コラムcolumn

本当の快適さとは・・・。

  • 夢をカタチにする力 -その40
  • 薪ストーブの家 (平成22年春竣工)
本当の快適さとは・・・。
 冬場は、陽差しが気持ちよく入って、暖房機などなくても暖かく暮らせる家が理想です。しかし、現実はそういうわけにもいきません。エアコンなどは頭がボーッと熱くなるばかりで足元が寒い・・・と、おっしゃる方も多くいます。心地よい暖かみを得るコツは住まい全体をホッコリと暖めてしまうことです。
 私の設計する住まいでは、薪ストーブを選択される方が多くいます。圧倒的な火力で住まい全体を暖めます。もちろん建物の方にも工夫が必要です。しっかりとした外断熱ですっぽりと建物を包み込んでしまいましょう。横方向だけでなく、縦方向にも暖気の通り道を確保しましょう。せっかくの暖気を蓄えることの出来る室内仕上げを施しましょう。
 家の中、どこにいても暖かい空間は思いのほかの快適さを提供します。火は家族の交流を促し、自然と集う空間がそこに出来上がります。薪の調達や火の始末など、やっかいなことも多いのに、皆さんが暖房機として薪ストーブを選択される理由も分かるような気がします。
 また、最近では床暖房や深夜電力型の蓄熱暖房機なども採用されはじめました。いずれも、快適に冬場を過ごすためには効果的な器具です。

 効率を最優先したつもりでビニールクロス貼りの小さな部屋を連ねてみても快適な暮らしは望めません。ここは一つ立ち止まって、家族にとって本当の快適とは何かを考えてみましょう。選択肢は色々とあるものです。

住まい手はクリエーター。

  • 夢をカタチにする力 -その39
  • 福島の家 (平成21年秋竣工)
住まい手はクリエーター。
 一昔前・・・お客様をお迎えする玄関や客間などはとても大事にされてきました。おもてなしの心を表現し、そのお宅を代表する「顔」の役目を果たすために、条件のよい南や東に陣取り、そのくせあまり活用されないでいたのが現実です。
 しかし、この住まいでは、玄関土間を大きくとって、直接居間空間につながるように設計しています。玄関はおもてなしの場、家の「顔」ではありますが、同時に居間空間の土間コーナーとしても機能するわけです。ある時には鉢植えの緑を持ち込み家族の和みのコーナーとなり、ある時には自転車置き場となり、ある時には趣味のスペースとなるのです。こうすることで住まい手の暮らしの幅が大きく広がり、空間活用に様々な可能性がひらけます。
 住まいのカタチは、敷地条件や家族構成や予算などの多くの制約の中から、本当に大事な事柄を丁寧にひろいあげるところから生まれます。家ってこんなものでしょう・・・というあてがわれた価値観に縛られて、ヤドカリのようにそこに家族の暮らしを押し込むことより、例え少し世間とは変わっていても、徹底的に家族・住まい手を中心に発想した、住まい手が積極的に参加した家づくりをすることをオススメします。ご本人でなければ決断できないことが家づくりにはたくさんあるのです。

発見のある住まいは楽しい。

  • 夢をカタチにする力 -その38
  • 片流れ屋根の家 (平成18年秋竣工)
発見のある住まいは楽しい。
 ご夫婦にはカヌーという共通の趣味がありました。アクティブなご夫婦の希望は、カヌーとバイクの格納庫を併設した住まいであること。そして、合理的で使いやすくできていること。そこで、1階には格納庫と共にワンルーム形式の大空間と水廻りを用意し、2階に大きなベランダを持つ個室群・・・という住まいを提案しました。1階のLDKを一つにした大きな空間で特に気をつけたのが台所です。洗面・脱衣などの奥様の家事動線を短く計画し、台所廻りを行き止まりにしなかったのが特徴です。
 対面形式のキッチンは最近の流行らしく、奥様方の希望にはよく登場します。家事をしながら子供達の様子が見えたり、一人きりで家事の仕事をしているという疎外感が緩和されるのが人気の要因でしょうか。しかし、対面形式のキッチンでは家事動線はあまり短くはなりません。それは、行き止まりがあるからです。
 キッチンセットに限らず、住まいの中の動線は行き止まらないように・・・グルグル回れるように計画することをオススメします。このような住まいでは、思わぬ所に居心地の良い空間を発見したり、予想もしなかった使い勝手に出会うこともしばしば・・・いつまでも色あせない我が家で、楽しく生活することが出来るでしょう。

空間を、おおらかに楽しむ。

  • 夢をカタチにする力 -その37
  • かつらぎ町 大きな玄関土間の家 (平成23年春竣工)
空間を、おおらかに楽しむ。
 私たちには、住まいの中を小さく区切りそれぞれの空間に名前を付けて、用途を限って使おうとする習慣があります。しかし、実際の生活ではそんなに明確に使い勝手に区切りがあるわけではなく、時々の気分によってフレキシブルに、使いやすい様に使っている事が多いようです。あまり期待も意図もしていなかったけれど、この空間はこんな事をするのに気持ちの良いところだ・・・などといった発見も日常的に起こるものです。
 大きな玄関土間の家では、それぞれの部屋の区切りをおおらかにとらえ、空間に連続性を持たせることによって、住まい手に自由な使い勝手を提供し、住まい全体が無駄なく楽しく活用できるように設計しました。特徴的なのは玄関から居間に続く大きな土間です。ここは、玄関の延長としてお客様を迎えるのみならず、ある時には書斎になり、ある時には遊び場となります。土間の突き当たりには薪ストーブが据わり、人の集まる居間空間のシンボルとなっています。2階に続く階段もここに取り付けられ、吹き抜けと共に上下の空間をつなぐ役目を果たします。また、南東の大きな掃き出し窓には木製のデッキを付けて、室内と屋外の空間が柔らかくつながるようにしています。

 設計者として、内包する空間や装置、そしてそれらを取り巻く環境のすべてで、いつまでも住まい手の快適な暮らしを支えられる住まいであって欲しいと願っています。

紙障子は、日本の知恵。

  • 夢をカタチにする力 -その36
  • 橋本の家 (平成22年春竣工)
紙障子は、日本の知恵。
 住宅に必要ないろいろな性能の中でも、このところ注目されるのは、断熱性能を中心とした省エネの性能です。特に最近では機械効率を優先するあまり、高気密・高断熱がもてはやされる風潮にあるようですが、機械の効率を云々する前に、機械に頼らない生活のあり様を考えてみることの方が大切ではないかと思っています。
 お日様の恵みをいっぱいに受けるには深い軒の出と大きな開口(窓)が必要です。心地よい風を住まいに招き入れるためにも同様でしょう。しかし、大きな窓は、こと断熱性能という角度から見ると、ウイークポイントにもなりかねません。屋根・壁にしっかりとした断熱性能を持つ住宅では、ガラスで遮るだけの窓の断熱はいかにも脆弱でしょう。そこで必要になるのが、窓の断熱性能を補うカーテンなどの補助部材です。私のオススメは紙障子。和紙一枚でそんなに・・・と思われるかもしれませんが、機密性の高い紙障子の効果は想像を超えて優秀です。
 橋本の家の住まい手は、大きな窓にはすべて紙障子を付けることを選択されました。存在感のある杉厚板の床とも良くマッチし、二度目の夏を迎えるご家族を優しく包み込んでいます。

快適な空間を造るには、基本を大切にすると良い。

  • 夢をカタチにする力 -その35
  • 上野山の家 (平成21年冬竣工)
快適な空間を造るには、基本を大切にすると良い。
 人と環境にやさしい自然素材を用いる。軒を低くし、季節によって変化する陽差しをしっかりと制御する。風の通り道をデザインする。そして、蓄熱・調湿効果のある材料を用いる・・家づくりの基本は、いつの場合も大切にしたいものです。
 たとえば南向きの開口部・・夏の陽差しは省エネガラスでも遮る事が出来ます。しかし同時に、冬場の大事な陽差しも遮ってしまうことになるでしょう・・夏の陽差しを遮り、冬の陽差しを取り込むために深い軒の出は大切です。小さく区切った機械効率の良さそうな部屋で空調機を回せば、そこそこ快適な空間は造れます。ですが、心地よい季節の風と共にある暮らしを営むことは難しいでしょう。室内の温度・湿度も機械で制御することが出来ます。ところがこの場合にも、快適なのは機械が動いている間だけ、止まればすぐに不快な空間を体験することになるでしょう・・温度・湿度を状況に応じて調節する機能を有する木や土などの材料は捨てがたいものです。
 今回ご紹介する住まいは竹小舞の土塗り壁を採用し、大きな開口部には断熱性能も高く、外の景色も楽しめる雪見障子を建て込んでいます。基本に忠実な家づくりを実践された住まい手は「冬場も暖かくて快適だったよ。」と、笑顔で住まい心地を語ってくれました。

住まい手からの便り・・・太地より、22年冬。

  • 夢をカタチにする力 -その34
  • 太地町 丸窓のある家 (平成22年春竣工)
住まい手からの便り・・・太地より、22年冬。
前略・・季節もすっかり冬に近づいてきまして、家もずいぶんと陽が入ってくるようになりました。それはそれは明るく、暖かいです。今日などは室内は22度くらいありまして、半袖でも過ごせるくらいです。夏芝が未だに枯れずに緑を保っているところをみると、今年の気候や土地柄もあるのでしょうが、ありがたいです。床暖房は15度以下と決められて、なかなかつけてもらえませんが、朝方15度になったのは2回ほどです。14度はありません。・・中略・・近頃のお気に入りは、頼んでつけるようにしていただいたスピーカーからジャズを流しながら、家事をしたり、食事やお茶をすることです。なんだかリッチになった気分になります。友達などに家を見に来てもらうと、木の香りから心地よさ、細かな配慮まで、とても感心してくれて、いいねぇと喜んでくれて、私たちもご機嫌です。ジャズを流しながらお茶をして雑談などすると、すっかり心和んで、皆さんゆっくりしていきます。カフェみたいとの感想で、私たちもそんな気分で毎日を過ごしています。・・中略・・ヤマボウシは土地柄ほとんど紅葉せずに散ってしまいましたが、少し残っていた葉っぱが紅葉し、丸窓から見える景色がまた風流です。南天は数個実をつけています。ウバメガシは、たくさん実ったどんぐりが一昨日の嵐で、随分と落ちてしまいました。山茶花は、つぼみはたくさんつけているもののなかなか咲いてくれません。暖かいからでしょうか?

 何かとお忙しくお過ごしのことかと思いますが、また是非こちらに来られる機会がございましたら、来ていただけると嬉しいです。いくつか写真も添付しますので、ご覧ください。
 年末で忙しい時期です。どうか御身体には気をつけてお過ごしください。

家が呼吸をすれば、暮らしはエコで快適になる。

  • 夢をカタチにする力 -その33
  • 山口の家 (平成22年春竣工)
家が呼吸をすれば、暮らしはエコで快適になる。
 住まい手と初めてお会いしたのは完成見学会です。
「人工的で結露のひどい現在の住まいには困っている、今度は住まい心地の良い木の家が欲しい・・」とのことでした。その後、頂いた家づくりのコンセプトは「自然素材の木の家と、緑あふれる庭で、子供たちがのびのび育つ環境作りがしたい。」というものです。
 まずは、古民家の骨格の考え方をそのままに、耐久性・経済性・可変性の高い民家型の基本軸組をしっかりと組み上げます。その上で、地域の要求する断熱・気密性能の床・壁・屋根を造りました。外張り断熱の通気工法で結露には特に強い構造になっています。木材は龍神材、仕上げの珪藻土はもちろん、断熱材まで、全てを自然素材で造り上げました。
 木の家で快適に住まうには、木の持つ調湿・蓄熱の性能を充分に引き出すことと、住まい全体で呼吸する仕組み造りをすることが必要です。冷気や暖気を良く蓄え、適度な湿度の空間づくりを心がけることが、エコで快適な空間を造るコツと言えるでしょう。

 夏前に植えられた緑もすっかりと根付いて生活に彩りを添えています。秋には、深夜電力を使う蓄熱暖房機が付きました。空気を汚すことなく輻射熱でゆっくりと暖められた室内は、寒い冬にも穏やかな目覚めを助けてくれることでしょう。庭の芝生の一角に置かれたブランコに乗る子供たちの笑い声がいつまでも続く住まいであって欲しいと思います。

地域と共に、ゆたかに暮らす。

  • 夢をカタチにする力 -その32
  • 中三栖の家 (平成21年夏竣工)
地域と共に、ゆたかに暮らす。
 夏涼しくて冬暖かい、清々しい空間を内包した、団らんのある家・・これが住まい手の欲しい家(コンセプト)です。
 初めて敷地を訪ねた時、住まい手から頂いたコンセプトをカタチにするには格好の場所だと感じました。北側道路の東西に長い敷地、一段下がった南側は梅畑、その緑に遮られて近くに人工物はあまり見えず、遠景には熊野古道につながる山々が見えました。西側にはすでに隣家があり、夏の西日や冬場の北西風をやわらげてくれます。大きいめの敷地は「家庭菜園がしたい・・」というご希望を叶えるだけの余地を残しています。
 基本骨組は、後の増改築に対応する古民家の良さを生かした民家型。構造材をはじめとする全ての木材は厳選した紀州材です。屋根・壁は外張り断熱の通気工法、結露に縁がなく温度差の少ない室内環境を目指しています。仕上げには杉・桧の無垢材、珪藻土、和紙、石などの自然素材を用いて、住まい手にも環境にも優しい空間づくりを心がけました。家族の団らんの中心は住まいの中央に設けた居間・食堂の大空間。南側には四間続きの大きな開口部を持ち、光と風を、ある時は思い切り受け入れ、ある時はシャットアウトしながら季節感のある快適な生活を助けます。
 力強くて決断力に富み包容力の豊かなご主人と、良く気の付く優しい奥様、そしてかわいい子供たちとの家づくりは楽しい共同作業でした。

 竣工から1年が過ぎた中三栖の家では玄関先の緑も少しずつ育ち始めています。住まいの廻りの緑が増え始めると建物の表情も豊かになり、暑さ寒さをはじめとする自然の環境もやわらぎます。緑の畑を渡るさわやかな風をいっぱいに受けて、いつまでも続くご家族の団らんを、優しく包み続けられる住まいであることを願っています。

強い思いがカタチを創る。

  • 夢をカタチにする力 -その31
  • 土間ギャラリーの家 (平成21年春竣工)
強い思いがカタチを創る。
 満足度の高い住まいを造るにはコンセプトが大切・・というお話は度々してきました。今回ご紹介する建物はご希望をストレートにカタチにした、とても個性的なお住まいです。
 住まい手のご趣味は木工の美術作品を集めること。三桁に及ぶ収集品を展示するのにふさわしい住まいを造りたい・・というのがコンセプトです。
 素朴で力強い作品たちの邪魔をすることがないように、建物には過度の装飾を施す事は止めて、ただ素材の本物感を風合によって表現するように・・と心がけました。ほとんどの柱はあらわしとし、梁も可能なものは太鼓挽きの丸太梁としてあらわしています。大きな間取りに釣り合いがとれるように、そして展示スペースを稼げるようにと壁には1階半程の高さを持たせて漆喰塗りの仕上げにしました。床は表情のやさしい桧の縁甲板です。訪れる人たちを気負い無く受け入れやすいようにギャラリーは土間にしています。壁には力貫を取り付けて、重量級の展示物も心配なく壁面に展示できるよう工夫しましたが、とてもそれだけのスペースでは収めきることは出来ず、中2階や吹き抜け空間にまで作品があふれてしまうことになり、住まい全体がギャラリーの様相です。

 この住まいが、思いで深い展示作品たちを眺めながら、心ゆるせる仲間たちとのゆっくり流れる楽しい時間を、いつまでも心強く見守り続けられることを願っています。

木の家工房 Mo-ku(モーク)

  • 夢をカタチにする力 -その30
  • 木の家工房Mo-ku (平成22年春竣工)
木の家工房 Mo-ku(モーク)
 和歌山市楠本に建つ当事務所の常設ギャラリー「木の家工房Mo-ku(モーク)」をご紹介しようと思います。しっかりとした軸組フレーム(木の国スケルトン)を持ち、天然乾燥の木の良さを生かしたあらわしの民家型構法・・木、土、紙などの自然素材を使い、調湿性と蓄熱性にとむ建物自体が呼吸をする機械依存の少ない快適な木の家・・という基本は日頃提供している住まいと同じですが、今回はギャラリーという性格上特に趣向を凝らしたところもあります。
 一つは、「木の家」という言葉から多くの皆さんがイメージするであろう伝統和風の出で立ちから少し離れたものを狙ったことです。駐車場を取り込んで中2階を設定し、軽快な外観と、つながり感の強い室内空間を実現しています。
 二つめは、間伐で出てくる小径木を、斜めの丸太柱や厚板などとして積極採用し、近くの山との共存性能を高めたことです。小径木も、使い方と使い所を間違わなければ充分に役目を果たし、面白い表情を建物に与えてくれるものです。

 木の家は、モダンな外観も、落ち着いた外観も、たいていのデザインを許容し、ご家族の快適な生活に寄与する、先人が生み出した知恵の固まりです。Mo-kuは木の家の良さを充分に発揮し、これまであまり興味がなかった方にも受け入れていただけるように・・と造られています。お近くにおいでの際には是非立ち寄ってみてください。陽差しと、快い風に充ちた快適空間があなたをお待ちしています。

大切なものは、目には見えない。

  • 夢をカタチにする力 -その29
  • はぜはら整形外科クリニック(平成18年初夏竣工)
大切なものは、目には見えない。
 「木の家」の設計が多いのですが、最近は住宅だけでなく保育所や福祉施設などの設計をさせていただく機会も増えてきました。今回ご紹介する建物も、和歌山市松島に建てられた整形外科の診療所です。50代半ばの先生からのご希望は、スタッフには合理的でスムーズな動線を・・患者さんにはリラックス出来る癒しの空間を提供したい・・というものでした。
 基本構造は木造民家型、部屋の間仕切りに先行して、柱・梁組を2間グリッドでしっかりと組み上げます。平面計画に自由度が生まれ、診療部門の合理的な配置が可能になり、後の改造に対応出来る骨組みが出来上がりました。また、通常の木造平屋建ての建物では難しい、天井の高い待合い室や、大空間のリハビリ室も実現出来ました。壁の仕上げは珪藻土塗り、天井は和紙貼り仕上げです。診療部門の床は天然のリノリュウム、リハビリ室など水の心配のない部屋は無垢の唐松の床になっています。さらに、家具材料の合板から薬品の発散がないようにと、全ての家具を杉・桧の無垢材で制作しました。
 たくさんの人が集まる空間はメンテナンスなどを意識するあまり、無機質になりがちです。衛生面や合理性には十分に気を配った上で、利用者の気持ちの動きにも思い至りたいものです。白いものが混じりはじめた立派なおヒゲと、涼しげな目元の先生の診療所は、今日もやさしい空気に包まれていることでしょう。

住まいは、家族の思いをつむぐ場所

  • 夢をカタチにする力 -その28
  • たけくらべ柱の家(平成21年春竣工)
住まいは、家族の思いをつむぐ場所
 小さい頃の家族の思い出や地域の風景は、ひとどなりや情緒の形成に大きな影響を及ぼします。古民家の改装が脚光を浴びるのは、環境・経済などの要因以外にも、家族や地域のアイデンティティーの継承・・という側面も大きいでしょう。
 今回ご紹介する住まいは、古座川に建つ三世代の家族が住まう二世帯住宅です。新築建物ですが、これまで暮らしてきた住まいの気配を全く無くしてしまうのは淋しい・・という思いから、それぞれの住まいに馴染みある特徴的なものを残すことになりました。
 お父さん世帯に残したのは仏間まわりのしつらえです。欠かすことなくお世話してきた仏様は、この家に代々伝わってきたアイデンティティーそのもの・・年季の入った扉類を洗いにかけ、使い勝手もそのままに再現しました。
 息子さん世帯には「たけくらべ」の印が付いた古い柱を残すことになりました。新築のまだ白っぽい柱の中にあって、黒光りするひときわ存在感豊かなこの柱には、お父さんの懐かしい印から、お孫さんの真新しい印まで・・ご家族の歴史が刻まれています。
 建物には、後の改装に対応できる工夫と世代を超えて住み継げるだけのしっかりとした木組み(木の国スケルトン)を与えました。今はまだ小さな子供たちの、そのまた子供たちまでが、たけくらべをする様をあたたかく見守り続ける住まいであってほしいと願っています。

環境にやさしい家は、住まい手にもやさしい。

  • 夢をカタチにする力 -その27
  • 本宮の家 (平成20年夏竣工)
環境にやさしい家は、住まい手にもやさしい。
 住まい手のご希望は、自然とのかかわりを体験しながら、のびのびと二世帯で暮らせる「木の家」。家相に詳しい奥様と、以前は設計の仕事をされていたというお父様に助けられながら計画を進めました。大事にしたいのは景観を含めた周辺環境との共存、屋内と屋外の自然なつながり、自然素材による住まいづくりと機械依存を減らした快適な室内環境の創出・・など。
 南側の景観を生かし、陽差しを採り入れ、庭とのかかわりも多くとる・・自然を感じながら快適に住まうため、建物は敷地形状に沿って東西に長い雁行の形。開口は大型木製引き込み戸による大開口。すべて開け放てば5間の間がフルオープンになり庭と室内が直接につながります。風が気持ちよく吹き抜けるよう室内はあまり区切らないように心がけました。機械依存の少ない空間を造るには、住環境をパッシブな方向で組み立て直すことが必要だと考えています。現代住宅に最も欠けているのは室内の調湿と蓄熱の性能。それを補うのがあらわしで使う大量の木材と土塗り壁、そして石です。木、土、石の湿気と熱を蓄える性能は他の建築材料に比べると著しく優れています。

 環境に応じて湿気や熱を出し入れする呼吸する住まい。陽差しをうまく制御する低く深い軒の出、開放的な空間構成、風の通り道の確保など・・先人の知恵に学ぶ、地域の気候風土にあった家づくりが、過度の機械依存を防ぎ、環境にやさしく快適な住まいを実現します。

ゆたかで快適な空間は、効率を追求するだけでは生まれない。

  • 夢をカタチにする力 -その26
  • 陽だまりの家(平成19年冬竣工)
ゆたかで快適な空間は、効率を追求するだけでは生まれない。
 私の設計する住まいには、よく吹き抜けが付きます。そして、いつもこう聞かれます・・吹き抜けのある家は冬に寒くないの。私も決まったようにこう答えます・・断熱や気密を家全体でしっかりと考えれば大丈夫です。
 小さな部屋をいくつも造って、それぞれに個別の暖房や冷房を用意する方法は、機械効率が良く、住宅には適した方法のように思われがちですが、実はそうでもありません。実際には家族の孤立を進め、機械依存率を高め、ひどい時には温度差の異なる部屋間の壁内部で結露を招き、住まいの寿命を縮めてしまうことになるのです。さらに、最近ではヒートショックが問題になっています。これは、暖かい部屋から寒い廊下や便所、お風呂なんかに入った時に温度差で体調不良を起こす事故のことです。2007年には交通事故で亡くなった人は5000人台でしたが、ヒートショックで亡くなった人は14000人を越えたと言われています。
 快適な住まいを造りたい時に、住環境を建物全体で考える事は大切なことです。室内空気の対流をうながして均一な熱環境を得たり、つながりのある室内空間を用意して家族に一体感を持たせたり、冬の陽差しを室内深くまで導いてホッとするような暖かさを創り出したり、道を確保して清々しい風を導いたりするには、吹き抜けはとても役に立つ空間になるでしょう。

自然素材と家族の歴史が、魅力あふれる住まいを創る。

  • 夢をカタチにする力 -その25
  • 中庭デッキの家 (平成20年冬竣工)
自然素材と家族の歴史が、魅力あふれる住まいを創る。
 それぞれの空間の独立性を高めながらも、家族が密接にかかわることのできる住まいを自然素材で造って欲しい・・これが住まい手からのご希望でした。
 内装は床板に無垢のカラマツ、壁は珪藻土(けいそうど)塗り、天井はスギの厚板あらわし仕上げ・・調湿・蓄熱作用に富んだ材料を使用することで、家自体が呼吸するような住まいづくりをしました。さらに外断熱通気工法で家全体をすっぽりと包み込み、空気を自然対流させる工夫により、夏は木陰のような涼しさ、冬はまどろむような暖かさを目指しました。最近の住まいは機械に依存しすぎるように思います。熱効率を重視するあまり、各室を小さく区切り、ぶどうの房のように連なっています。これでは家族間の交流が希薄になり、一体感が損なわれるうえ、機械依存の高い家となります。自然素材は機械に頼らない快適な健康生活を手助けしてくれる建築資材なのです。
 部屋の使用用途もあまり決めつけてしまうのではなく、後々の生活イメージが拡がるような空間を残しておくことが大切です。この家にある土間はそういう機能を果たします。多用途に使える土間は、熱や冷気をため込む蓄熱体でもあり、生活時間の違うご家族をつなぐ交差点でもあるのです。

 住まいづくりは建物が完成してからスタートします。木や石や珪藻土(けいそうど)などの自然素材の経年変化、子供たちの成長や家族の変遷などの歴史を全て包み込み、個性的な住まいはできるのです。

家族の願いを、カタチにしよう。

  • 夢をカタチにする力 -その24
  • 内原の家(平成19年夏竣工)
家族の願いを、カタチにしよう。
 住まいづくりにコンセプトが大切なことはこれまでにもお話ししてきました。今回は、特に台所の使い勝手を中心に組み立てた住まいをご紹介します。建築地は和歌山市。住まい手のご希望は「台所を中心に発想した、陽当たりと風抜けが良く、シックハウスの心配がない、心地良く暮らせる木の家」。
 専業主婦の奥さんは趣味がパン造りであることも手伝ってどうしても台所で過ごす時間が多くなります。洗濯などの家事仕事も台所の近くが都合良い、出来ることならば子供の遊ぶ姿を視野に入れておきたい、家族の出入りは台所に居てわかる方がよい。そして、いつも居る場所なのだから見晴らしが良くて、風通しが良くて、陽当たりの良いところ・・となると、南に庭を望む、居間に寄り添う建物の中心。この住まいで一番居心地の良い場所が台所の位置になります。
 キッチンセットは用途に応じてコンロとシンクの部分を別々に・・使い勝手も徹底的に検討して家具工事で制作しました。コンロはお鍋を振りますから疲れにくい様に少し低め、目の前には壁を付けて実用優先です。シンクは洗い物をしても腰が痛くならない様に少し高め、家族が集ってお手伝いも容易に出来る様にアイランド型、目の前は気持ち良く開け放ちたいので吊り戸棚の類は付けていません。

 お気に入りのキッチンで奥さんは良くパンを焼きます。先日も焼きたてのベーグルを奥さんの笑顔と共にいただきました。
奧さん・・とっても美味しかったです・・有難うございました。

環境を活かして、豊かに住まう。

  • 夢をカタチにする力 -その23
  • 潤野(うるの)の家(平成17年冬竣工)
環境を活かして、豊かに住まう。
 住まいは、たくさんの要素が複雑に絡み合い、互いに影響を与えながら構成されています。中でも敷地の状況は
「建物のあり方は敷地が教えてくれる」・・と言われるほど大きな要素です。
 今回ご紹介する古座川町潤野に建つ住まいには、道路が北側にあり、南側に大きな山があるため、日照時間が限られる・・という事情がありました。しかし、その代わり、南側には誰の目にもさらされない山を望む絶好のシチュエイションが拡がっていたのです。居間をはじめとする主な個室は南側に配置し、各室の窓は大きく開放しました。特徴的なのは、大開口がついた浴室と、屋上デッキです。浴室は特にプライバシーが強く要求されるところで通常大きな開口は取りにくいところです。しかし、この住まいでは掃き出し窓を付けて露天風呂に近い開放感が味わえるようになっています。水廻り上部の屋上デッキも8帖を越える大きさを有し、布団を干したり遊び場になったり・・・と、使い方は色々です。いずれも北側の道路からは見えない位置にあり、陽当たりと眺望を楽しみながら気兼ねなく使うことが出来ます。

 標準間取りを敷地にどう当てはめるか・・的な発想には限りがあるものです。
敷地の形状・広さ・地盤の高さ・方位・風の方向・陽当たり具合・ご近所の様子・・それぞれの持つ状況を活用して最大限の効果を引き出すこと・・・これが私たちの役目です。

顔の見える家づくりが、地域に活力と豊かさをもたらす。

  • 夢をカタチにする力 -その22
  • ふたば福祉会 たなかの杜 (平成20年春竣工)
顔の見える家づくりが、地域に活力と豊かさをもたらす。
 今回は、春に開所した社会福祉法人ふたば福祉会の「たなかの杜」をご紹介します。
  一般に「木の家は弱い」という思いこみがあるようですが、建物強度は構造の種類によって決定されるものではありません。コンクリート、鉄、木・・いずれの構造においても、どの程度の安全率を見込んだ設計になっているかで決まるのです。基本構造は建物強度からの要求ではなく、使用用途や得たい効果に見合った選択が大切です。ここでは「自然とふれあいながら、暖かく柔らかく利用者を包み込みたい」という思いから木造を選択しました。
  木の建物を造るに当たっては経験則に基づいたノウハウも重要です。「たなかの杜」は2間(約4メートル)四角を基本にして柱と梁を組み上げました。経済的で間取りに左右されにくい、しっかりとした骨組みを造る事が肝要です。そうすることで、間取り計画に自由度が生まれ、太陽光や心地よい風を充分に取り込む大きな開口部を造ることができ、自然を満喫しながら機械依存の少ない快適な生活をおくることが可能になります。また、各部屋の大きな掃き出し窓は、緊急時の避難が無理なく出来る避難口にもなります。もちろん、利用者の使用する部屋は全て1階部分に配置しています。

 特殊な構法や材料に頼らず、地域に残る材料を、地域に残る技術で造る事が大切だと思っています。みんなが使う施設であればこそ、地域の環境循環や経済循環を充分に考慮していくことが必要でしょう

鉄骨造には鉄骨造の快適づくりがある。

  • 夢をカタチにする力 -その21
  • 上西薬局 (平成19年春竣工)
鉄骨造には鉄骨造の快適づくりがある。
  南紀白浜・・その中でも源泉のある湯崎というところは、潮の香りと温泉のにおいが立ち込めて、独特の雰囲気が味わえる所です。この地に鉄骨3階建ての店舗併用住宅を建てました。海・岩・砂浜・コンクリート・・などの地域を特徴付ける要素をモチーフとして、温泉街に馴染みが良く、景観をリードしてゆける建物になるようにと心がけました。
  住まい手からは、風通しが良く、西日をうまく制御できるように・・というのが一番の要求でした。鉄骨3階建ての建物で良好な室内環境を得るための手段は・・いつもの木造と同じ・・という訳にはいきません。室内仕上げに調湿・蓄熱の役目を果たす材料を使用することに変わりはないのですが、断熱・気密に対する考え方を木造とは根本的に変える必要がありました。木造では、湿気を通しやすい壁材を用いて、室内で処理が追いつかない湿気を屋外に放り出す算段をしますが、それが出来ないのです。そこで、風の通り道をしっかりと確保して、自然換気を最大限に利用し、その上で、足りないところを機械に助けてもらうことにしました・・断熱・気密はしっかりと・・これが今回の方法です。

 先日、竣工から1年以上経った夏の日に写真を撮りに伺いました。とてもきれいにお住まいなので驚きました。「住まい心地はどうです」と奥様に聞いてみたところ「電球の切れるのが早いので対策を考えたいが、快適に住まえて満足している」とのこと。大切に扱ってもらっている様子が一目でわかる住まいぶりに感謝の一日でした。