになるでしょう・・夏の陽差しを遮り、冬の陽差しを取り込むために深い軒の出は大切です。小さく区切った機械効率の良さそうな部屋で空調機を回せば、そこそこ快適な空間は造れます。ですが、心地よい季節の風と共にある暮らしを営むことは難しいでしょう。室内の温度・湿度も機械で制御することが出来ます。ところがこの場合にも、快適なのは機械が動いている間だけ、止まればすぐに不快な空間を体験することになるでしょう・・温度・湿度を状況に応じて調節する機能を有する木や土などの材料は捨てがたいものです。
  今回ご紹介する住まいは竹小舞の土塗り壁を採用し、大きな開口部には断熱性能も高く、外の景色も楽しめる雪見障子を建て込んでいます。基本に忠実な家づくりを実践された住まい手は「冬場も暖かくて快適だったよ。」と、笑顔で住まい心地を語ってくれました。

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夢をカタチにする力−その34 
太地町 丸窓のある家 (平成22年春竣工)
住まい手からの便り・・・太地より、22年冬。

前略・・季節もすっかり冬に近づいてきまして、家もずいぶんと陽が入ってくるようになりました。それはそれは明るく、暖かいです。今日などは室内は22度くらいありまして、半袖でも過ごせるくらいです。夏芝が未だに枯れずに緑を保っているところをみると、今年の気候や土地柄もあるのでしょうが、ありがたいです。床暖房は15度以下と決められて、なかなかつけてもらえませんが、朝方15度になったのは2回ほどです。14度はありません。・・中略・・近頃のお気に入りは、頼んでつけるようにしていただいたスピーカーからジャズを流しながら、家事をしたり、食事やお茶をすることです。なんだかリッチになった気分になります。友達などに家を見に来てもらうと、木の香りから心地よさ、細かな配慮まで、とても感心してくれて、いいねぇと喜んでくれて、私たちもご機嫌です。ジャズを流しながらお茶をして雑談などすると、すっかり心和んで、皆さんゆっくりしていきます。カフェみたいとの感想で、私たちもそんな気分で毎日を過ごしています。・・中略・・ヤマボウシは土地柄ほとんど紅葉せずに散ってしまいましたが、少し残っていた葉っぱが紅葉し、丸窓から見える景色がまた風流です。南天は数個実をつけています。ウバメガシは、たくさん実ったどんぐりが一昨日の嵐で、随分と落ちてしまいました。山茶花は、つぼみはたくさんつけているもののなかなか咲いてくれません。暖かいからでしょうか?

  何かとお忙しくお過ごしのことかと思いますが、また是非こちらに来られる機会がございましたら、来ていただけると嬉しいです。いくつか写真も添付しますので、ご覧ください。
   年末で忙しい時期です。どうか御身体には気をつけてお過ごしください。

  

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夢をカタチにする力−その33 
山口の家 (平成22年春竣工)
家が呼吸をすれば、暮らしはエコで快適になる。

 住まい手と初めてお会いしたのは完成見学会です。

「人工的で結露のひどい現在の住まいには困っている、今度は住まい心地の良い木の家が欲しい・・」とのことでした。その後、頂いた家づくりのコンセプトは「自然素材の木の家と、緑あふれる庭で、子供たちがのびのび育つ環境作りがしたい。」というものです。
  まずは、古民家の骨格の考え方をそのままに、耐久性・経済性・可変性の高い民家型の基本軸組をしっかりと組み上げます。その上で、地域の要求する断熱・気密性能の床・壁・屋根を造りました。外張り断熱の通気工法で結露には特に強い構造になっています。木材は龍神材、仕上げの珪藻土はもちろん、断熱材まで、全てを自然素材で造り上げました。
  木の家で快適に住まうには、木の持つ調湿・蓄熱の性能を充分に引き出すことと、住まい全体で呼吸する仕組み造りをすることが必要です。冷気や暖気を良く蓄え、適度な湿度の空間づくりを心がけることが、エコで快適な空間を造るコツと言えるでしょう。
 

 夏前に植えられた緑もすっかりと根付いて生活に彩りを添えています。秋には、深夜電力を使う蓄熱暖房機が付きました。空気を汚すことなく輻射熱でゆっくりと暖められた室内は、寒い冬にも穏やかな目覚めを助けてくれることでしょう。庭の芝生の一角に置かれたブランコに乗る子供たちの笑い声がいつまでも続く住まいであって欲しいと思います。

  

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夢をカタチにする力−その32 
中三栖の家 (平成21年夏竣工)
地域と共に、ゆたかに暮らす。

 夏涼しくて冬暖かい、清々しい空間を内包した、団らんのある家・・これが住まい手の欲しい家(コンセプト)です。
  初めて敷地を訪ねた時、住まい手から頂いたコンセプトをカタチにするには格好の場所だと感じました。北側道路の東西に長い敷地、一段下がった南側は梅畑、その緑に遮られて近くに人工物はあまり見えず、遠景には熊野古道につながる山々が見えました。西側にはすでに隣家があり、夏の西日や冬場の北西風をやわらげてくれます。大きいめの敷地は「家庭菜園がしたい・・」というご希望を叶えるだけの余地を残しています。
  基本骨組は、後の増改築に対応する古民家の良さを生かした民家型。構造材をはじめとする全ての木材は厳選した紀州材です。屋根・壁は外張り断熱の通気工法、結露に縁がなく温度差の少ない室内環境を目指しています。仕上げには杉・桧の無垢材、珪藻土、和紙、石などの自然素材を用いて、住まい手にも環境にも優しい空間づくりを心がけました。家族の団らんの中心は住まいの中央に設けた居間・食堂の大空間。南側には四間続きの大きな開口部を持ち、光と風を、ある時は思い切り受け入れ、ある時はシャットアウトしながら季節感のある快適な生活を助けます。

  力強くて決断力に富み包容力の豊かなご主人と、良く気の付く優しい奥様、そしてかわいい子供たちとの家づくりは楽しい共同作業でした。 

  竣工から1年が過ぎた中三栖の家では玄関先の緑も少しずつ育ち始めています。住まいの廻りの緑が増え始めると建物の表情も豊かになり、暑さ寒さをはじめとする自然の環境もやわらぎます。緑の畑を渡るさわやかな風をいっぱいに受けて、いつまでも続くご家族の団らんを、優しく包み続けられる住まいであることを願っています。

  

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夢をカタチにする力−その31 
土間ギャラリーの家 (平成21年春竣工)
強い思いがカタチを創る。

 満足度の高い住まいを造るにはコンセプトが大切・・というお話は度々してきました。今回ご紹介する建物はご希望をストレートにカタチにした、とても個性的なお住まいです。
  住まい手のご趣味は木工の美術作品を集めること。三桁に及ぶ収集品を展示するのにふさわしい住まいを造りたい・・というのがコンセプトです。
  素朴で力強い作品たちの邪魔をすることがないように、建物には過度の装飾を施す事は止めて、ただ素材の本物感を風合によって表現するように・・と心がけました。ほとんどの柱はあらわしとし、梁も可能なものは太鼓挽きの丸太梁としてあらわしています。大きな間取りに釣り合いがとれるように、そして展示スペースを稼げるようにと壁には1階半程の高さを持たせて漆喰塗りの仕上げにしました。床は表情のやさしい桧の縁甲板です。訪れる人たちを気負い無く受け入れやすいようにギャラリーは土間にしています。壁には力貫を取り付けて、重量級の展示物も心配なく壁面に展示できるよう工夫しましたが、とてもそれだけのスペースでは収めきることは出来ず、中2階や吹き抜け空間にまで作品があふれてしまうことになり、住まい全体がギャラリーの様相です。

  この住まいが、思いで深い展示作品たちを眺めながら、心ゆるせる仲間たちとのゆっくり流れる楽しい時間を、いつまでも心強く見守り続けられることを願っています。

  

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夢をカタチにする力−その30 
木の家工房Mo-ku (平成22年春竣工)
木の家工房 Mo-ku(モーク)

 

 和歌山市楠本に建つ当事務所の常設ギャラリー「木の家工房Mo-ku(モーク)」をご紹介しようと思います。しっかりとした軸組フレーム(木の国スケルトン)を持ち、天然乾燥の木の良さを生かしたあらわしの民家型構法・・木、土、紙などの自然素材を使い、調湿性と蓄熱性にとむ建物自体が呼吸をする機械依存の少ない快適な木の家・・という基本は日頃提供している住まいと同じですが、今回はギャラリーという性格上特に趣向を凝らしたところもあります。
一つは、「木の家」という言葉から多くの皆さんがイメージするであろう伝統和風の出で立ちから少し離れたものを狙ったことです。駐車場を取り込んで中2階を設定し、軽快な外観と、つながり感の強い室内空間を実現しています。
  二つめは、間伐で出てくる小径木を、斜めの丸太柱や厚板などとして積極採用し、近くの山との共存性能を高めたことです。小径木も、使い方と使い所を間違わなければ充分に役目を果たし、面白い表情を建物に与えてくれるものです。

  木の家は、モダンな外観も、落ち着いた外観も、たいていのデザインを許容し、ご家族の快適な生活に寄与する、先人が生み出した知恵の固まりです。Mo-kuは木の家の良さを充分に発揮し、これまであまり興味がなかった方にも受け入れていただけるように・・と造られています。お近くにおいでの際には是非立ち寄ってみてください。陽差しと、快い風に充ちた快適空間があなたをお待ちしています。

  

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夢をカタチにする力− その29  
はぜはら整形外科クリニック(平成18年初夏竣工)
大切なものは、目には見えない。
      

  「木の家」の設計が多いのですが、最近は住宅だけでなく保育所や福祉施設などの設計をさせていただく機会も増えてきました。今回ご紹介する建物も、和歌山市松島に建てられた整形外科の診療所です。50代半ばの先生からのご希望は、スタッフには合理的でスムーズな動線を・・患者さんにはリラックス出来る癒しの空間を提供したい・・というものでした。
  基本構造は木造民家型、部屋の間仕切りに先行して、柱・梁組を2間グリッドでしっかりと組み上げます。平面計画に自由度が生まれ、診療部門の合理的な配置が可能になり、後の改造に対応出来る骨組みが出来上がりました。また、通常の木造平屋建ての建物では難しい、天井の高い待合い室や、大空間のリハビリ室も実現出来ました。壁の仕上げは珪藻土塗り、天井は和紙貼り仕上げです。診療部門の床は天然のリノリュウム、リハビリ室など水の心配のない部屋は無垢の唐松の床になっています。さらに、家具材料の合板から薬品の発散がないようにと、全ての家具を杉・桧の無垢材で制作しました。
  たくさんの人が集まる空間はメンテナンスなどを意識するあまり、無機質になりがちです。衛生面や合理性には十分に気を配った上で、利用者の気持ちの動きにも思い至りたいものです。白いものが混じりはじめた立派なおヒゲと、涼しげな目元の先生の診療所は、今日もやさしい空気に包まれていることでしょう。

   

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夢をカタチにする力− その28  
たけくらべ柱の家(平成21年春竣工)
住まいは、家族の思いをつむぐ場所。
      

  小さい頃の家族の思い出や地域の風景は、ひとどなりや情緒の形成に大きな影響を及ぼします。古民家の改装が脚光を浴びるのは、環境・経済などの要因以外にも、家族や地域のアイデンティティーの継承・・という側面も大きいでしょう。
  今回ご紹介する住まいは、古座川に建つ三世代の家族が住まう二世帯住宅です。新築建物ですが、これまで暮らしてきた住まいの気配を全く無くしてしまうのは淋しい・・という思いから、それぞれの住まいに馴染みある特徴的なものを残すことになりました。
  お父さん世帯に残したのは仏間まわりのしつらえです。欠かすことなくお世話してきた仏様は、この家に代々伝わってきたアイデンティティーそのもの・・年季の入った扉類を洗いにかけ、使い勝手もそのままに再現しました。
  息子さん世帯には「たけくらべ」の印が付いた古い柱を残すことになりました。新築のまだ白っぽい柱の中にあって、黒光りするひときわ存在感豊かなこの柱には、お父さんの懐かしい印から、お孫さんの真新しい印まで・・ご家族の歴史が刻まれています。
  建物には、後の改装に対応できる工夫と世代を超えて住み継げるだけのしっかりとした木組み(木の国スケルトン)を与えました。今はまだ小さな子供たちの、そのまた子供たちまでが、たけくらべをする様をあたたかく見守り続ける住まいであってほしいと願っています。

   

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夢をカタチにする力−その27 
本宮の家 (平成20年夏竣工)
環境にやさしい家は、住まい手にもやさしい。

 

 住まい手のご希望は、自然とのかかわりを体験しながら、のびのびと二世帯で暮らせる「木の家」。家相に詳しい奥様と、以前は設計の仕事をされていたというお父様に助けられながら計画を進めました。大事にしたいのは景観を含めた周辺環境との共存、屋内と屋外の自然なつながり、自然素材による住まいづくりと機械依存を減らした快適な室内環境の創出・・など。
  南側の景観を生かし、陽差しを採り入れ、庭とのかかわりも多くとる・・自然を感じながら快適に住まうため、建物は敷地形状に沿って東西に長い雁行の形。開口は大型木製引き込み戸による大開口。すべて開け放てば5間の間がフルオープンになり庭と室内が直接につながります。風が気持ちよく吹き抜けるよう室内はあまり区切らないように心がけました。機械依存の少ない空間を造るには、住環境をパッシブな方向で組み立て直すことが必要だと考えています。現代住宅に最も欠けているのは室内の調湿と蓄熱の性能。それを補うのがあらわしで使う大量の木材と土塗り壁、そして石です。木、土、石の湿気と熱を蓄える性能は他の建築材料に比べると著しく優れています。
 

 環境に応じて湿気や熱を出し入れする呼吸する住まい。陽差しをうまく制御する低く深い軒の出、開放的な空間構成、風の通り道の確保など・・先人の知恵に学ぶ、地域の気候風土にあった家づくりが、過度の機械依存を防ぎ、環境にやさしく快適な住まいを実現します。

  

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夢をカタチにする力− その26  
陽だまりの家(平成19年冬竣工)
ゆたかで快適な空間は、効率を追求するだけでは生まれない。

 私の設計する住まいには、よく吹き抜けが付きます。そして、いつもこう聞かれます・・吹き抜けのある家は冬に寒くないの。私も決まったようにこう答えます・・断熱や気密を家全体でしっかりと考えれば大丈夫です。
  小さな部屋をいくつも造って、それぞれに個別の暖房や冷房を用意する方法は、機械効率が良く、住宅には適した方法のように思われがちですが、実はそうでもありません。実際には家族の孤立を進め、機械依存率を高め、ひどい時には温度差の異なる部屋間の壁内部で結露を招き、住まいの寿命を縮めてしまうことになるのです。さらに、最近ではヒートショックが問題になっています。これは、暖かい部屋から寒い廊下や便所、お風呂なんかに入った時に温度差で体調不良を起こす事故のことです。2007年には交通事故で亡くなった人は5000人台でしたが、ヒートショックで亡くなった人は14000人を越えたと言われています。
  快適な住まいを造りたい時に、住環境を建物全体で考える事は大切なことです。室内空気の対流をうながして均一な熱環境を得たり、つながりのある室内空間を用意して家族に一体感を持たせたり、冬の陽差しを室内深くまで導いてホッとするような暖かさを創り出したり、道を確保して清々しい風を導いたりするには、吹き抜けはとても役に立つ空間になるでしょう。

   

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夢をカタチにする力− その25 
中庭デッキの家 (平成20年冬竣工)
自然素材と家族の歴史が、魅力あふれる住まいを創る。

 

 それぞれの空間の独立性を高めながらも、家族が密接にかかわることのできる住まいを自然素材で造って欲しい・・これが住まい手からのご希望でした。
  内装は床板に無垢のカラマツ、壁は珪藻土(けいそうど)塗り、天井はスギの厚板あらわし仕上げ・・調湿・蓄熱作用に富んだ材料を使用することで、家自体が呼吸するような住まいづくりをしました。さらに外断熱通気工法で家全体をすっぽりと包み込み、空気を自然対流させる工夫により、夏は木陰のような涼しさ、冬はまどろむような暖かさを目指しました。最近の住まいは機械に依存しすぎるように思います。熱効率を重視するあまり、各室を小さく区切り、ぶどうの房のように連なっています。これでは家族間の交流が希薄になり、一体感が損なわれるうえ、機械依存の高い家となります。自然素材は機械に頼らない快適な健康生活を手助けしてくれる建築資材なのです。
 部屋の使用用途もあまり決めつけてしまうのではなく、後々の生活イメージが拡がるような空間を残しておくことが大切です。この家にある土間はそういう機能を果たします。多用途に使える土間は、熱や冷気をため込む蓄熱体でもあり、生活時間の違うご家族をつなぐ交差点でもあるのです。

  住まいづくりは建物が完成してからスタートします。木や石や珪藻土(けいそうど)などの自然素材の経年変化、子供たちの成長や家族の変遷などの歴史を全て包み込み、個性的な住まいはできるのです。

  

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夢をカタチにする力− その24 
内原の家(平成19年夏竣工)
家族の願いを、カタチにしよう。

 住まいづくりにコンセプトが大切なことはこれまでにもお話ししてきました。今回は、特に台所の使い勝手を中心に組み立てた住まいをご紹介します。建築地は和歌山市。住まい手のご希望は「台所を中心に発想した、陽当たりと風抜けが良く、シックハウスの心配がない、心地良く暮らせる木の家」。
  専業主婦の奥さんは趣味がパン造りであることも手伝ってどうしても台所で過ごす時間が多くなります。洗濯などの家事仕事も台所の近くが都合良い、出来ることならば子供の遊ぶ姿を視野に入れておきたい、家族の出入りは台所に居てわかる方がよい。そして、いつも居る場所なのだから見晴らしが良くて、風通しが良くて、陽当たりの良いところ・・となると、南に庭を望む、居間に寄り添う建物の中心。この住まいで一番居心地の良い場所が台所の位置になります。
  キッチンセットは用途に応じてコンロとシンクの部分を別々に・・使い勝手も徹底的に検討して家具工事で制作しました。コンロはお鍋を振りますから疲れにくい様に少し低め、目の前には壁を付けて実用優先です。シンクは洗い物をしても腰が痛くならない様に少し高め、家族が集ってお手伝いも容易に出来る様にアイランド型、目の前は気持ち良く開け放ちたいので吊り戸棚の類は付けていません。

 お気に入りのキッチンで奥さんは良くパンを焼きます。先日も焼きたてのベーグルを奥さんの笑顔と共にいただきました。
奧さん・・とっても美味しかったです・・有難うございました。


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夢をカタチにする力−その23 
潤野(うるの)の家(平成17年冬竣工)
環境を活かして、豊かに住まう。

 住まいは、たくさんの要素が複雑に絡み合い、互いに影響を与えながら構成されています。中でも敷地の状況は

「建物のあり方は敷地が教えてくれる」・・と言われるほど大きな要素です。
 今回ご紹介する古座川町潤野に建つ住まいには、道路が北側にあり、南側に大きな山があるため、日照時間が限られる・・という事情がありました。しかし、その代わり、南側には誰の目にもさらされない山を望む絶好のシチュエイションが拡がっていたのです。居間をはじめとする主な個室は南側に配置し、各室の窓は大きく開放しました。特徴的なのは、大開口がついた浴室と、屋上デッキです。浴室は特にプライバシーが強く要求されるところで通常大きな開口は取りにくいところです。しかし、この住まいでは掃き出し窓を付けて露天風呂に近い開放感が味わえるようになっています。水廻り上部の屋上デッキも8帖を越える大きさを有し、布団を干したり遊び場になったり・・・と、使い方は色々です。いずれも北側の道路からは見えない位置にあり、陽当たりと眺望を楽しみながら気兼ねなく使うことが出来ます。

 標準間取りを敷地にどう当てはめるか・・的な発想には限りがあるものです。

敷地の形状・広さ・地盤の高さ・方位・風の方向・陽当たり具合・ご近所の様子・・それぞれの持つ状況を活用して最大限の効果を引き出すこと・・・これが私たちの役目です。


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夢をカタチにする力−その22 
ふたば福祉会 たなかの杜 (平成20年春竣工)
顔の見える家づくりが、地域に活力と豊かさをもたらす。

 

 今回は、春に開所した社会福祉法人ふたば福祉会の「たなかの杜」をご紹介します。
  一般に「木の家は弱い」という思いこみがあるようですが、建物強度は構造の種類によって決定されるものではありません。コンクリート、鉄、木・・いずれの構造においても、どの程度の安全率を見込んだ設計になっているかで決まるのです。基本構造は建物強度からの要求ではなく、使用用途や得たい効果に見合った選択が大切です。ここでは「自然とふれあいながら、暖かく柔らかく利用者を包み込みたい」という思いから木造を選択しました。
  木の建物を造るに当たっては経験則に基づいたノウハウも重要です。「たなかの杜」は2間(約4メートル)四角を基本にして柱と梁を組み上げました。経済的で間取りに左右されにくい、しっかりとした骨組みを造る事が肝要です。そうすることで、間取り計画に自由度が生まれ、太陽光や心地よい風を充分に取り込む大きな開口部を造ることができ、自然を満喫しながら機械依存の少ない快適な生活をおくることが可能になります。また、各部屋の大きな掃き出し窓は、緊急時の避難が無理なく出来る避難口にもなります。もちろん、利用者の使用する部屋は全て1階部分に配置しています。

 特殊な構法や材料に頼らず、地域に残る材料を、地域に残る技術で造る事が大切だと思っています。みんなが使う施設であればこそ、地域の環境循環や経済循環を充分に考慮していくことが必要でしょう

  

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夢をカタチにする力−その21 
上西薬局 (平成19年春竣工)
鉄骨造には鉄骨造の快適づくりがある。

 

  南紀白浜・・その中でも源泉のある湯崎というところは、潮の香りと温泉のにおいが立ち込めて、独特の雰囲気が味わえる所です。この地に鉄骨3階建ての店舗併用住宅を建てました。海・岩・砂浜・コンクリート・・などの地域を特徴付ける要素をモチーフとして、温泉街に馴染みが良く、景観をリードしてゆける建物になるようにと心がけました。
  住まい手からは、風通しが良く、西日をうまく制御できるように・・というのが一番の要求でした。鉄骨3階建ての建物で良好な室内環境を得るための手段は・・いつもの木造と同じ・・という訳にはいきません。室内仕上げに調湿・蓄熱の役目を果たす材料を使用することに変わりはないのですが、断熱・気密に対する考え方を木造とは根本的に変える必要がありました。木造では、湿気を通しやすい壁材を用いて、室内で処理が追いつかない湿気を屋外に放り出す算段をしますが、それが出来ないのです。そこで、風の通り道をしっかりと確保して、自然換気を最大限に利用し、その上で、足りないところを機械に助けてもらうことにしました・・断熱・気密はしっかりと・・これが今回の方法です。

 

先日、竣工から1年以上経った夏の日に写真を撮りに伺いました。とてもきれいにお住まいなので驚きました。「住まい心地はどうです」と奥様に聞いてみたところ「電球の切れるのが早いので対策を考えたいが、快適に住まえて満足している」とのこと。大切に扱ってもらっている様子が一目でわかる住まいぶりに感謝の一日でした。

  

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夢をカタチにする力−その20 
大きなデッキと暮らす家 (平成19年秋竣工)
思いに忠実な住まいが、大きな満足を与えてくれる。

 

家は3軒建たなければ満足のいくものは出来ない・・と、おっしゃっているのを耳にして残念に思うことがあります。もしかして・・あの建築雑誌の居間の様子が気に入ったので、ウチもあんなに・・お友達の家のキッチンが使いやすそうだったので、キッチンはこう・・外観は、あそこで見かけたあの家風に・・素人なので中身のことはよくわかりませんが、とにかく自分の思う通りに仕上げてもらいました・・こんな住まいづくりをされているのではありませんか?建物はそれぞれに独自のバランスで成り立っています。よく見えたり、使いやすかったりする場合には尚更そこにしかないバランスがあるものです。気に入ったものをつなぎ合わせてもフランケンシュタインのようなつぎはぎだらけの建物が出来るばかりで、納得できるものは出来ないでしょう。住まいづくりをするときには、欲しい住まいのイメージを明確にして、的確に表現し、オリジナリティあふれるものを造るようにしましょう。思い(コンセプト)に忠実な住まいが大きな満足を与えてくれるのです。


今回ご紹介する住まい手はアウトドアーでの活動が趣味のご家族です。休みの日にはキャンプやカヌー遊びに出かけます。お住まいも自然を感じながら暮らせるように・・と、ご希望でした。そこで、大きなデッキで室内と庭をつなぎ、中と外を一体に楽しめる工夫をしました。室内の間仕切りも最小限・・のびのびと生活できるよう心がけています。風と日差しと土のにおいを感じながら、快適な木の家の暮らしを満喫いただくことを願っています。

  

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夢をカタチにする力−その19  
オレンジランドの家(平成20年春竣工)
住まいは家族と共に成長する。

「住まい」は建物の竣工と同時に出来上がるものではありません。そこに住まう人の暮らしや思いがその建物を

「住まい」とするのです。私たちが住まいづくりを考えるとき、家族のあり方は大変重要な要素となります。たとえば、3人の子供さんをお持ちのご夫婦からは自動反応のように「子供部屋は3室必要・・」という要求が出てきます。しかし、今一度考えてみて欲しいのです。子供さんはおいくつでしょう?性別は?今は誰と誰が一緒に寝ています?個室が必要になるのはいつ頃でしょう?勉強はどこでしています?何をして遊んでいることが多いですか?ご結婚はされていますか?今後、同居をお考えですか?本当に子供部屋は3室必要でしょうか?・・私たちの廻りは確定しにくい事柄や、時と共に変化していく事柄であふれています。現在の情報で全てを決めてしまうのではなく、家族のあり方に合わせて姿を変えていく「家族とともに成長する住まい」が必要だと思うのです。当然、建物には不確定な要素に対応できるしっかりとした基本骨格が必要です。
  今回ご紹介する若い住まい手は、日々の暮らしを1階で全て済ませられるように工夫し、2階は今後増えるであろう家族の状況に合わせられるよう、一切の間仕切りをしないことを選択されました。工事中に早速家族が一人増えましたが、その子に個室が必要になるのは10年ほど先のことでしょう。まずは大きな部屋でのびのびと遊ぶことから・・。住まい手のご家族とともに、この住まいがこれからどの様に成長してゆけるのか、しっかりと見守りたいと思います。

  

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夢をカタチにする力−その18 
下万呂の家 (平成19年秋竣工)
基本が大切。

 

今回は、木の国Wood Designコンテスト2008で優秀賞をいただいた「下万呂の家」をご紹介します。この住まいでは基本に忠実な家づくりを心がけました。特に注意をはらったのは以下の3点です。
● 先人の知恵に学ぶ家づくり
  現代住宅は室内における調湿と蓄熱の性能に決定的な弱みを持ちます。それを補うのが室内にあらわしで使う大量の木材と土塗り壁です。木と土の湿気と熱を蓄える性能は他の建築材料と比べても著しく優れ、効果は使用した体積にほぼ比例します。日差しの制御、開放的な空間構成、風の通り道の確保など、先人の知恵に学ぶ、地域の気候風土にあった家づくりで、過度の機械依存を防いだ良好な住環境の創出を目指しました。
● 環境共生 
  紀南においては、現存する人工林と如何に向き合うかが早急に対応を迫られる課題だと認識しています。具体的には樹齢50年前後の杉・桧の節あり並材を大量使用する方法を考える必要があります。この住宅はエンコウ板以外全て杉、桧の節あり並材で作りました。

● 経済循環
  地元材を使い、地元の職人に残る技量を基本とした在来工法(民家型構法)で家を建てます。豊かな地域づくりなくして一人一人の豊かなくらしはあり得ません。住まいづくりを通した地域の生き残りの方法を今一度考えてみたいものです。

 

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夢をカタチにする力−その17 
土間のある家 (平成19年夏竣工)

住まいづくりは,大切なものを見つめ直すことから始まる。

 目標のないものづくりでは充分な満足は得られません。たくさんの夢の中から的確な現実をつかみ取るための取捨選択がきちんと出来るコンセプトが必要です。今回ご紹介する住まい手のコンセプトは「季節を感じながら、家族それぞれのニーズにあった時間を過ごせる木の家」 音楽家のご主人と役者の奥様、バイク好きの息子さんと寝たきりのおばあちゃん。なるほどそれぞれに状況や楽しみ方が違います。とても個性的なご家族に玄関から続く大きな通り土間のある家を提案しました。住まいの中心を貫くこの土間がご家族の趣味のゾーンをある時は区切り、ある時はつなぎ止めます。土間には大きめの薪ストーブを据えました。吹き抜けを持つ60坪近いこの住まいをたった一台で暖めます。土間の床は蓄熱体。ストーブの熱を蓄えて火が消えた後もホコホコと一晩中室内を暖め続けます。
 理屈やファッションで住まい造りに取り組むと失敗をします。目先の利便性やあてがわれた価値観に頼ることなく、自分たちにとって本当に大切なものは何なのかを見つめ直すところから住まい造りを始めたいものです。

「思い通りの住まいが出来ました。薪ストーブも、時々音が聞こえすぎる吹き抜けもこの住まいにはなくてはならないものです。とても快適に過ごしています。」奥様の声は役者修行で鍛えたよく通る声です。大きく届いたその声を頑張ったご褒美にありがたくいただきました。


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夢をカタチにする力−その16
わんぱく保育所(平成17年秋竣工)
感受性を育む空間づくり。

わんぱく保育所から設計依頼を受けたのは2002年の秋頃だったと思います。伺ってみると関係者の方々が熱気あふれる議論をされていました。「自然をいつも肌で感じることが出来るように」「木のやさしさを感じながらみんなが家族のように育ちあえるように」「楽しく衛生的で安全に過ごせる保育所であるために」・・・木造建築、しかも民家型でいく・・木・土・石などの地域の風景を創り出す材料を用い、地域の先人達の住まい方に習って、風の通り、日差しの制御、蓄熱、調湿に留意した機械依存の少ない建物にする・・などの方針は必然のように決まっていきました。
構造材や杉厚板のあらわし使用が快適な室内空間を手に入れる上で効果的なことは体験済みですが、現行建築基準法の中では、住宅以外の用途や、住宅を上回る規模の建築物を木の良さを活かしながら建てることは容易ではありません。今回の設計に当たっては3つの要素が木の香り豊かな木造の保育所を可能にしました。
  ○ 竹小舞(エツリ)組土塗り壁の採用
  ○ 構造軸組の燃えしろ設計
  ○ 杉厚板、杉・桧化粧板の準不燃加工

当初は子供たちも少なかったのですが、今は欠員待ちが出るほどの人気で、元気な子供たちが走り回っています。多くの大人たちの思いのたけを詰め込んだこの木造園舎の中で子供たちがすくすくと育ってくれることを心から願っています。

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夢をカタチにする力−その15
稲成町 古民家の再生(平成19年春竣工)
古きをいかして新しきを創る。

築100年の古民家の再生例をご紹介します。古い建物を壊してこの際に新築を・・という話は良く聞きますが、今回の住まい手はご相談をいただいた当初から再生をご希望でした。住み慣れた家の基本を生かして床の段差、使い勝手、暑さ・寒さ、安全性などを改善したいということです。
100年の歳月は容赦なく住まいのあちこちを蝕んでいます。柱や梁などの基本骨格部分にさえ使用不能のヶ所はおよんでいます。技術的に解決出来る問題の他にも古民家を再生する場合にはどうしても納得いただかなければならない事柄もあります。一つは地震や台風などの力に対処する方法が違うことです。現代の多くの建物は外からの力にしっかりと抵抗する壊れにくい構造ですが、古民家はそれらの力を受け流すように出来ています。つまり、多少傾いたりすることで力を吸収し、結果的に人命を守る・・という構造なのです。二つめは、本格的な再生は新築するほどの費用が必要になるということです。

古民家の再生は古くなって価値が無くなったと思われている物に大いなる価値を見いだす仕事です。いくつかの障害を乗り越えて見事によみがえった住まいの放つ存在感と、住宅としての快適な諸性能は再生という大仕事に取り組む意義と価値を再確認させるのに充分なものでした。

「便利で貧しい今の家、不便で豊かな昔の家」という言葉を工事を担当してくれた工務店の社長から伺いました。「目の前にあるまだ使えるものを使うのは当然のことだ」という住まい手の言葉と共にとても印象深く心に残っています。

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夢をカタチにする力−その14
紀の川市 南中の家(平成19年春竣工)
近くの山の木で家を造ることが
快適な住まいを創る近道になる。

この住まいは合併で出来た新しい町、紀の川市にあります。設計打合せの当初から、住まい手の原体験の中にある古民家の趣の家にしたい・・という事と、おじいちゃんの山の木で建てたい・・という二つの大きなご希望がありました。
住まい手の思いに沿って、南側に大きな掃き出し窓を持つ、開放的でつながりの良い間取りが採用されました。間仕切りは最小限にして、子供たちの成長やその時のニーズに合わせて区切りと使い道を考える、古民家の良さに学んだのびのびとした住まいです。室内には柱や梁があらわしで見えています。2階には真っ直ぐな天井板はなく、充分に断熱された屋根の野地板が勾配を持ったまま天井板を兼ねています。水廻りや多目的室などは桧の板張り・・もちろん、すべての木材はおじいちゃんの山から伐り出したものです。
おじいちゃんの山の木で建てる・・というのは、実はそんなに簡単なことではありません。商業ペースで大量に伐り出され製品にされた木材と、たった1件のためだけに伐りだされる木材とでは、そろえるための段取りや価格が大きく違うからです。

しかし、たとえ大変な苦労はしても、家族のつながりや思いを具体的なカタチに出来たことは幸運なことに違いありません。
今、私たちが建てる家の木は誰かのおじいちゃんが植えた木です。植えた人の思いが充分に生かされる家のあり方を考えたいものです。近くの山の木で家を建てることが得難い自然環境の保全に貢献するだけでなく、,快適な住環境を手に入れる近道になるのですから。

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夢をカタチにする力−その13
和歌山市 府中の家の改修(平成19年春竣工)
価値観、素材、技・・・
作り手の思いを受け止め、新しい命を吹き込む。

このところ、古民家の改修や再生の機会に出会うことが多くなりました。地域の気候風土に適した住まいを、古くなったからといってただ取り壊してしまうのはもったいない限りです。構造がしっかりとしているものなら、現代の住まい方にも充分に耐えられるだけの性能を与えて、新しい命を吹き込もうという試みに積極的に取り組むべきです。今回ご紹介する住まいは和歌山市で取り組んだ古民家の改修の例です。
これまでの改修は、古い部分を新建材で覆い隠し、せっかくの大きな空間を個室に区切る・・安直で見た目の目新しさを追い求めたようなものが大半でした。しかし、それでは古民家本来の良さを充分に引き出し、現代の住まい方に適した新しい住まいを創り出すことは出来ません。深い軒の出や風通しの良い間取りを生かしながら、地域に適した断熱・気密性能の床・壁・屋根で建物全体をすっぽりと包み込み、間仕切りや天井はむしろ取り払って、丸太や木組みや土壁が創り出す表情ゆたかで、機械依存の少ない、のびのびと暮らせる住空間を創り出すことが大切なのです。

たくさんのメディアを通じて最新の住宅情報が提供されていますが、新しい物だけが良いもの・・だとは限りません。
身近な住文化を見つめ直した時に、古民家は今までとは違う意味合いを持って私たちの前に現れることでしょう。2000年の永きをかけて顕彰されてきた先人たちの知恵を生かすことは、私たちの快適生活の大きな助けになるばかりでなく、地域をかたちづくるアイデンティティーにもなっていくのです。

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夢をカタチにする力−その12
白浜町 マーメイドタウンの家(平成17年春竣工)
快適な住まいを造る方法は、
先人の知恵が教えてくれる。

今回は 「木の国・Wood Designコンテスト 2007」で優秀賞をいただいた「白浜町 マーメイドタウンの家」をご紹介したいと思います。
住まい手は50代のご夫婦。以前は大阪にお住まいでしたが、子育てを終えられ、この地に引っ越してこられました。「ゆっくり、のびのびとした生活がしたい」と南側に大きく眺望が開けた敷地を用意され、「住まい心地の良い木の家を建って欲しい」とご希望でした。
現代住宅は、室内の調湿性能と蓄熱性能に決定的な弱みを持ちますが、この住まいでは、それを補うのが室内にあらわしで使う大量の木材と土塗り壁です。木と土の湿気と熱を蓄える性能は他の建築材料と比べても著しく優れ、効果は使用した体積にほぼ比例します。日差しをうまく制御する低く深い軒の出、上下左右につながる開放的な空間構成、風の通り道の確保など、住まいの環境づくりを先人の知恵に学んでいます。

地域の気候風土にあった家づくりが、過度の機械依存を防ぎ、住まい手の健康生活を手助けするのです。住宅産業に創り出された安直な価値観に頼ることなく、住まいづくりの方法を今一度考え直してみたいものです。
この冬に住まい手から「朝1時間ほど暖房器具を使う。後は囲炉裏と陽差しで充分暖かい」とお褒めをいただきました。「木の国の家推進委員会」の作品でもあるこの住まいが賞をいただいた事と合わせて二重のよろこびです。

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夢をカタチにする力−その11
田辺市 上屋敷の家(平成18年秋竣工)
木の特性をいかし、
柔軟で豊かな構想力を発揮する。
今回ご紹介させていただくのは、市内上屋敷に建つ住宅です。30代のご夫婦と三人の子供、それにご両親家族の「二つの生活」を一つの「住まい」に統合した二世帯住宅です。それぞれの世帯が階を隔ててのびのびと暮らせること、気持ちの良い陽差しと風が入ること、そして住まい心地の良い「木の家」であることの条件が出されました。
間口が狭く奥行きの長い旧市街独特の敷地形状をしていることから、太陽と風を建物の中にどう取り込むかが大きな課題となります。そして、2階に上がった家族に「地に足をつけた感覚」を創り出すことが必要です。 
そこで、建物の中央に中庭を配置し、そこを囲むようにして陽差しや風通しを確保する計画にしました。さらに、2階の寝室や居間の前に紀州材で大きな人工地盤(木製のデッキ)を造り、そこに掃き出し窓を並べています。2階にいながら1階と同じ感覚の生活が送れる工夫です。
心地良い冬の陽差しに満たされた居間につながる木製デッキは、室内空間に拡がりを加えるだけでなく、遊び場や洗濯物干し、時にはビヤガーデンや焼き肉パーティーにまで使われることを想定しています。
工夫しだいで多様な対応を見せる「木の家」は、快適で機械依存の少ない室内環境を積極的に創り出したい時や、感情豊かな空間を構成したい時には、ますます必要性を増すであろうと思っています。

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夢をカタチにする力−その10
大阪 茨木の家(平成17年春竣工)
温故知新
良き伝統に、住まい手の要求と時代の息吹を吹き込む。
大阪北部、万博公園の少し手前、近畿自動車道を一本山側に入った情緒豊かな桜並木に面する住宅街に敷地はあります。住まい手は二人の子供を持つ四〇代のご夫婦です。旧家に育った御主人の原体験から、木の家の良さを良く理解され「家を建つなら木の家にしたい」という思いを強く持っておられました。ところが、マンションや工業製品化された住宅の多い大阪北部では、ちょうどニーズに合う設計者や工務店が見つからず随分とご苦労されたようです。住宅雑誌で当事務所の作品を見つけられ、木材屋さんを経由して最初の連絡が入りました。
打ち合わせはスムーズに進んだのですが、あまり広くない敷地で多くの要求を実現するのは大変な作業でした。特に日差しの制御は工夫を凝らした所です。耐久性を考えると軒先は少しでも長く出したいところです。しかし、そうすると隣が建て込んだ住宅街では光を室内に取り込めなくなります。
そこで、硝子張りの軒先を提案しました。冬場はたくさんの日差しを取り込み、夏場には簾の様なもので抑制します。ベランダの床は光を1階に導くためにグレーチングにしています。建物の工夫と生活の知恵で四季を通じて快適な部屋が1階にも2階にも出来上がりました。
柱・梁の通りをしっかりと組み上げた木造民家型構法、杉厚板とエツリ壁の家が都会の真ん中に出来上がりました。 受け継がれてきた良き伝統と、現在住宅が備えるべき諸性能と、住まい手の要求が一つになった新しい「住まい」です。 ご家族にかわいがられながら、ご家族を守り続け、いつの日か子供たちの「住まい」の原風景となることでしょう。

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夢をカタチにする力−その09
花子先生の家(平成16年初夏竣工)
木で建てることの意義
「木の家」に住む恩恵を見つめ直す。

旧田辺市街の中央部、田辺税務署の東隣に今回の敷地はあります。住まい手は私が中学時代に教えて頂いた恩師です。最初の依頼は、現存している軽量プレハブ造りの建物を改装したいというものでした。しかし、決まった規格で工場制作される軽量プレハブ造りの建物は現場での変更に対応できません。窓一つ動かすことが容易ではないのです。それでは・・と新築を決意されましたが、当初は提案させて頂いた「木の家」には抵抗感があるようでした。なるほど、勾配のある天井や、柱や梁などの基本構造がそのまま「あらわし」で室内に見えている家は今は一般的ではありません。戸惑っておられる住まい手に、「木の家」の良さを説明しながら、幾つかのプランを提出し、何軒かの見学もした上で判断いただき、出来上がったのがこの住まいです。
骨格は基本を大事に柱と梁の通りをしっかりと組み上げた木造民家型。

湿気を調節したり、熱を蓄えたりする木材の特性が生きるようにと、室内に見えるように使った「あらわし」構造。 家全体をすっぽりと外断熱の通気工法でくるみ、大きな吹き抜けを造りました。冬場にはその吹き抜けから暖かい陽が差し込みます。心配していた暖房も大きいめのガスストーブ1台で住まい全体が暖まってしまうそうです。
住まい手にしてみれば「木の家」に住まうなど、思いも寄らない事だったのかもしれません。先日、2回目の冬を迎えた住まい手から「通風も採光も良好、快適に暮らしてるよ。」と声をかけて頂くことが出来ました。大きな責任を果たせたことにひと安心しています。

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夢をカタチにする力−その08
狐島の家(平成18年冬竣工)
調和のあるところに完成あり。敷地・気象・暮らし・素材・・・
全体を踏まえ、調和をつくりだす。
今回の敷地には当初80坪を超す立派な家が建っていました。数寄屋風の見事な木造建築物でしたが、築80年を経たことによる傷みと、現代の住まい手が要求する住宅としての性能(断熱、気密、耐震、使い勝手など)を満たすことが出来ないために建て替えることになったのです。住まい手の要望は「大きな庭を生かした、おおらかで季節感の豊かな家」「4人家族が暮らすのにちょうど良い大きさ・使い勝手の家」というものでした。
そこで、26坪ほどの平屋に切り妻の大屋根を掛け、大きな屋根懐にロフト感覚の2階居室を設けるプランを提案しました。構造体や屋根形状が単純な上に、基本的には平屋なので木材や外壁材などが大幅に節約できます。家族が集う大空間を用意して、そこに台所や水廻り、個室などがつながっています。また、その部分を吹き抜けにして2階の個室ともつながっています。写真は2階のホールから家族室を写したものですが、4間つながる障子を開け放つと大きく庭に解放される仕掛けです。ヒートショック(急激な温度変化が体に及ぼす影響)や結露をなくし快適に住まうコツの一つは空間を小刻みにせず大きく使うことです。
通風や断熱・気密などに対する対応を部屋単位でなく家全体で考えることが大切です。その上で、必要に応じた区切りを考えていくことで個性的な使用も可能になるでしょう。完成したばかりで、まだ住まい手の暮らしの入っていない部屋ですが、あまり寒々と感じないのは、木や土や紙などの空間を構成する材料の持つ力のおかげでしょうか。

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夢をカタチにする力−その07
中屋敷の家(平成18年夏竣工)
基本なくして応用なし。
住み継げる「資産」づくりを。

旧田辺市街の中央部、田辺市役所の北側に位置する住宅地に今回の敷地はあります。40年程前に新築された木造2階建の建物に住んで居られるお母様の所に、息子さんご家族が同居する為に、部分的な増築と改装を施しました。
増築と改装・・リフォーム工事は今注目されている工事の一つですが、しっかりとしたものを造るのは簡単なことではありません。特に、ここ30〜40年の建物では注意が必要です。それは、基本構造が後の増築や改装を考慮したものになっていないことが多いからです。時に「この家の設計は私がした」とおっしゃる住まい手の方をお見かけします。
世界に名だたる日本の大工技術は、素人間取りでも「家」として完成させてしまいますが、そのことが今大きな問題を創り出しています。設計に対する知識と理解と経験の不足が、耐用年数の極端に少ない「住み継げない住まい」「増改築を許容しない住まい」を生み出してしまったのです。

心配しながら旧家屋の調査に入りましたが、天井をめくった瞬間にそれが取り越し苦労であることが判りました。見るからに立派な木材が木造建築の基本に則って理屈通りに組み上げられていたからです。
「当時の住まい手」と「造り手」の見識が残してくれた骨格は「新しい住まい手」のニーズを見事にのみこんで、新たな寿命をまっとうすることが出来ます。今回の増改装工事は、住まいの再生に立ち会えた得難い機会でした。

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夢をカタチにする力−その06
和歌山市島橋 西ノ丁の家(平成18年早春竣工)
「居は気を移す」
豊かな心を育む住まいづくり。

JR和歌山駅から和歌山城前をすぎて西に真っ直ぐ進むと紀ノ川大橋、橋を渡って10分ほど走ると左手が島橋。今回敷地は古くに開発されたこの造成地の中にあります。
初めて打ち合わせに伺った時には、ここに平屋の木造住宅が建っていました。南向きの配置にもかかわらず、あまり明るさを感じなかった印象があります。住まい手のご希望は「陽光がふりそそぎ、気持ちの良い風が通る家。」「家族が集えるリビング・ダイニングと、お菓子造りが出来るキッチンのある家。」というものでした。
1階にはテラス、2階にはベランダ、屋上には屋上デッキを配置し、各階の南側に思い切り大きな掃き出し窓を用意しました。この大開口を通じて陽光と風をいっぱいに取り込む企てです。1階はキッチンを中心に発想・・・コンロとシンクを分離し、それぞれの使い勝手に応じて配置しています。
コンロは外壁に向かい実作業中心、シンクはダイニングも兼ねた大部屋の中心に位置し、家事仕事や菓子作りをしながら家族とコミュニケーションが取れる配置です。

2階は南側に板の間、多目的室を挟んで北側に寝室がつながります。北側の部屋は暗くなりがちですが、この住まいでは吹き抜け部の窓からまぶしいくらいの陽光が寝室に入っていきます。写真のはしごを登っていくとロフトから景色の良い屋上デッキに出ます。構造は骨太の民家型工法。内部には柱や梁をはじめ床板となる杉の厚板などが「あらわし」で見えています。
竣工後、御主人の海外勤務が決まりました。帰ってくる時には小さなご家族がもう一人増えてにぎやかになる予定です。その時まで木の香りいっぱいのこの空間は色あせることなくご家族を待っていることでしょう。

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夢をカタチにする力−その05
野中の山の木で建つ家(平成17年冬竣工)
ふるさとの山の恵みを活かし、地域らしい住まいを創ることが、
快適な暮らしにつながる。
和歌山市の北側に造られた造成地、今も拡大を続けるこの団地の一角に今回の敷地はあります。南、北、西の三方向を道路に囲まれる約70坪の土地に、住まい手が生まれ育ったふるさと「旧中辺路町野中」の山から切り出した木で「住まい」を創るのです。
北側に駐車場、玄関アプローチ、設備配置スペース等を集め、建物形状を工夫して南側にとれる限りの空間を残しました。構造は骨太の民家型工法。内部にはもちろん柱や梁をはじめ床板となる杉の厚板などが「あらわし」で見えています。軒先を充分に出して日差しの制御をすること、風の通り道を工夫すること、大きな空間(空気量)を確保して断熱は家全体で考えること・・などの基本に加え、今回建物の大きな特徴は自前の大量の木材で室内に調湿体・蓄熱体を確保できたことです。機械の効率に囚われるあまり、気密や部屋単位の断熱に目を奪われ、結局は機械なしでは過ごせない現代住宅で決定的に不足するのが調湿・蓄熱の性能です。通常の2倍の木材量を「あらわし」で使用した効果はすばらしく、この冬にはどんなに寒い日も暖房器具なしで室内温度12度を下まわることはなかったと聞いています。
上棟の日にお祝いにみえたご主人のお父さんが「小学生の時に、亡くなった私の父と一緒に植えたあの木が息子の住まいになる・・時の流れと人のつながりを意識する機会は少ないが、こうして目の当たりにすると少なからず感動する。」そうおっしゃっていたのが印象的でした。

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夢をカタチにする力−その04
白浜町椿 橘新田の家(平成16年竣工)
住まい手の思いと行動が、満足いく住環境を創り出す。
計画に当たってご主人から以下のような要望を頂きました。一.百年もつ木の家  二.シンプルで天災に強い家  三.集いやすい家  四.バリヤフリーの家  五.風の通る家・・・それらの実現のために、木造民家型の木組にてしっかりとしたグリッドの骨格を組み上げ、真ん中に大きな居間を取り、そこに2間の掃き出し窓を取り付けて上下左右に空間をつなげこの家の核とする計画を提案しました。ご近所さんが集える縁側もここに付きます。又、各所につながるこの空間は四季を通じて風の道ともなります。床・壁・天井には杉皮を利用した断熱材を使い外断熱通気工法としました。
今ひとつの着目点は「住まい手との協働」です。いつのまにか「住まい手」のことを「消費者」と呼ぶようになりましたが、自らの「住まい」をつくり、家族の生活を創造していく「住まい手」は「生産者・クリエイター」であるべきです。「私たちを満足させなさい」の「消費者」のポジションからは快適な住まいのヒントは見えてきません。人は、与えられるものでは充分な満足を得にくいからです。
今回の「住まい手」は自分たちに出来ることはみんなやってしまいました。結果、力を尽くした満足感を得、地域との融合を果たし、低価格まで手に入れました。
建物が完成してからも収納、座卓、生け垣、庭と作り続けています。住まいづくりを自らの手で行う姿勢が満足のいく「住まい」を創り出すコツといえるでしょう。

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夢をカタチにする力−その03
ほほしかや陶器(平成元年竣工)

守・破・離・・・
受け継いだものを守り、現代にあうものを取り入れ、オリジナリティを創り出す

田辺市本町にある老舗の陶器店の建て替えです。ご主人には、この機会にブランドとしての「ほしかや陶器」をより定着させたいという夢があったようです。住まい手に世代を超えて大事にされてきた旧建物の趣を素直なかたちで残し、それをモチーフとして夢の実現をはかりたいと考えました。全体をセットバックさせて前面に駐車場を取り、既存の中庭をそのまま新しい建物に取り込んでいます。これはご主人のご希望でもありましたが、結果的に新築建物をバランス良く成り立たせる大きな要素となりました。玄関の縁石には旧建物を支え続けた基礎石、階段の段板には旧建物の丸太梁を整形したものを再使用するなどして、全体イメージの継承と共に材料も受け継いでいます。住み慣れた懐かしいものを新しい家にいかすのは、住まい手や環境に対する配慮だけでなく、新しく作ったのではできない歴史の重みや風情を新築建物にまとわせるという効果もあります。
これらを実現するために、紀州材、石、土を主な材料として、軒の出を十分に確保した切り妻大屋根にて建物を計画しています。本建物が狙い通りの性能を発揮し、長く人々に愛されることを願っています。

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夢をカタチにする力−その02
紀州備長炭記念公園店舗(平成9年竣工)
地域の魅力は、その営みの中から生まれ、育まれるもの。

この店舗は田辺市秋津川の「紀州備長炭記念公園」の敷地の一角に建っています。備長炭は梅干しと並び紀南を代表する産物の一つですが、この公園ほどの規模で展示・顕彰施設、研修施設、生産施設までを総合的に備えた施設は他にありません。その公園の入り口に位置し、訪れる人の第一印象に大きな影響を与えるであろう店舗の設計に当たって、人の心に残る「住まい」に対する原体験を思い起こさせるようなものを再現したいと思いました。地元の人々によって運営され、手作りの懐かしい品物を扱うこの店舗にふさわしいと思ったからです。具体的には地域に残る農作業小屋をモチーフとし、中央に牛木、それに架かる小屋丸太、それらを支える太い柱、骨梁、母屋、垂木・・どの木材(構造材)もあらわしで(見えるように)組み上げられています。この地では馴染みの深い形態です。
この骨太で素朴な空間が、地元産品を扱うこの店舗のよき舞台装置であることを願っています。


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夢をカタチにする力−その01
新庄総合公園管理棟(平成14年竣工)

いかなるテクノロジーもアートも、地域の環境に適合していないならば、その地域に根づくことはできない。

建物を考える時この言葉は大きな意味を持ちます。この地に多く育つのは「杉と桧・樹齢40〜50・節あり並材」です。この地で主に工務を担当するのは地場の大工職です。
公共施設であればこそ、規模の大きい木造建築といえども集成大断面や特殊構造に頼ることなく、通常手に入る材料で通常の木組みにて建物を成立させ、姿勢に示すことは大事なことであろうと思います。
この建物は特に以下の事柄に留意して設計しました。
一.公園との一体感を持ち、当然のようにそこにたたずむ建物であること。
一.公園のテーマでもある「自然」に存在する材料にて構成されていること。
一.公園のイメージにマッチした「ひろびろ感、のびのび感」が表現できること。
これらを実現するために、紀州材、石、土を主な材料として、軒の出を十分に確保した切り妻大屋根にて建物を計画しています。本建物が狙い通りの性能を発揮し、長く人々に愛されることを願っています。

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紀州材を使った木の家、木造住宅、在来工法、民家型工法、地域密着型(和歌山県)、外断熱通気工法の住宅設計|一級建築士事務所 中村伸吾建築設計室
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