コラムcolumn

鉄骨造には鉄骨造の快適づくりがある。

  • 夢をカタチにする力 -その21
  • 上西薬局 (平成19年春竣工)
鉄骨造には鉄骨造の快適づくりがある。
  南紀白浜・・その中でも源泉のある湯崎というところは、潮の香りと温泉のにおいが立ち込めて、独特の雰囲気が味わえる所です。この地に鉄骨3階建ての店舗併用住宅を建てました。海・岩・砂浜・コンクリート・・などの地域を特徴付ける要素をモチーフとして、温泉街に馴染みが良く、景観をリードしてゆける建物になるようにと心がけました。
  住まい手からは、風通しが良く、西日をうまく制御できるように・・というのが一番の要求でした。鉄骨3階建ての建物で良好な室内環境を得るための手段は・・いつもの木造と同じ・・という訳にはいきません。室内仕上げに調湿・蓄熱の役目を果たす材料を使用することに変わりはないのですが、断熱・気密に対する考え方を木造とは根本的に変える必要がありました。木造では、湿気を通しやすい壁材を用いて、室内で処理が追いつかない湿気を屋外に放り出す算段をしますが、それが出来ないのです。そこで、風の通り道をしっかりと確保して、自然換気を最大限に利用し、その上で、足りないところを機械に助けてもらうことにしました・・断熱・気密はしっかりと・・これが今回の方法です。

 先日、竣工から1年以上経った夏の日に写真を撮りに伺いました。とてもきれいにお住まいなので驚きました。「住まい心地はどうです」と奥様に聞いてみたところ「電球の切れるのが早いので対策を考えたいが、快適に住まえて満足している」とのこと。大切に扱ってもらっている様子が一目でわかる住まいぶりに感謝の一日でした。

思いに忠実な住まいが、大きな満足を与えてくれる。

  • 夢をカタチにする力 -その20
  • 大きなデッキと暮らす家 (平成19年秋竣工)
思いに忠実な住まいが、大きな満足を与えてくれる。
家は3軒建たなければ満足のいくものは出来ない・・と、おっしゃっているのを耳にして残念に思うことがあります。もしかして・・あの建築雑誌の居間の様子が気に入ったので、ウチもあんなに・・お友達の家のキッチンが使いやすそうだったので、キッチンはこう・・外観は、あそこで見かけたあの家風に・・素人なので中身のことはよくわかりませんが、とにかく自分の思う通りに仕上げてもらいました・・こんな住まいづくりをされているのではありませんか?建物はそれぞれに独自のバランスで成り立っています。よく見えたり、使いやすかったりする場合には尚更そこにしかないバランスがあるものです。気に入ったものをつなぎ合わせてもフランケンシュタインのようなつぎはぎだらけの建物が出来るばかりで、納得できるものは出来ないでしょう。住まいづくりをするときには、欲しい住まいのイメージを明確にして、的確に表現し、オリジナリティあふれるものを造るようにしましょう。思い(コンセプト)に忠実な住まいが大きな満足を与えてくれるのです。

今回ご紹介する住まい手はアウトドアーでの活動が趣味のご家族です。休みの日にはキャンプやカヌー遊びに出かけます。お住まいも自然を感じながら暮らせるように・・と、ご希望でした。そこで、大きなデッキで室内と庭をつなぎ、中と外を一体に楽しめる工夫をしました。室内の間仕切りも最小限・・のびのびと生活できるよう心がけています。風と日差しと土のにおいを感じながら、快適な木の家の暮らしを満喫いただくことを願っています。

住まいは家族と共に成長する。

  • 夢をカタチにする力 -その19
  • オレンジランドの家(平成20年春竣工)
住まいは家族と共に成長する。
「住まい」は建物の竣工と同時に出来上がるものではありません。そこに住まう人の暮らしや思いがその建物を
「住まい」とするのです。私たちが住まいづくりを考えるとき、家族のあり方は大変重要な要素となります。たとえば、3人の子供さんをお持ちのご夫婦からは自動反応のように「子供部屋は3室必要・・」という要求が出てきます。しかし、今一度考えてみて欲しいのです。子供さんはおいくつでしょう?性別は?今は誰と誰が一緒に寝ています?個室が必要になるのはいつ頃でしょう?勉強はどこでしています?何をして遊んでいることが多いですか?ご結婚はされていますか?今後、同居をお考えですか?本当に子供部屋は3室必要でしょうか?・・私たちの廻りは確定しにくい事柄や、時と共に変化していく事柄であふれています。現在の情報で全てを決めてしまうのではなく、家族のあり方に合わせて姿を変えていく「家族とともに成長する住まい」が必要だと思うのです。当然、建物には不確定な要素に対応できるしっかりとした基本骨格が必要です。
  今回ご紹介する若い住まい手は、日々の暮らしを1階で全て済ませられるように工夫し、2階は今後増えるであろう家族の状況に合わせられるよう、一切の間仕切りをしないことを選択されました。工事中に早速家族が一人増えましたが、その子に個室が必要になるのは10年ほど先のことでしょう。まずは大きな部屋でのびのびと遊ぶことから・・。住まい手のご家族とともに、この住まいがこれからどの様に成長してゆけるのか、しっかりと見守りたいと思います。

基本が大切。

  • 夢をカタチにする力 -その18
  • 下万呂の家 (平成19年秋竣工)
基本が大切。
今回は、木の国Wood Designコンテスト2008で優秀賞をいただいた「下万呂の家」をご紹介します。この住まいでは基本に忠実な家づくりを心がけました。特に注意をはらったのは以下の3点です。 
● 先人の知恵に学ぶ家づくり
  現代住宅は室内における調湿と蓄熱の性能に決定的な弱みを持ちます。それを補うのが室内にあらわしで使う大量の木材と土塗り壁です。木と土の湿気と熱を蓄える性能は他の建築材料と比べても著しく優れ、効果は使用した体積にほぼ比例します。日差しの制御、開放的な空間構成、風の通り道の確保など、先人の知恵に学ぶ、地域の気候風土にあった家づくりで、過度の機械依存を防いだ良好な住環境の創出を目指しました。
● 環境共生 
  紀南においては、現存する人工林と如何に向き合うかが早急に対応を迫られる課題だと認識しています。具体的には樹齢50年前後の杉・桧の節あり並材を大量使用する方法を考える必要があります。この住宅はエンコウ板以外全て杉、桧の節あり並材で作りました。
● 経済循環
  地元材を使い、地元の職人に残る技量を基本とした在来工法(民家型構法)で家を建てます。豊かな地域づくりなくして一人一人の豊かなくらしはあり得ません。住まいづくりを通した地域の生き残りの方法を今一度考えてみたいものです
 

住まいづくりは,大切なものを見つめ直すことから始まる。

  • 夢をカタチにする力 -その17
  • 土間のある家 (平成19年夏竣工)
住まいづくりは,大切なものを見つめ直すことから始まる。
 目標のないものづくりでは充分な満足は得られません。たくさんの夢の中から的確な現実をつかみ取るための取捨選択がきちんと出来るコンセプトが必要です。今回ご紹介する住まい手のコンセプトは「季節を感じながら、家族それぞれのニーズにあった時間を過ごせる木の家」 音楽家のご主人と役者の奥様、バイク好きの息子さんと寝たきりのおばあちゃん。なるほどそれぞれに状況や楽しみ方が違います。とても個性的なご家族に玄関から続く大きな通り土間のある家を提案しました。住まいの中心を貫くこの土間がご家族の趣味のゾーンをある時は区切り、ある時はつなぎ止めます。土間には大きめの薪ストーブを据えました。吹き抜けを持つ60坪近いこの住まいをたった一台で暖めます。土間の床は蓄熱体。ストーブの熱を蓄えて火が消えた後もホコホコと一晩中室内を暖め続けます。
 理屈やファッションで住まい造りに取り組むと失敗をします。目先の利便性やあてがわれた価値観に頼ることなく、自分たちにとって本当に大切なものは何なのかを見つめ直すところから住まい造りを始めたいものです。

「思い通りの住まいが出来ました。薪ストーブも、時々音が聞こえすぎる吹き抜けもこの住まいにはなくてはならないものです。とても快適に過ごしています。」奥様の声は役者修行で鍛えたよく通る声です。大きく届いたその声を頑張ったご褒美にありがたくいただきました。

感受性を育む空間づくり。

  • 夢をカタチにする力 -その16
  • わんぱく保育所(平成17年秋竣工)
感受性を育む空間づくり。
わんぱく保育所から設計依頼を受けたのは2002年の秋頃だったと思います。伺ってみると関係者の方々が熱気あふれる議論をされていました。「自然をいつも肌で感じることが出来るように」「木のやさしさを感じながらみんなが家族のように育ちあえるように」「楽しく衛生的で安全に過ごせる保育所であるために」・・・木造建築、しかも民家型でいく・・木・土・石などの地域の風景を創り出す材料を用い、地域の先人達の住まい方に習って、風の通り、日差しの制御、蓄熱、調湿に留意した機械依存の少ない建物にする・・などの方針は必然のように決まっていきました。
構造材や杉厚板のあらわし使用が快適な室内空間を手に入れる上で効果的なことは体験済みですが、現行建築基準法の中では、住宅以外の用途や、住宅を上回る規模の建築物を木の良さを活かしながら建てることは容易ではありません。今回の設計に当たっては3つの要素が木の香り豊かな木造の保育所を可能にしました。
  ○ 竹小舞(エツリ)組土塗り壁の採用
  ○ 構造軸組の燃えしろ設計
  ○ 杉厚板、杉・桧化粧板の準不燃加工

当初は子供たちも少なかったのですが、今は欠員待ちが出るほどの人気で、元気な子供たちが走り回っています。多くの大人たちの思いのたけを詰め込んだこの木造園舎の中で子供たちがすくすくと育ってくれることを心から願っています。

古きをいかして新しきを創る。

  • 夢をカタチにする力 -その15
  • 稲成町 古民家の再生(平成19年春竣工)
古きをいかして新しきを創る。
築100年の古民家の再生例をご紹介します。古い建物を壊してこの際に新築を・・という話は良く聞きますが、今回の住まい手はご相談をいただいた当初から再生をご希望でした。住み慣れた家の基本を生かして床の段差、使い勝手、暑さ・寒さ、安全性などを改善したいということです。
100年の歳月は容赦なく住まいのあちこちを蝕んでいます。柱や梁などの基本骨格部分にさえ使用不能のヶ所はおよんでいます。技術的に解決出来る問題の他にも古民家を再生する場合にはどうしても納得いただかなければならない事柄もあります。一つは地震や台風などの力に対処する方法が違うことです。現代の多くの建物は外からの力にしっかりと抵抗する壊れにくい構造ですが、古民家はそれらの力を受け流すように出来ています。つまり、多少傾いたりすることで力を吸収し、結果的に人命を守る・・という構造なのです。二つめは、本格的な再生は新築するほどの費用が必要になるということです。

古民家の再生は古くなって価値が無くなったと思われている物に大いなる価値を見いだす仕事です。いくつかの障害を乗り越えて見事によみがえった住まいの放つ存在感と、住宅としての快適な諸性能は再生という大仕事に取り組む意義と価値を再確認させるのに充分なものでした。

「便利で貧しい今の家、不便で豊かな昔の家」という言葉を工事を担当してくれた工務店の社長から伺いました。「目の前にあるまだ使えるものを使うのは当然のことだ」という住まい手の言葉と共にとても印象深く心に残っています。

近くの山の木で家を造ることが 快適な住まいを創る近道になる。

  • 夢をカタチにする力 -その14
  • 紀の川市 南中の家(平成19年春竣工)
近くの山の木で家を造ることが 快適な住まいを創る近道になる。
この住まいは合併で出来た新しい町、紀の川市にあります。設計打合せの当初から、住まい手の原体験の中にある古民家の趣の家にしたい・・という事と、おじいちゃんの山の木で建てたい・・という二つの大きなご希望がありました。
住まい手の思いに沿って、南側に大きな掃き出し窓を持つ、開放的でつながりの良い間取りが採用されました。間仕切りは最小限にして、子供たちの成長やその時のニーズに合わせて区切りと使い道を考える、古民家の良さに学んだのびのびとした住まいです。室内には柱や梁があらわしで見えています。2階には真っ直ぐな天井板はなく、充分に断熱された屋根の野地板が勾配を持ったまま天井板を兼ねています。水廻りや多目的室などは桧の板張り・・もちろん、すべての木材はおじいちゃんの山から伐り出したものです。
おじいちゃんの山の木で建てる・・というのは、実はそんなに簡単なことではありません。商業ペースで大量に伐り出され製品にされた木材と、たった1件のためだけに伐りだされる木材とでは、そろえるための段取りや価格が大きく違うからです。

しかし、たとえ大変な苦労はしても、家族のつながりや思いを具体的なカタチに出来たことは幸運なことに違いありません。
今、私たちが建てる家の木は誰かのおじいちゃんが植えた木です。植えた人の思いが充分に生かされる家のあり方を考えたいものです。近くの山の木で家を建てることが得難い自然環境の保全に貢献するだけでなく、,快適な住環境を手に入れる近道になるのですから。

価値観、素材、技・・・ 作り手の思いを受け止め、新しい命を吹き込む。

  • 夢をカタチにする力 -その13
  • 和歌山市 府中の家の改修(平成19年春竣工)
価値観、素材、技・・・ 作り手の思いを受け止め、新しい命を吹き込む。
このところ、古民家の改修や再生の機会に出会うことが多くなりました。地域の気候風土に適した住まいを、古くなったからといってただ取り壊してしまうのはもったいない限りです。構造がしっかりとしているものなら、現代の住まい方にも充分に耐えられるだけの性能を与えて、新しい命を吹き込もうという試みに積極的に取り組むべきです。今回ご紹介する住まいは和歌山市で取り組んだ古民家の改修の例です。
これまでの改修は、古い部分を新建材で覆い隠し、せっかくの大きな空間を個室に区切る・・安直で見た目の目新しさを追い求めたようなものが大半でした。しかし、それでは古民家本来の良さを充分に引き出し、現代の住まい方に適した新しい住まいを創り出すことは出来ません。深い軒の出や風通しの良い間取りを生かしながら、地域に適した断熱・気密性能の床・壁・屋根で建物全体をすっぽりと包み込み、間仕切りや天井はむしろ取り払って、丸太や木組みや土壁が創り出す表情ゆたかで、機械依存の少ない、のびのびと暮らせる住空間を創り出すことが大切なのです。

たくさんのメディアを通じて最新の住宅情報が提供されていますが、新しい物だけが良いもの・・だとは限りません。 
身近な住文化を見つめ直した時に、古民家は今までとは違う意味合いを持って私たちの前に現れることでしょう。2000年の永きをかけて顕彰されてきた先人たちの知恵を生かすことは、私たちの快適生活の大きな助けになるばかりでなく、地域をかたちづくるアイデンティティーにもなっていくのです。

快適な住まいを造る方法は、 先人の知恵が教えてくれる。

  • 夢をカタチにする力 -その12
  • 白浜町 マーメイドタウンの家(平成17年春竣工)
快適な住まいを造る方法は、 先人の知恵が教えてくれる。
今回は 「木の国・Wood Designコンテスト 2007」で優秀賞をいただいた「白浜町 マーメイドタウンの家」をご紹介したいと思います。
住まい手は50代のご夫婦。以前は大阪にお住まいでしたが、子育てを終えられ、この地に引っ越してこられました。「ゆっくり、のびのびとした生活がしたい」と南側に大きく眺望が開けた敷地を用意され、「住まい心地の良い木の家を建って欲しい」とご希望でした。
現代住宅は、室内の調湿性能と蓄熱性能に決定的な弱みを持ちますが、この住まいでは、それを補うのが室内にあらわしで使う大量の木材と土塗り壁です。木と土の湿気と熱を蓄える性能は他の建築材料と比べても著しく優れ、効果は使用した体積にほぼ比例します。日差しをうまく制御する低く深い軒の出、上下左右につながる開放的な空間構成、風の通り道の確保など、住まいの環境づくりを先人の知恵に学んでいます。

地域の気候風土にあった家づくりが、過度の機械依存を防ぎ、住まい手の健康生活を手助けするのです。住宅産業に創り出された安直な価値観に頼ることなく、住まいづくりの方法を今一度考え直してみたいものです。
この冬に住まい手から「朝1時間ほど暖房器具を使う。後は囲炉裏と陽差しで充分暖かい」とお褒めをいただきました。「木の国の家推進委員会」の作品でもあるこの住まいが賞をいただいた事と合わせて二重のよろこびです。

木の特性をいかし、 柔軟で豊かな構想力を発揮する。

  • 夢をカタチにする力 -その11
  • 田辺市 上屋敷の家(平成18年秋竣工)
木の特性をいかし、 柔軟で豊かな構想力を発揮する。
今回ご紹介させていただくのは、市内上屋敷に建つ住宅です。30代のご夫婦と三人の子供、それにご両親家族の「二つの生活」を一つの「住まい」に統合した二世帯住宅です。それぞれの世帯が階を隔ててのびのびと暮らせること、気持ちの良い陽差しと風が入ること、そして住まい心地の良い「木の家」であることの条件が出されました。
間口が狭く奥行きの長い旧市街独特の敷地形状をしていることから、太陽と風を建物の中にどう取り込むかが大きな課題となります。そして、2階に上がった家族に「地に足をつけた感覚」を創り出すことが必要です。 
そこで、建物の中央に中庭を配置し、そこを囲むようにして陽差しや風通しを確保する計画にしました。さらに、2階の寝室や居間の前に紀州材で大きな人工地盤(木製のデッキ)を造り、そこに掃き出し窓を並べています。2階にいながら1階と同じ感覚の生活が送れる工夫です。

心地良い冬の陽差しに満たされた居間につながる木製デッキは、室内空間に拡がりを加えるだけでなく、遊び場や洗濯物干し、時にはビヤガーデンや焼き肉パーティーにまで使われることを想定しています。
工夫しだいで多様な対応を見せる「木の家」は、快適で機械依存の少ない室内環境を積極的に創り出したい時や、感情豊かな空間を構成したい時には、ますます必要性を増すであろうと思っています。

温故知新 良き伝統に、住まい手の要求と時代の息吹を吹き込む。

  • 夢をカタチにする力 -その10
  • 大阪 茨木の家(平成17年春竣工)
温故知新 良き伝統に、住まい手の要求と時代の息吹を吹き込む。
大阪北部、万博公園の少し手前、近畿自動車道を一本山側に入った情緒豊かな桜並木に面する住宅街に敷地はあります。住まい手は二人の子供を持つ四〇代のご夫婦です。旧家に育った御主人の原体験から、木の家の良さを良く理解され「家を建つなら木の家にしたい」という思いを強く持っておられました。ところが、マンションや工業製品化された住宅の多い大阪北部では、ちょうどニーズに合う設計者や工務店が見つからず随分とご苦労されたようです。住宅雑誌で当事務所の作品を見つけられ、木材屋さんを経由して最初の連絡が入りました。
打ち合わせはスムーズに進んだのですが、あまり広くない敷地で多くの要求を実現するのは大変な作業でした。特に日差しの制御は工夫を凝らした所です。耐久性を考えると軒先は少しでも長く出したいところです。しかし、そうすると隣が建て込んだ住宅街では光を室内に取り込めなくなります。

そこで、硝子張りの軒先を提案しました。冬場はたくさんの日差しを取り込み、夏場には簾の様なもので抑制します。ベランダの床は光を1階に導くためにグレーチングにしています。建物の工夫と生活の知恵で四季を通じて快適な部屋が1階にも2階にも出来上がりました。 
柱・梁の通りをしっかりと組み上げた木造民家型構法、杉厚板とエツリ壁の家が都会の真ん中に出来上がりました。 受け継がれてきた良き伝統と、現在住宅が備えるべき諸性能と、住まい手の要求が一つになった新しい「住まい」です。 ご家族にかわいがられながら、ご家族を守り続け、いつの日か子供たちの「住まい」の原風景となることでしょう。

木で建てることの意義 「木の家」に住む恩恵を見つめ直す。

  • 夢をカタチにする力 -その09
  • 花子先生の家(平成16年初夏竣工)
木で建てることの意義 「木の家」に住む恩恵を見つめ直す。
旧田辺市街の中央部、田辺税務署の東隣に今回の敷地はあります。住まい手は私が中学時代に教えて頂いた恩師です。最初の依頼は、現存している軽量プレハブ造りの建物を改装したいというものでした。しかし、決まった規格で工場制作される軽量プレハブ造りの建物は現場での変更に対応できません。窓一つ動かすことが容易ではないのです。それでは・・と新築を決意されましたが、当初は提案させて頂いた「木の家」には抵抗感があるようでした。なるほど、勾配のある天井や、柱や梁などの基本構造がそのまま「あらわし」で室内に見えている家は今は一般的ではありません。戸惑っておられる住まい手に、「木の家」の良さを説明しながら、幾つかのプランを提出し、何軒かの見学もした上で判断いただき、出来上がったのがこの住まいです。
骨格は基本を大事に柱と梁の通りをしっかりと組み上げた木造民家型。

湿気を調節したり、熱を蓄えたりする木材の特性が生きるようにと、室内に見えるように使った「あらわし」構造。 家全体をすっぽりと外断熱の通気工法でくるみ、大きな吹き抜けを造りました。冬場にはその吹き抜けから暖かい陽が差し込みます。心配していた暖房も大きいめのガスストーブ1台で住まい全体が暖まってしまうそうです。
住まい手にしてみれば「木の家」に住まうなど、思いも寄らない事だったのかもしれません。先日、2回目の冬を迎えた住まい手から「通風も採光も良好、快適に暮らしてるよ。」と声をかけて頂くことが出来ました。大きな責任を果たせたことにひと安心しています。

調和のあるところに完成あり。敷地・気象・暮らし・素材・・・ 全体を踏まえ、調和をつくりだす。

  • 夢をカタチにする力 -その08
  • 狐島の家(平成18年冬竣工)
調和のあるところに完成あり。敷地・気象・暮らし・素材・・・ 全体を踏まえ、調和をつくりだす。
今回の敷地には当初80坪を超す立派な家が建っていました。数寄屋風の見事な木造建築物でしたが、築80年を経たことによる傷みと、現代の住まい手が要求する住宅としての性能(断熱、気密、耐震、使い勝手など)を満たすことが出来ないために建て替えることになったのです。住まい手の要望は「大きな庭を生かした、おおらかで季節感の豊かな家」「4人家族が暮らすのにちょうど良い大きさ・使い勝手の家」というものでした。
そこで、26坪ほどの平屋に切り妻の大屋根を掛け、大きな屋根懐にロフト感覚の2階居室を設けるプランを提案しました。構造体や屋根形状が単純な上に、基本的には平屋なので木材や外壁材などが大幅に節約できます。家族が集う大空間を用意して、そこに台所や水廻り、個室などがつながっています。また、その部分を吹き抜けにして2階の個室ともつながっています。写真は2階のホールから家族室を写したものですが、4間つながる障子を開け放つと大きく庭に解放される仕掛けです。ヒートショック(急激な温度変化が体に及ぼす影響)や結露をなくし快適に住まうコツの一つは空間を小刻みにせず大きく使うことです。

通風や断熱・気密などに対する対応を部屋単位でなく家全体で考えることが大切です。その上で、必要に応じた区切りを考えていくことで個性的な使用も可能になるでしょう。完成したばかりで、まだ住まい手の暮らしの入っていない部屋ですが、あまり寒々と感じないのは、木や土や紙などの空間を構成する材料の持つ力のおかげでしょうか。

基本なくして応用なし。 住み継げる「資産」づくりを。

  • 夢をカタチにする力 -その07
  • 中屋敷の家(平成18年夏竣工)
基本なくして応用なし。 住み継げる「資産」づくりを。
旧田辺市街の中央部、田辺市役所の北側に位置する住宅地に今回の敷地はあります。40年程前に新築された木造2階建の建物に住んで居られるお母様の所に、息子さんご家族が同居する為に、部分的な増築と改装を施しました。
増築と改装・・リフォーム工事は今注目されている工事の一つですが、しっかりとしたものを造るのは簡単なことではありません。特に、ここ30~40年の建物では注意が必要です。それは、基本構造が後の増築や改装を考慮したものになっていないことが多いからです。時に「この家の設計は私がした」とおっしゃる住まい手の方をお見かけします。
世界に名だたる日本の大工技術は、素人間取りでも「家」として完成させてしまいますが、そのことが今大きな問題を創り出しています。設計に対する知識と理解と経験の不足が、耐用年数の極端に少ない「住み継げない住まい」「増改築を許容しない住まい」を生み出してしまったのです。

心配しながら旧家屋の調査に入りましたが、天井をめくった瞬間にそれが取り越し苦労であることが判りました。見るからに立派な木材が木造建築の基本に則って理屈通りに組み上げられていたからです。
「当時の住まい手」と「造り手」の見識が残してくれた骨格は「新しい住まい手」のニーズを見事にのみこんで、新たな寿命をまっとうすることが出来ます。今回の増改装工事は、住まいの再生に立ち会えた得難い機会でした。

「居は気を移す」 豊かな心を育む住まいづくり。

  • 夢をカタチにする力 -その06
  • 和歌山市島橋 西ノ丁の家(平成18年早春竣工)
「居は気を移す」 豊かな心を育む住まいづくり。
JR和歌山駅から和歌山城前をすぎて西に真っ直ぐ進むと紀ノ川大橋、橋を渡って10分ほど走ると左手が島橋。今回敷地は古くに開発されたこの造成地の中にあります。
初めて打ち合わせに伺った時には、ここに平屋の木造住宅が建っていました。南向きの配置にもかかわらず、あまり明るさを感じなかった印象があります。住まい手のご希望は「陽光がふりそそぎ、気持ちの良い風が通る家。」「家族が集えるリビング・ダイニングと、お菓子造りが出来るキッチンのある家。」というものでした。 
1階にはテラス、2階にはベランダ、屋上には屋上デッキを配置し、各階の南側に思い切り大きな掃き出し窓を用意しました。この大開口を通じて陽光と風をいっぱいに取り込む企てです。1階はキッチンを中心に発想・・・コンロとシンクを分離し、それぞれの使い勝手に応じて配置しています。
コンロは外壁に向かい実作業中心、シンクはダイニングも兼ねた大部屋の中心に位置し、家事仕事や菓子作りをしながら家族とコミュニケーションが取れる配置です。

2階は南側に板の間、多目的室を挟んで北側に寝室がつながります。北側の部屋は暗くなりがちですが、この住まいでは吹き抜け部の窓からまぶしいくらいの陽光が寝室に入っていきます。写真のはしごを登っていくとロフトから景色の良い屋上デッキに出ます。構造は骨太の民家型工法。内部には柱や梁をはじめ床板となる杉の厚板などが「あらわし」で見えています。
竣工後、御主人の海外勤務が決まりました。帰ってくる時には小さなご家族がもう一人増えてにぎやかになる予定です。その時まで木の香りいっぱいのこの空間は色あせることなくご家族を待っていることでしょう。

ふるさとの山の恵みを活かし、地域らしい住まいを創ることが、 快適な暮らしにつながる。

  • 夢をカタチにする力 -その05
  • 野中の山の木で建つ家(平成17年冬竣工)
ふるさとの山の恵みを活かし、地域らしい住まいを創ることが、 快適な暮らしにつながる。
和歌山市の北側に造られた造成地、今も拡大を続けるこの団地の一角に今回の敷地はあります。南、北、西の三方向を道路に囲まれる約70坪の土地に、住まい手が生まれ育ったふるさと「旧中辺路町野中」の山から切り出した木で「住まい」を創るのです。
北側に駐車場、玄関アプローチ、設備配置スペース等を集め、建物形状を工夫して南側にとれる限りの空間を残しました。構造は骨太の民家型工法。内部にはもちろん柱や梁をはじめ床板となる杉の厚板などが「あらわし」で見えています。軒先を充分に出して日差しの制御をすること、風の通り道を工夫すること、大きな空間(空気量)を確保して断熱は家全体で考えること・・などの基本に加え、今回建物の大きな特徴は自前の大量の木材で室内に調湿体・蓄熱体を確保できたことです。機械の効率に囚われるあまり、気密や部屋単位の断熱に目を奪われ、結局は機械なしでは過ごせない現代住宅で決定的に不足するのが調湿・蓄熱の性能です。通常の2倍の木材量を「あらわし」で使用した効果はすばらしく、この冬にはどんなに寒い日も暖房器具なしで室内温度12度を下まわることはなかったと聞いています。

上棟の日にお祝いにみえたご主人のお父さんが「小学生の時に、亡くなった私の父と一緒に植えたあの木が息子の住まいになる・・時の流れと人のつながりを意識する機会は少ないが、こうして目の当たりにすると少なからず感動する。」そうおっしゃっていたのが印象的でした。

住まい手の思いと行動が、満足いく住環境を創り出す。

  • 夢をカタチにする力 -その04
  • 白浜町椿 橘新田の家(平成16年竣工)
住まい手の思いと行動が、満足いく住環境を創り出す。
計画に当たってご主人から以下のような要望を頂きました。一.百年もつ木の家  二.シンプルで天災に強い家  三.集いやすい家  四.バリヤフリーの家  五.風の通る家・・・それらの実現のために、木造民家型の木組にてしっかりとしたグリッドの骨格を組み上げ、真ん中に大きな居間を取り、そこに2間の掃き出し窓を取り付けて上下左右に空間をつなげこの家の核とする計画を提案しました。ご近所さんが集える縁側もここに付きます。又、各所につながるこの空間は四季を通じて風の道ともなります。床・壁・天井には杉皮を利用した断熱材を使い外断熱通気工法としました。
今ひとつの着目点は「住まい手との協働」です。いつのまにか「住まい手」のことを「消費者」と呼ぶようになりましたが、自らの「住まい」をつくり、家族の生活を創造していく「住まい手」は「生産者・クリエイター」であるべきです。「私たちを満足させなさい」の「消費者」のポジションからは快適な住まいのヒントは見えてきません。人は、与えられるものでは充分な満足を得にくいからです。

今回の「住まい手」は自分たちに出来ることはみんなやってしまいました。結果、力を尽くした満足感を得、地域との融合を果たし、低価格まで手に入れました。
建物が完成してからも収納、座卓、生け垣、庭と作り続けています。住まいづくりを自らの手で行う姿勢が満足のいく「住まい」を創り出すコツといえるでしょう。

守・破・離・・・ 受け継いだものを守り、現代にあうものを取り入れ、オリジナリティを創り出す

  • 夢をカタチにする力 -その03
  • ほほしかや陶器(平成元年竣工)
守・破・離・・・ 受け継いだものを守り、現代にあうものを取り入れ、オリジナリティを創り出す
田辺市本町にある老舗の陶器店の建て替えです。ご主人には、この機会にブランドとしての「ほしかや陶器」をより定着させたいという夢があったようです。住まい手に世代を超えて大事にされてきた旧建物の趣を素直なかたちで残し、それをモチーフとして夢の実現をはかりたいと考えました。全体をセットバックさせて前面に駐車場を取り、既存の中庭をそのまま新しい建物に取り込んでいます。これはご主人のご希望でもありましたが、結果的に新築建物をバランス良く成り立たせる大きな要素となりました。玄関の縁石には旧建物を支え続けた基礎石、階段の段板には旧建物の丸太梁を整形したものを再使用するなどして、全体イメージの継承と共に材料も受け継いでいます。住み慣れた懐かしいものを新しい家にいかすのは、住まい手や環境に対する配慮だけでなく、新しく作ったのではできない歴史の重みや風情を新築建物にまとわせるという効果もあります。

これらを実現するために、紀州材、石、土を主な材料として、軒の出を十分に確保した切り妻大屋根にて建物を計画しています。本建物が狙い通りの性能を発揮し、長く人々に愛されることを願っています。

地域の魅力は、その営みの中から生まれ、育まれるもの。

  • 夢をカタチにする力 -その02
  • 紀州備長炭記念公園店舗(平成9年竣工)
地域の魅力は、その営みの中から生まれ、育まれるもの。
この店舗は田辺市秋津川の「紀州備長炭記念公園」の敷地の一角に建っています。備長炭は梅干しと並び紀南を代表する産物の一つですが、この公園ほどの規模で展示・顕彰施設、研修施設、生産施設までを総合的に備えた施設は他にありません。その公園の入り口に位置し、訪れる人の第一印象に大きな影響を与えるであろう店舗の設計に当たって、人の心に残る「住まい」に対する原体験を思い起こさせるようなものを再現したいと思いました。地元の人々によって運営され、手作りの懐かしい品物を扱うこの店舗にふさわしいと思ったからです。具体的には地域に残る農作業小屋をモチーフとし、中央に牛木、それに架かる小屋丸太、それらを支える太い柱、骨梁、母屋、垂木・・どの木材(構造材)もあらわしで(見えるように)組み上げられています。この地では馴染みの深い形態です。
この骨太で素朴な空間が、地元産品を扱うこの店舗のよき舞台装置であることを願っています。